人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.45 | お客様事例
EOSINT P700で
お客様にとってなくてはならない存在になる

株式会社長坂様は、樹脂試作加工、組付加工、製造の3分野で高い技術力を持たれ、「お客様にとってなくてはならない存在になるために」という経営理念のもと、社員一丸となって最先端技術に取り組まれ、新しい分野にも挑戦されています。

今回は、EOSINT P700の導入の背景、効果や現状などのお話を中心に代表取締役 長坂撤蒔様、試作部 試作1課1係 係長 池田彰彦様、試作部 試作1課1係 松本亮様にお伺いしました。

事業概要

代表取締役 長坂 撤蒔 様の写真
代表取締役
長坂 撤蒔 様

当社は、試作部門と製造部門とに分かれており、試作製品から量産製品まで、幅広くお客様のご要望にお応えしています。設備としては、造形機2台、切削加工機(ロボドリル)4台、N/C彫刻機6台、超精密高速加工機1台、マシニングセンタ1台、レーザ加工機1台を保持しており、お客様から求められる短納期に対応するための体制を整えています。

【試作部門】

試作部 試作1課1係 係長 池田 彰彦 様の写真
試作部 試作1課1係
係長 池田 彰彦 様

試作部門では、カーエアコンと自動車のメータ回りの試作製品を主に手掛けています。私共の仕事は、新規に試作製品を造る場合と、既存のケースを改造する場合があります。現在は、改造を依頼されることが多くなっています。簡単に言うと、変更する部分を切り取って、新しく改良したものを付けるという方法です。改造では、製品とデータが異なる場合もあり、データ通りに治具を作製することができません。現物の形状を把握して、寸法をいかに出すか、どういう治具と加工方法で作製するか、という長年の経験から蓄積されたノウハウを持っているのが当社の強みです。

最近では、お客様から依頼される改造内容も少しずつ変わってきています。良いものを早く安くご提供するには何が必要かを、常日頃、考えてもの造りに取り組んでいます。

EOSINT P700導入の背景

お客様とのやり取りの中で、造形品の話をお伺いする機会がありました。そのとき、当社が持っていたABS樹脂造形機では対応できない依頼が多くあり、お客様がこれから求めるものは粉末造形だと思いました。そして、造形機で製品を造り、短納期でお届けすることが必要になってくると強く感じました。

EOSINT P700の写真
EOSINT P700

そこで、2005年に東京で開催された設計・製造ソリューション展(DMS)を見学に行きました。展示されている造形品を見るまでは、粉末造形機の精度、表面粗さは、まだまだ十分とはいえないと思っていました。それに、ABS樹脂造形機は良い点もあり、当社の仕事には合っていたので、粉末造形機への関心が低かったのです。ところが、展示会で見た粉末造形品の完成度の高さに驚きました。そして、柔軟性も強度もある造形品を手に取り、いろいろな説明を聞いて、今の粉末造形機のすごさがよく分かりました。それからすぐに粉末造形機について、いろいろと調べ、数社あるメーカの中でNDESは、サポート面がしっかりしていて、常にマシンと粉末材の開発、改善に取り組んでいることが分かり、総合的に評価、検討した結果、2006年7月1日にEOSINT P700を導入しました。

EOSINT P700の現状と効果

■粉末造形品の営業アピール

以前から造形品の仕事を行っていたので、EOSINTを活用する構想は持っていました。そのため、導入後の立ち上げも順調に進みました。

導入当初は、営業に行っても粉末造形品を理解していただくまで苦労しました。造形は品質が良くないとか、価格が高いという固定観念を持たれていたので、とにかくサンプルを造って、実際にものを見ていただきました。そして、従来のやり方よりも価格は安く、機能部品に使える強度もあるので、実車に付けて実験ができるメリットを説明し納得していただけました。今ようやく軌道に乗ることができて、今年に入ってから材料を発注することが多くなっています。それだけお客様から依頼があるということです。造形品の営業に行くと、EOSINTに実績があることが何より一番心強いです。それから、驚かれるのがワークサイズです。大型製品の一体造形や多数個取り、セット品での造形でも短納期に対応できます。EOSNIT P700を選んだ一つの狙いでもあります。そして現在では、ナイロンとガラス入りナイロンのご要望に応えられる体制を整えています。昨年の自動車業界では、過去にないほど開発を控えられ試作も減ってしまいました。通常であれば設備導入を見送りますが、逆にチャンスだと思いトレーニングやいろいろな造形テストを繰り返して準備をしました。その結果、トラブルもなくお客様へご提案できています。今年であれば、忙しくて時間をかけられませんでした。

■ノウハウの蓄積

試作部 試作1課1係 松本 亮 様の写真
試作部 試作1課1係
松本 亮 様

EOSINTで造形した全ての製品データの記録を導入当初から蓄積しています。短納期の仕事ではひとつの製品にかけられる時間は限られています。そこで一度造形したものはできる限り記録して、次へ活かすことを常に心がけています。また実際にお客様へお渡しする製品で実験的なことはできませんので空いた造形スペースにテストピースを配置するなどして少しずつ設定の見直しをしています。収縮率、配置、設定、材料のリサイクル比率など粉末造形機は奥が深いです。逆にそれが面白みにつながってEOSINTを導入してから、ものを造ることの楽しみを今まで以上に実感しています。まだ毎日が勉強ですが、他のEOSINTユーザのご意見をお聞きしながらやってこれたのが、当社のノウハウになっています。特に、信頼できるユーザが当社の近くだったことが選定理由のひとつでもあり、EOSINTを通して横のつながりもできました。

■造形パーツと治具

自動車の開発で依頼される試作製品は、既存製品の改造になります。従来の工法では1週間~10日はかかっていましたがEOSINTを使用することにより3~4日で造れるようになりました。改造の場合、造形パーツと切削パーツを組み合わせて、各パーツは接着して強度を保持します。過去行ってきた技術と新しい技術を融合させてひとつの製品を造るという独特な造り方ですが、EOSINTを導入した狙いでもあります。

CAD/CAM室の写真
CAD/CAM室

それから、試作製品は製品によっては数十個納品することもあり、同じ精度で組み付けるための治具や、結合する部品の精度を確認する治具などもEOSINTで作製しています。そしてEOSINTで造形した形状も2次加工しています。もし、造形で形状が出せなかったとしても加工することで補うことができます。このようにEOSINTを導入したことで、工場内の作業がガラリと変わり、加工者の負担を大きく削減できました。その結果、コスト、納期面でお客様のご要望にお応えすることができています。

■社員のモチベーションを上げる

新しい機械の導入は、若い社員たちのモチベーションを上げることに大変役立ちます。多くの社員は、新しい機械を使ってみたいと思ってくれます。そしてEOSINTも担当者に聞くと、造形することが楽しいと言います。どこにでもある設備ではないので、高価な機械を任されていることに責任感も出てくるし、やりがいにつながっています。

■EOSINTの有効活用

EOSINTの造形品の写真
EOSINTの造形品

EOSINTを有効活用するために工夫したり自社開発しているものがあります。例えば造形品の冷却です。造形時間に対して多くの冷却時間が必要なため納期の調整などがとても難しくなります。少しでも早く良い製品をお客様に届けられるよう造形品が早く取り出せる工夫やマシンが毎日動かせるようなモデル配置、モデルカットなども工夫しています。それからお客様の要望の多い含浸対策も独自に行っています。EOSINT P700のワークサイズに合う真空含浸装置がなかったので、これも自社で研究、作製しました。装置内に造形物を入れ、含浸液を十分に吸わせることで、より気密性を上げることができます。このようにお客様の要望に応えようとすることで自然と開発案は出てくるものです。特に当社は、社長、課長が寛大に見守ってくれるので、思い切ったことができます。

■経営理念の浸透

経営理念でもありますが、お客様にとってなくてはならない存在になろうと、そのことを心がけて常に仕事に取り組んでいます。EOSINTを導入したのもこの経営理念からきています。このように、社員が同じ意識を常に持つことを浸透させるには、繰り返し言うことだと思います。当社では毎月一回、経営委員会があり、係長以上が参加しますが、このミーティングでも繰り返し話しをしています。基本はボトムアップで打ち上げて、社員が各々の意思で行動するというのが方針です。そういう意味では、理想的な会社になってきたと自負しています。

経営理念

そこになくてはならない人となることを常に心がけ、そこになくてはならない会社創りに努力する。

■ISO9001、14001の取得

当社ではISO9001とISO14001を取得しています。ISOを取得してからは、特に品質、環境、教育についての考え方が変わりました。品質では、試作部門にも製品を造り上げるための品質保証工程図を確立しています。どのような短納期であってもその工程を抜くことなく、作製する体制を取っています。環境では、廃材のマテリアルリサイクル化を目標にしました。廃材をそのまま産廃業者に出すのではなく、捨てる材料を新しい材料に再利用できないかと、リサイクル業者を探しました。そして、資源を大切するという環境への最初の目標を実現できました。しかし、当社だけで廃材の再利用をしても、他社が産廃にするのでは意味がありません。地球環境のためには、NDESを通して他社にもリサイクルを浸透させていただければと思います。それから、教育にも力を入れています。EOSINTだけではなくて、CAD/CAM、切削加工や組付けなど、全てはそれらに携わる人によって品質が左右されるため、人材育成を重要テーマのひとつとして取り組んでいます。

今後の展開について

■新しい分野へ

造形機選定の検討段階に、単独でドイツのEOS社 へ見学に行きました。そのとき、ヨーロッパでの医療分野の活用や航空機に対する取り組みなど、参考になる情報をいろいろと教えていただきました。特に医療は、日本では聞けないような事例で今後のビジネスに面白さを感じました。今は、家電、医療、航空機などの新しい分野へ進出する準備として、EOSINTのノウハウを蓄積しているところです。

そして今後、EOSINTが1台では足りなくなった場合、2台、3台と増設する必要がでてきます。そのとき、世の中の状況を把握しながら新しいビジネスにつなげていこうと考えています。それから主要なお客様の会社へは歩いて5分で行けます。地の利という大きな利点もうまく活かしていきたいと思っています。今でも自動車関係で切削でしかできないものがあるため、いかにEOSINTを使って精密なものができるか挑戦したいと思っています。そして、さらにEOSINTに付加価値を付けていくことが今後の課題でもあります。

■International User Meeting(IUM)への参加

昨年、IUM 2006に参加しました。各国のいろいろな分野での粉末造形品の活用事例を聞くことができ、すべてにおいて視野が広がりました。多分野で活躍できる可能性を持ったこのEOSINTを今後の営業につなげたいと思いました。

そして、是非今年もドイツへ行きたいと思っています。

International User Meeting 2006 Special Event

eosアジア/パシフィック地域担取締役 ハリーディアリグル氏と商談する長坂社長の写真
eosアジア/パシフィック地域担取締役 ハリーディアリグル氏と商談する長坂社長
eos最高執行責任者ヨハンオーバーホファー氏、長坂社長、池田係長、松本様の写真
右からeos最高執行責任者ヨハンオーバーホファー氏、長坂社長、池田係長、松本様
eos本社の写真
eos本社にて

■微細加工への取り組み

精密高速加工機を導入して、アクリル材の鏡面切削加工の研究開発を進めています。まずは、アクリルの鏡面出しということを目標に上げて取り組み、将来的には微細加工の分野に進みたいと考えています。現在では精密高速加工機を使うことで、より鏡面に近い状態まで仕上げられるようになりました。これにより手作業での磨き加工の時間が大幅に短縮できるようになりました。

NDESへ

万が一EOSINTにトラブルが発生しても大切なお客様にご迷惑をおかけすることはできません。その様な時のサポートを今後ともよろしくお願いします。また、お客様の中には、製品の機能性を見たいので造形を透明にしてほしいという要望もあります。透明な材料の開発も含めて新材料の研究もよろしくお願いします。日々、EOSINTを使っていて感じることは、自分ひとりやっているのではないということです。オペレーションはひとりでも、見えないところでユーザのために研究、開発をしている方々がいたり、連絡するとすぐサポートしてくださる営業やエンジニアの方々がいます。このことが私共が安心して仕事ができる力となっています。

おわりに

取材の中でも、社員の方々に経営理念が浸透されていることがよく分かりました。そして、本当に楽しんでもの造りをされているからこそ、工夫や改善に積極的に取り組まれ、意欲的に新しいことへの挑戦ができるのだと感じました。

大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

会社プロフィール

本社の写真
本社

株式会社 長坂

本社〒448-0034 愛知県刈谷市神明町1-16番地
創業1963年3月
設立1963年11月
資本金1,000万円
売上高19億円
従業員93名
事業内容自動車冷暖房用ホースサブアッシー部品製造
自動車冷暖房用樹脂製品の製作(試作品)
自動車メーター用樹脂製品の製作(試作品)
試作ケース類の製作
自動車冷暖房機器用ドライヤの製造
各種検査、組付け治具の製作

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