業務の効率化と設計情報の有効活用を図る
株式会社イクヨ様は、自動車メーカ様向けプラスチック内・外装品の大手成形加工メーカーで、製品設計から金型設計・製作、製品成形まで一貫した工程で事業を展開されています。常に時代の流れにいち早く対応され、「技術開発・付加価値創造」を機軸にされ、新製品の開発などにも積極的に取り組まれています。
今回は、Space-E CAA V5 Based Core&Cavity Design Add onとDarwin Revueを導入された背景と活用目的についてのお話を中心に、執行役員 澁谷和彦様、第一コストデザイン部 部長 金子善彦様、経営企画室 マネージャー 瀬田佳男様、第二コストデザイン部 設計グループ マネージャー 髙橋正洋様、チームリーダー 石川宗泰様、チーフ 千葉昭彦様、第一コストデザイン部 設計グループ チームリーダ 木内高弘様、チーフ 伊東武和様にお伺いしました。
事業概要

澁谷 和彦 様
イクヨは、プラスチック成形加工を中心とした事業を展開しています。主な製品は自動車関連で97%を占めています。自動車メーカ様から内装装備品(フロアコンソール、ドアトリム、コラムカバーなど)、外装装備品(ラジエーターグリル、バンパー、サイドガーニッシュなど)、機能部品(ウェザーストリップ、シール類など)をOEMで受注し、設計、試作、金型製作、成形、加工までの一貫した生産体制で対応しています。
その他、建設関連、各種工業用部品の製造、販売を行い、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を常に意識した製品の提供をしています。
工場は、厚木、名古屋(第一工場、第二工場)、岡山、山口光にあります。
Space-E V5、Darwin Revue導入の背景
【Space-E V5】

設計グループ
マネージャー
髙橋 正洋 様
HZSとのお付合いは、最初にイクヨがCADを導入した1987年からです。製品の設計・開発から量産までトータルな体制がイクヨの強みです。さらにその強みを強力にするために、CAD/CAMシステムの選定に取り組みました。その当時、CATIAも候補にあがっていましたが、GRADEの優れたサーフェイス機能と国産であること、開発力、サポート力などの面から今後の発展性に期待して導入したのが始まりです。
GRADE以外にも受注先である各自動車メーカ様向けに、CADシステムを導入しています。自動車メーカ様の設計CADシステムと同じものを導入することで、サプライヤーとしていろいろなことをご提案できると共に安定した受注量を確保できるということが背景にあります。
CATIA 自体は既にV4時代から台数を増やしていましたが、自動車メーカ様が2004年には本格的にCATIA V5を開発に使用していくとのことで、足並みを揃える必要がありましたので、V5へのリプレイスを検討していました。その頃、HZSがCATIA V5をベースにしたSpace-E CAA V5 Basedの販売を始めたことを伺いました。今までHZSには、GRADEにイクヨの要望を入れ込んで使いやすいようにカスタマイズしてもらいましたので、今後もシステム開発やサポートに期待して、2003年9月にSpace-E CAA V5 Based Core&Cavity Design Add on(以下Space-E V5)を8台導入しました。


【Darwin Revue】

部長 金子 善彦 様
イクヨ社内のネットワーク整備をしたことで、設計情報を有効活用するための環境ができました。そこで、デザインレビュー、製品仕様書、取扱い説明書、見積書、検査成績書、工程設計計画書、標準作業書、治工具図などに設計情報を有効活用していきたいと考えて、インターネット上で設計情報を共有・閲覧できるDarwin Revueを各部門に導入しました。
これで、Darwin Revueの目的としてHZSが言われている、「ユビキタス3D」のいつでも、どこからでもアクセスできる環境を整えることができました。
今後の利用目的と期待する効果
【営業展開に有効】


CATIA V5を導入したことで、安定した受注とシェアを伸ばしていけることが見込まれます。
また、今ではCATIAは自動車業界の主要なCADシステムとなりつつありますので、CATIA V5に関しては、先行した設計開発体制を確立することができました。これにより新規部品の受注、新規顧客の開拓をする場合、CATIA V5での設計開発体制をアピールした営業を展開できます。
【工数の削減】

設計グループ
チームリーダ 木内 高弘 様
3次元形状のモデリングについては、ソリッド化することで、データの一元化の取組みが進んでいくと思います。また、既存のCADシステムと比較すると3次元形状のモデリング、作図作業が容易になり、各20%ほど作業を削減できる想定です。
ソリッドについては議論をよくするのですが、イクヨで作成する製品データにソリッドが適しているのかということと、ソリッドシステムを導入していない金型メーカにどのようにデータを支給するかということです。イクヨで扱う製品は、デザインに特化した装飾部品が多く、複雑な自由曲線の連続になるため、ソリッドシステムの手法に限界を感じることもあります。また、既存のソリッドシステムについては、モデリングの自由度があまり無いようにも感じることもあります。これまで、GRADEでサーフェイスによる設計を行ってきて、NC加工を意識したモデリング性能の良さを実感していますので、ソリッドシステムで1からモデリングすると時間がかかってしまいます。ただ、モデリングに工数がかかってもソリッドデータであれば、その後の工程工数を格段に短縮できることを、これまでも認識していますので、全体的に工数の短縮にはつながります。Space-E V5はソリッドとサーフェイスの良い部分が統合されたシステムですので、設計業務の効率化にもつながると思います。






【マルチトランスレータ】

設計グループ
チーフ 千葉 昭彦 様
現状は異機種のシステムを使っているので、マルチトランスレータとしてSpace-E V5を利用し、どのシステムでもデータ変換をスムーズに行って、修正工数を削減していきたいと考えています。



(左:キャビティ、右:製品形状)

フロントグリル周り

【設計情報の有効活用】

設計グループ
チームリーダー
石川 宗泰 様
Darwin RevueはCADの経験がない部署の人でも違和感なく、スムーズに使えると思います。今まで品質を検査するにしても設計者に依頼がくるため、設計本来の業務以外に時間を取って品質保証部門に情報を渡していましたが、Darwin Revueを導入したことで、設計、開発した3次元データを必要な部署が活用できるようになり、設計者への負担も削減できます。
現在は、営業部門、品質保証部門、コストデザイン部門(製品玉成などの業務)、TCR推進室、厚木工場、名古屋工場、岡山工場に導入しています。営業では見積及び原価計算に使えるのではないかと考えています。
また、工場部門では、生産工程を設計し、標準作業を指導する資料の作成や、組みつけの検討などにも有効ではないかと考えています。
その他には、サーバを構築しましたので、混在していた設計データを効率良く管理、運営していきたいと考えています。

(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
今後の取り組み
【CATIA V5を熟知】

設計グループ
チーフ 伊東 武和 様
Space-E V5を導入してまだ日が浅いので、ベースシステムのCATIA V5を使いこなせていないため、V4との違いを十分に把握しているわけではありません。今後は、一日も早くCATIA V5を熟知して、設計開発の業務の効率化を行い、スムーズな量産の立ち上の標準化に取り組みたいと考えています。
【設計情報の活用方法を提案】
3次元形状は、生産工程、標準作業の計画、検証に活用できるため、仕組みや運用システムを整えていく必要があります。また、設計部門からどのようなことに活用できるかを積極的に提案し、社内の関連部門が設計情報を有効活用していけるように、今後は社内説明会を開催していく予定です。
【ERP基幹システムとの連携】

瀬田 佳男 様
自動車のグローバル化が進み、サプライヤーとして多品種少量生産をより短期間で実現するための体制を求められています。
イクヨでは、この状況に柔軟に対応するため、2002年9月よりERP導入プロジェクトをスタートさせ、2003年9月に厚木工場での生産管理/販売物流の本稼動を始めました。
今後は2004年1月に名古屋工場、2004年3月に岡山工場で本稼動を予定しています。また、2004年4月には第二フェーズとして経営状態の可視化と原価管理の向上を目的に全社の会計業務にEPRの導入プロジェクトをスタートする予定です。
これにより、全社でシームレスな基幹業務を構築でき、経営の効率化とお客様への迅速な対応の実現を目指します。最終的には個別の標準原価を把握し、製品単位の利益追求を実現します。
このERP基幹システムと設計情報を連携していく為の道具としてPLMを検討していますが、これには処々の問題をクリアにしていく必要があり、まだ時間がかかります。これから段階的に調整、検討を行って、どのように連携していくかは今後の課題です。
HZSに期待すること
HZSには過去16年に渡りサポートしていただき、カスタマイズにも協力していただいたことには感謝しています。今後もHZSには、上流から下流までのサポートをお願いします。上流のCADシステムは、お客様のシステムに合わせるため、異機種間で使用することになりますが、どのシステムでもデータを制限なく使えるとさらなる効果が予想できます。
それから設計情報を有効に活用するときに、材料、サイクルなどを入力すると価格が表示されるなど簡単な支援ツールがあればいいと思います。これからも、データを有効活用するための支援ツールを紹介してください。
Space-E V5では、対HZSということで、イクヨにとっては、要望を取り入れてもらえる環境ができました。これからCATIA V5のモデリングの性能評価を行っていきますが、そのときシステムに対する要望、サポートに対応していただき、HZSが長年培ってこられたノウハウなどもCATIAにも盛り込んでいただけることを期待しています。
それにより、イクヨの設計開発や生産準備の段階などで期待する効果が得られると思います。
これからもサポートをよろしくお願いします。
おわりに
厚木工場、名古屋工場の皆様には、いろいろなお話をお伺いでき、大変勉強になりました。
大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
会社プロフィール


株式会社 イクヨ
本社 | 東京都渋谷区渋谷1-9-8 |
---|---|
設立 | 1947年5月10日 |
資本金 | 15億454万円(1997年3月 東証2部上場) |
従業員 | 475名(連結) |
売上高 | 17,960百万円(2003年3月期 連結) |
事業内容 | 射出成形、押出成形、プレス成形などによる自動車部品および各種工業用部品の製造、販売 |
厚木工場 : 神奈川県厚木市上依知3019 名古屋第一工場 : 愛知県半田市潮干町1-8 名古屋第二工場 : 愛知県半田市州の崎町2-213 岡山工場 : 岡山県浅口郡金光町占見新田216-2 山口光工場 : 山口県光市小周防字虹川1100-8 |



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