株式会社みづほ合成工業所様は、時代のニーズに合わせた工法に積極的に取り組み、合成樹脂に関する様々な分野へ進出されています。また創業以来、創造・成長・感謝を社是として、試作品から量産品まで一貫して対応できる体制を整えられ、常にステップアップすることを目指されています。
今回は、EOSINTP 700の導入の背景、新しい取り組みのお話などを中心に、代表取締役社長 後藤敏公様、犬山工場工場長 坂下嘉一様にお伺いしました。
事業概要

後藤 敏公 様
創業は、昭和26年7月です。戦後間もない頃に、父と伯父の2人でスタートした有限会社です。その後、昭和39年1月には、株式会社みづほ合成工業所として組織変更を行い、昭和41年には、中川区に土地を購入して、工場を拡張してきました。そして、2004年2月に新たな成長を目指して、犬山工場を開設し、稼動を始めています。
当社は、重電用の電線、変圧器や電力を遮断する周辺部品などを中心に、OA機器、家電などいろいろな分野の部品を手掛けています。
RP粉末焼結造形機の導入
【金型よりも部品を造形】
当社はプラスチックの量産メーカです。そのため、商品開発があると金型の発注をしますが、金型を量産にうまく乗せるためには、やはりプラスチックの量産メーカーとしてのノウハウがたくさんあります。それを金型メーカーさんに伝えて、要望通りの金型にしてもらうには、どうしても納期と価格が絡んできますし、お客様の意向もありますので、やり取りが複雑になってしまいます。だからといって、当社で金型を作るには、莫大な投資と何よりもプラスチックで物を作るのとは全く違う技術が新たに必要になってしまいます。
そこで、自分達のレベルで金型を作る方法はないかと考えたとき、積層造形で作れば速いのではという発想で、RP粉末焼結造形機を導入しました。
実際、導入してから金型を造形する実験もしました。しかし、金型として使用するにはまだ不十分なところが多かったため、現時点では断念しました。
それよりも、金型レスで自分達の新たな分野を開拓したほうがいいと考えて、ナイロン粉末の積層造形に特化した部品作りに力を入れています。やはり、プラスチックそのものを作っていたほうが、プラスチックメーカとして技術的に特化できますし、お客様から見ても一貫性がある姿勢になります。
【RP粉末焼結造形機はカンフル剤】
先代から受け継いだお客様は、とても良いお客様ばかりで、安定した仕事の受注ができていましたが、それでも売り上げは、2/3以下に下がってしまいました。この原因は、会社として新たな技術開発や設備投資に力を入れない時期が10年間あったためです。今さらプラスチック成形機に投資をしても、他社はどんどん先に進んでいるので、とても追いつけません。そのために、カンフル剤のように新しい技術、機械を導入したほうが早いと考えてRP粉末焼結造形機にしたのです。
社内では、こんなに高価なものを買ってどうするのかという人と、新しい技術に積極的に取組みたいという人と、両極端な反応がありました。結果的には、当社には粉末焼結造形の技術があると、営業が胸を張ってセールスに飛び込んで行けるようになったので、非常に良かったです。そして、今まで拾えなかった品物を1アイテム、2アイテムと受注できるようになりました。それで、この3~5年は売り上げを挽回してきています。
また、RP粉末焼結造形機を持っていることで、今まで量産メーカだったものが、上流の試作分野まで上がって、デザインについても、お話をさせていただけるようになってきました。当然、当社はCADの技術も持っているので、そういう意味でも広がりはあります。
EOSINT P700の導入
RP粉末焼結造形機は、6年前に300mmクラスを1台導入し、その2年後に1台増設しています。
最近では300mmクラスの機械であれば、他社も導入されてきましたので、この近辺では飽和状態になり始めていました。そこで、他社との差別化のために、生産力のある機械を持てば、新しい方向性にも繋がると考えてEOSINT P700の導入を決めました。逆に、300mmクラスの機械を何台も並べることには意味がなく、EOSINT P700以外の機械は考えられませんでした。ただ、当初考えていた時期より、半年も早く導入することになりましたが、HZSの営業が訪問してきたタイミングも良かったのかもしれません。
今から思うと、大きなものを焼結できる技術を早く習得してしまえば、当社の特長のひとつになるので、やはりEOSINT P700を導入して良かったです。
EOSINT P700は、2004年6月に導入し、7月から本社で稼動を始めて、12月に犬山工場に移設しています。


EOSINTP 700の利用
【試作品の作製】
EOSINTは、車系の部品やOA機器、建築系の工具類などの大物や、まとまった数量を一度に造形しなければならない時に使っています。また、試作品を機能部品として使われるお客様が多いので、そういう時は、寸法にも気を使って造形しています。いろいろな分野で、今後も使い勝手は出てくると思います。

坂下 嘉一 様
最近の風潮として、お客様がデータを渡してから最短何日で造形できるかを分かっているので、急いでいる場合は、1~2日後に納品というのがすごく増えました。そうすると1回造形にかけて何かのトラブルで止まることがあれば、次のお客様が入っている場合は大変です。夜中に行って取り出して、次を流して、朝出勤してくる人と入れ替わりで帰ったことも何回かあります。
量産の場合は、1日や2日で追いつく仕事ではないので、1ヶ月前から忙しくなることを予測して、調整できますが、試作は、1週間で様子が変わるので、先が読めません。
【量産の提案】
日本でモノ作りをしていく上では、お客様からいただいた図面通りに、単に部品を作るだけではなく、自分達の方から、その部品をより良く、より高品質に、低コストで作るためのアイデアを出して、提案できる会社を目指しています。
量産のお話をいただいて、その用途と要望を聞いてから、当社のいろいろなノウハウを入れた試作品をEOSINTで作ります。この試作品を持ってお客様に提案しに行きます。実際、お客様が持たれているのは図面なので、この試作品を見ながらお話をさせていただくとスムーズに進みます。また、金型を発注する場合も、試作品を見ながら打ち合わせができるので、金型メーカーさんとの意思の疎通も早いです。確かにEOSINTで作るとイニシャルはかかりますが、打ち合わせが早く進むという利点があります。また、提案した試作品で受注できれば、量産の生産性はかなり上がります。
【試作のマックスサイズ】
金型を使う成形品の世界では、その大きさが600~700mmを超えるとわずかな成形条件の変化が製品ではミリオーダーで寸法が変化します。そのため当社として、試作での品質をどこまで煮詰めて、お客様にお出しするのかという課題があり、現在は試行錯誤を繰り返しながら色々な条件を煮詰めているところです。
量産のプラスチック部品では、200mmを超えると工場の設備、運送用トラックなどいろいろと変わります。さらに500mm以上になるとまた変わり、全く違う世界になります。当社はプラスチックのプロとして、500mmまでの部品であれば、自信を持っています。そうするとEOSINT P700というのは、ちょうどMAXサイズになります。
【記念品を社内で作成する】

左右に名刺とCDが入ります。
犬山工場の内覧会用記念品を造形機で作りました。もちろん組付けなしで、一体で造形しています。この記念品の題名は「希望への階段」です。社員が皆で意見を出し合って、自分達のコンセプトで作り上げたものです。会社の中だけで設計からモデリング、最終形状まで完結して作ったというのは、この記念品が初めてです。こういう活用の仕方が、EOSINTらしい使い方です。これまでは、主としてプラスチックの部品を量産品として作っていましたが、製品として完結するものは、そう多くありませんでした。確かにコストは高いですが、自分達で考えて作れるわけですから、まさしく、今後の展開に希望を持たせてくれた機械です。
【社内冶具の作製】
材料はリサイクルできますが、作る製品のクオリティーを考えるとかなりの量を廃棄することとなります。そのため、廃棄材の一部は社内の冶具用に使っています。これまでは、冶具用に図面を引いて、他社に依頼してプラスチックを削ってもらったり、購入したり、鉄ものを頼んだりしていました。今は、再生材を使って、自分達でちょっとしたアームを作ったり、台やコントロールボックスを作ったりしています。今までのように社外に発注し購入したほうが安いかもしれませんが、自分達が作るという面白みがあります。この1mmをどうにかしたいとか、そういう用途には向いているし、自分達の自由に作れるのでやりやすくなりました。また、ほんの一部の冶具ですが、お客様の要望で販売したこともあります。
【量産部品として】
プラスチックの材料は、多種多様で、いろいろな材料があります。ですが、使用状況や製品の最終的に求められる機能を考えたときに、積層造形の材料で7~8割は、まかなうことができると思っています。ただ、規格の問題や安全性、PL法などありますし、何より今までやってきた実績と値段の問題があります。そう簡単には普及しないと思いますが、金型が不要で、形状も自由に変更できて、特殊オーダーに関しては、非常にフレンドリーなやり方なわけです。こういうやり方が、何らかの形で確立されても、おかしくないはずだと考えています。

材料費が、今の1/10になって、機械もイニシャルコストが半減されれば、ある意味で産業革命は起きるのではないかと思います。射出成形用ペレットの汎用材と比較しても、決して見劣りはしないと思います。
今後の課題と展開
【セットアップ】
EOSINT P700は、既存の他のRP粉末焼結造形機とサイズが違うので、手法は同じでもコントロールの仕方が全く違います。また、基本的な構造も違うので、そういう意味では機械装置自身をコントロールしていく必要があります。どうしても、他社のRP粉末焼結造形機とEOSINTを比較してしまいますので、どちらかにできて、どちらかにできない部分というのがはっきり出てしまいます。たとえば、積層厚のデフォルトも0.15と0.1で、造形したクオリティーも違います。そのため、何をしたかというと、まず、最初にEOSINTで0.1積層の造形条件を出しました。もちろん時間もかかり、コストもかかりますが、外観的・品質的にはこちらのほうがいいです。この条件で造形するにはどうしたらいいのか、まだ詰めないといけない部分はあります。ただ、最初にきちんとしたセットアップをすれば、後は、こちらがどうコントロールしていくのか、スケールをどう見ていくかで、操作することはできると考えています。
【小ロットに対応】
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サイズの大きなEOSINTを導入したメリットを活かし、少量多品種の量産への展開を図っていきたいと考えています。今後は、他社もEOSINT P700を導入され、台数が増えていくことが考えられます。粉末焼結造形機自体が、世界的に、また日本では特にこの中部地区に多く導入されています。ですから、みづほ合成として、何をセールスポイントとして持っていられるのかということです。やはり、量産からきていますので、それぞれのニーズに合った小ロットものに対応していきたいと考えています。
HZSへ
【材料の価格】
汎用樹脂の材料価格が大体100~300円/kgです。エンジニアリングプラスチックで500円/kgからいくら高くても1,000円以下です。そこがターゲットで、試作以外で使おうとしたときに、材料コストで引っかかってしまいます。また、装置本体が高額なので、時間チャージも必然的に高い設定となってしまいます。ですから今の材料費の1/3の価格設定になれば、かなり変わってくると思います。
【フィールドの技術提供】
HZSのフィールドの方の電話応対もいいですし、スピーディに対応していただいていますが、中部に常駐していないので、どうしても不便さを感じます。それからEOSINTはP、M、Sといろいろな種類の機械があり、全部の技術習得は難しいと思いますが、できるだけ、高い技術提供をしていただけるフィールドの方を増やしていただきたいと思います。
【要望のフィードバック】
ユーザの要望をHZSからEOSへ伝えてもらっていますが、日本からの提案が反映されて、ユーザにフィードバックされるとありがたいです。
今後もいろいろな部分で、HZSと協働して取組んでいきたいと思っています。
おわりに
新設された犬山工場内で、ガラスマットのFRP成形やEOSINTP 700の造形などを見せていただきました。重電に関する製品は、普段目にすることがありませんので、非常に勉強になりました。
大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
会社プロフィール


株式会社みづほ合成工業所
本社 | 名古屋市中川区乗越町2丁目41番地 |
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犬山工場 | 犬山市字高根洞5番26 |
創業 | 昭和26年7月 |
設立 | 昭和31年11月 |
資本金 | 1,800万円 |
従業員 | 40名 |
事業内容 | 合成樹脂の成形加工及び電機部品の製造販売 |


ブレーキモールド


