人とシステム

季刊誌
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No.28 | 社長インタビュー
Dassault Systemesの世界戦略

略歴

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ダッソー・システムズ株式会社
代表取締役専務
Christian Nardin様
1989年 ダッソー・システムズ入社
Contract and Business Practicesのマネージャーとして、パートナーシップ、ライセンス、ディストリビューション、そしてサービス分野におけるコーポレート標準の確立、および構築に従事
1994年6月 ダッソー・システムズ株式会社代表取締役専務に就任
アジア地区におけるダッソーシステムズのオペレーションを統括
Nardin氏は、Ecole Superieure de Commerce de ParisでInternational Affairsを専攻し、Master in Business Administrationを取得
人物写真
HZS 取締役社長
福武 映憲

福武 私どもは、2002年2月に、Dassault Systemesとゴールドソフトウエア・パートナーとして戦略的提携を結びました。Dassault SystemesのV5アーキテクチャ上で次世代コラボレーティブCAMおよび金型ソリューションを開発しており、2002年の12月にファーストバージョンをリリースいたしました。広範かつ統合化された3D PLM ソリューションのCAMおよび金型設計ポートフォリオを必要としているお客様に、非常に高度なセールス、コンサルティング、そしてサポートを提供いたします。今回は、ダッソー・システムズ株式会社 Christian Nardin(クリスチャン・ナーディン)代表取締役専務に、Dassault Systemesの好調の要因、3D PLM戦略などについてお伺いしたいと思います。

Dassault Systemesの歩み

Nardin Dassault Systemesの簡単な歴史から振り返ってみたいと思います。Dassault Systemesは、1981年にDassault Aviationから分離独立して設立され、わずか12人という小さな会社としてスタートしました。当時、Dassault Aviationの開発部門では、新技術として3Dサーフェス技術を開発していました。これは、非常に複雑な概観・形状を持つ、ビジネス向けのジェット機や軍用航空機などの設計のために開発していた技術です。その頃、IBMが3Dの新しい有望な技術を模索しており、当時のDassault AviationのCATI(今のCATIA)の技術に目を留めました。そして、全世界で販売したいと言ったのです。

Dassault SystemesがIBMとの提携で最初に販売したのが、日本の本田技研工業株式会社様でした。非常に興味深いことは、Dassault Aviation以外に最初に私たちの技術を採用してくださったお客様が日本の自動車業界の会社であったということです。私どもはこれをお客様の事例として紹介させていただくようになりました。

1980年代はこのように会社として確立していく時代でした。その後、従業員も約350人となり、特に航空機分野の設計においては、リーダーシップを取ることができるようになりました。

1990年代には、自動車業界におけるリーディングカンパニーとなることができました。また、会社のビジョンを練り直す時期にきており、新たに3D PLMのビジョンを提唱し、3D PLMの地位を確立するために積極的に企業の買収を行った時代でもあります。

1990年末には従業員数も3800人を超えるまでに成長し、3D PLM市場でも確固たるリーダーシップの地位を築くことができました。3D PLMという新たな市場を私たちの手で創出したと自負しています。

3D PLMインテグレーションをサポートするこのインフラストラクチャーを開発するために、過去6年に渡り10億ドル以上を投資してまいりました。

今日、Dassault Systemesは、3D PLM市場をリードしている存在だと思います。

2つの重要なマイルストーン

Nardin Dassault Systemesの歴史を振り返ったときに2つの重要なマイルストーンがあったのではないかと考えています。重要という意味は、お客様が私たちの技術を実装するときに、市場における物事のやり方を私たちの技術で変えてきたということです。私たちの技術はこの市場に非常に大きな影響を与えたと考えております。

まず、1つ目は、1990年代の初めにボーイング社とパートナーシップを結んだことです。当時ボーイング社は、777(トリプルセブン)の開発にあたり、歴史上初めて設計から生産、テストにいたるまで100%デジタル環境において、高度かつ複雑な製品の開発に取り組みました。その過程で、たくさんの問題が発生し、一つ一つ問題を解決していかなければなりませんでした。航空機はFAAにより認定されていますが、従来のように組み立てる方法ではなく、デジタルで作ったものを認可してもらうという難しい課題もありました。

ちょっと想像してみていただきたいのですが、300万という膨大なパーツを組み合わせて作られている777がいかに複雑な飛行機であったか、いかに難しい設計であったかということです。

この航空機は、プロトタイプを作らなかった初めての航空機で、United Airlineに納入されました。これは、ボーイング社が今までに製造した航空機の中で最も完成度の高い完璧な機種となりました。生産の過程におきましても、レーザビームなどを使い偏差を測定しましたが、偏差はほぼゼロでした。

もちろん品質以外にも、重要なコストという要素があります。実際にこの飛行機を作ったときに、ほとんど手直しが必要ありませんでした。通常、設計などが適切に行われずに、リエンジニアリングの必要性や、手直しが必ず発生するものですが、この飛行機の場合には、手直しはわずか数%でした。これも、設計のプロセスそのものの問題ではなく、設計のプロセスで決められたルールに人が従わない人為的ミスにより数%の手直しが発生したのです。

これは、デジタルモックアップと呼ばれており、きわめて重要なマイルストーンです。このような革命が始まって、既に10年ほど経ちますが、デジタルモックアップを製品プロダクションや設計プロセスに採用していない企業もまだ多く存在します。いずれにしても、フルスケールでのデジタルモックアップ・アプローチを実現している企業はまだ少ないと思います。

2つ目の重要な技術的マイルストーンは、今まさに起こっていることですが、トヨタ自動車株式会社様と発表させていただきました車両開発プロセス全体を支援するPLM(Product Lifecycle Management)ソリューションにおける新開発プロセスを構築する、製品とプロセスを統合して最適化する技術です。これにより、開発や生産、車の操作のシミュレーションを強化し、製造業のイノベーション、品質向上、コスト削減そして製品開発期間の短縮をサポートします。PLMソリューション群はまた、企業内でのコラボレーション、地域国境を越えたコラボレーション、またサプライヤーとのコラボレーションを促進させます。

製品とプロセスの最適化

福武 「製品とプロセスの最適化」についてもう少し詳しくお聞かせください。

Nardin 自動車業界でも、消費財業界でも言えることですが、現在業界では、マスカスタマイゼーションを行っています。これは、お客様からの要求や期待というものが多様化しているからです。また一方で技術も急速に変化していますので、お客様の期待も短期間で変わるという状況になっています。

会社としては、新製品をコンスタントに投入していかなければなりません。

たとえば、車の場合ですと、約50~60の車種があり、バリエーションも含めると、10000種類ぐらいになるのではないかと思います。国によって規制が違いますし、お客様によっては、オープンルーフにしたい、3ドアにしたい、5ドアにしたい、ハッチバックにしたいなどいろいろな要求があります。このようなさまざまな要件を満たすためには製造のプロセスで柔軟に対応していかなければならないわけです。このような市場のニーズに迅速に応えるためには、"Time To Market"、"Right To Market"などの言葉で表現するように、市場に投入するまでの時間を短縮していかなければならなりません。時間を短縮するだけではなく、適切な製品を適切なフォーマットで、規制に対応しながら適切な時期に市場に投入しなければならないということが、今の企業が直面する課題ではないかと思います。

これを実現する唯一の方法が、3次元データをプロダクト・ライフサイクル全体で活用し、製品とプロセスを最適化し、設計および生産の側においてプロセスと製品を同時に作っていく、同時にエンジニアリングしていく、そうすることしか時間を短縮する方法はないということです。

福武 「設計プロセスと製造プロセスを同時に考える」コンピュータの中で完全にデジタルモックアップをする。今は、3次元データをすべての局面で共通に使うことによって非常に短い期間でどんな要求にも応えていける。設計から製造までのプロセスを最適化するということですね。

Nardin はい。開発プロセスの早い段階で、バーチャル上で製品をシミュレーションすることで、最小限のコストで様々な試行錯誤ができるようになります。また、バーチャル環境で現実の製品に近づけることにより、製造業各社は、適切な製品を、適切なタイミングで適切な顧客に提供することができるようになるのです。

ターゲット市場

福武 航空業界ではすでに1番になっておられるし、自動車業界でももう1番です。今後、7つの事業領域でプロセスまで含めたいろいろなアプリケーションを用意していくということですが。

Nardin 形状が複雑なほどデジタルモックアップを早く採用したいという思いがあり、航空機業界、自動車業界での採用が進みました。他の業界でも同じような傾向が見られます。

造船業界も、客船、海軍用、カーゴなど、船のタイプによってお客様が期待していることが違いますし、サイクルタイムも違いますし、複雑性の程度も違います。

エレクトロニクス、特に民生品に関しましては、きわめてサイクルタイムが短いという共通の課題があります。製品は各業界の特定のプロセスに順応していかなければならないと思います。そのプロセスをエンジニアリングし、ターゲットとなる製品のタイプに合うようにしていかなければなりません。特に消費者向けの製品では、コラボレーションということが重要になってきているのではないかと思います。

このように業界ごとに特徴がありますから、ご指摘のように、Dassault Systemesのターゲット市場は、自動車、航空宇宙、産業機械、電機・電子、消費財、造船、プラント設計の7つの業界を中心としています。これらの業界のニーズ、プロセスが今も将来も我々の製品開発に影響を与えていくと思います。そして、業界は違うものの、私たちは共通のプラットフォームを提供することにより、それぞれの業界が抱えている多様な問題に対応できるようにしていきたいと考えています。

福武 Dassault Systemesのシェアはどうでしょうか。

Nardin 2001年、Dassault Systemesは、CAD市場において11,300以上、PDM市場でも1,300以上にのぼる新規のお客様を獲得し、業界標準を大きく上回る18%の成長を達成しています。

また、Daratech社の市場レポートにおいても、Dassault Systemes/IBMはNo.1のポジションを維持しています。

PLM市場のグラフ
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3D PLM

福武 Dassault Systemesの「3D PLM」の優位性についてお聞かせください。

Nardin 3D PLMソリューション群のベースとなるのが、V5アーキテクチャです。V5は、CATIAを初めとして、ENOVIAやDELMIAの各ソリューション共通のアーキテクチャです。V5ポートフォリオは、次の5つの基本概念をもとに構築されています。

  • プロセス・セントリック:各業界固有のビジネスプロセスの最適化をサポート
  • コラボレイティブ・ワークスペース:場所、時間を問わず、どこでもアクセスできる3次元ベースのコミュニケーションとコラボレーションをサポートする
  • PPR(Product、Process、Resource):プロダクト、プロセス、リソースを統合し、関連付けられているユニークなPPRモデルを提供
  • ナレッジ:企業内のナレッジ(技術情報やプロセス特有のノウハウ)の取込みと共有化、再利用をサポート
  • CAA V5:コンポーネント・ベースのアーキテクチャ、およびそのコミュニティであるCAA V5により、V5アーキテクチャのオープン性と拡張性を拡大する
CAA V5 アーキテクチャ
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V5は、非常に使い勝手のよいインフラに仕上がっており、製品に関連した製造のプロセス等を最適化していく際に同じデータを使うことができるということです。空港のようにハブの役割を担って、いろいろなものを接続していくことができます。これがPPR HUBです。製品(Product)、工程(Process)、そして設備(Resource)をつないで、企業内で様々な業務を担当する人が、単一PPRモデルにアクセスすることもできます。関連企業、サプライヤーなどとのコラボレーションも可能になります。

3D PLMソリューション群
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なぜPLMにとって3Dが大事なのか、問題はきわめてシンプルです。なぜなら、コミュニケーションが問題なのではなく、理解するということが問題だからです。特に日本の方はどのようにコミュニケーションを図ったらいいのか既によくご存知ですが、3Dにより全てのメンバーが完全な理解を持った上でのコミュニケーションが実現します。

たとえば、デザイン・インというようなアプローチでは、サプライヤー側からOEMに対して毎日人が来て、チームの一員として製品の設計など一緒に作業をしています。ですから、十分にコミュニケーションは図られていると思います。しかし問題は、理解するということです。なぜなら複雑な問題を理解していかなければならないからです。エンジニアリングに関する情報は、製品に関してもプロセスに関しても多面的な側面がありますし、複数の規制などをあわせて理解しなければなりません。外形がどうなっているということだけではなく、機能的にもフィーチャや構造がどうなっているか、疲労度がどうなっているのか、回復力がどうなっているのかといったことまであわせて理解をしなければなりません。このような複雑な情報を誰もが共通理解できる手段が3Dです。

3Dには、翻訳は不要であり、3Dの画面を見れば誰もが同じように、正確に、的確に、完璧に理解することができます。これが3D PLMというのが製造メーカにとってきわめて重要なわけです。ここで重要なのは、IT、情報技術、インターネットなどではありません。重要なのは製品であり、生産のエンジニアリングです。

ここがまさにDassault Systemesが差別化を図ることができる要因なのです。製品だけではなく生産に関わるプロセスまであわせて十分に理解することができるようになります。

異なるシステムや異なるデータでやりとりをしていたら理解できない。だからこそ私たちは、V5というインフラに多大な投資を行ってきました。同じデータセットをやり取りすることによって、初めて理解ができるわけです。このような方法によってのみ、唯一、お客様もエンジニアも製品についての理解を共有することができるのです。

Dassault Systemesのビジョン
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もうひとつ成功の重要な指標として私たちがこれまで構築してきた"互いに成長と発展を助長する"という意味を持つEcosystemをあげることができます。つまり、Dassault Systemesが単独でいろいろなものを提供しているのではないということです。私たちはいろいろな企業と提携をしており、異なる業界における製造メーカのすべてのプロセスを網羅すべく、一連のソリューションを提供させていただいています。

福武 Ecosystemというのは?

Nardin たとえば、日本はお米を主食としています。お米は、一人で作るのはとても難しいと思います。日本ではそのために村というコミュニティがあって、稲を植え、育て、刈り入れるときにはお互いに協力をしています。自分ができるところで貢献をしてきたと思うのです。V5まわりのEcosystemと呼んでいるのも、まったく同じようなコミュニティです。

いろいろな会社がありますがそれぞれが独自の価値、フォーカス、技術を持っています。そういう企業が集まって、お互いに同じ言語でやり取りをしながら、共通の目標に向かって協力をしているということです。

最初に12人という小さなグループでスタートした会社でしたので、私たちだけでここまで成長することはとても無理でした。私たちの考え方は、一緒に協力をしながらでやっていく「Working Together」です。これが常に私たちの考えや戦略の基礎になっています。私たちはこのEcosystemの一部であるからこそ、ここまで強力な会社になることができたと考えています。

このEcosystemを具現化するのがCAA V5 Software Community Program(SCP)です。これは、製品開発全体がV5の単一アーキテクチャ上で実現されることを意味し、お客様は費用、時間、そして品質の面においてもロスの多いデータ変換から開放、さらには円滑なコラボレーション環境が実現できます。また、CAA V5パートナー各社にとっても、業界標準テクノロジーを採用している、オープンで先進的V5アーキテクチャーを採用することにより、インフラ部分の開発から開放され、自社が得意とするソリューション部分に注力することができます。

Dassault SystemesにとってもV5オファリングのカバー領域が広がるという利点があります。このプログラムを通してDassault Systemesは、V5ベースのソリューションを開発、マーケティング、そして販売する日立造船情報システム、LMS International、MSC Software、日本ユニシスといった特定分野のトップベンダーと戦略的パートナーシップを構築しています。現在、35社のCAA V5パートナーが、50以上のCATIA、ENOVIA、そしてDELMIA V5を含むDassault Systemesの3D PLM製品を提供しています。また、45以上のCAA V5パートナー製品が開発される予定です。(2002年12月現在)

V5 パートナーシップ
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中国市場

福武 日本ではV5の販売に力をいれられていますが、中国はどうでしょうか。

Nardin 私どもは、中国にも積極的に事業を展開しています。中国の非常に早いペースに驚かされますが、まだ成熟していません。実際、中国市場の成長力の高さやマーケットサイズからみても、中国は脅威でもあり、オポチュニティでもあります。日本がそのユニークな専門性と知的財産を維持する限り、このオポチュニティは多大なビジネスチャンスとなるでしょう。それと並行して、日本の製造業が3D PLMとナレッジウェアを活用してプロセスエンジニアリング分野において最前線に位置する限り、今後も確実にアドバンテージを保持するでしょう。現在、製造メーカの中でも大きな変革が行われています。これからの企業というのは、もっと俊敏に、革新的にならなければ成功することはできないと思いますし、競合と差別化を図っていくことはできないと思います。唯一、達成する方法が、3D PLMのようなアプローチを実装していくことだと思います。

中国における私たちの事業も急速な成長を遂げておりますが、トータルで見た場合の中国の占める割合は、まだ小さな部分でしかなく、日本の事業と比べても10%以下にしかならないということです。

中国での機会を活用しようと、お客様はどんどんと中国へ進出されています。私どもはEcosystemを通じて中国へ行かれた日本のお客様をフォローし、サポートしています。

福武 中国脅威論といいますか、日本の製造業が大変だという話を聞きますが、今Nardinさんがおっしゃったように、私も中国は安い部品が手に入る国ですし、今までは買っていただけなかった日本の10倍の市場がやっと動き始めた。しかし、日本の10倍のものづくりの力はないわけですから、日本で本当に良い物だけを作って中国に売れば、何も問題ないと思います。

3D PLMを活用してお客様のニーズを的確に捉え、最短納期の製品作りができれば、中国が市場になります。

CATIA V5

福武 現在V4とV5はどのような比率でしょうか。

Nardin 私どもはアジア、特に日本で堅調な成長を遂げていますが、これはV5の高い導入率と関係しています。日本におけるCATIAライセンス販売の場合、80%以上がV5です。世界のどの国、どの地域よりもV5の普及がもっとも早いのは日本です。

中国のビジネスは日本に比べてまだまだ小さいと申し上げましたが、中国でもV5の導入率はきわめて高くなっています。V5が私たちのビジネスの堅調の理由のひとつです。

CATIA V5の躍進
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福武 新たに導入されるお客様はもちろんV5だと思います。ただ、V4のお客様がV5に移行されることが進んでいるのかどうか教えてください。

Nardin V4は、今も自動車の設計においては、業界スタンダードという位置付けになっています。新車に関しては、V5での開発が始まっていますが、既に進行中のモデルの開発は、V4を使って行われています。自動車業界における実際のOEMプロダクションで使われているシート数でいうならば、まだまだ大半がV4です。

既存の車の開発はV4ですから、途中でやめてV5にするということを、お客様はなさいません。一夜にして全く変わるのではなく、ある時期オーバラップさせながらV5に移行していくのだと思います。更に、現在多くのサプライヤー様がV5の導入を開始しています。

特にここで申しあげておきたい重要なことは、3D PLMを導入するということは、ただ単にV5の製品を購入するということではありません。この技術を活用するためにプロセスそのもののエンジニアリングを行っていくことが重要になります。だからこそEcosystemが重要になるわけです。

ある技術レベルから次のレベルに移行するときには、その技術の持つメリットを十分に教授するために、活用の仕方そのものをもう一度見直す必要があります。

V4からV5に移行する際にも、技術も変わっていますし、インフラも変わっていますので、パラダイムシフトが起こっていると考えていただいてもいいぐらいの大きな変化だと思います。だからこそ、V5に移行したときにより効率よく物事が行えるようになり、全く違うやり方ができるようになるということです。

HZSへのメッセージ

Nardin 「人とシステム」という雑誌の題を教えていただきましたが、やはりシステムだけではない、技術だけではないということだと思います。人間の要素というのが極めて重要である。人がどのように物事をやっているのか、本当に人が新しい技術や変化を受け入れてくれるのかどうか、このあたりの人間的な要素が伴わなければ成功はしないと思います。

福武 今、PCは、WindowsというOS上でいろいろなアプリケーションが作られ、自由にデータのやりとりがなされています。

PCのOSがWindowsであるのと同じように製造業のOSがV5でその上にいろいろなアプリケーションがあるのですとお客様にお話をしています。

Nardin いいお話ですね。是非、一緒にV5を製造業用のWindowsのMicrosoft Officeのように育てていただきたいと思います。特に御社の場合ですと、消費者向けの製品からモールドに至るまで、製造プロセスにつきましては豊富な知識をお持ちだと思います。

福武 我々は、設計からモノづくりの過程で、最後の金型を作り上げるための設計、モデリング、CAMデータの作成という領域でV5上に良い商品を作って、日本の製造業の皆様に安心してDassault Systemesの3D PLMを導入していただけるよう、その一部分でも担えればと考えています。

本日はどうもありがとうございました。