人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.75 | お客様事例
金属積層造形とHIP処理の組み合わせで
一段上の付加価値を提案

金属技研株式会社 様は、あらゆる分野のものづくりにおいて、熱処理からHIP(Hot Isostatic Pressing)処理、焼結、接合、さらに金属積層造形、特殊金属加工、解析・分析までの一貫した生産体制を備えられ、金属加工技術におけるトップレベルのソリューションをご提供されています。また、最新設備の拡充も積極的に推進され、世界最大のHIP処理装置、国内最大級の真空炉などを導入されています。

今回は、金属積層造形システムEOSINT M 280導入の効果、そしてHIP処理と組み合わせることで一段上の付加価値を提案するための取り組み、今後の展開などのお話をお伺いしました。

事業概要

技術本部 テクニカルセンター 次長 山本 泰弘 様
技術本部 テクニカルセンター
次長 山本 泰弘 様

当社の設立は1960年で、金属の熱処理事業の会社として発足しました。

設立当初は、不活性雰囲気中で熱処理を行い、表面の酸化や着色などの発生を抑えるという、その当時としては特殊な雰囲気熱処理の受託加工の事業を基盤としていました。その後、材料同士をつなげる工法として、ろう付や拡散接合、そして、粉末焼結なども行うようになり、真空炉、HIP処理装置やホットプレス装置などの特殊装置を導入して事業を拡大しています。

当社の特長のひとつとして、世界最大のHIP装置と国内最大級の真空炉装置を導入しているので、依頼される仕事が世界規模だということです。これらの装置でなければ入らない大きさの部材の処理や、中・小型部材であれば他の装置では5~6回かかるところを1回で処理することで低価格と短納期を実現できます。

また、熱処理やろう付する工程の上流と下流において機械加工で部品を作成する加工事業も行っています。

お客様の業種は、エネルギー、半導体・液晶、航空・宇宙、自動車、産業機械、医療、公的研究機関などがあり、熱処理や接合が必ず必要とされる分野が多岐に渡るため、いろいろな業界のお客様とお付き合いさせていただいています。

会社組織のネットワーク
会社組織のネットワーク
(クリックすると拡大画像が表示されます)

当社の工場は、群馬、茨城、千葉、成田、神奈川、滋賀、姫路にあります。各工場の基本的な作業内容は同じですが、工場ごとにお客様特有の処理があるため、それに対応できる設備を導入しています。

我々のテクニカルセンターは、試験研究テーマが都市に集中しやすいということを考慮して、神奈川工場の中に設置されています。

一軸500ton ホットプレス(1,200W×2,200L×1,200H)
一軸500ton ホットプレス
(1,200W×2,200L×1,200H)
世界最大のHIP処理装置(φ2,050×4,200H)
世界最大のHIP処理装置
(φ2,050×4,200H)
国内最大の縦型一室式真空炉(φ2,000×3,500H)
国内最大の縦型一室式真空炉
(φ2,000×3,500H)

テクニカルセンターの役割

テクニカルセンターの基本的な業務は、各工場のバックアップとして、製品の解析シミュレーションによる解析評価や品質確保のための分析、材料試験などを行うことです。

例えば、ろう付であれば応力や熱伝導など気を付けるべき項目がいくつかあるため、応力や熱解析を行っています。その他にも、HIP処理を行ったときの収縮量を把握するための非線形解析、完成した製品の強度を確認するための引張り試験や成分分析など、各工場から依頼されるさまざまな解析、分析を行っています。

また、これらの解析、分析を行いながら、新しいアプリケーションを見つけることもテクニカルセンターのミッションのひとつになっています。これは、新しい工法もあれば新しい装置もあます。このようなことから、テクニカルセンターでは、早くから金属積層造形装置に注目していました。

金属積層造形装置を導入するメリット

技術本部 テクニカルセンター 主任 増尾 大慈 様
技術本部
テクニカルセンター
主任 増尾 大慈 様

金属積層造形装置は、将来的にものを作るための最良な装置となり、我々の技術と密接に係わる装置になるであろうと考え、2001年から金属積層造形装置を導入して研究してきました。その頃から、部品のニアネットシェイプ化の需要が高まり、金属積層造形であれば実現できそうだったので、そのことが研究していく発端となっています。また、金属積層造形と当社のHIP処理の技術を併用することで新たな事業への期待もありました。

金属積層造形の造形物の密度は、100%に近い数値は出ていましたが、まだ若干の欠陥があるため、欧米では人工骨などをHIP処理することで、さらに高密度にしているのが実情です。このことからもHIP処理との併用は重要だと考えていました。

さらに、レーザータイプの金属積層造形では、造形中の残留応力を除去するために熱処理を行いますが、この技術は我々が専門とする技術です。それにサポートの除去に関しても加工設備を揃えていることから、熱処理から加工まで一貫した作業ができます。

このように、当社では既に周辺設備を揃えているので、金属積層造形装置を持つメリットは大きく、導入することにより、かなりの効果が期待できると考えていました。

EOSINT M 280の導入について

EOSINT M 280(装置)
EOSINT M 280(装置)
EOSINT M 280(作業風景)
EOSINT M 280(作業風景)

当社は、既にEB(電子ビーム)タイプの金属積層造形装置を導入していました。しかし、EBタイプでは、適さない形状があることが分かり、レーザータイプの導入を検討することにしたのです。

ただ以前より、レーザータイプを導入するのであれば、NDESのEOSINT M 280を導入したいと考えていました。それは、NDESにおけるEOSINTの販売実績とサービス体制を評価していたからです。特にサポート体制を注視していて、装置の部品交換だけでなく装置の操作や造形などの技術的なサポートが重要だと捉えていました。そうして見たとき、NDESは、実際の装置を導入し、ベンチマークの造形やAM(Additive Manufacturing)のための最適設計などの技術開発を行っているので、当社が操作や造形に関して困った場合には、いろいろとサポートしてもらえると思い、EOSINT M 280を導入しました。

EOSINT M 280(造形サンプル)
EOSINT M 280(造形サンプル)

一段上の付加価値を提案

HIP処理との組み合わせ

HIP処理は、鋳造品の内部欠陥除去、粉末材料の加圧焼結、拡散接合、焼結品の高密度化の分野に分けられ、品質を高めて寿命向上の効果があるため、その用途は付加価値の高い材料や業界に特化してきました。例えば、エネルギー関係であれば、火力発電で使われるタービンブレードです。火力発電は、動き始めると2~3年は稼働しているので、それに耐えられる品質確保をするためにタービンブレードにHIP処理が使われています。また、航空機のジェットエンジンのブレードにもHIP処理が使われています。

このような実例から、ニアネットシェイプとして部品の軽量化、高機能化を実現できる金属積層造形と材料の品質を高めるHIP処理を組み合わせることで、さらに用途の幅が広がり、一段上の付加価値がご提案できると考え、日々の研究を重ねています。

ただ、金属積層造形もHIP処理も従来の加工方法と比較して費用が高くなる傾向にあるため、この組み合わせでなければ実現できないという高付加価値が要求される用途で力を発揮できればと考えています。

既存加工との比較から付加価値の高い製品へ

最近は3Dプリンターのブームもあって、問い合わせが多くなりました。特に多いのが、従来の加工方法と比較してコスト削減できるのか試したいとか、既存の図面をもとに金属積層造形装置で作るとどのような結果になるのか知りたいという問い合わせです。この金属積層造形装置でどこまで物が作れるのかという感じだと思います。

まずは、造形装置を動かす前の準備で時間をいただいています。やはり、何回か直接やり取りして形や仕様を決め、仕様に沿った見積もりを行ってから、受注という流れになります。受注してからのリードタイムは、依頼される熱処理や後工程の内容によって変動はありますが、EOSINT M 280であれば熱処理や後工程とあわせて2週間ほどです。

ほとんどのお客様は、既存の加工方法と比較をされて、コストや納期を判断されています。そのため、この金属積層造形は、納期は早いのですが、コストは必ずしも安くなる装置ではないということを説明し、設計においても造形に適した形状に変更してもらうことで、付加価値が高い製品ができることをご提案しています。

2種類の金属積層造形装置を使い分ける

当社は、レーザータイプとEBタイプの2種類の金属積層造形装置を導入しているので、図面をいただければ、形状に適したタイプでご提案できることが強みです。同じ積層造形の装置でありながら、2種類が全く違うものづくりの装置になっています。お客様によって、外観形状の自由度が高いEBタイプが良いと言われたり、表面やエッジがきれいに造形できているレーザータイプが良いと言われたりするので、お客様それぞれのニーズがあります。もちろんHIP処理も品質改善として必要なお客様には一緒にご提案をしています。

今後の展開について

金属積層造形を広める活動

まだ、金属積層造形の技術を理解していただいているお客様は少ないように思います。まずは、金属積層造形で何ができるのかを分かっていただくことが先決だと思っています。ですから、いろいろな講演会に呼ばれて発表したり、当社の工場見学を希望されるお客様にはできるだけご来社いただいたりしています。

このような活動は、いろいろな方に金属積層造形のことを知っていただき、まずは、その市場を広げたいという考えで行っています。

金属積層造形装置を各工場へ導入

これまでに、金属積層造形装置でなければ作れないという形に特化した設計での依頼はありません。我々もお客様からの問い合わせの中で、どういうところに需要があるのかを探している段階ですが、最終的には、各工場に金属積層造形装置を導入する方向に持っていくことが我々の目標です。今はテクニカルセンターに装置を置いていますが、お客様の需要に応じ、最寄の工場へ導入できるようにサポートしていく予定です。

材料のバリエーションを増やす

技術本部 テクニカルセンター 唐土 庄太郎 様
技術本部
テクニカルセンター
唐土 庄太郎 様

現在、EOSINT M 280でインコネルの材料を使い始めたばかりです。これまで使っていたチタンと比較すると、造形品の形状や特徴に違いがあるようなので、それらの検証を行う予定です。

将来的にはチタンとインコネル以外に、材料のバリエーションを増やしたいと思っています。その材質を選定する上で、付加価値が高くなるような材料を見極めながら検討していきます。

今後、いろいろな材料を扱うようになったとき、EOSINT M 280が用意しているレシピの開発ツールをうまく使いこなせるかが課題になります。

また、材料のバリエーションに対するニーズが増えてくると、材料ごとにEOSINTの台数を増やすことも検討することになるでしょう。

NDESへ

NDESのサポートについて

技術本部 テクニカルセンター 矢倉 孟 様
技術本部 
テクニカルセンター
矢倉 孟 様

お客様から受けた質問をそのままNDESへ問い合わせているため、その中には無理な質問もあると思います。それでも、NDESの回答は早く、質問した内容ができない場合でも別の方法を提案してもらっています。また、当社に来てもらうサポートの方には、教えてもらうことが多くあり、いろいろなことを安心して相談できます。さらに、サポートの方とは電話やメールでもやり取りさせてもらっています。

小型の造形装置

お客様が材料の粉から準備したいと言われたとき、必要な量をお伝えするとかなり驚かれてしまいます。造形寸法が少しコンパクトになっても、粉の必要量が少なくなると、需要が広がるのではないかと思います。

それから、材料のバリエーションを増やしたとき、現在の装置では材料交換する際に非常に時間がかかりますので、簡単に交換できる小さい装置があれば良いなと思っています。

おわりに

講演会や工場見学では、金属積層造形のサンプルや実際の造形例を見ていただきながら、金属積層造形のイメージを膨らませていただいているとのこと。直接仕事につながらなくても、新しい技術を広めるため、その役割を自ら担っていらっしゃいました。

このたびは、貴重な時間を割いてお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

会社プロフィール

本社
本社
神奈川工場・テクニカルセンター
神奈川工場・テクニカルセンター

金属技研株式会社

URL http://www.kinzoku.co.jp/(外部サイトへ移動します)

本社 〒164-8721
東京都中野区本町1-32-2
ハーモニータワー27階
設立 1960年
資本金 288百万円
売上高 9,862百万円(平成25年2月期現在)
従業員 482名(平成25年6月現在)
事業内容 (1)金属部品の熱処理
(2)金属およびセラミックスの接合
(3)HIP処理
(4)金属・セラミックスの焼結
(5)電子ビーム溶接組立他
(6)超塑性成形
(7)積層造形
(8)解析・分析
(9)精密加工
神奈川工場・
テクニカルセンター
〒243-0424
神奈川県海老名市社家字業平713

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