リリースのお知らせ
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ 製造ソリューション事業部 技術開発部 第一サービス課 古川 楓 |
はじめに
製造業向けCAD/CAMシステム「Space-E」の新バージョン2023 R2を2024年春にリリースいたします。今回の2023 R2では、お客さまのさらなる作業効率の向上を目指して機能強化を行っています。特に、Space-E/CAMおよびSpace-E/5Axisにおいて、経路計算の高速化や加工経路のより高い安全性を実現する機能を開発しています。本稿ではその概要をご紹介します。
Space-E/CAM 着実な作業時間の短縮
2023 R2は、経路編集における補助機能の充実、容易な工具選定や工具干渉チェックを実現しました。これにより着実にCAMの作業時間を短縮できます。また、前バージョンよりもさらにモデル取り込みの精度を向上させ、Modelerとの連携を強化しています。
同一形状、類似形状の経路作成に有効
工程ツリー上で、既存経路に対して移動・回転・ミラー・分割の補助機能を利用できるようになります(図1、図2)。これにより、経路エディタを使用しなくても、工具の摩耗を考慮した経路分割および、同一形状や類似形状の経路作成を簡単に行えます。また、工程ツリー上で補助機能を利用すると編集内容が保持されるので、担当者が変わったとしても編集意図の把握ができます。
工具をドラッグ&ドロップでビューエリアに表示
以前は、加工経路を作成する前準備として、加工に必要な工具長の確認をModelerで行っていましたが、2023 R2では、CAMのビューエリアで確認できるようになります。工具パレットからビューエリアへ工具をドラッグ&ドロップするだけで、モデル形状と工具形状を並べて表示できます。また、任意の位置に工具を表示して細部の確認ができるため、ビューエリアにおける工具選定(図3)や経路作成後の干渉チェック(図4)が容易になります。
その他の機能強化
その他にも、作業時間や加工時間の短縮、加工精度や面精度の向上を目的とし機能強化を行っていますので、その一部をご紹介します。
<等高線仕上げ加工>
- アプローチ位置を直接指定することが可能です。電極などを加工する際に、加工痕の発生を防止できます。
- 平坦部にかかる経路に任意の半径・逃げ量の設定が可能です。立壁部の加工の際に逃げRを挿入し、刃先が平坦部に接触して発生する加工痕を抑止します。
<等高線荒取り加工>
- ストック形状指定で、無効カスプ高さの設定が可能です。設定値以下の不要な経路がなくなり、加工時間が短縮できます。
<カーブ切削>
- 3Dカーブを曲面上へ投影することが可能です。ランナー溝加工で、容易に曲面上へ切削パスが作成できます。
<隅取り加工>
- 微小パス制御で「推奨値を使用する」設定が可能です。中仕上げ加工などそれほど精度を必要としない場合に、推奨値を利用すると、微小パスを制御した効率の良い加工ができます
<面沿いオフセット加工>
- パスの折れ部に任意の半径で経路を挿入することが可能です。折れ部で工作機がスムーズに動作し、加工面の品質が向上します。
<平坦部走査・周回>
- 等高線機能のXY・Z 仕上げ代を個別に設定できる機能が、「平坦部走査」「平坦部周回」でも使用可能です。補助面の作成が不要になることで、作業時間を短縮します。
Space-E/5Axis さらなる省力化
段取り工数と加工コストを削減し、さらに加工精度の向上につながる5軸加工を推奨しています。そのメリットを十分に生かせるSpace-E/5Axisの機能強化を行いました。ここでは5軸荒取りと経路5軸変換についてご紹介します。
経路計算を高速化した5軸荒取り加工
経路計算時の内部処理を改良し、5軸荒取り加工の経路計算を高速化しました。テストモデルで比較した結果、2023 R2は従来の経路計算時間より92%削減を実現しました (図5) 。これまでは、通常業務の終了後に経路計算を実施し、翌朝になって作成された経路を確認するという流れでしたが、当日のうちに実施、確認ができます。
また、任意の加工距離・時間で経路を分割できるようになります (図6) 。これまで工具寿命を考慮して加工を行う必要があったものも、任意の設定で自動的に経路の分割ができ、夜間に加え長期の加工機の自動運転が安心して行えます。また、加工品質の低下や工具破損も同時に解消し、安心と自動を兼ね揃えた5軸荒取り加工を実現しています。
その他、5軸荒取り加工では、チップ工具に対応し無効刃を考慮した微小経路作成の抑止や、割出角度変更時に送り速度の個別設定など、3軸加工の機能を追加しています。
異形工具に対応した経路5軸変換機能
「隅取り」「面沿いオフセット」「複合面沿い」の3つの機能に対し、異形工具が経路5軸変換時に利用できるようになります。異形工具の先端で加工をすると、従来のボール工具よりもたわみを抑えた高精度な加工が可能です (図7) 。剛性の高い工具を利用することで品質を維持しながら送り速度を上げることができ、加工時間を短縮できます。
また、加工座標系設定を行った3軸経路にも経路5軸変換ができるようになります。これにより、複数ファイルに分けて対応を行っていた経路作成が、1つの加工工程設計ファイルの中で完結できます。これにより、2023 R2は従来の作業時間より80%削減した結果が得られています(図8)。
おわりに
私たちは「ものづくり分野のお客さまの未来をITで支援する」を掲げ、本バージョンアップにとどまらず、今後もお客さまのお声を取り入れながらSpace-Eを進化させていきます。ぜひ、新しくなったSpace-Eをご利用ください。
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