②肌の老化とスキンケア化粧品の基礎知識
私たちの体を覆う皮膚はとても大切な役割があります。しかし、さまざまな要因で肌のトラブルや悩みにつながることがあります。特に年齢を重ねることで現れる変化は気になりますが、適切なスキンケア化粧品を使うことが重要です。スキンケア化粧品は、誰もが安心して使えるように、多くの関係者が長い年月をかけて積み重ねてきた成果の結晶です。
※今日からモノ知りシリーズ「トコトンやさしいスキンケア化粧品の本」(日刊工業新聞社刊 2024年3月29日発行)
著者:江連智暢 様
皮膚の役割と肌の悩みについて
皮膚は何のためにあるの?
スキンケアが対象とする肌悩みを知るには、皮膚を理解することが大切です。では皮膚は何のためにあるのでしょうか。皮膚は体の表面を覆う大きな器官で、その面積は成人では1.6㎡、重さは3kgと全身で最大の器官です。これほど大きな器官を維持することは、体にとって負担となりますが、皮膚はそれだけ重要な働きをしています。
体の最外層にある皮膚は、体の内側と外側の境界として、外界から体の内側を守る重要な機能を果たしています。体の内側には水分が豊富にあるため、皮膚がなければ体はすぐに乾燥してしまいます。この「乾燥」を防ぐことも皮膚の重要な機能の1つです。また、皮膚は体の外側からさまざまな微生物や物質が入り込むことを防ぎます。この乾燥や異物の侵入を防ぐ機能を、皮膚の「バリア機能」と呼びます。
私たちが外界の物と接触するとき、例えば椅子に座るときや、物にぶつかったときに、皮膚はその強度や弾力性で体の内側を保護します。このような性質を皮膚の「物理的性質(物性)」と呼びます。そしてこの物性により、体の内側の構造を本来の位置に保持したり、体が動いたときに、それをしっかりと本来の位置に押し留め、体の外形を保持したりします。
さらに皮膚は、外部環境の変化に対応して体の内側の環境を維持します。外界の温度が上がると、皮膚から汗が出ることで体内の温度を一定に維持します。これは汗が蒸発する際に、熱が奪われるためです(気化熱)。一方で外界の温度が下がったときも、分厚い皮下脂肪層が断熱素材として働き、熱の放出を防ぎます。
このように、皮膚は体の中を保護し、体の外形を維持する大切な器官なのです。
さまざまな肌悩み
肌悩みにはさまざまなものがあります。肌荒れや乾燥のように肌の状態を指すものもあれば、肌のハリといった感触に関係するもの、肌の透明感のような感覚的なものなど、多岐にわたります。
年代によっても悩みの種類は変わってきます。20代では毛穴が目立つことや、肌が乾燥してかさつくこと、肌の透明感が低いこと、ニキビ、肌荒れなどの肌状態の悩みが上位となります。40代では乾燥や毛穴の目立ちに加えて、シミやくすみといった肌の色調に関する悩み、たるみやほうれい線、シワなどの顔の形状に関する悩み、若い頃に比べて肌のハリが低下したといった、肌の質感に関する悩みが多くなります。60代ではこの傾向がより強まり、色調や顔の形状に関する悩みが、より上位となります。このような加齢に伴う肌悩みの変化に対応して、使用するスキンケア化粧品も変えていく必要があります。
また、肌悩みは環境の影響も受けます。例えば乾燥しがちな地域では、肌荒れや小じわなど、乾燥に関連するケアが求められます。さらに、遺伝的な要因や、生活習慣などの影響でも肌悩みは異なります。そのため、個人の悩みに合わせたスキンケアの開発も進められています。
肌の老化とスキンケア化粧品
皮膚の老化と細胞の老化
加齢に伴い皮膚の状態は悪化します。これは「自然老化」と呼ばれます。さらに、さまざまな環境によるストレスが老化を加速します。その代表的な環境要因が紫外線です。この紫外線による皮膚の老化は、「光老化」と呼ばれます。
皮膚は加齢とともに薄くなります。これは、皮膚の主成分となるコラーゲン量が減少するためです。その要因は、コラーゲンを生み出す細胞(線維芽細胞)の機能が加齢で衰えることです。コラーゲンの産生が低下することで、皮膚の弾力性が低下します。
このように加齢により細胞は老化し、それにより皮膚の老化が進行します。細胞は無限に分裂して増え続けることはできません。細胞の分裂回数には限界があり、分裂回数をカウントして分裂をストップするシステムがあります。分裂の限界に達した細胞は、「老化細胞」と呼ばれます。
紫外線と糖化による老化
紫外線は皮膚の細胞にダメージを与えます。これにより細胞はさまざまな因子を分泌して「炎症」を誘導します。このような一時的な炎症が繰り返されることや、慢性的な炎症が続くことで、皮膚の老化が進行していきます。
また、血糖値の高いヒトは見た目の老化が進んでいます。その理由は、糖がストレス要因となり、タンパク質に結合してその状態を変化させてしまうからです。これは「糖化」と呼ばれる反応で、皮膚にも様々な影響を及ぼします。例えば、糖化により皮膚の透明感が失われたり、バリア機能が低下したりします。このように糖化は、生活習慣と深く関係する皮膚の老化の要因です。
スキンケア化粧品の成分と製造技術
スキンケア製品には多様な成分が入っています。主な成分は、水、油、高分子、有効成分などです。その配合目的は、使用性や機能性を高め、製品を安定化することです。
皮膚にうるおいを与える「水」は、スキンケア製品に必須な成分です。そして、皮膚に与えた水分を閉じ込めて蒸散を抑えるためには「油(油性成分)」が必要です。水と油を混ぜるために使われるのが「界面活性剤」で、混ざり合った水と油を安定な状態に保つために、非常に大きな分子である「高分子」等も使われます。さらに肌の悩みの予防や改善を狙った「有効成分」、日焼けを防ぐための「紫外線吸収剤」や「紫外線散乱剤」、製品に香りをつける「香料」、製品を長期間安定に保つための「防腐剤」なども用いられます。
このようにスキンケア製品は、性質の異なる多様な成分が均一に混ざり、長期間分離せずに安定した状態を保つよう作られています。スキンケア化粧品を生み出すことは、多くの技術と知識が結集した最先端のモノづくりなのです。
2号にわたって掲載した「スキンケア化粧品」は今回で終了します。次号から新しいテーマでお届けいたします。お楽しみに。
※記事内の写真はすべてイメージです
