人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.29 | システム紹介
Darwin Revueのご紹介
システム開発部 基本システムグループ
グループマネージャー 広崎 貴

はじめに

日立造船情報システムは2003年1月に3次元コラボレーションツール Darwin Revueを発売しました。Darwin Revueはものづくりにおける設計・製造工程を適用の中心としながらも、より広い範囲での活用を目指すシステムです。

Darwin Revue画面
Darwin Revue
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

「モノを扱うすべてのところに」
「手軽に3次元データを届けて」
「3D情報の良さを生かし、徹底的に活用する」
「関連データや打ち合わせ内容も記録・共有して活用する」

モノの設計・製造の場面だけでなく、営業や保守、購買などの用途においても3D情報の活用を促進します。打ち合わせやデモ・教育、流通といった場面においても3D情報を有効に活用できるでしょう。このような活用を目指したDarwin Revueを紹介し、その先に目指す、ユビキタス3D(=いたるところに在る3D)計画を説明します。

Darwin Revue のねらい

3次元データのビジュアライゼーションはコンピュータグラフィクスやCAD/CAM/CAEシステム周辺で幅広く応用されるようになって相当年月が経ちます。しかしながら、3次元設計情報がもつ本来の情報量やわかりやすさを十分に活用しているとはまだまだ言えない状況にあります。それは以下のような原因が考えられます。

  • 特定のエンジニア、部門を除いて3Dリテラシ(3次元情報を読み書きする能力)や3D情報を手元で扱う習慣がまだ浸透していない。
  • 3D形状データはデータ量が多くなりがちで既存の計算機の能力、保存媒体のコスト、ネットワーク回線の容量などに対してまだ負荷が大きい。

3Dリテラシ以前にPC等のコンピュータを利用すること自体、完全に普及しているわけではないことも原因のひとつです。いずれの原因も近い将来ハード面・ソフト面で順次決されていくと予想されますが、その時を待っていたのでは激しい生存競争にさらされているものづくりなどの分野で他に先んじる事はできません。

挿絵
3Dデータの広範囲利用

完全に3次元を使いこなす環境、ツール、人材を揃えてからなにかを始めるのではなく、今現在既に利用できる環境とエンジニアスキル上で最大限に3次元データを活用できるようなツールを使って、段階的に効果を出していくことが有効な戦略です。

3DコラボレーションツールDarwin Revueの目的は「ユビキタス3D時代」への扉を開くことです。

機能・特徴

Darwin Revue は次の3つの機能を持つツールです。

  • マルチCADデータビューワ
  • 形状チェック・評価
  • コラボレーション

この3つの機能は以下のように使われます。

  • 主要なCADフォーマットを取り込む。
  • 3D形状を視認性良く確認し、設計意図の伝達を直感的にわかりやすくする。
  • さらに必要な計測・形状評価・コメント(指示・説明)を行うことにより各工程において必要な情報を取り出すことができる。
  • これらの機能をイントラネット・インターネット上で共有・閲覧することにより、オンラインでのデザインレビュー(設計打ち合わせ)を実現する。
  • 打ち合わせの記録が残される。

【マルチ・データフォーマット対応】

対応するデータフォーマットは次のとおりです。

Darwin Revue画面
3D読み込み・図面表示
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

■標準

IGES、ACIS、Space-E、CUBE、Draw
TIFF、JPEG (画像データ)
HSF (ポリゴンデータ)

■オプション

CATIA V4、V5
Space-E CAA V5 Based
Unigraphics、Parasolid、Pro/E、STEP

■次期バージョンにて対応予定

I-DEAS
DXF、DWG、DWF (図面データ)

【計測・注記作成機能】

■測定機能

Darwin Revue画面
計測・注記
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

Iエッジ(稜線)の長さ
2要素間の最短距離
曲面内の指定点における最大・最小半径
円、円弧の半径
ソリッドボディ、サーフェイスの表面積
ソリッドボディの体積・重心
指示要素の形状情報(カーネルデータレポート)

■注記作成機能

I矢印
2Dバルーン
バルーン
テキスト

■その他

Iオブジェクトの色変更
オブジェクトの透明度変更

■次期バージョンにて対応予定

I角度測定
曲率分布、勾配分布、隙間・重なり検出
フリーハンドマーキング
断面表示

Darwin Revue画面
  • マーキング機能
    面や線上に手書き線を描くことができます。
Darwin Revue画面
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
  • 断面表示機能
    任意の断面形状を表示データレベルの精度で参照することができます。

【コラボレーション機能】

3Dデータをベースにした打ち合わせを助けるための機能です。

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

■表示・ビュー操作共有

3D形状表示状態をリアルタイムで共有する画面。

■チャット

意見交換・指示・回答など。

■コメントツリー

トピックごとに掲示板形式でツリー状に意見交換。

■ビューコメント

打ち合わせ・レビューを行ったポイントにおける表示画面を記録・再生。

■ファイル共有

各クライアントがファイルを共有し、コラボレーションセッションへの他の参加者に公開。

技術情報

【OpenHSF】

HSFは、ネットワーク上で効率よく3Dデータを扱うためのデータフォーマットです。Darwin Revue では3Dストリーミング技術等を用いて速度と精度の問題を解決し、ネットワーク上における3次元データの扱いを快適にします。

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

【デバイス対応】

挿絵
タブレットPCとポケットPC

設計室(CADルーム)だけでなく、色々な状況においてDarwin Revueの利用が促進されるように、多様なデバイスにも対応を予定しています。手のひらサイズのポケットPCにおいても3次元形状表示とコラボレーションへの参加を可能にします。マウスとキーボードによるシステム操作が適さない環境においてはタブレットPCを使ったペン入力によるダイレクトな操作性を導入します。

【ネットワーク対応】

昨今充実著しいインターネット環境への適合性も必須です。情報を共有・交換したい相手は企業内LANを超えてインターネットで接続されている事もあります。Darwin Revue のコラボレーションサーバーはインターネット接続、ファイアーウォール環境にも対応しているため、セキュリティの高いエンタープライズ環境においても安全で柔軟な情報共有が実現できます。

説明図
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

動作環境

■Darwin Revue コラボレーションサーバーをインストールする環境

OS
 Microsoft Windows2000 Server ServicePack3
 Microsoft Windows2000 Professional ServicePack3
 Microsoft XP Professional ServicePack1
 Microsoft .NET Framework ServicePack2
 HDD ... インストール時30MBの空きが必要

■Darwin Revue クライアントをインストールする環境

OS
 Microsoft Windows2000 Professional ServicePack3
 Microsoft XP Professional ServicePack1
 Internet Expolorer5.5 以降
 Microsoft .NET Framework ServicePack2
 HDD ... インストール時200MBの空きが必要

【動作環境FAQ】

Q1:Darwin Revueはどのようなコンピュータ、ネット環境で動作しますか?

A1:Darwin RevueはWindows OSで動くサーバー+クライアント型のソフトウェア・システムです。ネットワークは、10Mbpsや100MbpsのTCP/IP LAN環境、無線LAN環境、ADSLや光ケーブル、CATVインターネット等、比較的高速と言われる500Kbps以上のネットワーク接続環境を想定しています。

Q2:Windowsはどの版で使えますか?

A2:WindowsXP、Windows2000で動作します。
WindowsNT4.0では一部表示の違い等がありますが動作します。いずれもService Pack 2以上などパッチレベルの指定があります。WindowsNT4.0 Windows95、Windows98では動作いたしません。

Q3:今後Windows9xに対応しますか?

A3:現在のところ予定はありません。

Q4:他にDarwin Revueを設定・実行するために必要な条件がありますか?

A4:上記Windwosが稼動している環境に「MicroSoft .NET Framework」をインストールする必要があります。Darwin Revue インストールCDに同梱されています。

Q5:ISDN接続やダイアルアップ接続環境では使用できませんか?

A5:Darwin Revueは基本的にはLAN環境での使用が前提になります。ISDN接続でも速度の低下などはありますが使用できます。
ただし、ダイアルアップ接続やPHS接続などで28Kbps、56Kbpsといった回線速度の場合は、現時点では実用的な操作感を得られない恐れがあります。主にサイズの小さい形状データを扱う場合は使用可能です。

Q6:Darwin RevueはIneternetExplorerだけあれば動かすことができますか?

A6:いいえ。Darwin RevueはCADファイル閲覧、コラボレーションを行うWindowプログラムです。コラボレーションサーバーソフトとクライアントソフトをそれぞれWindowsPCにインストールして起動する必要があります。

今後の展開

これからDarwin Revueは「既存の業務フローの電子化」ではなく、たとえば現在、図面で指示・確認が行われているチェックポイント・打ち合わせ工程を3D情報共有で置き換える等の「業務改革を助成・促進するツール」として有用な機能・特性を備えていきます。3D設計情報に関する打ち合わせのオンライン化、打ち合わせ事項のデータベース化を強化します。

おわりに

Darwin Revueはマイクロソフト社の.NETテクノロジーをいち早く取り入れ、製品品質・性能の向上のみならずコラボレーティブソリューション向け機能開発のベースとして、カスタマイズ要望にすばやく対処できます。今後ますます重要になる「ネットワーク」と「3次元」へのソリューション提供を軸に、お客様が効果を上げられるシステムを開発していきます。

デザイン・設計・解析・製造・検査・保守といった一連の工程において、一気通貫のシステムを構築し、情報共有を図ることは、メーカーにとってもシステムベンダーにとっても一つの到達点であり、理想とも考えられます。しかし、現実にはそれぞれの工程において、最適なツールを選定する場合もあり、ツール間の整合性は必ずしも完全ではありません。HZSはCAD/CAM/CAEシステム、PDMシステム、RPシステムなど広範囲なツールを総合的に提供することに力を入れ、効果をあげていただいております。しかし、よりグローバルな部品調達、生産・設計の外注、低コストな海外拠点への進出などが加速する今日において、設計情報を共有、伝達する必要のあるすべての関連企業・部門までが統一されたシステム上で稼動しているという状況はまだ少ないでしょう。また、システムが統一されていても例外的な作業やニッチな要求に対しては違うツールを適用することもあるでしょう。

ツール・システム・環境を完全に統一していくよりも、各種ツールのデータインターフェースがうまく取れることと、工程に合ったツールをよりよく活用するためのコミュニケーションがうまく取れることが重要であると考えられます。HZSはこのようなツール混在環境での3次元情報化を促進するために、今すぐ使えるコラボレーションツールとしてDarwin Revueを製品化しました。