人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.24 | システム紹介
Darwinコラボレーションツールのご紹介
システム開発部 基本システムグループ
グループマネージャー 広崎 貴

はじめに

Darwinプロジェクトは、分散コンポーネントテクノロジーをCAD/CAMなどのシステムソフトウェアに応用する調査・開発を行ってきました。これまでに以下のようなコンポーネントを開発しています。

  • DFE Darwin開発環境
  • OpenG&Tソリッドカーネル
  • Darwin 3Dビューワ
  • フィーチャモデリング

現在Darwinの開発ターゲットである、「Darwinコラボレーションツール」、「Darwinインテグレーションツール」についてご紹介します。

1. Darwinコラボレーションツール

1.1 Darwinコラボレーションツール概要

Darwinコラボレーションツールは、CADデータなど3次元形状をネットワーク上で効率よく共有するコラボレーションツールで、Darwinコンポーネントを利用した分散アプリケーションシステムです。イントラネット、インターネットを利用して形状部品データのレビューなど、リアルタイム設計コラボレーション・ソリューションを提供します。

先行システムとしてRealityWave社のConceptStationなどがあります。Darwinコラボレーションツールはこれらのシステムと同様な機能をHZSのCAD/CAM製品群に付け加え、さらに先行システムにない特長を備えます。

グローバル化された現代の設計・製造の現場では、常に集合して打ち合わせをすることが可能とは限りません。厳しい競争の元では「スピードと結果」が強く要求されます。製品の成功と失敗を分けるのは、設計、加工の問題点を早期に発見し解決できるかどうかにかかっています。

国境を越えたサプライチェーンの現場ではもちろんのこと、企業内での設計・製造過程においても「最新の3次元データをすばやく共有する」ことが求めらるようになってきています。

Darwinコラボレーションツールは、設計者や加工担当者、マーケティング、広報担当者まで、設計・製造・販売にいたる全工程の関係者がインターネット、イントラネットを通して形状データをリアルタイムに参照し、それぞれの待ち時間や負担を減らすためのバーチャル・ワークスペースを提供します。

1.2 コラボレーションツールとは

Darwin画面
  • ワールドワイドにリアルタイム・デザインレビュー環境を実現
  • ビューの回転や注記、計測などをリアルタイムに他の参加者と共有
  • ネットワークに接続した設計・製造・販売部門の参加者が同じ設計モデルや資料を共有

1.3 特長

・読み込みデータ

広く流通しているParasolidのx_tファイルを読み込みます。Space-Eモデルファイル等その他のCADデータについてはトランスレータを利用します。
今後のバージョンで各種フォーマットのダイレクト読み込みやXML経由での読み込みを対応していきます。

・倍精度寸法計測

リアルタイムコラボレーション時にはリモート参加者も高精度なCADデータを参照することができます。

・カスタマイズ性

Darwinインテグレーションツールと同じ開発ツールで作成されておりは拡張性に優れています。C#、VB.NETなどの標準スクリプト言語によってカスタマイズ、拡張が行えます。

・セッション

3次元データの共有・表示機能は、コラボレーション招集者が明示的に指定した参加者によって構成される「セッション」というグループを基にして実行します。

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

・ネットワーク透過性・セキュリティ

必要であればインターネット経由で他社の、他国のメンバーが、イントラネット内の他の参加者と同じ操作環境で参加できます。
また、インターネットへの接続速度が遅い場合でも最大限の性能が出るように工夫されています。モバイルPC利用環境で利用したい場合にも対応しています。

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

・3Dストリーミング

Darwinビューワコンポーネントでは、米国Tech Soft America社の「HOOPS」を採用しています。HOOPSが提供する技術のひとつに、「3Dストリーミング」があります。

ブロードバンド時代といわれる昨今においても、3Dデータの配信時に無作為に送ろうとすれば良いレスポンスは得られません。

「3Dストリーミング」はこのような要求に応えて3次元表示データの圧縮と配信を行います。

さらに「OpenHSF」という3Dストリーミング技術の標準化作業と仕様公開がなされ、仏ダッソーシステム社、米スペイシャル社らが参加し推進しています。今後業界において普及していくことでコラボレーションツールの応用も拡がります。

2. Darwinインテグレーションツール

2.1 Darwinインテグレーションツール概要

Darwinコンポーネントや製品の機能とWebサービスなどの機能を統合して呼び出すことのできるツールキット群です。

Darwinインテグレーションツールは下記のコンポーネントによって構成されるシステム開発ツールです。

  • DFE(Darwin Framework Environment)
  • Darwin 3Dビューワ
  • OpenG&Tソリッドカーネル

2.2 DFE/Darwinフレームワーク

Microsoft社が推進する.NET戦略の中でWEBサービスを中心にしたネットワークシステムの開発インフラとして .NET Frameworkがあります。

DFEはこの.NET Frameworkを利用し、DFEを利用するアプリケーションが容易にWEBサービスを利用できる開発フレームワークです。

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

DFEではWEBソリューションと既存のリッチクライアント双方の利点を生かすべく設計されています。

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

2.3 Darwin 3Dビューワ

表示部分にHOOPSを採用することにより、優れたパフォーマンスを実現するだけでなく、新しいハードウェアやOSに対してすばやく堅牢な対応が可能となりました。

2.4 標準インターフェイス・ソリッドカーネル

この分野は実はHOOPSなどの進める3D表示分野以上に標準化が望まれつつも技術的な問題、企業間利害の問題などによっていまだに実現されていません。

Darwinでは「Open Geometry&Topology」としてCOMインターフェースを規定し、再度この問題に取り組みました。

おわりに

「Darwinコラボレーションツール」は2002年度での商品化を予定しています。

「Darwinインテグレーションツール」はインテグレーションビジネスの場面でご利用いただけるよう整備、拡張していく予定です。