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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.58 社長インタビュー

沖縄県金型技術研究センターの取組み
―新たな金型ビジネスモデルの展開を―

人物写真
沖縄県工業技術センター
金型技術研究センター
センター長
金城 盛順 様
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沖縄県工業技術センター
金型技術研究センター
主任研究員
泉川 達哉 様
人物写真
沖縄県工業技術センター
金型技術研究センター
研究員
金城 洋 様
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NDES
前 代表取締役社長
渡辺 雅治

渡辺 沖縄県で金型技術に特化した研究開発や人材を育成するために、2010年4月に金型技術研究センターが開設されました。
本日は、金城センター長、泉川さん、金城さんに金型技術研究センターの取組みについて、お話をお伺いしたいと思います。

沖縄県内の金型産業の現状

【沖縄県内の金型を活用した業種】

泉川 沖縄県内の金型を活用した業種としては、射出成形、押出成形、打ち抜き加工、板金成形などがあります。

製品写真

①射出成形

建築資材で鉄筋コンクリートの中に埋め込まれる樹脂の部品です。コンクリートの中で鉄筋の配置を決めるドーナツスペーサと呼ばれているもので、精度はあまり必要とされません。

製品写真

②押出成形

アルミサッシ、塩ビパイプ、瓦等が押出成形で作られており、これらの製造工程でも金型が使われています。

製品写真

③打ち抜き加工

押出された形材を打ち抜いて組み立てます。沖縄では、鉄筋コンクリート製の住宅が多いため、アルミサッシに関連する製造業者が多く、アルミサッシの組み立てを行う加工業者は約100社あります。

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④板金成形

建築金物で、手すりを壁に固定するための金具です。
その他、ポリエチレンタンクの回転成形、釣りの浮きブロー成形、インフレーション成形(レジ袋)などで金型が活用されています。

【サポーティング産業が少ないための悪循環】

泉川 このように、県内でも金型は多く使われているのですが、経済産業省の工業統計によりますと沖縄での金型事業所数はゼロとなっています。

沖縄県工業技術センターで調べた範囲では、専業ではありませんが金型を加工できる業者は1社あり、修正加工を含めると、3社あります。

製造業の発展を支えている機械金属製造業など、サポーティング産業の集積度が低いため、県内の食品工場などで使用される装置はほとんどが県外製になります。沖縄県独自の食材があるのですが、県外製をそのまま使いますから、県内の加工業の細かいニーズに対応することが難しい状況もあります。

サポーティング産業がないということが、中核的企業が立地しない原因になっていて、中核的企業がないので、製造装置の需要が少なく、ものづくり系の企業が少ないという悪循環に陥っています。

金型産業振興に関する産学官連携

【沖縄県の豊富な若年労働者】

泉川 金型業界は、20名未満の事業所が全体の88.6%を占めていますので、中小規模の企業の集まりですから、人材を育成するための時間や資金などの余裕がなく、また、新卒者の採用も難しいと言えます。

沖縄県では、工業系教育機関からの卒業生が毎年約3,000人います。しかし、就職内定率(H20年3月卒業者)が低く、全国の大学平均96.9%に比べ、沖縄の就職内定率は65.8%です。沖縄には優秀な人材が埋もれているのです。

沖縄県では、金型業界の抱える人材育成や研究開発のニーズと、県内に優秀な若年労働者が豊富にいるという現状を捉え、産学官一体となった人材育成と技術の集積に取組んでいます。

金型技術研究センター

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

泉川 沖縄県の肝いりで、金型産業振興協議会を2009年9月に発足し、県内の教育機関、工業連合会、地方自治体が集まり、県全体が一丸となって金型産業の振興に取組んでいます。この協議会では全体の事業を管理し、金型産業の振興を行う中核となるのが、金型技術研究センターです。

金型技術研究センターは、今年4月に工業技術センター内に正式に設置されました。金型技術研究センターでは、工業技術センターが行っていた機械金属分野の人材育成、機器提供を金型技術に特化した形で取組んでいきます。

この金型技術研究センターと併設する形で、サポーティング産業誘致型賃貸工場もあります。

「人材育成」、「機器提供」、「研究開発」が、金型技術研究センターの活動の3本柱となります。

【人材育成】

泉川 人材育成に関しては、2009年6月から、「うるま市地域金型人材養成事業」(H21年~H23年)を実施しており、今年が2年目になります。

カリキュラムの内容は、最初に共通科目として、機械系のエンジニアとして必要な科目を学びます。その後、プラスチック金型、ダイカスト金型、プレス金型に分かれます。それぞれ初級~中級~上級とステップアップできるようになっています。
初級金型技術者をモールドエンジニア、中級金型技術者をプロジェクトマネージャー、上級金型技術者をコンカレントエンジニアと位置付けています。

説明図

従来型の金型メーカが対応しているのは、生産プロセス全体のうち、金型設計・製作の領域だと言えますが、この事業で目標とする人材像の「コンカレントエンジニア」は、完成品メーカ側へ金型の製造要件をフィードバックし、上流工程での設計に参加でき、さらに最終製品の構造や工法にも精通していることが要求されます。本事業では、生産プロセスのすべての工程に対応できる技術者の育成を目指しています。

  • 製造要件を上流工程の製品設計者側にフィードバックできる
  • 上流工程での同席設計ができる
  • 金型のみならず、製品構造、工法に精通している
  • 付加価値の高い金型の製作ができる
  • コミュニケーション能力が高く海外でも活躍できる
説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
説明図
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コンカレントエンジニアを育てるのに、OJTによる育成では現状10年かかると言われていますが、この事業では、5年で育成する計画です。

県内外の教育機関や企業とは、共同研究や人材提供という形で連携を取ります。また企業に対しては、その人材ニーズを的確に捉えカリキュラムに反映していきます。

昨年度は10月から講座をスタート(毎日:AM9:00~PM4:00)し、共通科目と初級プラ型の教育を行いました。研修生は7名で、求職者が4名、企業からの派遣が3名です。

クリアモデル

研修生の中には、金型を初めて見る方もいますので、クリアモデルで、組み立て、分解を行い金型の構造を理解するようにしています。週に一度は、県内の工場見学を行っています。

このときには、金型だけではなく、いろいろなものづくりの現場を見学しています。座学だけではなく、加工の実習、計測の実習なども行っています。

求職者のうちの3名は就職が決定し、残りの1名は研修を継続しています。企業からの3名は、1名は会社に戻り活躍しています。残り2名は、プラ型の中級コースにステップアップして、研修を継続しています。

渡辺 企業の3名の方は、みなさん沖縄の方ですか。

泉川 県外企業の方もいるのですが3名とも沖縄出身です。既存の工場を沖縄へ移転するのではなく、沖縄に拠点を作るときに沖縄の人を採用するという考えで参加してもらっています。

渡辺 研修の期間は、6ヶ月ですか。

泉川 朝9:00~4:00までみっちり研修をしているので、県内の企業の中には興味があってもなかなか仕事との兼ね合いで参加ができないという声もあり、来年は、午前中だけで5 日間という講座も提供する予定です。

センター長 
これからいろいろな試みをしていきますが、大学、高専、ポリテクと連携をとって、金型メーカに就職する学生には、研究テーマを金型にしてもらうということも検討しています。実務に近い勉強をしてもらって、短時間でよりレベルの高い人材をどう育てるか、試行錯誤しなければならないと考えています。

大学における教育と、金型技術研究センターの教育の仕方を変えて、企業から見たときに、こういうことは知っていてほしいという、より実務に近い研修をすることが大事だと思っています。

【機器提供】

泉川 新しい工場は、金型技術研究センター(500㎡で、事務所、研修室、工場)と5つの賃貸工場(各300㎡)を併設しています。

渡辺 金型技術研究センターの機器提供と賃貸工場の役割についてお話いただけますか。

■機器提供

センター長 人材育成をする、研究開発をする、また、いろいろな企業が加工や工法の検討をするときに、陳腐化した設備では話になりません。工業技術センターにもマシニングセンターが3台、NCが1台、放電加工機、いろいろな計測器、プレス、成形機もあるのですが、世の中の最先端の設備かというと、そうではありません。

5軸の加工は、CAD/CAMベンダー側から見ても、工作機械側から見ても、5軸によって加工を変えていくというレベルには達していないので、そこを追及したいという思いがあります。

ソディックの40,000回転のリニアの加工機が入ってきます。放電をなくした難削材加工の追及と、高精度を目指す加工に取組みたいと考えています。
日本および世界の中でトップにいる企業の機械を買ったということです。当然、CAD/CAMは、Space-Eです。

説明図
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■賃貸工場

センター長 賃貸工場は、インキュベート施設であると考えています。沖縄県には、金型産業がありませんから、県外の金型メーカに沖縄県に進出してきてもらいたいのです。企業が新しいことにトライするときに設備に投資するのは難しいので、賃貸工場に入居していただいて、金型技術研究センターの設備を使って模索してもらい、その間は、技術的な支援も行います。ある程度道筋が見えるところまでです。

【研究開発】

表

泉川 研究開発のテーマとしては、県内企業の抱えている課題に対応する比較的短期間で成果の見えるようなものと、より長期的に取組む金型の新しい技術に関わるものとを設定し取組んでいきたいと思います。県内外の教育機関、企業と連携して研究開発を行っていきます。金型に関わる様々な分野のテーマがあると考えています。

金城 アルミ押出し金型をSpace-Eを使って設計をしています。これは、現在、県外から購入している金型を県内で製作するための試みです。

センター長 NDESはアルミ押出しのノウハウをお持ちですから、支援を期待しています。
私は、根っからの型屋ですが、泉川、金城の2 人とも専門は流体と熱です。

泉川 金型の冷却の話を聞いても、慣習で設計しているところもあり、切り口はまだたくさんあるのかなと感じています。

【期待する成果】

説明図
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泉川 このような取組みをすることで、悪循環のサイクルが、良い循環に変わると考えています。

この取組みを聞いて、県外の金型メーカが見学に来ますが、沖縄県内の金型のマーケットはどれくらいあるのですかと聞かれます。マーケットがあるから来てくださいというよりも、新しい加工技術、機械の開発、エンジニアリング能力の開発に注力して、企業誘致、産業振興を行っていきたいと考えています。

金型業界が目指す方向としてはグローバル化が挙げられていますし、金型メーカは、現状打破を模索していると考えられますので、コンカレントエンジニアの育成は、業界の目指す方向に沿っていると思いますし、コンカレントエンジニアへの期待は大きいと思われます。

新たな金型ビジネスモデルの展開

渡辺 新たな取組みもお考えと思いますので、金型技術センターで、特にアピールする取組みについてお話いただけますか。

センター長 日本の金型産業は苦しい状況にあります。今までは国内に仕事があったので、新たな事業展開をしなくても、真面目にコツコツ型づくりをして、その中で価値が見いだせるような仕事の仕方をしていればよかったのです。
韓国や台湾が台頭してきたのは、自国にマーケットがなく、グローバルな展開をせざるを得ないからです。
ポテンシャルも高く、教育もしっかりしていて、日本と違う環境で金型が強くなってきました。

日本の経済、ものづくりが20年ぐらい停滞しています。
それは、価値観が変わっているのに、価値観の変化に対応できていないからです。日本の金型は中小規模の企業が多く、グローバルに展開しようとしても簡単にはいかないし、何とかしたいと思ってもできない。
大事なのは人づくりだとみています。中国や韓国と仕事をしていて、日本人の優秀さが最大の武器だと思います。

従来の価値観の延長線上でものを考えるのではなく、グローバルな展開や、国内の大きなうねりに対応しようとすると、人から変えていかないといけないし、そういうところに目を向けて、ポテンシャルの高い、従来とはタイプの違う人たちが金型業界に入ってくるという環境を整備していくことが必要ではないでしょうか。もともと沖縄の人たちは、交易型ですから、ぜひ、沖縄に興味を持ってもらって、これから金型業界、ものづくりを変えていこうとしたときに、より優秀な人材を確保し、教育をして、突破口として進めていくというきっかけにしていただきたい。
沖縄から見ると環境は良くなってきています。基本的には、ビジネスモデルが変わっているのです。人が動くところで物事が動いているのです。
沖縄の産業の中心は観光サービス業で、これに次ぐ新たな基幹産業として注目されているのがIT産業です。

平成10年に県が「マルチメディア・アイランド構想」で、情報通信関連産業を沖縄のリーディング産業の一つとして明確に位置付け、IT企業誘致・立地促進策をとった結果、コールセンターが那覇市を中心に集中的に立地していて、約23,000人が業務を行っています。
沖縄は、物流コストや納期などがネックとなっていましたが、ITアイランドとして、沖縄の地理的なハンディキャップを解決している事例もあります。

今はITからICTですね。人が一番大事なのであって、場所や距離というハンディキャップはなくなってきています。設計業務であれば、設計は、場所を問わないので、また価値観が変わってくる。ビジネスモデルは、金型メーカも変わっています。

今、比較的うまくいっている金型メーカは、金型というコア技術を大事にしながら、それを大きな武器にした商品を作っています。そういう企業が伸びています。
本来、金型は英語でTOOLSといいます。TOOLということは手段ですから目的ではありません。

NDESに期待するところ

渡辺 弊社に対して、今後どのようなことを期待されているでしょうか。

泉川 昨年、型技術者会議に参加し、講演を聞きましたが、5軸加工が思っていたよりまだまだ現場では使えていない現状があると思いました。センターに5軸加工機を入れますので、NDES と連携して取組んでいけたらと思います。

金城 Space-E/Moldを使って設計をしていますが、ユニット部品の機能がまだ不安定なところもありますので、作り込んでいくと、だんだん動かなくなっていく。
まだ、未成熟な部分もありますね。

センター長 金型業界の、特に型設計についてはチャンピオンになってもらいたい。仕組みそのものは間違っていないと思います。詰めをしっかりやれば、間違いなくチャンピオンになれると思います。

機能ができたということと、ユーザが使えるかどうかとは違います。使う側からすると、余分なことはしたくない。使えるようになるには、どこまでユーザとやり取りするかだと思います。売切りではなく、お客様と一緒に作り込んでいくというのが、NDESの特長だと思っています。

NDESにお願いしたいのは、世の中はICTという考え方になってきています。コミュニケーションが入っています。ものを作るときに、品質を作り込むためには、情報のやり取りが命です。情報をどのようにしてタイムリーに相手に伝えるか、相手のレベルを理解しながら発信するというのが情報です。難しい言葉で伝えて相手が理解できなければ、それは情報ではありません。

きめの細かいものづくりをするために、道具をどのようにして熟成させるかを考えたときに、NDESはすべてをつなぐ技術を持っています。金型メーカに必要なツールをすべて自分のところでやっていなくても、つなぐ技術を持っているのだから、そこをもっと見えるような形でお客様に提案する仕組みを作ってもらいたい。

CAD、CAM、CAEと個別ではなく、仕組みとしてどう作っていくかです。企業が持っている技術をどのようにつなげていけば、効率が上がるのか、強化されるのか、いろいろな仕掛けを提案できると思います。

期待しているもうひとつは、以前は、ASPと言っていましたが、今はクラウドですね。使う側からすると、いろいろな道具を買うのではなくて、グローバルなネットワークの中で、中国、タイ、ベトナム、インドネシアなどどこで使うにしても、そこにアクセスしながらアプリケーションを使えるような技術ですね。さらにグローバルに展開するにしても、わざわざ現地に行かなくても、管理ができる、情報のやり取りができる仕組みを作っていきたい。海外に展開すると、管理系に皆苦しむのです。そこをどうやってサポートするか。設計情報もCAMの情報も大きなくくりでは管理情報です。プロセスを管理するための手段ですから。
NDES は、単品ではすごい技術を持っていると思っています。

渡辺 データ管理系と連動させる必要がありますね。

センター長 技術開発のところで、NDESに期待しています。ハイサイクルの成形、流体伝熱を若い人たちにやってもらいたい。5軸もやりましょう。押出成形をNDESの知恵を借りながらやっていく。ネットワーク系の情報のありようも一緒にやっていきたい。
金型メーカが、こういうふうにしたいと思えるようなビジネスモデルを作り上げていきたいですね。

渡辺 新しいビジネスモデルを一緒に作りあげようということですね。

沖縄県の金型振興の取組みに対して、NDESは全面的に支援させていただきます。ともに試行錯誤しながら新たなビジネスモデルの展開に向け、お役に立てるようお手伝いさせていただきますので、これからもいろいろなご指導をお願いします。

本日は、お忙しいところを本当にありがとうございました。

会社プロフィール

設置 2010年4月
所在地 沖縄県うるま市「沖縄特別自由貿易地域」
活動の取組み ・人材育成
・機器提供
・研究開発
建屋外観
金型技術研究センター