株式会社ナカキン様は、信頼の技術をモットーとし、自動車のエンジン関連(インテークマニホールド)、サニタリーロータリーポンプの分野において広く活躍されています。
また同社は早くから造型技術に目を向けられ、光造型・粉末焼結という特殊な分野ながら蓄積された技術・経験を生かし、砂の自社開発、ノウハウを確立され、すでに実務レベルで光造型・粉末焼結を使用して試作モデルの製作に大きく役立てられています。
今回は、砂型用レーザー焼結システム (EOSINT-S)を使っての試作品製作のお話を中心に、取締役副社長 中村好孝様、エンジン研究室 課長 植杉浩様にお話をお伺いしました。
事業概要

中村 好孝 様
当社は軽合金・産業精機・金型の3事業部で構成されています。
本社を新大阪、工場は枚方・枚方春日・鳥飼の3ヶ所、営業所が東京にあります。
さらにインドネシア・ジャカルタにも自動車関連部品を製造している工場があります。
鋳物関連の会社ですが、従業員の平均年齢が35歳で、この業種としては比較的若い人が多い会社です。
ここ春日工場ではインテークマニホールドを中心に自動車用エンジン関連部品の量産を行っています。
金型の設計・製造部門も別工場にあり、開発・設計から生産までの工程を全て自社で行っています。
また、それに関連する試作品も製作しています。
その他に食品・医薬品・ファインケミカル用サニタリーロータリーポンプの製作なども行っています。
EOSINT-Sの導入にあたって
■3次元化と同時に光造型の導入

課長 植杉 浩 様
金型の分野は先行して3次元化に取り組んでいましたが、1993年に全社的な取り組みとして3次元化に着手しました。
3次元でのCAD/CAMの取り組みの中で、そのデータを利用して形状確認を行うために同時に樹脂ベースの光造型を導入しました。
この点が他社とは違っていると思います。
当初はRP(Rapid Prototyping)を事業としてではなく、社内で鋳造方案を立てる場合や加工の形状確認などに利用するために導入しました。
その後「形状確認だけでは勿体無いので、機能部品としても使えないだろうか」というお客様からの要望があり、機能部品レベルでの事業化に取り組んでいくことになりました。
■導入の背景
EOSINT-Sについては1995年頃から紹介して頂いていました。
造形可能サイズに制限がありますので少し躊躇しましたが、造型機という特殊分野の機械ですから多少の問題は許容範囲だと考えていました。
我々は1993年から樹脂ベースでの光造型に取り組んでいて、導入に当たっての多少の問題はクリアできる自信がありました。
現在では、新しいデザインを要求されるスピードは加速しつづけていますし、メーカはより速く、より安く、より正確に新たな製品を生み出す必要に迫られています。
そういったニーズに応えていくために2000年3月に最初の1台を導入しました。
その後、毎年増設し、現在は計3台が稼動しています。
樹脂からの金属化
樹脂では量産品と強度や素材が違いますのでイコールにはなりません。
それを近づけていくには、早いうちに試作品も金属化していこうという考えがあり、金属化の取り組みをこの2年ぐらいで行ってきました。
3次元データを元に造型のためのスライスデータ処理を行います。
コーテッドサンドを利用した焼結法では、スライスデータにしたがってCO2レーザを照射させることによって粉末を焼結させ、立体モデル即ち鋳型を作成します。
一方、金属粉末を焼結させて立体モデルを作成する試作品開発システムも確立しています。
これにより、金属粉末の焼結による耐久性に優れた機能部品にも対応できるようになりました。
基礎開発から量産までを自社内で一貫して行える仕組みが確立しており、試作品を作成しているだけではないというところが当社の特徴だと思っています。
試作品の結果をどのように量産品に反映させて近づけていくかを常に考えています。

インテークマニホールド

インテークマニホールド
導入から運用に至るまで
導入後すぐに造型できるようになりましたが、EOSINT-Sの造形可能サイズ(720×380×380mm)以上のものを造形するには新たな開発ノウハウが必要となり、自社開発を色々と行いました。
また、メーカの砂では造形品を取り出すときに壊れてしまったり、はがれてしまう、くっついていないなどの問題があって砂の自社開発に踏み切りました。
1年後には納得のいく寸法レベルにたどり着き、今では期待通りの結果となりましたし、ここ1年は実務レベルでも問題ありません。
以上の問題をクリアできていることが当社の先行しているところだと思います。
また、自社開発した砂についても販売を考えています。
砂が搬送されないなどの機械的な問題もありましたが、自社で対応し、今では24時間フル稼働しています。EOS(EOSINT開発メーカ)もここまでの高稼働は予想していなかったでしょうし、スペック外なのかもしれません。
ですが当社では人手をかけず24時間安心して動かすには何をしたらいいのか試行錯誤してきました。
2001年3月頃から今に至るまでほとんど機械を休めることなく動かし続けています。
今後ともこのシステムは拡大していくつもりです。
RPでは「試作用として形状確認が出来れば良い」という認識をされているところが多いかもしれません。
しかし当社の場合、機能部品としても考えていますので、認識の違いがあると思います。

導入の効果
■導入の効果
鋳造品の試作としては、驚くほどの速さで製作できていると思います。
現在ではインテークマニホールドの試作品も1週間程度で製作することが出来ます。
粉末焼結による造型技術は鋳造品を作成する上で画期的なことだと思います。
形状内に中空をもった形状に関しては、工法としては限られていますが、その中でもRPは他を圧倒していると思います。
従来のNC工作機で不可能だった中空形状、複雑な3次元曲面、フィン、螺旋形状が可能になりました。
これらの造型品は、形状確認用のモデルはもちろんワーキングモデル、機構部品、サンプル品、加工用マスタとしても使用できます。
しかも造型品はエンジン試験を始め様々な試験に使用することも出来ます。
RPの導入の効果としては、試作品の精度向上 / 開発期間の短縮 / 開発コストの低減が挙げられます。
従来とは比べ物にならないほど速く、無駄のない開発が出来るようになりました。

■今後の取り組み
今後はさらに短期間で試作品を製作できるように取り組んでいきたいと考えています。
現在は12名で取り組みをしていまして試作品で効果を挙げ、いかにして量産品に結び付けていくかを考えています。
試作と量産
国内の自動車生産においては、試作と量産は切り離されて作業していました。
そうなってくるとせっかく試作で苦労した箇所が量産に反映されない場合があります。
当社の場合は全ての工程を自社内で行っていますので上手く連携が取れてそれぞれの工程に効果があると思います。
試作でおこった失敗は必ず量産にも生かされます。こういった部分が非常に大事だと考えています。
HZSについて

RPという分野を世界レベルで見てHZSの情報量を生かしたアドバイスを頂ければと思っています。
我々も協力したいと思いますし、双方で色々なことができればと思っています。
HZSとはCAD/CAM部門と合わせて考えると1987年頃からの付き合いになります。
工数も含めてこういった厳しい時期なのでこれからも、色々と相談にのってい頂ければと思っています。
おわりに
お話をお伺いし、ひとくちに造形技術と言っても様々な工法があることがわかり大変勉強になりました。
また、EOSINT-Sの導入から運用までに色々な取り組み、自社開発、ノウハウづくりをされている研究熱心さに関心させられました。
大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
会社プロフィール

株式会社ナカキン
住所 | 大阪府枚方春日北町2-10-5 |
---|---|
創業 | 1950年 9月 |
創立 | 1964年 3月 |
資本金 | 8,400万円 |
従業員 | 400名 |
事業内容 | 自動車エンジン部品(自動車エンジン部品マニホールド)の開発生産、金型製作、サニタリーロータリーポンプ、ブレンダーなどの製作・販売 |

(インテークマニホールド)



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