RPシステム部 橋爪 康晃 |
e-Manufacturingとは
EOSが提唱する新しいものづくりのコンセプト。
定義は「迅速に、柔軟に、低コストで、デジタルデータから直接製品を自動的に生産する手法」
はじめに
このコラムでは、3次元CADデータから直接製品を造形するレーザー焼結型RP(ラピッドプロトタイピング)システムEOSINTシリーズについてご紹介してきました。今回は、5月中旬にドイツで行われたEOS IUM (International User Meeting)で発表された内容をピックアップしてご紹介いたします。
EOS IUM(International User Meeting)
EOS IUMは、毎年3日間のスケジュールで行われるEOSINTのユーザ会です。EOSからの各種発表、外部講師による講演、お客様からの事例紹介、複数のテーマに分かれてのディスカッションが行われました。今回の参加者は合計180名で、日本からは8名が参加しました。内容は、昨年までと変わり、EOSの代表からの講演の後は、大きく下記の4つのInfoshopに分かれ、セッションが同時進行する形式となりました。各Infoshopで6セッション、2日間で計24セッションが行われました。参加者は関心のあるセッションを自由に選択し、出席するという仕組みです。4つのInfoShopは次の通りです。

少人数で積極的なディスカッションが行われました。
① 「Design for e-Manufacturing」
② 「e-Manufacturing vision & reality」
③ 「e-Manufacturing solution EOSINT P」
④ 「e-Manufacturing solution EOSINT M」
この形式は、同じテーマに関心を持つ参加者が少人数で、より詳細な内容に触れたディスカッションができるようになっていたので、好評でした。
EOSのビジョン、コンセプト
EOSが提唱するコンセプト「e-Manufacturing」を実践する事例が増えていますが、EOSのランガーCEOからのプレゼンテーションでは、EOSが考えるものづくりについて新しいキーワードが説明されました。
■Any shape, Anytime, Anywhere
どんなカタチでも、製品ライフサイクルのどのフェーズでも、どの業界や製品でも適用できるという考えです。これは、材料や装置が改良され、使用するお客様の意識も変わり、RP=試作という枠組みではおまらない可能性があることを表しています。
■Design Driven Manufacturingへのパラダイムシフト
今までのデザイン・設計は、常に製作する工法を前提とする必要がありました(Manufacturing Driven Design)。しかし、EOSINTの技術を使うことでその制限を無くし、「まず、デザインあり」のものづくり(Design Driven Manufacturing)へのパラダイムシフトが実現できるのだという考えです。
Infoshopの概要
■Infoshop ① : Design for e-Manufacturing

機械的間接機構を使用しないロボットアーム
これは、EOSINTを活用したe-Manufacturingを効果的に行うための新しい設計手法を提案するInfoshopです。EOS社員の他に、お客様、研究機関、コンサルティング会社などから講師が招かれて、ディスカッションやハンズオンが行われました。製品設計自体がEOSINTの使用を前提とした事例も発表されました。写真2は、機械的な間接機構を持たず、部品点数を極力減らしたロボットアームです。ナイロンの柔軟性を活かした構造と筋肉のようにエアで収縮するチューブを使用しています。欧米で関心が高まっている自然界の動植物の構造を参考にする、という手法も含む興味深いモデルです。
■Infoshop ②:e-Manufacturing vision & reality
こちらもコンサルティング会社やお客様から発表が行われました。中でも注目されたのは、写真3のサッカーシューズです。選手の足型、骨の構造、筋肉の付き方、体重などを考慮して最適化したソールを使用しています。選手の能力を高めることはもちろんですが、ケガを少なくし、結果的に選手生命を長くするということまでが設計視野に入っています。
写真4は、製品として発売されている医療ツールです。EOSINTを使用して1回の造形で100ユニットを生産しています。この他にも事例や今後の取り組みなどが紹介され、既に実現しているe-Manufacutirngを知ることができる内容でした。

選手の足に最適化されたサッカーシューズ

製品として発売されている医療用ツール
■infoshop ③ : e-Manufacturing solution EOSINT P
このInfoshopでは、EOSINT Pの製品情報に関するセッションが行われました。その中で発表された新材料についてご紹介します。
- CarbonMide(カーボン入りナイロン)近日発売予定
従来のPAベース材料よりも、軽量かつ強度の高い材料です。すでにF1チームなどで実績があります(試作、実装両方)。 - PA210FR(難燃ナイロン)近日発売予定
UL94規格に準拠した難燃性能を有する、最終製品の生産を目的とした材料です。既に一部の航空機部品に適用されています。

カーボン入りナイロン

難燃ナイロン
■Infoshop ④ : e-Manufacturing solution EOSINT M
このInfoshopでは、EOSINT Mの製品情報に関するセッションが行われました。その中で発表された新材料についてご紹介します。

- EOS StainlessSteel 17-4(ステンレス)
EOSINT M用のステンレス(17-4)材料です。今までと同様のプロセスで造形しますが、全体を高密度に造形することでステンレスとしての物性を実現しています。写真8は、サンプルに曲げや捻りを加えたものですが、積層断面で破損することもなく曲がり、捻れています。既に一部の航空機メーカなどが製品の製作に使用しています。


左は造形したパーツを曲げたもの
右は造形したパーツを捻ったもの
- EOS CobaltChrome MP1(コバルトクロム)
EOSINT M用のコバルトクロム材料です。EOSINT M用材料の中で最も硬い金属材料です。また、耐熱性能も高くなっており、機能部品から医療関連まで幅広い適用が期待されています。



- EOS Titanium(チタン)
パイロットユーザでの試用が開始されました。チタン合金と純チタンが準備されています。


おわりに
e-Manufacturingを実現する新しい生産ツールEOSINTシリーズは、ますます進化しています。ぜひ、ご検討いただきますよう宜しくお願い申し上げます。