人とシステム

季刊誌
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No.13 | 社長インタビュー
CAEテクノロジーで、地球を解く!?

略歴

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東京大学大学院
工学系研究科
システム量子工学専攻
教授 矢川 元基 様

学歴

1942年福岡生れ。
1970年東京大学大学院を終了
1984年東京大学 工学部 教授
米国ジョージア工科大学、独国カールスルーエ大学客員教授を歴任。
日本工学アカデミー会員。米国機械学会(ASME)フェロー。日本機械学会理事、日本原子力学会理事、日本応用数理学会副会長、日本計算工学会副会長、日本シミュレーション学会副会長を歴任。
科学技術庁計算科学技術推進会議座長、原子力安全委員会原子炉専門審査会委員など。
International Journal of Computational Mechanics(Springer-Verlag)編集長。
著書として「流れと熱伝導の有限要素法入門」(培風館、1983)など。

受賞歴

1992年日本機械学会計算力学部門功績賞
1995年計算理工学国際会議ゴールドメダル賞など。

研究分野

計算力学・原子力構造工学

はじめに

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日本MSC 社長
立石 様

立石 日立造船情報システムのお客様は、物づくりに携わっている方が大半です。最近、CAEという言葉があちこちで飛び交うようになってきまして、CAEをやっていないと物づくりに遅れてしまうのではないかという不安をお持ちになられています。

ただ、CAEを勉強したいがどのようにしたらいいのか、エンジニアを育てるにはどのようにしたらいいのかと悩んでいらっしゃいます。
CAEの第一人者の矢川先生に、CAEとはこんなもんだよとかいつまんで啓蒙を与えていただければ励みになると思います。

コンピュータの役割

矢川 CAEの基盤はコンピュータです。CAEはその上にちょこっと乗っかっているのです。コンピュータは、この10年で100倍から1000倍の進歩をとげるでしょう。そうすると、現在1時間かかっている計算でも、5年後では数分、10年後には数秒になります。今は、計算に時間がかかりますが、あっという間に解決されます。大変だというイメージを早く忘れて、先のことを次々に考えていくと、次の時代はすぐくるのです。

コンピュータの役割のひとつは、そろばんです。
そのコンピュータも、1台が数十億円もするようなウルトラスーパコンピュータがあり、一方で10万円のパソコンがあるなど、現在では極端に二分化しています。
その中でも私どもが注目しているのは、パソコンです。信頼性はUNIXワークステーションなどに比べるとちょっと落ちますが、コストパフォーマンスが非常にいいですね。これは大きな魅力です。パソコンは、5年前はCAEの利用マシンとしてはほとんど使えなかったのですが、今は、性能的にはUNIXワークステーションに匹敵する、場合によっては抜いていますね。そういう意味でパソコンの時代だと確信しています。
私たちの研究ターゲットは、パソコンを並列に並べて10億自由度*1の解析モデルを解くことです。今日の最高級のスーパコンピュータでは、1億自由度の問題を解くことができますが、いずれ1億自由度程度の問題でも、複数台のパソコンの構成で解けると確信しています。

立石 つまり、パソコンで1億自由度の問題が解ける時代がやってくるということですね。

矢川 そうです。パソコン 1台が今のスーパコンピュータに匹敵するようになるのはそんなに遠くないでしょう。CAEをやっておられる方は1億自由度なんて必要ないと言われるでしょうが、今までの歴史をみますと、10年ぐらい前は、10万自由度は必要ないと言っていたんです。ところが今は自動車会社などでは10万自由度程度の問題を日常的に取り扱っていますし、100万自由度、200万自由度が必要だと言われはじめています。

立石 先生が億の自由度を解くとおっしゃったのはどれくらいのパソコンですか。

矢川 1億自由度の問題を解くには、1テラフロップス( 1 TFLOPS = 1000 GFLOPS)のスーパコンピュータで数時間かかります。パソコン1台で1 GFLOPSぐらい出るでしょうから、1000台で1 TFLOPSになりますね。1台10万円で買えば、1000台だと1億円です。同じ性能のスーパコンピュータでは、30~40億円します。1000万自由度でよければ、数十台のパソコンでできます。私たちの研究室ではパソコンを30台ぐらいつないでテストしています。

地球を解く

田中 地球を解くというお話をお伺いしましたが。

矢川 有限要素法は、CAEのベースになっていますが、その手法をサイエンスの分野に適応させる、つまりサイエンスへのCAEの試みです。有限要素法は、工学から発達し、理学部の方もこの方法のよさにようやく気がついたのです。

私たちは、科学技術庁の「地球シミューレータ・プロジェクト」で、地球の環境問題、災害、地震などを含めて、地球規模の問題をシミュレートすることにチャレンジしています。観測も大事ですが、数値シミュレーションが非常に重要視されています。目的をはっきり限った国家プロジェクトで、5カ年計画で、今より100倍~1000倍速いスーパコンピュータを作ろうと、今2年目が終わったところです。
アメリカにも同じようなプロジェクトがあります。これは、核爆弾のシミュレーションです。国際条約によって核実験をするわけにはいかないですから、実験に代わるシミュレーションという方向で、同じような大規模な計算機を開発しています。

CAEの大衆化

矢川 もうひとつのコンピュータの役割は、知能すなわち人間の代わりをするコンピュータですね。それがこれからのCAEと絡まなければいけないと思います。

ここでCAEの大衆化ということになるのですが、CAEの大衆化は私も非常に重要なことだと思っています。パソコンを使える人は、すぐにCAEも使えるというふうになるのが、これからの方向だと思います。そのためには、CAEの仕組みの中に知能を入れていかないといけないのです。AI、エキスパートシステムは一時ブームになりましたが、最近は、エージェント指向*2もあります。いずれ知能の部分にいいものが出てくれば、データベースなどを含めて知的推論や支援機能を備えたシステムの方向性を考える必要があります。学問的な力学の概念をCAEを利用するすべての方々に勉強してもらうというだけでは無理でしょうね。

立石 無理なのか無駄なのかというと。

矢川 無理でしょうし、無駄ですね。

製品や金型製作などの製造業界の方々も、いろいろなところでパソコンを利用されていますね。パソコンの中がどうなっているのか誰も知りませんが、とにかくいろいろなソフトを自由に使っていらっしゃいますよね。
例えばWORDを使うときにマニュアルは読みませんね。まずやってみます。それで見よう見まねで覚えていく。
CAEも同じように、力学をお教えするというよりも、使い方ですね。力学を経験によって理解していただく。そういった形でないとCAEも多くの方々には受け入れてもらえないのではないでしょうか。

立石 CAEの目的自体が、人間が日常物理的に感じる世界を表現しようとするものですから、力学モデルも数学モデルもわからなくてもできるということですね。

矢川 そんなに多様な問題をやるわけではないでしょうから、少し変わるというようなことですと、だいたいのノウハウをある程度覚えていただければいいのです。力学は、時間がかかるし覚えきれないし、理屈ばかりをやっているといやになってしまいますからね。

木下 現場の方は、物に力を掛ければどのように変形し、どの程度のものかよくご存じです。

矢川 変形するところはメッシュを細かくするなど感覚的におわかりですよね。これはAI的なもので使いやすさを追求して後は機械的にできるようにする。経験と感で。CAEもそのような方向に持っていかざるを得ないと思います。

立石 CAEというのは元々難しくて数学の粋をいったような世界だと考えておられる方が多いですね。

矢川 それはアメリカの教育からきているのではないですか。アメリカの教育は、積み上げ方式で徹底して基礎から教えます。CAEのアメリカのテキストは、ある程度の人にはわかりやすいのですが。しかし、日本人というのは積み上げでこないですからちょっと違います。

立石 私は造船時代に設計を担当し解析もしていましたが、データを作って結果を出してきた人たちは、高校卒業の人たちです。当時では有限要素法の「ゆ」の時も知らない人たちです。要は、経験ですね。

矢川 これからもそれを徹底した方がいいのではないですか。さきほどの金型をやっている町工場の人たちにはそれしかないのではないですか。今のメッシュやエレメントやそういうのはちょっとやめた方がいいような気がしますね。

立石 力学の知らない人に、ノウハウをどのように教えるのでしょうか。

矢川 最初は経験から入って、少し慣れてくれば力学も勉強していただく。今とは逆の方向ですね。力学は大学院に入って勉強すればいいでしょう。

田中 先生がそのようなことをおっしゃるとは思わなかったです。

矢川 大学で何十年も教えてきてそう思いました。

立石 全国から一番優秀な生徒さんが集まっている大学ですよね。

矢川 それでも大学で一番いやがられますよ。ロボットを作ったりするのが学生さんは好きですよ。力学的な内容は一番嫌われますね。今のゲーム世代には、取っつきにくいですよね。

立石 我々はそのことをわかっているからそう言いきれるのですが、CAEをしようと思っても、先輩がいない場合ですね。

矢川 だから先ほどのAIやエキスパートシステムというのが先輩なんですよ。経験をコンピュータに入れておけば、ヘルプでそこに聞きにいけばいいのです。そうすると教えてくれる。その事例がいっぱいデータベースに入っていればですよ。先輩代わりですね。確かにおっしゃるようにCAEには先輩が必要です。

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HZS 金型システム事業本部
サイエンステクノロジー部
部長 田中

田中 エキスパートシステムのような。

矢川 そうですね。そちらに注入したほうが。大衆化にはその方向ですね。要はAIやエキスパートシステムがうまくいくかどうかということですね。

立石 データベースをどう構築するか、頭脳のところをどう考えるかですね。

矢川 そうです。特に日本人にはそっちの方がいいのではないですか。

立石 FEM、特にシミュレーションの世界では、モデル化が入りますね。本来ならば100節点でも十分だとか、5節点でもいいんだというところを、実際問題、全部モデルにして10000節点にしてしまって逆に問題になってしまうんですね。我々から見れば、5節点の方が簡単なんですね。ところが経験のない人から言えば、それは難しいのですね。逆に10000節点の方がいい。

矢川 よくわかります。それは、ボクセル*3がそうですね。ボクセルはCADデータを読み込んで勝手に切ってしまう。シェルとかめんどうなものは考えなくてもいい。それはコンピュータがただみたいになればできます。今はそこまでいかないですね。将来、1000×1000×1000切れればいいですね。

立石 先生が億の自由度というのは。

矢川 10億です。だから1000×1000×1000で、10億節点です。構造解析だとベクトルですからその3倍、30億自由度ができればそれこそボクセルの時代です。

田中 先生、モデル化というのは。

矢川 いらないですね。メッシュはいらない。CADから直接でますね。

木下 最近はソリッドモデラーになっていますので、リブやボスの薄い物は平気で自動メッシュにかけてしまいますね。

矢川 今はまだメッシュの時代です。メッシュはまだ10年はいると思います。ただ、10年先はもうメッシュはいらないと思います。当面は有限要素法、それからメッシュレスの方向で、その次は節点なし、CADから直ですね。

立石 先生が10億、20億の世界にチャレンジをされているもともとのベースは従来解けない物を解こうというチャレンジなのか、誰でも解けるようにするのか。

矢川 もともとは解けない物、地球のような物を丸ごと解く、圧力容器を細かいノズルだとかボルトなどを全部解けるようにしたいということですね。

確率論と決定論

立石 10億、20億、100億として、物を解く仮定において、外力系の問題、境界条件の問題、そう言う問題があるわけですね。一番正しいのはそのものずばりを解いてしまえばいいのですが、ある確率演算を持っている現象というのを一義的にするには、できませんよね。
裏返して話をしているのですが、そういうふうにしないと納得されないお客様もいっぱいいらっしゃいます。物理現象はこうなっているじゃないか。本質的じゃないと思います。

立石 荷重は確率論的には、話をしませんよね。でも、それもすべてある仮定の下に方程式がありますね。その仮定のところにどれくらいの信頼性があるのかというような議論になってしまったら。

矢川 そうすると今の基準体系を変えなければいけないと思いますね。基準体系を確率的な基準体系にしないといけないのです。産業によっては、確率論的な基準体系を入れ込みつつあるところはありますね。

立石 原子力などは。

矢川 原子力はまだまだ決定論的にやっていますね。それを確率論的にやりますと、10のマイナス何乗かで圧力容器が壊れる可能性がある。そうすると一般の人は認めません。それだけ小さい確率でも壊れるのかと言われますね。日本人は特にそういうことを心配します。
でも、合理的な西洋ではわりきってますね。例えば、癌の人が、薬の副作用と癌が治る確率を考えて、直る確率が1%でも多ければ西洋人は薬を飲みますね。日本人はそうはいかないところが日本文化の難しいところです。

立石 たとえば、疲労強度のシミュレーションを導入した場合、応力解析の精度、強度の問題があるわけですね。その基準はお客様が決めるものですよと言っても、理解してもらえないですね。エンジニアリング的にわかってくださいよ。と言っても無理ですね。それは決定論的に正しいのか正しくないのかという、はかない議論になります。

矢川 難しいですね。さきほどメッシュを10億メッシュ使ってもそういうことはまだ残っています。メッシュはある側面だけを見ているわけで、形というようなところだけですね。荷重も含めるとなると今のような話になってくるのですね。

CAEの将来

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立石 CAEの将来をどういう風にお考えですか。

矢川 CAEの利用の方から見ると、70年代は重工業です。高層建築、原子炉、船、飛行機ですね。80年代の半ばから自動車ですね。今私が見ていてかなりすごいなと思うのは、IC産業。これから量的にはわからないですが、発展するのは、食品、バイオ、薬品、化学、医療でしょうね。

田中 それはシミュレーションという意味でですか。

矢川 もちろんそうです。これからは老人介護でしょ。たとえば、漏れない、蒸れないおむつを開発するのに使うのです。そういう方向にきています。
これからはゆとりの時代で、産業とともに文化の時代です。売り上げという意味ではわかりませんが、スポーツ関係、レジャー、音楽の方にもかなり使われますよ。レジャー関係では、ゴルフのシャフト、テニスラケット、スキー、抵抗のないスイミングウェアをどうするかとかなどに相当使われていますね。

シミュレーションは実験の代替えとなりうるか

矢川 私たちが今、自動車会社と共同研究しているのは、操縦性の問題、操安性の研究をしています。
従来の意味の有限要素法とは違いますが、有限要素法+α、つまりニューラルネットワークなど、計算力学とニューラルネットワークの結合でそういうことができるのです。次に、物があるといろいろな力学とCAEが絡みますからコンビネーションつまり複合現象ですね。流体と構造と電磁場の問題、それは当たり前ですね。今CAEでは方程式さえ見つかっていれば何でも解ける時代になりました。

立石 昔はこの微分方程式だったら解けるとか解けないとかありましたね。

矢川 今はガラーキン法*4という手法がありますから何でも解けますね。これまで実験でやってきたことは90%はCAEに置き換わるということでしょう。

立石 メーカから見たとき、CAE利用のひとつのターゲットは、試作です。

矢川 試作は全部バーチャル試作に置き換わるでしょう。シミュレーションで。とにかく試してみることは全部。以前、立石社長が話しておられたように、バーチャルマニュファクチャリングの方向に行くでしょう。そして行き着くところは最適化ですね。一回一回やって壊して、また違う形を作って、ということをやらなくていいですね。

立石 船や飛行機の場合、そうしたシミュレーションには大きな価値がありますが、パーツや機能部品などは壊した方がはやい。

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HZS デジタルエンジニアリング
事業本部
営業部 部長 木下

矢川 それは、コンピュータのコストが実験の手間やコストに比べてまだまだ高いからですよ。経済の原理です。大手自動車メーカでも10年前は壊した方がはやいと言っていましたが、今はバーチャル試作をしています。

木下 ものを作る以上、試作というのはどの分野でも関わっていると思いますが、シミュレーションに置き換わるのは時間の問題だということですか。

矢川 シミュレーションの精度が上がってきて、信頼性も高かくなって、コンピュータが安くなれば、簡単なことです。

大学とベンチャービジネス

矢川 私の感覚ですが、ハードはとにかく安くなるので、ソフトをちゃんとしなければいけない。でも日本では解析ソフトを開発できる体制がないというのが困ったことですね。

立石 日本で解析のソフトを開発できる体制がないというのはどういうことですか。

矢川 つまり、大学とベンチャー企業とのビジネスの関係がよくないと思うのです。やはりソフトは大学で作って、それをベンチャーで商品化するということしかないのです。最近ようやく、通産省や文部省が後ろ盾になって、大学とベンチャー企業との関係をもっと強化していこうとする動きができつつあるようです。

立石 アメリカの大学のビジネスの世界とのかかわりが非常に強くなっていますね。

矢川 すべてそうです。Microsoftにしても、Netscapeにしても、大学の研究室で生まれたソフトです。

立石 日本には殆ど見られませんね。

矢川 それが大きな問題です。

立石 矢川先生が看板をあげられてベンチャーと一緒にやりますと門戸を開かれたらきますよね。

矢川 アメリカでは先生が自分で会社の社長になっていいわけですからね。でも、日本の国立大学の先生は、会社の経営者にはなれないのです。コンサルタント的なことはようやくできるようになりました。それができれば大学で作ったソフトをベンチャーと一緒に商品化できるようになりますね。

立石 そうあってほしいですね。

矢川 そうしないと日本でソフトを開発することはますます悪い状況になっていくでしょう。

立石 今おっしゃったように、ハードに関しては日本の技術は21世紀でもトップレベルにあるでしょうが、このままの状況ではソフトウェアの開発技術が心配ですね。

矢川 今後は、ソフトの価値が重視され、ハードの時代ではなくなるでしょう。

立石 今のインターネットにしても、ほんの7~8年前までは大学の先生が使われていただけでしたが、2~3年前から急激に普及しました。21世紀では、インターネットなしでは考えられないでしょうね。先生がおっしゃったように、今は100万自由度うんぬんしているけれども、1億自由度もすぐですね。

矢川 もうなりますよ。私たちは日常さまざまな形でコンピュータの恩恵を受けています。製造業も金融業もコンピュータ無しではどうにもならないでしょう。まさにコンピュータ様々ですね。

*1 自由度:(一般に物理モデルを有限要素法などの離散化手法でその現象を求める場合、モデルを有限個の要素に分割し、それら要素を構成する節点の移動量(変形や速度など)を求めることになります.)有限要素法を扱う場合では、自由度とは色々な要素タイプによって異なりますが要素を構成する節点に対して定義されるものです.例えば、固体要素と呼ばれる四面体要素、五面体要素および六面体要素を構成する各節点の移動量は3次元のベクトル量であらわしますから、自由度は、1ヶの節点につきX,Y,Zの3ヶの自由度を持つことになります.

*2 エージェント指向:例えば、「オブジェクト指向からエージェント思考へ」(著者:本位田 他、ソフトバンク社)を参照. 当事者がある種の手続きを要すとき、その手続きをスムーズにあるいは優位に行うために、専門家である代理人によって、手続きを行うケースがあります(例えばNewYorkヤンキースの伊良部投手など).ここでは、代理人として、人工知能を利用する、といった意味で使われています.

*3 ボクセル:ボクセルは、サイコロ形状(六面体)を意味します.つまり、解析モデルを大量のボクセル要素で形状表現しようというものです.これは、要素分割が非常に容易になる反面、形状精度のために大量のボクセルが必要となるため、結果として、10億レベルの自由度を扱う問題に遭遇するわけです.

*4 ガラーキン(Galerkin)法:物理現象を解く基本の方程式は微分方程式です.これを数値的に解く手法の一つとして有限要素法がありますが、この手法は微分方程式を別の形に、つまり等価な式に置き換える手続きを行います.これは数学的には変分法的なアプローチと呼ばれ、固体力学の分野で可能でした.ガラーキン法(重み付き残差法とも呼ばれています)が見出されて構造力学の分野以外でも適応することができ、有限要素法は飛躍的に発展することになりました.