人とシステム

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No.58 | システム紹介
導入支援レポート(第5回)
Space-Eによる3次元金型設計の実現(2)
PLM事業本部 営業企画部
営業企画部 導入支援グループ
橋口 淳一

はじめに

Space-Eで金型の構造設計を行う場合、Space-E/Moldの機能を用いることで実現できます。
Space-E/Mold Ver.4.5では、金型設計に必要なカスタマイズを行うフレームワークを強化しました。
前回は、Space-E/Moldのユーザ部品の運用についてご紹介したので、今回は、ユーザ部品の構築方法についてご紹介します。

金型メーカの場合、一品一様の金型設計が多く、さらに取引先メーカごとに金型仕様が決まっています。そのため、3次元設計を行う場合は、一品一様の設計と流用できる設計を分けて運用することを考える必要があります。金型設計システムに要求されるキーワードは、「試行錯誤」と「自動化」です。設計で行うことは、「検討すること」と「ルールに従い決められたことを行うこと」の2つに分かれます。「検討すること」は、手順を整理することで、設計をルール化して自動化につなげることができます。

ユーザ部品の構築

図1 六角穴付きボルトのデータベース構築
図1 六角穴付きボルトのデータベース構築

Space-E/Moldでは、ユーザ部品というパラメトリック部品を構築できます。ユーザ部品を使うことで金型設計の効率は、大幅に向上します。このユーザ部品のシステム構築では、最適な方法で作成することが重要です。

例えば、データベースを定義する方法とIF文(条件式)を利用する方法があるとします。プレート高さを入力して部品のピン長さを決定する場合、データベースを定義すると複数のパラメータの値を範囲で指定することができますが、IF文を利用すると、条件として1つのパラメータの値しか設定できません。この場合、データベースを利用したほうが運用上のメリットがあります(図1)。

図2 ガイドレール部品の構築
図2 ガイドレール部品の構築

条件を絞り込むためには、どの方法を使用して構築するかを十分に検討することが重要です。
また、ガイドレールのように部品穴やその穴の位置寸法が変更される場合でも、データベースを定義することで、モデルを構築できます。穴の個数や部品の数を調整するには、非活動化索引付加、ユニット部品非活動化コマンドで属性を付加するので、その属性の値をデータベースで管理します。(図2)

テンプレート部品の展開

図3 IF 文の定義方法
図3 IF 文の定義方法

Space-E/Mold Ver.4.5では、ナレッジ機能がさらに強化されました。IF文をパラメータに盛り込むことで、試行錯誤が柔軟にできるモデルを構築できます。

前述でご説明したように、データベースを定義する方法とIF文を利用する方法を使い分けることで、設計者の試行錯誤を支援でき、設計の効率化が図れます。

予約語を用いた金型行程の連携

図4 予約語による寸法最適化
図4 予約語による寸法最適化

Space-E/Moldの特徴として、「予約語」という機能があります。これは、あらかじめ配置された部品のキー名を入力しておくことで、自動的にリンクを作成する機能です。予約語を定義した部品は、配置のときに自動的に寸法の最適化を行うことができます。

例えば、金型構想設計を平面中心で作成し、構想設計で検討したプレートのサイズを詳細なモールドベースに引き継ぎたい場合、予約語を使用すると構築できます。このように、予約語を使用することで、設計者が「試行錯誤」したデータから詳細部品を配置するときに「自動化」が実現できます。

テンプレート部品のレスポンス検討

図5 テンプレートモデルの配置と更新時間
図5 テンプレートモデルの配置と更新時間

システム構築で重要なことは、運用におけるレスポンスです。レスポンスに関しては、システムによって異なるため、まず、状況を把握する必要があります。一般的に、システム構築でレスポンスに影響するのは、拘束とリンクの作成方法です。Space-E/Moldの「軸一致拘束」と「オフセット拘束」の更新時間を比較すると「オフセット拘束」の方が早く、「軸一致拘束」の約60%の時間で更新できます。運用する上では、更新時間は短いほうがよいので、どちらの拘束を用いてもモデルを作成できるのであれば、「オフセット拘束」でテンプレートを構築するとレスポンスが早くなります。

ニーズ分析による必要とされるシステムの機能

図6 パラメータの絞り込み
図6 パラメータの絞り込み

3次元の金型設計を効率よく実現するためには、テンプレート設計と金型設計支援機能(コマンド)を使いわける必要があります。テンプレート設計における重要な機能は、「試行錯誤」を行うための、パラメトリックを基本としたナレッジ機能です。設計条件に合わせてモデルを変更し、設計者を支援することができます。

他にも設計者の試行錯誤を支援する機能として、パラメータを絞り込むことも重要です。設計の初心者と熟練者の設計スピードの差は、設計を行うときのパラメータの絞り込みであるとよく言われます。そこで、「自動化」を行うためには、パラメータのリンク機能やパラメータの引き継ぎ機能が必要になります。

おわりに

Space-E/Moldの機能向上によって、金型設計者独自の金型設計のノウハウをシステムに構築しやすくなりました。

NDES導入支援グループとして、システム構築の経験を積みながら、最適な構築のご提案ができるように努力していきます。Space-E/Moldで金型設計をご検討いただけるお客様は、ぜひNDES担当営業にご連絡ください。

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