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株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ

No.70 社長インタビュー

核医学の普及と発展に貢献
― 画像診断用放射性医薬品のリーディングカンパニー

NDES 代表取締役社長 木下 篤
NDES
代表取締役社長
木下 篤

木下 御社は、画像診断用放射性医薬品のリーディングカンパニーとして、「医療分野での事業活動を通じて人々の健康・福祉に奉仕するとともに、よりよい社会の実現のため寄与する」ことを企業理念として活動されていますね。

私どもは、御社に会計・購買システムを導入いただきお手伝いさせていただいています。

医療系の分野は私どものお客様の中でも珍しい分野ですから、本日は医療系分野のことや、御社の取り組みについてお話をお伺いしたいと思います。

※このページに掲載している画像は、日本メジフィジックス株式会社様の「会社案内」より引用しています。

事業概要

木下 まずは、御社の事業概要や開発されている医薬品についてお話しいただけますか。

倉見 設立は1973年で今年はちょうど40年目の節目の年になります。

創業以来、医療関係者の方々や患者様に有用な医薬品の開発と、高品質な医薬品の安定供給を目指して事業活動を展開してまいりました。医薬品の中でも、放射線の特性を疾病の診断や治療に役立てる医療分野である核医学をその基盤技術とし、医療関係者の方々とともに核医学の普及と発展を通じて、人々の健やかなくらしに貢献したいと考えています。

核医学画像診断は、形態の画像化から組織機能の判定までさまざまな角度からの診断情報を得るために行われます。当社は、それぞれの診断目的に応じた放射性医薬品を数多く揃え、これらの製品は心臓疾患、悪性腫瘍などの高精度の画像診断と、より的確な病態把握を可能にしています。

放射性医薬品SPECT診断薬

木下 放射性医薬品について教えていただけますか。

脳血管障害の診断

倉見 高齢化、食事・生活習慣の変化に伴い、脳血管障害、認知症、心臓病、悪性腫瘍などの疾患は増え続けています。これらの疾患の早期診断において使用されるのがSPECT診断薬です。

SPECT(スペクト:単一光子放射断層撮影)は、放射性同位元素(RI)を目印として体内の病気の場所や組織の状態を調べる核医学検査で、集めた放射線の信号をもとに断層画像として表現する方法のひとつです。患者様に投与されたRIから放出される単一エネルギー(ガンマ線)の光子を多方向から捉え、RIの体内分布を画像として再構成し、組織の代謝・生理的機能を断層像として映し出す方法です。

脳血液シンチグラム(SPECT診断薬)
脳血液シンチグラム(SPECT診断薬)

脳血液シンチグラムの図は大脳を水平面で切った構成画像で、黄色く映っている部分は脳血流が豊富な部分です。周辺の黄色が多い部分は大脳の灰白質で神経細胞の細胞体があります。真ん中のブルーのエリアは軸索が通っています。神経が活動する際にはエネルギーを必要としますが、血流によって豊富なエネルギーと酸素が供給されます。そのため正常な脳では神経細胞の周辺の血流が多くなります。

右側の画像は、画像の左側が抜けています。解剖学的な画像を表すときは切った断面を下から見る画像として出しますので、右の脳の血流が低下している状態です。頸動脈に血管の詰まりがあって、右半球全体の脳血流が落ちている状態です。おそらく運動機能、言語等の機能に障害が出ているのだろうと思われます。右側の神経細胞がまだ生きていれば、右側の血流を戻すことで機能が復活する可能性があります。血流を解除する手術等の治療により機能と生命を救うことができます。このような脳の血流を診断する医薬品を製造させていただいています。

SPECT診断薬
SPECT診断薬

心臓病の診断

心臓シンチグラム(SPECT診断薬)
心臓シンチグラム(SPECT診断薬)

倉見 心臓シンチグラムの図の右側は長軸断層図で、左側は短軸断層図です。

中段の画像は安静時と書いてありますが、運動などを行わずに安静にしているときの心臓の血流画像です。どこにも問題はないと思われます。上段は運動をするなど負荷をかけたときの画像です。上段の右側の画像(長軸断層図)を見ると本来は先まで血流がないといけないのですが、先端部の血流に抜けがあります。左側の画像(短軸画像)では左側の領域で血流の欠損が見られます。この症例は運動をしたときに欠損が出るということから狭心症の例であると思われます。少し体を動かすと胸が痛い息苦しいと感じる状態ではないかと思います。運動をすると血流が急に増えますから、そのときに血管が動脈硬化などで狭くなっていれば運動に必要なエネルギーと酸素を供給できませんので、このように抜けが出ます。心臓の血管の狭窄に対してはバルーンを用いた治療法などが適用されますが、そのような治療のための診断に当社の薬を使っていただいています。

骨転移の診断

骨シンチグラム(SPECT診断薬)
骨シンチグラム(SPECT診断薬)

倉見 骨シンチグラムの図は、左側が正常な方の写真、右側が腫瘍の症例の画像ですが、左の肋骨の部分にぽつぽつと黒い部分があります。ここが腫瘍が転移した場所と考えられます。腫瘍の症例においては、骨への腫瘍の転移は非常に重要な診断情報であり、このような転移の診断情報をふまえて、外科手術や化学療法、放射線療法などの治療法が選択されます。当社は外から検出器で放射能の位置を確認することで脳血流を見たり、心筋の血流を見たり、あるいは骨の状態を見たりする診断薬を製造しています。

放射性医薬品PET診断薬

木下 PET診断薬も開発されていますね。

INTERNETで調べてなるほどなと思ったのは、がん細胞は正常な細胞に比べブドウ糖を多く摂取しやすいという性質を利用して、ブドウ糖によく似た成分を持つPET診断薬が集まっているところが、がんの所在しているところだという理屈だそうですね。

より詳細に体内のRI分布を測定

PET診断薬
PET診断薬

倉見 PET(ペット)とは、Positron Emission Tomographyの略で、陽電子(ポジトロン)を放出するタイプの放射性同位元素(RI)を使った放射性医薬品を患者さんの体内に投与し、薬が病気の患部に集まる様子を体外から撮影することにより、病気の状態を診断する検査方法です。

PET画像とPET/CT画像
PET画像とPET/CT画像
サイクロトロン
サイクロトロン
バイアル充填ライン
バイアル充填ライン

正常な方のPET画像の右側の画像は、CTの画像と放射能の画像をフュージョンして重ね合わせたものです。PET画像では放射能のあるところしか写りませんが、CTはすべての組織が見えますから、放射能の画像とCT画像を組み合わせることで、体内のどの場所であるかを的確に確定することができます。

画像は大腸がんの症例ですが、おそらく下行結腸の原発巣(最初発生したがん)が描出されていると思われます。この症例では他に明らかな放射能の集積巣が認められませんので、転移はない可能性が示唆されます。こういった画像でどこにがんが転移しているのかを評価することが可能です。このようなPET診断薬を当社は全国各地の製造所で製造させていただいています。

この薬の製造にはサイクロトロン(円形加速器)を使用します。私の学生のころは、加速器というのは理学部の物理学研究室などで実験物理学の人が使う装置というように思っていたのですが、当社は国内で初めて商業用にサイクロトロンを使用する会社ということで設立されました。このサイクロトロンで荷電粒子を高速に加速させてターゲット物質に照射することによって、原子核反応が起きて目的とするラジオアイソトープを製造します。こうした装置を使って作ったアイソトープを用いて医薬品に合成します。得られた医薬品はシリンジ型バイアルの充填ライン等で自動的に容器に詰めて病院様にお届けします。バイアルの充填装置の部分は、クラス100のクリーン環境の中で製造します。このようにして製造した医薬品は、ロボットとベルトコンベアーを組み合わせて仕分けをして、ご注文いただいた数量を出荷します。これを制御しているのが、CSSの端末です。CSSは当社がベンダーさんと一緒に手組みで作らせていただいた情報システムの仕組みです。ご注文いただいたオーダーを各工場に振り分けるのが受注システムで、配送情報も物流で利用するのですが、工場においてはCSSからデータを取って注文いただいた病院、地域と数量を自動仕分けするサブシステムを作っています。

半減期109分の医薬品

木下 私どものお客様はほとんどの方がものづくりですから、クラス100など厳しい環境ですね。もう一つは、トヨタの看板方式は"Just in time"でなくなったら持っていく、ある意味では在庫管理もきちっとできてスピードがありますが、このような薬の場合は、通常の医薬品に比べ極端に使用する期間が短いので制約があるのではないでしょうか。

倉見 受注生産であれば楽なのですが。例えば、何日に10個ほしいと事前に注文をいただければいいのですが、私たちの医薬品を製造するためにはサイクロトロンを運転するところから始まりますから、実際のところ見込み生産なのです。

木下 ということは、注文がなければ捨てることもあるのですか。

倉見 あります。それより問題は、足りない時です。欠品だけは、あってはならないことです。

木下 薬を作るのにかかる時間はどれくらいですか。

倉見 PETの場合は、夜中からスタートして病院にお届けするのが、朝9時ですね。

木下 病院と工場の間が近ければ問題ないですが、放射性元素は半減期があるわけですから、遠くには運べないですね。

倉見 PETの場合ですと、半減期が109分なので、配送には限界があります。

木下 例えば届けられない地域でそれを使うとなるとどうなるのですか。

倉見 全国には、九州に1か所、岡山県に1か所、神戸、京都、豊田、小田原、東京、北上、札幌で全国をカバーするのですが、どうしてもお届けできない地域はございます。

木下 そのような場合は患者さんに来てもらうということですか。

倉見 そうです。しかしながら、先般、新聞発表させていただいたのですが、製品をお届けできない地域を縮小し、安定して医薬品を供給させていただくため群馬県に新たに用地を取得しまして製造施設を設置する計画です。

情報システムの管理

木下 限られた環境とお客様との立場、その中できちっとした品質のものを届けるというのはかなり究極のことだと今お話をお伺いして思いました。

この場合は、相手は人間ですし、しかも時間、法的な制約も影響があると思いますが、社内の仕組みはどのようにされているのでしょうか。

倉見 医薬品については、薬事法で義務付けられていまして、バリデーションという概念があります。事前に何回かテストランを実施してその中でフェイルがない場合には、一定の品質のものができるという概念です。このバリデーションを定期的に実施することが、医薬品メーカーに課せられています。

木下 ラボと工場は一体化されているのでしょうか。

倉見 弊社では兵庫と千葉に工場を持っており、こちらでは脳や心臓のSPECT製品を製造しています。これらの放射性同位元素は半減期が少し長くて、脳の場合ですと13.3時間、心臓の薬は73時間という半減期の医薬品があります。それよりも半減期が短い109分のPET製品はもっと規模の小さな事業所であるラボを設置してそちらで製造しています。

これらには小さいですが、サイクロトロンも、無菌室も設置しています。このように、少量の医薬品販売のためにかなり重装備の設備投資をしないといけませんし、薬の場合は、研究開発を始めてから承認が得られるまでに最短で7~10年かかります。医薬品の販売の7年前、10年前に設備投資をしなければなりませんから、その間のリターンを我慢するという経営でないと成り立ちません。

オンラインシステムによる受注情報の一括管理
オンラインシステムによる受注情報の一括管理
(クリックすると拡大画像が表示されます)

木下 薬事法に基づいて品質を保証されているという話がありましたが、それに加えて、システム系で「オンラインシステムによる受注情報の一括管理」など、受注内容を正確に把握し間違いがないようにし、医薬品の品質も保証するとなると、システムはノウハウのかたまりで結構複雑なものでしょうか?

倉見 特殊でノウハウがあるようです。しかし、最近はいろいろな業種・業態がありますから、当社がそんなに特殊なのかなとも思います。もっと標準化できるのではないかと考えています。

木下 なぜそのようなことを聞くかと言いますと、クラス100など厳しい環境で、これだけの工場なら、標準化されて管理されているのかなと思ったものですから。

倉見 基本、標準化するというのが原則ですが、現場それぞれの考え方もあります。どこどこの工場はこういう特殊性があるから標準的なものはできないという事項はあります。

木下 リーディングカンパニーとして、そういう現場の考えもあるのでしょうね。

倉見 現場が一番重視するのは、安定供給です。安定供給に対してリスクがあるようなことはできないというのが、現場の基本的な考え方です。それが当社の医薬品を使っていただくひとつのベースになっているという考え方はあります。とはいえ、なんとか標準化をしたいと考えています。

ERPシステムの構成
ERPシステムの構成
(クリックすると拡大画像が表示されます)

木下 システム部門としてはERPという分野では、会計制度もありますし、まず取り組む分野ですね。

倉見 ERPを導入する場合に私どもが選択したのは購買と経理だけで、生産系はERPの対象にはしていません。現在、受注製造・物流については、過去から使っている手組の仕組みを主として使用するという考えです。

でも、それだけでは不十分な環境になってまいりまして、ひとつは会社法が変更になって内部統制の導入が命題としてあります。システム上の問題としてはセキュリティをきちんとしなければいけないという事項が重要になってきました。こういう環境の変化によって、これまでは製造の部分は製造部門で管理・運用するという考え方でいたのですが、追い付かないですね。特にセキュリティや統制をかけなければいけませんので、どうしても、システム部がそこに入っていって一緒にやっていかないとこの2つの要件を満たせません。その方向は今後とも強くなると思います。

木下 基幹系というのは、今回も会計期間の変更や償却方法の変更など親会社を含めて外的要因における必然性から業務そのものが変わっていくといった影響の大きい部分があるのではないかと思うのですが。

倉見 おっしゃる通りです。少なくともシステムに関していうと外的環境の変化に対応するためということがきわめて大きい要素です。薬の場合には薬事法がありますので、その法律の中でビジネスモデルを転換するというのはなかなか難しいです。細かな部分ではずいぶん変わってきてはいますが、大きな視点で見た限り20年前の製薬会社と現在の製薬会社と何が違うかというと、そんなには違わないと思います。それよりもシステムの切り口で見た場合には、制度、セキュリティなど、外的な要因によって在り様が変わってきていると思います。

我々の情報システムの管理も現在はどちらかというと、本社に集中させて管理するという考え方ですが、本来の効率を考えると分散させた方がいいと思います。現状では分散するだけのインフラの整備ができていませんので、何年後かわかりませんが、5年たったら少し方向転換するべきかなと思います。

NDESへ

木下 最後にシステム部門としてお付き合いさせていただいていますから、今後の御社の課題やテーマに対して、私たちに期待することなどお聞かせいただければと思います。

倉見 情報システムというのは、新しい事業を創造していくための支えになるというものと、今あるものを正確に動かしていくというものと二通りあると思います。

前者は我々の将来の事業と密接にかかわってくる領域で、テーマに対し、いかに少しでも早くそれを実現化できるようサポートすることが必要になると思います。

一方で御社に提供いただいています会計システム、購買システムなどは、いかに効率的にかつ正確に稼働するシステムであるかが重要だと思います。

システムでも性質によって二極化するところがあると思います。そういった意味では前者のシステムであれば、できるだけ早い期間で迅速に実現できるシステムをご提案いただくということが我々としては期待するところです。一方では、きちんと動かないといけないというシステムについては、コストを管理していかなければいけないということもありますし、安定感のあるシステム、システムの変更に際しても確実にこれが取り込めるような構造のシステムを期待したいと思っています。2008年にERPシステムを導入して以降、トラブルもありませんし、社会制度の変更にも的確に対応できているので、いいパッケージを選択して御社という良いパートナーにめぐり会えたと思っています。

御社に直接関係ある話ではないですが、ライフスタイルなども変わってきていますので、MRと言われる営業職、生産の体制、仕事の仕方も変わってきています。

弊社のシステム部としては会計購買系のシステムを管理・運用していますが、その他にもインフラ系の仕組みやMRをサポートするツール、デバイス、ネットワークなどもシステム部で管理をしていますから、社内におけるいろいろな働き方、仕事の仕方、製薬会社として医師に提供する情報などを的確に届けられるようなものを積極的に選択してシステムとして提供していくことにも注力していきたいと思っています。その他、在宅で勤務ができるような仕組みがありますが、これは通常時だけではなくて、何か起こった時のBCP対策などとしてシステム部門がある程度事前に考えておかないと、災害が起こってから考えましょうでは間に合いません。何が必要なのかを前広に考えて提案して社内で整えておく、そういうやり方で事業を下支えする仕事が必要だと思います。もちろんセキュリティやコストも考えないといけません。

このようなことについて御社からご提案いただいたり、仕組みや他社事例などの情報をいただければ非常に参考になると思います。

いろいろな事項に興味がありますが、社員のライフワークバランスなどにITが関わっていけるのだろうと思いますし、会社目線でいえば、一人ひとりの業務効率を上げたい、生産性をもっと上げたい。これにITをうまく利用すれば成果は上がると思うのです。

研究や開発部門の社員は新製品を出そうと頑張ってくれていますが、ITの側からも情報技術を活用してお客様への新たなサービスや、いろいろなサービスレベルを上げてご提供することによって、競争力を向上させることができないだろうかと、いろいろな興味があります。

そう考えていくと、情報システムとして、あれもこれもやりたいことがあります。

木下 NTTデータグループの国内外の事例も含め、ご提供できる情報がありましたらご紹介させていただきます。本日は貴重なお話をお伺いし、どうもありがとうございました。

企業プロフィール

本社
本社
本社 東京都江東区新砂3丁目4番10号
設立 1973年
資本金 3,145,780千円
従業員 830名(2012年末)
営業種目 放射性医薬品、診断用薬、治療薬、医療機器および関連製品の研究、開発、製造、売買ならびに輸出入 等

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