RPシステム統括部 営業グループ 橋爪 康晃 |
はじめに
このコラムでは、3次元CADデータからダイレクトに製品を造形する粉末焼結型RP(ラピッドプロトタイピング)システムEOSINTシリーズとFORMIGAについてのさまざまな情報を発信していきます。
世界にひとつだけのデザイン
株式会社ケイズデザインラボ様(http://www.ksdl.co.jp/)では、3次元ツールを活用したデザインプロセスイノベーションを実現するためのさまざまな実験を行っています。これまでもオリジナルデザインの一点モノの照明器具や、視覚障害者の方にも芸術を楽しんでいただくために、触れる絵画をEOSINTで出力するといった先進的なアプリケーション開発を行っています。今回は、3次元スキャナー、FreeForm、CAD、RP/RMを活用して既製品をベースにデザイン変更し、効率的に付加価値を向上させるインパクトドライバーの「リデザイン」事例をご紹介します。まず製品の外装を取り外し、これを3次元スキャナーで測定します。その後、スキャニングデータを元にFreeFormでリデザインを行い、同時に機構部はソリッドCADで再設計します。最終的にFreeFormで干渉チェックなどを行った後に、RP/RMシステムで造形します。本体にはそのまま製品として使用できるEOSINT Pを適用しました。
この事例はインパクトドライバーですが、これに限らず、さまざまな製品に応用できる手法と考えられます。ケイズデザインラボ様では、現在も独自のRP/RMアプローチを積極的に継続されています。
写真1の左は、EOSINT Pで造形した本体に、既存製品の内部部品を移植したところです。右は塗装を終えた完成品です。


本格化する金属RP/RMシステムEOSINT M
EOSINTシリーズには、金属材料を使用するEOSINT Mがあります。10年近く前から各国で利用されてきました。金属粉末を焼結するRPシステムとして、試作用金型製作を主なアプリケーションとしていました。登場した当初は、鉄あるいは銅をベースとした混合材料を使用していましたが、その後の技術革新により、使用可能な材料も増え、アプリケーション領域は広がっています。

今回ご紹介するEOSINT M 270は、ダイレクトメタルレーザーシンタリング(DMLS)技術を使って金属パーツを製作します。このシステムは、レーザービームをフォーカスさせて金属粉末を部分的に溶かして硬化させます。この硬化した金属の積層によって非常に複雑なジオメトリも、3次元CADデータから直接製作します。金属そのものを造形できるRP/RM装置という点が特長です。
EOSINT M 270には、軽合金、鋼鉄類から超合金、複合物まで多岐にわたる材料が用意されています。また、現在も新しい材料開発を行っています。特に標準的な工業素材をEOSINTで使用可能にするための最適化に注力しています。このような材料を多数用意することで、より広い用途で活用してもらうことを期待しています。
■金属部品造形:Direct Part
EOSINT M 270は、金属部品を製造するのに広く使われています(Direct Part)。適用されるのは、試作品、量産製品、そしてスペアパーツなどです。金属プロトタイプを1日で製造、あるいは、個別化された大量のインプラントを毎週製造するというような特殊なニーズの場合にEOSINTは最適です。
この用途で主に使用されている材料は、コバルトクロム、ステンレス、チタンです。すでに医療、航空宇宙、モータースポーツといった領域で実際に適用されています。写真3、4は、歯科用パーツとステンレス製の医療用パーツです。写真のような歯科用パーツについては1回で約200個程度の造形が可能です。


■金型/金型部品造形:Direct Tool
DMLS技術は、Direct Toolという型製作の新しい技術として認知されてきました。 直接造形によって、機械加工の工程を少なくすることができます。金型の設計や製作手法の新たな選択肢として活用できます。このアプリーション用にEOS MaragingSteel MS1が用意されています。これは、EOSINT M270用に微粉末化されたマレージング鋼です。 その組成はUS classification 18 Maraging 300、European 1.2709 および German X3NiCoMoTi 18-9-5 に対応しています。


この種の鋼材には、高強度、高硬度という特長があります。 造形後に機械加工でき、熱処理で最大約55 HRC まで、硬化させることができます。標準的な条件で使用する射出成形金型およびそのインサート、少量のダイカストなどで既に実績があります。DMSLの特長を活かした付加価値の高い活用方法として、図2のような立体的な冷却回路があります。すでに複数の実績が報告されています。EOSINTは、応用次第で従来の金型製作に新たな可能性を付加するツールとなります。

EOSINTで造形した事例

EOSINT M 270のファイバーレーザーは、ロングライフタイムで、高いパフォーマンスと安定性を持っています。ファインフォーカスのレーザーが、従来よりも優れた細部解像度とパーツの品質を可能にします。ガスタイトプロセスチャンバーは、造形に適した環境を作るので、幅広い材料による造形が可能になっています。長年、専門会社と開発を行ってきたEOS社のDMLS技術が、近年、飛躍的に進化した結果のひとつです。
大阪テクニカルセンター(仮称)開設のご案内
大阪テクニカルセンターを開設(準備中)し、EOSINT M270を設置します。主な機能はDirect Tool(金型部品製作)、Direct Part(金属部品製作)のアプリケーションの開発とサポートです。ワークショップなどを開催し、EOSINT Mの活用に関する情報を発信していく拠点となります。見学も随時受け付けますので、ご希望の方はお問い合せください。開設日程などは別途ご案内いたします。
EOSINT/FORMIGA ワークショップ
EOSINT P、FORMIGA P のオペレーションを半日、または終日のプログラムで体験いただける少人数制のワークショップです。パートナー企業様のパートも設けて、EOSINT以外のツールもご紹介しており、RP/RMを実際に感じていただける内容です。