製造ソリューション統括部 AMソリューション部 営業グループ 宮川 正 |
RPからAMへ
積層造形技術が、試作品を早く製作するための手法『RP=Rapid Prototyping:(ラピットプロトタイピング)』だけではなく、最終製品を製作する手法『AM=Additive Manufacturing(:アディティブマニュファクチャリング)』として、様々な業界で利用されてきている事例を改めてご紹介いたします。このAMを利用した製品製作は、海外だけではなく国内でも始まっています。
ヒート&クール
サイクルタイム短縮、成形品の品質向上のために注目されているヒート&クール成形用の量産用金型のインサートにEOSINTを利用しようという事例が増えています。
3次元形状を自由に配置して造形できるEOSINTの利点を最大限に活用できるアプリケーションです。また、このインサートを効率的に製作する工夫も進みました。現在は、切削加工したブロックの上にEOSINTによるヒート&クール機能を持つブロックを造形するハイブリット工法が一般的になっています。

軽量化
3次元形状を自由に造形できるEOSINTの利点は、CO2排出量削減のための軽量化が非常に重要なキーワードとなっている航空機業界、自動車業界でも、重要なソリューションとして注目されています。
例えば、次のようなアプローチが行われています。
- これまで複数の部品で構成されていた部品を、EOSINTで一体造形して軽量化する。
- 部品内部を、ラティス(格子)構造にして、必要な機械的特性を維持しながら軽量化する。
- 金属から樹脂に変更して軽量化する。
- 上記の要素の組み合わせにより軽量化する。
これらの実現のためには、複雑で手間のかかる作業が必要であり、AMの適用は、今までなかなか進みませんでした。しかし、ラティス構造を自動で生成するソフトウェアなども登場し、現実的なものとなっています。
軽量化のためのラティス構造化は、EOSINTなどの積層造形でしか製作できないものであり、今後AM化が様々な領域で進んでいくと考えられます。

(ラティス構造で軽量化したインプラント)

コンセプトモデル
(強度を維持しつつラティス構造で軽量化)
医療


最もAMの適用が進んでいる領域に医療があります。人間の体のカタチは、一人ひとりが異なります。個人の体に合わせて作る場合、作るのが困難だっだり、手間がかかったりします。これを、効率良く行うのは、AMが最も得意とするところです。
これまでも、本誌でご紹介してきましたが、適用事例は増えています。今後は、先進医療の発達とともに、データ処理などの周辺技術も充実し、ますます一般的になっていくと考えられます。
建築

建築分野でもBIM(Building Information Modeling)が各社で推進されています。3Dモデルによる建物設計および建設の生産性を向上させる取り組みが行われています。既に3Dプリンターを所有する建築設計事務所も少なくなく、造形に限らず、今後3Dデータの活用が増えていく領域として考えられています。
積層造形機の活躍の場は、試作品製作だけでなく、様々な分野に広がっています。また、これまでRPと呼ばれてきた試作に限った用途も広がり、「AM=付加製造法=加工手段のひとつ」として、新たな認識を持たれ始めています。
造形機は学生達の間でも利用されている
受賞者:立石 雅英 様(4年生)

今年の6月に「名古屋造形大学」で開催されたプロダクトデザインコンペにEOSINTのユーザである原田車両設計様とともにNDESも協賛しました。
学生から積層造形機ならではの工業製品のデザインとアイデアを募集して、作品を同大学ギャラリーに1週間展示し、来場者が優秀作品に投票するという内容のイベントでした。
このコンペに参加した学生達は皆、積層造形機の特性を理解した上で、それを活かした作品を出展していました。どの作品も造形機だからこそ表現可能なユニークなアイデアを盛り込んだモデルで、そのデザインを競いました。その結果は、1位から3位までが4年生の立石雅英様の作品になるという独占受賞でした。将来が大変楽しみです。
彼らのように、今モノづくりを学んでいる学生が、積層造形機を使う機会は、年々増加しています。今後、彼らにとって、AMは一般的な工法のひとつとなっていくのかもしれません。
展示会



まずは、「設計・製造ソリューション展2011」を手始めに、医療機器に関するアジア最大の展示会「MEDTEC Japan 2011」、大阪から先端技術の活用を発信していく拠点ナレッジキャピタルのトライアルイベント「ナレッジキャピタルトライアル2011」、新潟での「燕三条 ものづくり連携フォーラム」に出展しました。
次のイベント出展は、「TOKYO DESIGNERS WEEK2011(東京デザイナーズウィーク2011)」を予定しています。
カテゴライズされない、「設計の自由」を実現するAMの可能性を紹介する予定です。皆様のご来場を心からお待ちしております。
TOKYO DESIGNERS WEEK2011
(東京デザイナーズウィーク)
【開催日】 2011年11月1日(火)~2011年11月6日(日)
【会場】 明治神宮外苑
AMによる製品製作にパートナー企業求む

2008年2月にRPテクニカルセンター大阪を開設し、お客様のサポートに加え、金属積層造形機EOSINT M 270を利用したベンチマークテスト・受託造形を積極的に実施してきました。2011年4月からは、名称を『AMデザインラボ』に変更し、機能拡張を実施しました。
まず、樹脂積層造形機FORMIGA P 100を設置し、金属に加え、樹脂の造形も対応可能にしました。スペースも拡張しており、造形機の増設を行い、対応能力を向上させるとともにAMに必要な周辺技術の開発を推進していく計画です。
しかし、積層造形機を使用して、最終製品を生産する新しい工法である「AM」の推進には、この技術を利用し、評価していただけるパートナー様が必要です。ぜひ、アプリケーション(例:ヒート&クール用インサート)開発などにAMデザインラボのご利用をご検討ください。