コマツキャステックス株式会社様は、国内でのEOSINT-Sの1号ユーザ様です。
早くからEOSINTを導入され、サービスビューロとして独自のノウハウを確立し、短納期・低コストを常に追求され、お客様の要望に柔軟に対応されています。
今回は、EOSINTの導入の背景、導入後の運用などについてのお話を中心に、氷見事業所 所長 喜多一至様、営業技術課 主任 米谷稔様、製造課CAD班 班長 奥村則房様、三箇忍様にお話をお伺いしました。
事業概要

所長 喜多 一至 様
当社は小松製作所の鋳造部門として、1997年に分社化され設立されました。
私どもの模型事業部をはじめ、鋳物関連の3部門、設備関係のエンジニアリング事業部の5部門から構成されている鋳造を主力とした会社です。
模型事業部では自社向けの型製作と外販を行っております。
自社向けには油圧バルブなどの鋳物用型製作や、鋳鉄・鋳鋼・アルミなど各種素形材用の型製作をおこなっております。
外販では試作用鋳型の製作や鋳造型・プラスチック型など各種素形材用型の製作も手がけています。
導入の背景
1997年10月に小松製作所からコマツキャステックスに変わり、当社の目玉となる技術を探していました。

当時、バルブ関係の鋳物はシェル金型を使わないと製作できない部分があり、短納期化を実現するのは非常に困難でした。
短納期の要望が強くなる中で、お客様の要望に応えていくことと「サービスビューロ」として事業化という考えもあり、EOSINT-Sの導入に至りました。
導入については1997年頃から検討し、導入したのは1998年2月です。
オペレータは2名で担当しています。
導入から立ち上げ
導入当初は手探り状態でしたが、数をこなしていくにつれてコツが見えてくるようになりました。
依頼ごとに形状も違っていますし、求められる寸法精度や強度も違ってきます。
肉厚のあるもの・大型のものなどにあわせてレーザの条件を変更し、寸法精度が良くなり、強度が出る設定を探っていきます。
それでも、依頼される形状によっては従来の手法で寸法が出ない場合などがあります。
数をこなして経験を積むことが大事で、一種の職人技のようなものだと思います。
導入の効果
■スピードアップ

主任 米谷 稔 様
従来より圧倒的にスピードが速くなっています。
鋳型だけで考えると、以前は1ヶ月かかっていたものが1週間でできるようになりました。
その後の工程は従来と同じですが、全工程で考えてもリードタイムは3分の1程度になっています。

お客様から金曜日の夕方にデータを頂いて、その日のうちに機械にかけて土曜日の夜に出荷し、月曜日の朝に届くように作業したことがあります。
お客様からみれば「営業日の翌日にできあがって届いている」感覚ですから、ものすごく驚かれていました。作り易い形状だった事もあり、それが今までの最短記録です。
また、当社では「データを頂いてから3日目には1作目を発送します」と宣伝しています。
最近は3Dデータで送られて来ますのですぐに作業できますし、「3日でできれば何処にも負けないだろう」と思っています。
■不可能だった形状でも
新規開発品などは段々複雑化してきていますし、従来の工法では製作できない場合もあります。
EOSINTの利点は普通の金型では不可能な形状を造形できることです。
3Dデータさえあれば造形することが可能ですし、スピードが速いのも魅力です。
■お客様からの反応
通常の金型などは納期どおりに納めて当然ですし、お礼を言われることは少ないと思います。
ですが、EOSINTでは納期どおりに納めた後にお客様からお礼を言われることがあります。
また、最終的にできあがった製品の写真を送ってくれるお客様もいたりします。
そういったお客様からの反応がありますので、やりがいもありますし励みになります。
EOSINTは特殊な技術ですし、やはりスピードが速いのでお客様からの反応も大きいです。
3Dデータと鋳造方案
当初はお客様から図面だけを頂いてモデリングすることもありましたが、最近は3Dデータで渡されることがほとんどです。

班長 奥村 則房 様
頂いたデータで面が抜けていたりすることが時々ありますが、こちらで対処しています。
また依頼の形も様々で、製作した鋳型を組み合わせてすぐに湯を入れることのできるタイプや鋳型まるごと依頼される場合もあります。
そういう場合の鋳造方案はお客様から指定される場合が多いです。
その後にEOSINTで作業するのかその他の手法なのかを検討していきます。
納期が短い場合はEOSINTで製作しますが、若干費用がかかりますので、価格と納期を考慮して使い分けをしています。
最後に当社の方案を盛り込んでEOSINTにデータを流し、造形しています。

ノウハウ
■砂の改良
EOS社標準の砂(シェル砂)と市販の鋳物砂(セラビーズ)をEOSINT仕様に改良して使用しています。
それぞれに特徴がありますので、鋳物の形状・大きさによって判断しています。
油圧バルブなどの入り組んだ部分がある場合にはシェル砂を使用し、その他はセラビーズを使用することが多いです。砂の改良については当社のノウハウの一つだと思っています。
■変形を防ぐ
造形サイズの大きなものもありますので、分割して作ることも多くなってきています。
ですが、サイズが大きくなってくるとハンドリングが大変になります。分割したほうが楽な場合もありますので見極めが大切です。
また、変形を防ぐためにサポートの付け方を色々と工夫を凝らしています。


(ホットエアガン処理)

運用について
■要望に応えるために
EOSINTを稼動させて5年目になりますが、社外向けの比率が年々増えてきています。
今年度は自社向けが2割、残りの8割はすべてサービスビューロとしての仕事になります。
また、9割以上は鋳型で納品していますので、鋳物を納品する割合は少ないです。
注文から1週間以内に製作して欲しいなどの場合は苦労しています。
ですが、当社の「ウリ」は短納期なので、昼夜を問わずに人間が機械に合わせて作業している状態です。
機械を止めるわけにはいかないですし、要望に応えていくためには必要なことだと思います。
「1層何秒×何層」を計算すれば、1工程の所要時間はおおまかに予測できます。

三箇 忍 様
深夜でも工程が終わる時間に出社して、次の作業に移る場合と次の日の朝に始める場合とでは全然違いますし、時間がもったいないです。
ここ1~2ヶ月はフル稼働している状態が続いています。
EOSINTが造形している間は2次元図面を描いたり、3次元モデリングをしたり他の作業をしています。
国内で唯一のEOSINT-Sの女性オペレータのようですが、砂の入れ替えやオーブンへの移動など、扱うものが重いので苦労しているところもあります。
今後の取り組み
■サービスビューロとして
鋳型で納品するケースがほとんどですので、今後は鋳物・製品まで製作していければと思っています。
また、お客様から図面だけを頂いて方案から作業するなど、EOSINTに関連する部分をもっと深いレベルまでやっていきたいと思っています。
数量は少なくても精度の求められるものをEOSINTを止めることなく作業していくことが目標です。
■需要の拡大
従来では不可能だった形状が造形できることや短納期化が実現できることがお客様に浸透しきれていません。
短納期が叫ばれている中で、まだまだ需要があると思いますので、サービスビューロとしてお客様に上手く情報の配信ができればと考えています。
そうすることによってさらに需要を見込めるようになると思います。

2/2~2/4

HZSについて
今後もサービスビューロとして活動していきますので、お客様の紹介をお願いしたいです。
また、運用面に関しても引き続き技術的なサポートをお願いします。
おわりに
お話を伺っている中で、「試作」という仕事上、納期というものを非常に重要視されていることが良くわかりました。
また、それに応えていくために様々な苦労をされているお話を伺う中で、お客様を大事にされている姿勢に感心させられました。
大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
会社プロフィール



コマツキャステックス 株式会社
住所 | 富山県氷見市下田子1番地3 |
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設立 | 1997年10月1日 |
資本金 | 46億79百万円 |
従事者 | 590名 |
売上高 | 200億円 |
事業内容 | 鋳鋼品、鋳鉄品その他各種素形材の製造、加工および販売 鋳造関連設備他各種機械器具の製造、修理、加工および販売 鋳造用その他各種素形材用の治具・型の製造および販売 各種プラントならびに土木建設工事の設計、施工、監理および請負 環境計測、成分分析、放射線検査その他各種検査業務の請負、コンサルティング 各種素形材用副資材の製造および販売 |