空研冷機株式会社様は、冷却塔の製造拠点としてさまざまな技術開発と生産体制の確立にチャレンジされています。常に、高効率化、コンパクト化、メンテナンスの容易さ、省エネ化によるランニングコストの低減、耐久性の向上など、さまざまな顧客ニーズに対応すべくたゆまぬ努力を重ねられています。
今回は、自動承諾図システムの導入の背景、その後のご利用と効果についてのお話を中心に、代表取締役社長 成清重信様、技術部 営業設計課 課長代理 加来宏明様、係長 高原伸敏様、係長 安井洋様、技術部 生産設計課 係長 櫛野秀樹様、にお話をお伺いしました。
事業概要

成清 重信 様
私どもは冷却塔の専門メーカです。空調用の冷却塔を得意としていまして、そのシェアは推定40%です。
最初は、今では考えられない孟宗竹を半分に切ったようなものを充填物に使いまして、米軍の空調からヒントを得て、空研工業の先代の社長が空気調和研究所という形で起こしたのが、我々の会社の始まりです。当社、空研冷機は空研工業の子会社で、開発、設計、製造、それから現地までの搬入を受け持っています。
自動承諾図システムの導入背景
■合併による情報一元化
現在の空研冷機は、平成9年2月にもとの空研冷機と空研電機が合併した会社です。それまで、開発設計、管理が空研冷機で、製造が空研電機という形で分担していましたが、生産指示の問題、納期の確保、最終的な確認をするための承諾図などの質が問われていました。そこで、合併する前の平成8年ころから情報を一元化して設計すれば、そのデータが基本的には承諾図になり、生産指示にもなるのではないかとずっと考えていました。機種の標準化、自動作図など出力を含めて情報を一元化するためには、まず機種を減らすことが必要で、その機種を減らすための考えや、営業が工場の状況を見ることができるようになるメリットを含めたレポートを本社に5回提出していました。
それが合併した際に、情報一元化の計画を進めることに繋がり、いろいろ思案しながら新商品98シリーズの開発に合わせて実施することになりました。
■営業マンの要望
営業マンは各支店にいまして、どの案件も急いで承諾図を必要としていました。ですから短納期の依頼件数が多いため、営業マンの要望になかなか応えられないというのがありました。設計者は、土、日も対応し、あるいは営業マンの支店に常駐してフォローなどしていましたが、出てくる要望に応えきれないため、これでは商談の機会を無くしているのではという思いもありました。
■選定プログラムの作成
我々の製品は、屋上など限られたスペースに収めますので、どうしてもお客様特有のスペックがあります。ですが、基本的な製品もあるので、その固定の部分は優秀な設計者がその都度計算するのではなく、コンピュータに任せようと考えました。これで、設計者は経験と感性が必要な変動部分の設計に専念できるため、他メーカができないスペックにも即挑戦、対応できるようになる訳です。

係長 安井 洋 様
まず、お客様のスペックを受けて基本設計ができる選定プログラムを独自に作成し、誰でも同じものが選べ、基本設計できるようになりました。現在は、全体の80%を基本設計できるようになっています。選定プログラムがないときは、個々でいろいろな設計をしていたので、製品の仕様が一定ではありませんでした。
この選定プログラムも98シリーズが転機でした。製造指示の変更と選定プログラムの作り直しと、ある程度自動承諾図を頭に入れて、データベースの構造から全部を作り直しました。もうひとつ大きな項目として、98年以前はオフコンを主体に処理していたのでパソコンへの移行もありました。
このとき、生産の形態もシリーズを変えた時点で、中国外注を視野に入れていました。
しかし、98シリーズはうまく軌道にのりませんでした。機能を絞りすぎたため、営業の要求に応えられなかったのです。そこで、2001年の01シリーズは営業の要求に応えられるシステムに独自で改良しました。
自動承諾図システムの導入
■HZSへ開発依頼
98シリーズではAutoCADで承諾図を自動作図するだけのシステムを作りました。各支店にそのシステムを設置して管理者を置くことを考えたのですが、管理できるかが問題でした。

課長代理 加来 宏明 様
また、当初から情報の一元化を目指し、例えばの話ですが中国、オーストラリアでも同じレベルの仕事ができるように一直線で繋げていくことを目指していましたので、本当にこの仕組みでいいのか疑心暗鬼になっていました。丁度このときに、HZSからWebを使った仕組みのデモを見せてもらう機会があり、これが本当に目指していたものだと確信しました。それから01シリーズを目標にデータベースとリンクさせ、Webを利用した自動で承諾図を作成する自動承諾図システムをHZSへ開発依頼しました。2001年8月の01シリーズで、選定プログラムから自動承諾図システムまでの一連の流れが完成しました。
■システム概要
まず、利用者が選定プログラムで客先の要求するスペックを入力すると、価格や設置の条件によって冷却塔のサイズが決まり、該当する数機種が自動的に表示されます。その中で最もマッチする機種を選びます。機種を限定したら、次はお客様が要求するオプションの入力です。冷却塔は少量多品種で非常にオプションの数が多く、年間製作する冷却塔で同一のものはほとんどありません。オプションは手摺、ダクト、エルボ、チャンバー、ヒータ、凍結防止用の配管など数多くありますので、それを要求に応じてトッピングしていきます。仕様が決定されますと見積もり金額などが自動計算されます。

本社にあるデータベースサーバはIP-VPN(Internet Protocol Virtual Private Network)で空研工業の各支店、営業所と繋がっていますので、選定プログラムでそれらの情報を登録します。
次に選定プログラムで自動作図ボタンをクリックすると自動承諾図を作成するためのWebブラウザが立ち上がります。そこで、選定プログラムで登録したデータに基づいてサーバ側のAutoCADで塔体とオプションを作図し、その結果が利用者のWebブラウザに表示されるので、利用者は表示された承諾図をプリント出力するという流れです。
自動承諾図を作るためのデータはブロック図と呼んでいますが、ぞれぞれのオプションに応じて全部データ化しています。

効果について
■クレームや問い合わせ時間の削減
品質という面で効果がありました。営業マンが手書きで一部付け加えたり、削除したりという不確定な情報が発注図面としてきていました。そのため、いろいろな情報の見落としや、お客様とのやり取りが設計者にうまく伝わってこずにクレームになる場合もありました。それが共通データで指示できるので、クレームが無くなり、営業マンに図面について問い合わせをしていた時間やその作業も削減できました。
■図面枚数の増加

係長 高原 伸敏 様
現在、営業マンが自動承諾図システムを使って作成する図面の枚数は1ヶ月平均5~600枚です。先月、735枚という最高記録を出しました。これを設計者がCADで作図していたら大変なことです。その分でも効果は大きいと思います。自動承諾図システムを導入する前は、支店でも作図していましたが、設計で作図していたのは1ヶ月300枚弱ぐらいです。今は、自動承諾図システムで作成した図面を設計者が修正している図面になります。
■意思統一
自動承諾図システムが入る前は、標準図としてオプションのない冷却塔の図面を各支店、営業所に配っていました。それを基に営業マンがオプションを加えていましたが、きちんと線を引いてくれる場合はいいのですが、書き方が悪い場合は要求事項が理解できないことがありました。それが、自動承諾図システムを使うことで、手書きが無くなり、非常に整理された図面になり意思統一も簡単にできるようになりました。
■質の高い設計ができる
これで設計者は楽になると思ったのですが、実際にはお客様の要求には厳しいものがあり、それほど楽にはなっていませんが、以前に比べ、質の高い設計ができていると思います。また選定プログラム、自動承諾図システムを使っていなければ、とうの昔にパンクしていたと思います。
■生産指示に直結
承諾図のオプションは生産指示に直結しているので、これがまた大きなプラスです。今までは設計者が、いろいろな入力をコーディングシートに手入力して、それを打ち込んで転記していたので、転記ミスも発生していました。それが、データベースに登録された同じデータを生産指示に使うので、転記処理が不要になり、品質が保持できています。
■お客様と約束できる
営業マンが自分で承諾図を作成できるので、お客様の所へお伺いする期日を約束できるようになりました。これは営業にとって非常に大きなメリットです。今は、市況が冷え込んでいるため、効果として表面に出にくいですが、営業マンがお客様と約束し、お伺いできることに関しては非常に大きなバックアップになっていると思います。
今後の展開
■お客様との打ち合わせ
このシステムをもっと活用していきたいと思っています。まだ営業マンが、楽になった、お客様の所にお伺いしやすくなったというレベルだと思います。これをもう一歩進んで、お客様に満足してもらう、顧客中心に考えてグレードアップする必要があると思っています。最終的には、お客様との打ち合わせの時点で承諾図が示せて、その価格も提示でき、変更追加があれば納期、価格の変更が、その場言えれば一番良いと思っています。そこまでするには、またセキュリティの問題や社内的な壁がありますが実現させることが目標です。
■自動承諾図システムのアップグレード
もっと自動承諾図システムで出力する図面を増やしたいと考えています。変動の部分でも繰り返し要求されるものを固定化し、ブロックデータを増やしていきたい。お客様毎の傾向というのがありますので、たとえば、工場用の冷却塔には必ず安全対策で手摺とか水質を良くするために水処理装置が付くとか、そういうものを想定して処理できるように、データを社内で増やしていくことが必要です。このことも含めて、自動承諾図システムをアップグレードし、最初にも言いましたように、当社の設計者は他メーカができないようなアイディアを練り、提案することに専念していきたいと考えています。
■変動と固定の切り分け
外形図の固定と変動をしっかり切り分けて、固定化したところは絶対動かさない、また変動のところは無理に押し込むのではなくて、別データで作成して後で付加するように是非してほしいと思っています。固定の部分で変更した場合は、修正した部分にいろいろな条件パラメータを含めて追加してき、少しずつ自動化していきたいと思っています。ですから、固定については素早く、変動については質を上げていくことに特化してもらいたいのです。
この自動承諾図システムの使い方をもっと考えれば強力な武器になると思っています。
■選定プログラムをWeb上で動かす

櫛野 秀樹 様
現在、選定プログラムは、各支店にソフトを配布して各々管理していますので、各支店でバージョンが違うなどの問題がいろいろあります。それを解消するため、自動承諾図システムと同じようにWeb上で選定プログラムを動かすことを考えています。これが成功すれば、空研のホームページに公開し、外部から外形図を選定して自動承認図のデータをDXFかDWGでダウンロードすることを考えています。そうすると、設計事務所の最初の設計図面に配置してもらうということができます。
設計事務所の図面に空研の冷却塔と名前を盛りんでいただければ、その後の営業展開が有利にできます。
HZSについて
最終的には3次元化して製品の収まり検討をしたり、製造にそのままデータを流したいと考えていますので、アセンブリを主体とした3次元CADを含んだ提案をHZSに期待しています。また、ブロック図作成でも助けていただきたいと思います。
それから、我々はIT関係の専門ではありませんので、IT関連の情報や世の中の動向、方向性などいろいろな情報をHZSからいただければ、もっと考え方が広がっていくのではないでしょうか。
おわりに
ISO9001、ISO14001を認証取得され、品質、環境に関しても常に高い水準の機能を追求されています。今後も他メーカにはできない技術を確立され前進されることと思います。
大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
会社プロフィール

空研冷機株式会社
本社 | 福岡県鞍手郡宮田町大字芹田586番地 |
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設立 | 昭和38年11月22日 |
資本金 | 338,250,000円 |
従業員 | 107名 |
年商 | 35億円(平成13年) |
事業内容 | 冷却塔、送風機、空調設備用機器の開発、設計、製造、搬入 |




