RPシステム統括部 営業グループ グループマネージャ 橋爪 康晃 |
積層造形は、モノづくりの新しい道具
近頃、3Dプリンタと呼ばれる比較的安価でコンパクトな積層造形機が登場し、RP(Rapid Prototyping:ラピットプロトタイピング)技術が急激に一般的なものになりました。これまでRPは、企業の中で使用する特殊な技術という認識でしたが、今では、個人で事業をされている方や趣味でモノづくりを行っている方に向けて、3Dプリンタでの出力サービスも登場しています。
これには、3Dデータを用意するという条件があるので、誰でもというわけにはいきませんが、「DIY(日曜大工)感覚で積層造形する」ということは、既に現実のものになっています。
工法として一般的になってきたRPは、もともと試作品を迅速に製作するための技術として誕生したものです。
さまざまな装置、材料が登場した現在では、製品を直接製造するRM(Rapid Manufacturing:ラピッド・マニュファクチャリング)ツールとして用いられるケースも多数報告されています。
さらに活用の場も広がっており、RPやRMという言葉では、これらの技術、装置が果たす役割を正しく説明できなくなっています。欧米では、すでにRPやRM技術は、そのものを表す言葉として、「AF=Additive Fabrication」、生産手法として「AM=Additive Manufacturing」という言葉が一般的になっており、名実ともに試作に使用する機械という枠組みから解放され、一つの工法として認知されてきています。
アメリカでは、すでに積層造形の標準規格を決めるため、ASTM(米国材料試験協会)に委員会が設立されています。
このような「この技術をどのように表現するか」といった議論を残したまま、自由な発想のもとでの活用はますます進んでいます。これまでも、本誌「人とシステム」で事例をご紹介してきましたが、試作ではなく、最終的に使用される製品作りに活用された事例には次のようなものがあります。


日本国内でも、これまでRPと呼んでいたこれらの技術のとらえ方は、欧米同様の方向に向かって確実に変化しています。この動向を調査する目的もあり、昨年の2010年10月に国内最大のデザインイベントのひとつである東京デザイナーズウィークに出展しました。この展示会に来場されたインダストリアルデザイン、建築デザイン、アクセサリーデザイン、アートに関わる方々、そして、それらを学ぶ方々から非常に大きな反響がありました。
このことからも、3Dプリンタの認知度が非常に高くなっていること、また、積層造形技術は、既にデザイナーとモノづくりの新しい関わり方が始まっていることを改めて実感しました。日本でも多くの大学に造形機が導入されています。海外では、専門のコースを持つ学校もあるようです。前述のRPまたはRMといった議論に関係なく、また何かの代替でもない、「積層造形は新しい道具」として、着実に一般化が進んでいると言えます。
EOSINT M 280

金属積層造形機EOSINT Mの新製品「EOSINT M 280」が発表されました。「EOSINT M 280」は、金属粉末材料を使用する積層造形機「EOSINT M」シリーズの新型機で、ハードウェア・ソフトウェアともに高機能になり、造形品質と生産性を向上させたシステムです。
レーザーの高出力化(オプション)と造形領域の拡大および造形中の雰囲気管理(使用する材料と造形工程に、密接な関係があります)が改良され、従来のEOSINT M と比較して、生産性を大幅に向上させたシステムとなっています。これにより、造形時間が最大で60%短縮することができ、コスト削減を目的とした最終製品の生産にも適用可能です。
また、これまでは材料により、必要となる造形雰囲気が異なるため、2つの機種が存在していましたが、今回のアップグレードで、EOS社が提供しているすべての金属造形機用材料を1つの機種で利用可能になりました(これまでより、使用する材料の選択が容易になります)。
また、材料ごとに最適化された造形条件が設定されており、高品質で安定した造形を実現しています。

「EOSINT M 280」は、金属積層造形機の高性能モデルであり、用途に対して汎用性の高い製品です。既に自動車、航空宇宙、産業機器、医療など幅広い市場で実績のあるEOSINTがさらなる可能性を持つことになります。
また、造形前後の各種作業の効率を格段に向上させるIPCM(統合プロセスマネジメント)モジュールがリリースされました。これまで手作業で行っていた材料供給、材料リサイクル、造形品取り出し作業などを支援する道具の充実が図られています。これにより、オペレーションの付加を軽減し、生産効率アップにも貢献します。
マイクロレーザーシンタリング

EOS社は、これまでのEOSINT/FORMIGAとは別の新しい積層造形技術の開発を進めています。マイクロレーザーシンタリングと呼ばれるこの技術では、数ミクロン単位の積層造形を行います。
2010年11月に開催されたユーロモールドで既にサンプルは公開されています。右写真の丸いプレート上にあるパーツは、ステンレス製で積層厚4ミクロンです。
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