日本ぱちんこ部品株式会社様は、創業から35年余、常にたゆまぬ努力と挑戦を続けて蓄積した高い技術力により、巨大マーケットのパチンコ業界をリードする牽引者として、名実ともに確固たる地位を保ち、更なる成長を続けられています。また、「ISO9002」の認証を取得されるなど、品質管理を経営の最重要課題として捉え、積極的に改善と向上を目指しておられます。
今回は、IronCAD導入の背景、IronCADの利用、導入後の効果、今後の課題などを中心に、技術部 資料課 課長 乾聡司様にお話をお伺いしました。
事業概要

課長 乾 聡司 様
パチンコ機を彩るさまざまなプラスチック製の部品を、役物(ヤクモノ)といいます。当社は、このパチンコの顔とも言える役物を中心に、パチンコの周辺機器のデザインから企画・開発・設計・製造までを一貫した流れの中で行っています。現在日本には21社のパチンコメーカがありますが、当社ではそのうちの11社に製品を提供しています。さらに、近年ではホールへ直接販売する商品の開発にも取り組んでおり、全国1万6000件余のパチンコホールへと出荷されています。ユニークなアイデアの役物から、ハンドル・受け皿・裏側の玉払出装置まで各種部品を提供し、業界内には「にっぱち」の名で知られています。
IronCAD導入の背景
■パチンコ部品の製作の流れ

パチンコ台を作成する場合、パチンコメーカ側から最初にこのようなコンセプトでアイディアを出してください、というデザイン依頼があります。部品メーカは、そのコンセプトに基づいて数種類のデザインを用意します。パチンコ台についているすべての部品を、1つの部品メーカで製作するとは限りません。センター部品はA社で、電動チューリップとサイドランプはB社で、というようにパチンコメーカが各部品メーカに振り分けを行います。部品メーカは、受注した部品について詳細設計し、試作品作成、金型の発注、成形、組立をして完成させます。場合によっては、A社がデザインした部品をB社が製作するということも起こり得ます。
■部品の届出資料
パチンコの新部品を市場に出す際には、保通協(保安電子通信技術協会)へ届出をします。多くの資料を提出し、認可が下りて初めて役物を市場に出すことができます。資料には、形状デザイン、寸法、玉の入りやすさ・大当たりなどの確率、動く部品であれば機構の説明などがあります。私達部品メーカは担当した部品の図のみをパチンコメーカへ提出します。そこへパチンコメーカがいろいろな説明文を付加するのですが、最近はこの説明文も部品メーカで作成してもらえないかという話が出てきています。今後は移行されていく可能性もあります。
このようにたくさんの資料が必要なのは、パチンコがギャンブル性があるからだと思われます。プレイヤー側にもお店側にもお互い平等になるように、むやみと出る台は良くないし、全然出ない台も良くないという理由から、チェックを厳しくしているようです。
■資料課の発足

設計には2次元CADを使用していますが、届出資料には斜視図が必要です。他社の3次元CADにも視点変更の機能はありますが、マスターするまでに時間がかかり、使いこなせる人が少ないのが実情です。斜視図の知識のある設計者は、3次元CADを使用せずに2次元CADのみで描いていました。
今までは、設計者が設計終了後に届出資料を作成していましたが、やはり設計者は設計に専念してもらいたいとの理由から、2000年9月に資料課が発足しました。
その時期に偶然、商社からIronCADを紹介してもらい、初心者でもすぐに使える簡単な操作だったので導入を決めました。その後の届出資料の約半分は、IronCADで作成しています。現在は資料課で3台、デザイン課で1台、特許課で2台、設計課で6台を使用しています。
IronCADの利用
■デザインの図面化
基本的に、ほぼデザインが決まったデザイン画を元にして設計者が図面化を行います。設計上、部品の動きは、主に正面・側面等から見た軌跡を考えればよいので、現在はまだ2次元設計が主流です。
時間に余裕がある場合や、3次元にしてみなければ動きがわかりづらい部品がある場合には3次元設計を行っています。設計課にもIronCADを導入したので、徐々に活用していきたいと思っています。
■短納期の資料作成
試作品を作成してメーカに了承を得ると、金型を発注して実際に成形します。ヒケやバリ等の問題をクリアして、完成品に近づくと届出資料の準備に入ります。この時点で設計はほぼ完了していますので、すぐに資料を作成してサンプルを出さないといけません。資料課には比較的短納期で資料作成の依頼がきます。
また、パチンコ台のモデルチェンジは数ヶ月です。プレイヤー次第なので、人気のあるモデルは長期間の需要がありますが、逆に飽きられた場合はすぐに新規モデルに交換されてしまいます。
届出資料の他にも、量産用の社内資料を資料課が作成しますので、いつも時間に追われる作業となります。
■IronCADによる対応
ほとんどの役物は複数の部品で構成されています。届出資料は最終的な製品の状態、いわゆる組立図の三面図に主要寸法をつけた図面を作成します。斜視図も必要です。部品の裏側から見た図が必要になることもあります。動きのある部品の場合は、動く部分のみを表示してまわりの部品は省略し、機構説明をする動作原理図を作成します。ですから、構造が複雑になればなるほど、提出図を何パターンも作成することになります。
この作業を2次元CADで行った場合、すべての図面を1枚1枚描くため、とても膨大な作業になります。隠線処理も手作業で行わなければいけません。IronCADで一度3次元データを作成すれば、見る角度を変更して表示するだけで対応できます。隠線処理も自動的にできます。社内的に量産のための分解図も必要としますが、組立図も分解図も容易に作成できます。そのため、資料課ではIronCADをフル活用しています。
IronCAD導入による効果
■資料作成の効率化
資料作成にかかる時間が、ずいぶん短縮されました。やはり簡単に斜視図が作成できることが時間短縮につながっています。また、IronCADは他の3次元CADを使用したことがない初心者でも、短期間でマスターして操作できるようになります。形状を自由に伸ばしたり縮めたりして感覚的に操作でき、最終的に数値入力で調整します。その操作方法が、最初から固定寸法で描いていくのとは違い、とてもわかりやすいです。
■カタログの登録
カタログ機能も効果的です。シェイプをドラッグ&ドロップで持ってきて置くだけという容易な操作が魅力です。基板上のコネクタなど、よく使用する部品は汎用品としてカタログに登録しています。

■図面のチェック
2次元図面を元にIronCADで作成すると、寸法漏れや図面のつじつまが合っていないところを発見できます。
■干渉の早期発見
2次元図面ではわからなかった干渉チェックができるようになり、現場でのやり直しが少なくなりました。
■営業活動への利用

パチンコメーカにアイディアを売り込むときに、従来は紙面上の絵を見ながら言葉で玉の流れなどの構造を説明していました。IronCADで設計するとアニメーション化して実際に動いているところを見ていただけるので説得力があります。IronCADを使える人が増えてくれば、このような使い方も増えてくると思います。
要望
■サーフェイス機能の強化
最近は凝ったデザインのものが増えて、特にセンターの液晶まわりは複雑な自由曲面形状になってきています。部品点数は以前とあまり変わりませんが、曲面はサーフェイスを得意とする他の3次元CADで作ったデータをインポートする際、データ変換時にエラーが出やすく、工数が増える傾向にあります。IronCADで自由に曲面がはれるようになってほしいです。
現在は、Rhinocerosと連携させて使用しています。IronCADの操作の容易さでサーフェイス機能が強化されれば、かなり便利になります。
■2次元機能の強化

ほとんどの場合、完成した2次元部品図からDXF変換してIronCAD上に持ってくるのですが、手直しをしたいときなどには2次元機能が弱いです。稜線表示の工夫もしてほしいです。簡単な形状なら最初からIronCADで2次元図面を作成したい場合もありますので、少し不便さを感じます。
今後の課題
■デザインの3次元化
現在、デザインは2次元上で想像上の光沢や影をつけています。IronCADで手軽に3次元化し、レンダリングを作成すれば、本物同様の凹凸による光り具合や影のつき具合が表現でき、アピール度が上がると思います。
■アニメーションやビューワの活用
アニメーション機能をもっと活用してパチンコメーカへのプレゼンテーションに利用したいです。また、ビューワを使用して、製造部署と3次元データを共有できれば、自由に回転させながら部品を見てもらえるので、紙の図面よりもイメージが伝わりやすくなります。
■部品のデータベース化

社内資料として、部品名、材質、個数などの部品一覧表を作成していますが、現在は図面と分離した状態です。今後はカスタマイズして、部品表とIronCADをデータベース連動できるようにしていきたいです。
おわりに
2次元で設計を行い、3次元の資料を作成するという利用方法が、最初は特殊なケースだと思いましたが、ギャンブル性があるからこそ品質管理がとても厳しく、詳細な資料が必要だというお話は興味をひかれ、大変勉強になりました。
お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
会社プロフィール

日本ぱちんこ部品株式会社
本社 | 愛知県名古屋市名東区牧の里3-803 |
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創業 | 昭和41年12月1日 |
資本金 | 3,000万円 |
従業員 | 110名(男子67名、女子43名) |
売上高 | 40億6,100万円(平成13年7月期) |
事業内容 | 遊技機用プラスチック製品の開発・設計・デザイン・製品販売、ホール向け用品の製造販売 |




