人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.50 | 社長インタビュー
e-Manufacturingの実現に向けて
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EOS GmbH
EOS Founder および CEO
Dr. Hans J. Langer

Dr. Hans J. Langer 略歴

1952年 ドイツKrumbach生
Technical University Munich卒業 物理学専攻
1980年 Ludwig Maximilians Universityから工学博士号を受ける
1981年 Carl Baasel Lasertechnik社にて営業・マーケティング担当
1985年 General Scanning社の欧州支社の支社長
1989年 EOS社設立 CEOに就任
人物の写真
NDES
RPシステム統括部長
執行役員 古川 治男

古川 弊社は1993年にEOS社の光造形システムの販売を始めて以来、15年にわたってお付き合いさせていただいています。1997年に粉末焼結型RPのEOSINTの国内総代理店契約を締結し、より深い関係を築いております。今回、設計・製造ソリューション展にあわせて来日されましたので、EOS社の戦略などのお話しをお伺いしたいと思います。

EOS社について

古川 EOS社の状況を教えてください。

Langer 昨年度(2006年10月~2007年9月)は79台を出荷し、6千万Euro(約100億円)の売上高を達成しました。今年度(2007年10月~2008年9月)は、初めて年間100台の出荷を見込んでいます。

現在の従業員数は全世界で270名で、大半はミュンヘン近郊にある本社に勤務しています。アメリカ、イギリス、フランス、フィンランド、イタリア、インド、韓国に営業・サポート拠点を設けており、昨年シンガポールにテクニカルセンターを設立しました。世界中で20以上の代理店が活動しています。

RP市場のトレンド

古川 RPの市場トレンドをどのように分析しておられますか。

Langer プラスチック部品を製作する分野は依然として重要です。自動車、家電、その他の消費材製品等の大きな分野はシステムの幅広さや材料の多様性から大きな効果を得られます。例えば今年は、EOSINT PやFORMIGA用の4種類の新しいプラスチック材料を発表します。

新材料MaragingSteel MS1により金型分野での課題が解消され、最近、金属造形装置(EOSINT M)は大きく飛躍しています。医療分野(インプラント、歯、義肢、医療機器等)も主にカスタマイズ製品が対象になり、非常に大きな成長をとげています。この分野ではチタン、コバルトクロム、ステンレススチールなどが使われています。

砂型やロストワックス等による鋳造分野の技術は数年前から確立されており、特にアジアでは今後も伸びが期待できそうです。

航空機分野もまた粉末焼結型RP技術がより多く受け入れられつつあるポテンシャルの高い分野です。その他の分野でも試作品製作だけでなく、最終製品の製作に多く使われています。

古川 EOS社はe-Manufacturingというキーワードを提唱していますが、あまりなじみのない言葉だと思いますのでご説明いただけますか。

Langer e-Manufacturingという言葉は、単にrapidという言葉に比べて試作分野だけでなく最終製品の生産にも役立てるというようなイメージを含んでいます。特にデザインの自由度とコスト削減の可能性はお客様にとって重要です。従って、当社はe-Manufacturingを「迅速に、柔軟に、低コストで、デジタルデータから直接製品を自動的に生産する手法」としてご提案しています。

世界市場の状況

古川 世界各地域での市場状況を教えてください。特に日本は欧米に比べて少し遅れているように感じますがいかがでしょうか。

Langer ヨーロッパでは、世界を代表する自動車会社や当社と一緒に新製品や新しい応用分野を開拓する柔軟で革新的な会社等が数多く存在しています。ヨーロッパは当社にとって重要な地域です。

アメリカの多くの会社も同様に新技術の探求と迅速に適応する柔軟な姿勢をお持ちです。アメリカへの市場参入は、2004年に解決するまで特許問題により遅れていました。その後、事業は伸びており、将来的にも非常に大きなポテンシャルを持った市場として考えています。

アジアは、開発状況や投資に対する考え方など非常に異なった産業構造を持っています。日本はアジア最大でかつアジア諸国の方向性にとても重要な市場です。ここ2~3年、日本で粉末焼結型RPが浸透しつつあることを実感しています。しかし、様々な理由からここまでくるのに欧米より時間がかかりました。CNC高速加工機や光造形装置との競合は他の地域よりも厳しく、新技術採用への意志決定プロセスは欧米よりも時間がかかるという理由からです。日本は保守的であると言わざるを得ませんが、お客様の成果を見る限りそうではないとも言えます。いくつかの革新的なアイデアは日本から発信されているので、e-Manufacturingの概念が、もっと多くの日本のお客様に浸透するような活動を行っていきたいと考えています。

EOS社の強み

古川 競合他社に比べてEOS社の強みは何でしょうか。

Langer 当社は、競合他社には見られない戦略的で長期的視野に立ったアプローチを持っています。1つの例として、1997年に光造形技術の制約や将来性と市場が飽和していることを考慮して、その事業を売却しEOSINT事業に集中したことがあげられます。当社の強みの1つは、いかにお客様をサポートできるかです。最も良い戦略は、お客様のお役に立つソリューションを見つけられるかどうかにあります。他の強みは所有する特許権利です。それは当社の技術改革やご利用になるお客様を特許侵害の問題から守るために非常に重要です。一方、この技術に関連する市場を開拓していくために競合会社にもその特許権利の使用を認めている場合もあります。そして、当社はこの業界のリーダーポジションを維持するために平均以上の開発投資を続けています。競合会社が売上高の10%以下の開発投資しかしていないのに対し、当社は毎年15%以上の投資を行っています。

古川 顧客満足についてEOS社のポリシーを教えてください。

Langer 新しい製品ラインや技術の応用性をお客様と一緒に開発していくことが当社のポリシーです。お客様のニーズの変化を常に感じられるように、お客様とより密接に対話させていただくことを行っています。例えば最近は品質管理の優先度が高くなりつつあり、特に日本のお客様からのご指摘は、当社の製品やプロセスの改良に非常に重要で役に立っています。

RP技術とEOS社の将来方向

古川 RP技術およびEOS社の将来像をどのようにみておられますか。

Langer RP技術の中心は、試作分野から量産分野へシフトしてきています。デザインの自由性は現在の想像を越えた製品を生み出し、製造概念を変えるでしょう。当社はカスタマイズされた医療分野製品がもっと増えていくと考えていますし、一般消費材製品や工業製品でもそれは同様です。鋳造や切削加工等の他の技術との組み合わせによるソリューションも増えていくでしょう。

当社は、これらの大きなポテンシャルを持っているe-Manufacturing分野に集中し、お客様とともに開拓しながら、市場に対する存在価値をより高めていきます。

NDESへの期待

古川 NDESはEOS社の日本での総代理店です。今後NDESに何を期待されますか?

Langer 当社がリーディングカンパニーの位置を守り、また拡大しようとすれば日本で強力なパートナーが必要です。当社の組織だけでなく代理店にとっても優秀な人材確保は成功の鍵です。当社は、NDESが人材の確保とその教育を重要にとらえていると考えています。さらに、お客様のサポートのためにテクニカルセンターを設置し、昨年設備も強化されています。今後も継続してもらいたいと願っています。

古川 当社も最近EOSINTの認知度・お客様のご期待が高まっていることを実感しています。皆様のご要望にお応えできるようにEOS社と頑張っていきたいと考えていますので宜しくお願いします。今日は、ありがとうございました。