人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.2 | システム紹介
ラピッド・プロトタイピング新商品「EOSINT」について
事業企画部 部長 前田寿彦

はじめに

製品写真

HZSでは、ドイツEOS社(本社ミュンヘン)の光造形装置「STEREOS」の販売を行ってまいりましたが、今回は、同社の新製品であるレーザー焼結法を用いた「EOSINT」シリーズのご紹介をいたします。

EOSINTの原理と利点

EOSINTは、従来一般的に光造形と呼ばれている光硬化樹脂をアルゴンなどの紫外線レーザーで固めながら積層していく方法とは違い、レーザー焼結法を用いたシステムです。

レーザー焼結法では、熱可塑性粉末材料を炭酸ガスレーザーの熱で一層一層焼結しながら造形していく手法です。(図1)

この方法の利点は、紫外線硬化型の液体樹脂を使う方法に比べ、材料の選択範囲が広く目的に適った樹脂を選択することができ、より速く、より低コストで試作部品を作成することが可能となります。

挿絵
図1

EOSINTの種類と用途

EOSINTには、EOSINT-P、EOSINT-MおよびEOSINT-Sの3種類があります。Pはプラスチック系材料、Mは金属材料、Sは鋳砂を表しています。

EOSINT-P

ポリアミド(ナイロン)とポリスチレンの2種類の材料が使用でき、340x340x590mmの大きさのモデルまで造形可能です。

ナイロンは非常に強度が高く、耐熱性もありますので、機能試験用の試作部品の作成に最適です。ポリスチレンは、ロストワックス鋳造法のワックスとほぼ同じ物性を持ちます。したがって、この材料で造形したモデルはそのまま通常のロストワックス工程に流すことができます。図2にナイロンで造形した掃除機のカバー、図3にポリスチレンで作ったギアボックスとロストワックス法で鋳造した試作部品を示します。

試作モデル
図2
試作モデル
図3

EOSINT-M

EOSINT-Mは、ブロンズ-ニッケルの合金粉末を焼結して直接射出成形金型を作るシステムです。造形サイズは250x250x150mmまでですが、この大きさは金型の外形になりますので製品はこれより小さいものになります。金型を作る工程はCADモデリングの後、EOSINT-Mで造形し、熱硬化型のエポキシを溶浸させます。その後磨きを行い、ダイベースに取り付けることになります。こうしてできた金型はアルミニウムとほぼ同じ強度を持ち、摂氏300度以上の耐熱性を持ちます。図4にEOSINT-Mで造形した電動工具のコアを示します。

EOSINT-Mは樹脂バインダーを使わず、金属粉末を直接焼結するところ、および焼結の際の収縮がほぼゼロであり精度の高いモデルが造形できるところに特徴があります。

試作モデル
図4

EOSINT-S

材料に鋳砂を用いることによって、鋳造の砂型を直接造形するシステムです。

造形後に、中空部にたまった砂を取り出すなどの砂落ちを良くするためチューニングがなされた材料砂を用いますが、通常のクローニング砂をそのまま使うことも可能です。砂型を作るまでの工程はCADモデリングのあとEOSINT-Sで造形し、オーブンまたは電子レンジで強度アップのためのポストキュアを行います。その後、注湯作業に入れます。

複雑な3次元形状が直接造形できるため、中子の省略や分割数の削減も可能となります。造形可能サイズは320x320x400mm と350x350x700mmの2種類のタイプがあります。図5にEOSINT-Sで造形した砂型とそれで鋳造したクランクシャフトを示します。

試作モデル
図5

おわりに

EOSINTシリーズは1995年からヨーロッパを中心に販売されてきましたが、1年で30台近くが販売されています。日本でも非常に高い関心が寄せられています。現時点では、まだ日本に装置が入ってきていませんが、EOSとタイアップしてベンチマーク等の受付を行っています。ご興味のある方は是非、弊社営業担当あるいは事業企画部までご連絡願います。