人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.3 | お客様事例
CAD/CAM/CAE/CAT一元化

日立金属株式会社 九州工場様は、安定した品質と高い精度の自動車部品を開発、製造されています。お客様である自動車メーカの信頼も厚く、常に最新の技術、設備を追求され、製品機能のさらなる改善を目指されています。

今回は、CAD/CAM/CAE/CATの一元化を計画、実施するにあたっての背景、効果などを中心に、鋳造部 主任 技師 武末様、鋳造部 技術係 主任 越智様、品質保証部 技術 原様にお話をお伺いしました。

事業概要

人物写真
鋳造部 主任技師
武末様

日立金属株式会社の工場は、九州、真岡、桑名、若松、安来、熊谷、電子部品、鳥取工場の8つがあり、それぞれ自動車機器事業部、配管機器事業部、ロール事業部、特殊鋼事業部、磁材事業部、機装事業部、電子部品事業部、情報部品事業部などに分れています。

九州工場は、自動車機器事業部として自動車用鋳物部品を作っています。主にエンジン回り、足回りの部品です。鋳物でもアルミ系、鉄系、ステンレス系、鋳綱品の種類があります。]

その他に自動車機器事業部には、真岡工場、熊谷工場があります。

お客様は自動車メーカが主で、国内各自動車メーカと海外の主要自動車メーカから、自動車部品の受注があります。

自動車以外では、農業機器、土木建築部品などの製品を作っています。

GRADE導入について

5年前にCUBE-NCを導入しています。

当時は自動プロでしたが、複雑形状品には対応できないため、CAD/CAMを導入しようということで、日本で販売されている主なシステムをすべて調べました。

特に自動車部品は形状が複雑ですから、CUBEのようにどこからでも見られるグラフィックでなければ、作業がしづらいわけです。それから、他のシステムでもパスは落ちるということが分かっていましたから、修正機能が備わっているシステムを探しました。当時、パス修正ができるのはGRADEだけでした。モデリング機能が優れているシステムは他にもありましたが、金型を早く作るためには何がいいかと考えると、GRADEが一番よかったわけです。

CAD/CAMに初めて取り組むときは、オペレータに設計を教えて、モデリングを教えて、それからNCの機械を教えて、工具を教えてということをしていました。今はCAMの自動化が進んできましたので、設計とモデリングを教えればよく、ある程度、負担が軽くなりました。今後も自動化という方向で、よくなってくると確信しています。最初に導入したときよりもCAMの部分は随分よくなりました。GRADEを導入し、成果をあげることができましたので、今年新たにCADデータの一元化計画の一環としてマシンを増設することにしました。(図1)

挿絵
図1 設備構成
CAD室

「CAD/CAM/CAE/CAT一元化計画」について

人物写真
鋳造部 技術係 主任
越智様

これまでは、技術部門(CAD)、模型部門(CAM)、開発部門(CAE)ごとに、必要に応じてモデルを作成してきました。開発部門の中でも凝固解析、構造解析などがあり、各々が解析するためにモデリングをして、用途に応じたモデルがあれば模型部門で流用していました。これでは、同じモデリング作業を重複して行うことになり、工数もかかります。

また、お客様からデータでやり取りをしたいという要望があり、そのデータをもとに解析や形状決定などをスピーディに行うことが必要になってきました。さらに、お客様の部品開発の期間短縮のため、新製品を開発する設計段階からお手伝いして、製品を作りあげていくことが、求められてきました。

そこで、モデリング作業については技術部門でマスターモデルを作成することにしました。お客様からのデータは2次元、3次元いろいろありますが、まずは技術部門でCUBEを使ってモデリングして、それを開発部門、模型部門で各々使っていきます。模型部門では、型用にモデルを展開しなければいけませんが、それでも工数は削減できます。

また、技術部門でモデリングして、開発部門で解析上不都合があった場合は、技術部門にフィードバックして、お客様の承認を得るためのやり取りを行ってもらいます。模型部門でも同じです。型にするためには、いろいろな形状変更がありますので、そうすると、技術部門に戻します。

お客様との窓口は必ず技術部門で、お客様の承認を得ないと先には進めない仕組みです。

今まで、電話やFAXで連絡していたことを直接データでやり取りするようにしていきたいと考えています。

お客様からは、基本的にはIGESデータをいただいていますが、I-DEASや他のデータをいただくこともあります。一部のお客様とは、金型研究所が窓口となり、専用回線によるデータのやり取りを行っています。また、データがどのような媒体できても対応できるように、OpenMT、CMT、4mmDAT、MO、FDを揃えています。

その他に海外とも取引があり、特にアメリカは、3次元のCADデータ化が進んでいますから、どうしてもCADデータの一元化が必要でした。送ってくるものはデータだけで図面はありません。そのデータをもとにどのように作りあげていくかを検討しなければいけません。また、3次元データを送って承認を得ないといけないため、日本よりも一元化の必要性があります。

このCAD/CAM/CAE/CAT一元化の計画は、自動車機器事業部の中で九州工場がモデル工場になっています。まず、九州工場で形態をとって成功したら、他の工場へ展開していく予定です。CAD/CAM一元化による模型の原価低減の対策も、具体的にテストして検討しました。模型は、内製ですから直接製品コストに跳ね返ってしまいます。工数を削減して少しでも安い模型を作ることによって、安い製品を提供しようということで検討しました。

この対策を実施すると、技術部門ではモデルを作成する工数が増えますが、全体をみると平均37%の工数を削減できます。これに、解析、CATが入ると40%以上の工数削減が期待できます。

表1は、キャリアのモデルを主型、中子型に分離してテストした結果です。この結果では、主型、中子型を合わせて、219時間の工数を削減できたことになります。

表
表1
操作画面
図2 キャリア主型モデル
操作画面
図3 キャリア中子型モデル

それぞれの工程では次のような対策をとりました。

<CAM>

技術部門で作成したモデルを使いますので、その分モデリング時間が削減されたことになります。後は、型を作るために、抜け勾配、パーティング、内外形状の分離などの作業を行います。

今回の増設でマシンの性能が上がり、処理時間が早くなったことも工数削減の要因になっています。

<NC加工>

GRADEの新等高線加工機能を利用し、加工方法を高速加工に変えて加工時間を短縮します。

<測定、手仕上げ、組立>

鋳物の砂型ですから、ある程度の磨きでいいのですが、従来のツールパスではカッターマークが大きく残り、磨きを必要としていました。これを新等高線加工機能を使用することにより、磨き工数を削減することができます。

測定機は、従来の3次元測定機から高速レーザ・デジタイザー(図4)に変えましたので、測定時間を短縮できます。

高速レーザ・デジタイザー
図4 高速レーザ・デジタイザー
人物写真
品質保証部 原様

CATは、検査・評価システムとGRADEを併用して使っていきます。

CADデータと測定データの照合結果を、色分けして点群データで表示します。公差が外れているところは、色を変えて表示しますので、それを見て金型の評価をしていこうと考えています。表2は、CATでの検査、測定の効果を調査した結果です。

今は、模型部門だけで金型の測定を行っていますが、将来的には製品検査まで行って、お客様の承認を得ようと考えています。現在はまだ、データによる機能部品の評価が確立されていないため、検査結果は検査表に書き込んで渡しています。

自動車メーカがボディなどのデザイン面にCATを使っている事例はたくさんありますが、機能部品で、図面との比較をするためにCATを使う事例は、まだありません。検査・評価システムだけでは、図面との比較の検証ができないため、GRADEのワイヤーフレームをうまく利用して検証していこうとしています。この方法は、これから構築していかなくてはいけません。

挿絵
表2 CATを用いた検査・計測業務の効果

今後の課題について

<ソリッドによるCAD、CAEのリンクの検討>

サーフェイスで作成したモデルが、そのまま解析に使用できないため、ソリッドのことを考えてI-DEASを導入しました。

CUBEIIを見せていただきましたが、後5年はかかるのではないでしょうか。これは、ソリッドがCUBEのサーフェイスのように自由に使えるにはという意味で、CUBEIIだけではなくI-DEASや他のソリッドシステムにもいえることです。

ソリッドが自由に使えるようになると、設計したモデルがそのままCAEに利用できるなど、その他にも十分な効果が期待できます。

<高速造型の検討>

光造型のことです。技術部門でモデリングしますと製品形状ですから、それをそのままラピッド・プロトタイピングで、まず1つ作ってしまいます。鋳物のサンプルを作って、お客様に納めて評価していただきたいということです。それで承認されれば、量産に入ろうかと考えています。お客様のほうも、まず形状を見てテストなどを行いたいと思いますので、少しでも早くサンプルをお渡しできるように考えています。

現在、テストを繰り返して導入の検討をしています。

HZSテクノサービス(株)にもテストを依頼しました。

HZSに期待すること

この一元化の計画でネックになるのが、CAD/CAMのデータのやり取りです。お客様は何社もありますので、そのシステムを揃えることはできません。あくまでもGRADEを主体にしていきたい。そのためには、データのやり取りをどのようにスムーズにできるかが、この計画を成功させる大きな鍵です。

HZSに期待することは、スムーズなデータのやり取りができるように協力してもらいたいということと、データ変換などの情報をもっと教えてもらいたいということです。GRADEがあれば、どのデータにも対応できるというのが理想です。

昔、自動プロを使ってソリッドモデルを作っていました。メーカの方も驚くくらい複雑なモデルを作り込んでいましたので、ソリッドでモデリングする能力は十分にあります。CUBEIIがでれば、モデリングの時間がぐっと縮むと思います。

今は、CUBEIIの完成待ちでCUBE-NC Ver.8.2は通過地点だと思っています。CUBEIIには期待していますので、1日でも早く完成させてください。GRADEは、いつもトップを目指して頑張ってほしいと期待しています。

HZSのいいところ、悪いところ

いいところはサポートです。どのCADメーカもシステムには差がありません。後は、サポート体制で、ユーザがCADをどう使うかを見てくれるメーカでないと、CAD/CAMを導入しても埃をかぶってしまうことになります。そこが不安で購入できないところも多いのではないでしょうか?

最初にGRADEを選んだ理由に、物を作るための道具として適していたということ以外に、なにかあったときにすぐ来てくれるサポート体制というのがありました。実際導入して、本当にサポートをよくやっていただいています。これはありがたく思っています。CADを使っている上で分からないことがたくさんあります。データ変換のこともそうです。本当に何がくるかわからないというときに、頼りになるのはHZSのSEしかいませんので、非常に助かっています。

おわりに

工場の敷地内は緑が多く、煉瓦色の建物がとても映えていました。また、GRADEを使われている部屋にも、観葉植物が置かれ、明るい雰囲気で仕事ができる環境でした。

実際に設計されているモデルを見せていただきましたが、非常に複雑な形状で、図面に表されていない寸法をどのように表現するかは、やはり経験が必要だそうです。

常に最新技術をテスト、検討されている日立金属株式会社九州工場様の、少しでもお役に立つようHZSも努力していきます。

たいへんお忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

会社写真

日立金属株式会社 九州工場

設立昭和31年(九州工場:明治43年設立)
資本金262億8,355万円(平成8年7月31日現在)
従業員8,300名
売上げ高324,807百万円(平成7年度)
営業品目高級特殊鋼、エレクトロニクス関連製品、自動車用部品、配管機器、機械・建築構造品、プラント
九州工場福岡県京都郡苅田町(従業員:900名)
製品写真
キャリア
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ロアーアーム
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エギゾースト・マニホールド