人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.61 | お客様事例
熱変形を見込んだ金型の試作開発への取り組み

株式会社ナカキン様は、自動車エンジン部品の開発・設計・試作・金型製作・鋳造・加工・組立までの一貫体制を整えており、大手自動車メーカ様からの技術的な評価も高く、厚い信頼が寄せられている金属部品のスペシャリストです。
創業以来の鋳造技術を基に自社ブランドである高精度のナカキンロータリーポンプや自動充填機などを開発し、食品・飲料品・医薬品・化粧品などの分野で活用されています。

今回は、21年度「ものづくり中小企業製品開発等支援補助金(試作開発等支援事業)」の取り組みによるSpace-E、解析ソフトの導入背景、その効果などのお話をお伺いしました。

事業内容

工場長 根本 武司 様
工場長 根本 武司 様

当社は、軽合金、産業精機、金型の3事業部で構成され、創業以来培ってきた「鋳造技術」を基に、インテークマニホールドなど自動車用エンジン部品を中心として、開発・設計から生産までを一貫体制で行っています。

また、食品・医薬品・ファインケミカル用サニタリーロータリーポンプ、充填機などが幅広い分野で使われています。このポンプ・充填機は自社ブランドになります。本社は大阪、工場は枚方、春日、鳥飼の3箇所、営業所は東京にあります。

我々が所属する金型事業部の鳥飼工場は、当社工場の中でも一番古く50年余の歴史と実績を持っており、CAD/CAMシステムを駆使し、蓄積された経験と最新のテクノロジーを融合することで、より一層の信頼性と堅実性を向上しています。

金型事業部は、主に自動車エンジン部品の鋳造用金型の設計・製造を行っています。当初は木型からスタートして、それが時代のニーズとともに金型に替わってきました。昔から金型は仕事の波が激しく、それを安定化させるために自社ブランド品を立ち上げようと始めたのがポンプ事業です。

ものづくり試作開発等支援事業

近年の金型を取り巻く環境は、受注数の減少、受注価格の下落、海外メーカの台頭など年々厳しさが増しており、他の競合メーカに負けないためには独創的な技術の獲得が必要だと考えていました。

以前から、お客様には鋳造トライ&エラーの回数を減らして試作コストを抑えたいというご要望をいただいていました。

この原因を追及していくと、金型の熱変形が製品に転写されるため、寸法精度に悪影響をおよぼして試作回数を増やしていることが分かりました。

このような金型の熱変形は、金属の性質上避けることができない現象です。特に鋳造時には、アルミを溶かした溶湯の温度は700℃ほどあり、その熱を受けて瞬間的に金型の表面温度が500℃まで上がります。これだけの熱を受けると高温でバラツキのある温度になるため、金型は変形して反った状態になります。

そこで、熱変形量である反りをシミュレーションソフトで予測して、冷めた金型にその反りを見込める技術を開発できれば、鋳造時に発生する金型の反りを防ぐことができます。その結果、試作を繰り返すことなく、一発で合格品を作ることができます。

ちょうどそのとき、21年度「ものづくり中小企業製品開発等支援補助金(試作開発等支援事業)」の公募があることを知り、当社も応募することにしました。そのテーマが「熱変形を見込んだ金型の試作開発」です。

熱変形を見込んだ金型の試作開発

Space-E、解析ソフト導入の背景

営業課 技能士 上田 健介 様
営業課 技能士
上田 健介 様

当社が「ものづくり中小企業製品開発等支援補助金(試作開発等支援事業)」に採択されたことはNDESから連絡を受けました。

2次募集で倍率も高かったので、まさか当社が採択されるとは思っていませんでした。

それからすぐに、「熱変形を見込んだ金型の試作開発」のテーマに必要なソフトの選定を始めたのです。

このテーマでは、金型の熱変形を解析するために、2つの解析ソフトが必要になります。それが、鋳造シミュレーションシステム「JSCAST」と構造熱解析プログラム「Femap with NX Nastran」(以下、Nastran)です。

それから形状を変形させるCADですが、そのとき、Space-Eはサーフェイスモデリングに定評があり、さらにSpace-E/Global Deformationの複合面デフォーム機能を使って、モデルの見込み変形ができました。

これらのソフトは、メーカも異なり初めて使うソフトだったので、うまく使いこなせるのか不安もありましたが、NDESから各メーカと連携を取って運用面のサポートも提案していただけたので導入を決めました。導入した時期は、2010年1月です。

熱変形を見込んだ金型製作

解析用ソリッドモデル(下型) [Space-E]
解析用ソリッドモデル(下型)
[Space-E]
金型熱変形(スケール10%)[Nastran熱応力解析]
金型熱変形(スケール10%)
[Nastran熱応力解析]
金型温度分布 [JSCAST鋳造解析]
金型温度分布 [JSCAST鋳造解析]
熱変形見込み [Space-E/Global Deformation PLUS レ・フィットコマンド]
熱変形見込み
[Space-E/Global Deformation PLUS レ・フィットコマンド]

鋳造解析はJSCASTで、熱応力解析はNastranで行うため、解析用のソリッドモデルを用意する必要があります。

そのソリッドモデルをSpace-Eで簡単に作成できました。Space-Eには、複合面のソリッド化機能があり、この面縫合コマンドを使うことでサーフェイスモデルのソリッド化が簡単に行えます。

それから、Space-E/Global Deformation PLUSのレ・フィットコマンドでは、解析前と解析後のモデルから簡単に見込み変形を行うことができました。

実際に、見込み変形した金型を製作して鋳造を行いました。その鋳造時に、薄いものを割り面に差し込むテストをしましたが入り込む余地がなく、型がしっかり閉じていることを確認できました。

そして、鋳造した製品を3次元測定器で検査すると、精度が非常に良いことが分かったので、熱変形を見込んだ金型製作が成功できたことを実感しました。多少面にしわが寄ったりはしましたが、精度に影響が出るほどではありませんでした。

2009年8月に試作開発等支援事業の書類を提出して、10月に採択され12月からのスタートでした。

本来であれば、12月から3月までに成果を報告する必要があったのですが、2010年1月の時点で延長できることが分かったので、8月までの延長を申請しました。

最終的には、7月に成果を出すことができたので、報告して終了しました。

やはり、解析結果をまとめるのに時間がかかり、8ヶ月の期間中3ヶ月は解析に使っていました。

ですから、日にちに余裕がなく、早く金型を作って鋳造のテストをする必要があったので、Space-Eでスムーズに見込み変形ができて安心しました。もし、Space-Eで問題が発生していれば、この期間では終わっていませんでした。

解析の運用サポート

Nastranでは、メッシュ作成、拘束条件、接触面の定義などの運用サポートをお願いしました。(解析の運用サポート担当:メインテック)

Space-Eでソリッドモデルを作成した後に、解析用にメッシュを切りますが、そのメッシュの分割方法のテクニックを教えてもらいました。たとえば、どれくらいの点数であれば結果が出せるのか、PC能力の限界値はどこなのかなどです。

それから、拘束条件としては金型のどこを固定にするのか、自由度を与えるのはどこなのかなど、適切な条件を教えてもらいました。

接触面の定義の仕方は、金型特有のものです。上型と下型に分かれているので、その接触面を定義しなければ、型どうしが重なり合ってしまいます。変形が発生した場合も、型どうしか重ならないように定義する必要があるので、その定義の仕方とノウハウを詳しく教えてもらいました。

また、シミュレーション結果の検証も一緒に行ってもらいました。たとえば、応力集中が発生して一部分の形状が針のように飛び出していたので、それが発生しないようにパラメータのチューニング方法などを教えてもらいました。

このように、解析の運用に関していろいろとサポートしていただいたので、導入後の立ち上がりが早かったと思います。

今後の課題

他の金型への展開

今回の試作開発等支援事業では、1機種だけを試作したので、今後は他の金型に展開したいと考えています。他の金型についても解析で熱変形の現象をつかむことができます。

今は試作段階なので、熱変形を見込んだ金型をお客様に納品するという、実用化はこれからです。

社内で鋳造する金型であれば自由になるのですが、お客様に納得いただける技術にしなければ、勝手に見込を入れて金型を変形することはできません。まずは、社内でさまざまな金型の機種に取り組んで、どのような場合でも良い結果が得られるように試作を繰り返していきます。実際の鋳造は、軽合金事業部の枚方、春日工場に鋳造設備があるので、そこに協力してもらっています。今後、実績を積むためには、枚方、春日工場との連携が重要になってきます。

また、ここ数年でお客様からの3Dデータの支給が100%になり、CAEに取り組む環境が整いました。

今後、熱変形を見込んだ金型として実用化できれば、試作コストを抑えて量産までの早期立ち上げをお客様にご提案できます。そして、一発で合格する金型は、当社のアピールポイントになり、他社との差別化を図れます。

熱変形を制御する金型

熱変形自体を制御する金型として、裏ヌスミ形状やリブの設置など金型の構造的なアプローチで熱変形を最小限に抑える工夫をしたいと考えています。それには、金型の温度管理を行い、温度分布のバラツキをなくして金型の熱変形を制御できる方法を模索する必要があります。

金型はひとつのかたまりなので、裏ヌスミ形状にして裏を抜くことで重量が軽くなります。また、裏ヌスミ形状は、金型温度の均一化を図り、反りの発生を抑えるために施していたので、それが本当なのか解析して立証していこうと考えています。そして、どのような裏ヌスミ形状が適しているのかもシミュレーションしたいと考えています。裏ヌスミ形状は、厚みのある形状、起伏にとんだ形状、高低差のある形状の金型に施しています。

残りの5%が当社のノウハウ

ベテランの方であれば、長年経験されたことを頭の中に入れた経験値がありましたが、残念ながら若手に技術継承されていないのが現状です。

たとえば、マシニングセンターを使い始めて1年もすると、一人前のように操作をしていますが、加工条件を試行錯誤した経験がないので、応用ができなくなっています。それは設計でも同じことで、CAD/CAMから入ると本来設計者として必要な基礎知識が欠落している部分があります。昔は、図面からポイントを出すには電卓で三角関数を使って計算していました。今はCAD/CAMでクリックするだけで出てくるので、ポイントの意味も分からなくなっています。若手が3次元から入ると、図面の必要性が低いので読むための努力をしなくなりますが、現場では電卓1つで確認できる基礎知識も必要だと思います。

ただ、これからのものづくりはCAEが必須になります。95%の完成度であれば、どこででもできると思います。残りの5%が当社のノウハウだと思っているので、常に新しい技術に取り組んでいきたいと考えています。

NDESへ

今回、試作開発等支援事業に取り組むにあたって、NDESには操作指導や技術支援のスケジュールを最初に組んでいただき、進捗状況をその都度確認してもらいながら進めることができました。NDESにスケジュール管理をお願いできたので、期間内に成果をあげて事業を無事に終了することができました。

今後もNDESには、さまざまなサポートをお願いしたいと思っています。

おわりに

21年度「ものづくり中小企業製品開発等支援補助金(試作開発等支援事業)」の2次募集は、8倍という倍率でナカキン様は採択されました。
試行錯誤しながら解析結果をまとめる作業や国に提出する書類を作成するなど、期間内に行うことが山積していたそうです。

大変お忙しいところ、貴重な時間を割いてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

会社プロフィール

鳥飼工場(金型事業部)
鳥飼工場(金型事業部)

株式会社ナカキン

URL http://www.nakakin.co.jp/(外部サイトへ移動します)

本社 〒532-0012 大阪市淀川区木川東3-4-18
鳥飼工場 〒566-0074 大阪府摂津市東一津屋3-31
設立 1964年(昭和39年)3月(創業:昭和25年)
資本金 8,400万円
従業員 450名(2009年3月現在)
事業内容 ・軽合金(自動車エンジン部分の開発・製造)
・産業精機(食品・医薬品等製造用の各種ロータリー
 ポンプ・充填機、ブレンディングユニット(混合機)
 の開発・製造)
・金型(各種金型・木型の開発・製造)
・試作(新機種・新商品の試作品受注製作)

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