株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ カスタマー&サービス事業本部 アディティブ・マニュファクチャリング事業部 営業部 担当部長 川村 孝慈 |
はじめに

去る2018年9月27日、28日の両日、新横浜国際ホテルにて、第1回となる「EOS DAY」がEOS Japan社主催により開催され、2日間で約100名のお客さまにご参加いただきました。
本イベントでは、国内外からプレゼンターを招き、Additive Manufacturing(AM)テクノロジーを用いる際に重要となるさまざまな視点と考え方、今後お客さまがAMを利用してモノづくりを成功させるために、どのような周辺技術やノウハウを活用すべきかなど、さまざまな角度からAMテクノロジーの可能性や将来性をあらためて認識していただける機会となりました。
モノづくりの世界を変えるAM

今回のイベントの中でEOS社は、自社のミッションは、AMソリューションのリーディングカンパニーとして、将来のデジタルファクトリーにとって不可欠なシステムとサービスを提供することであり、AMは先進的産業生産のキーテクノロジーであるとの見方を示しました。
また、長年さまざまな産業で受け入れられてきたAM成功のカギは、繰り返し再現可能な部品品質、認証を取得するための品質基準、さらにプロセスチェーン全体にわたるノウハウの蓄積にあります。この技術の破壊力は、新しく、革新的な部品とデジタルマニュファクチャリングによって実現され、企業はいち早くAMを用いることでスタートするモノづくりの変革に対応する準備を始めなければならない、との考えを示しました。
NDES.Additive


NDES.Additiveとは、私たちNTTデータエンジニアリングシステムズが提供する、AMによる製品開発/製造のサポートサービスです。私たちはEOS社の代理店になって25年、日本のお客さまのサポートを行ってきました。その間、装置のメンテナンスや修理対応だけでなく、お客さまの「どうやったら作れるか?」「こんな部品が欲しい」というご要望に応えてきました。今までの活動を通じて培った知見・ノウハウの全てをNDES.Additiveの中に盛り込み、日本のお客さまにご提供いたします。
今回の「EOS DAY」では、3Dプリンターで製造された世界初のイヤホンとして注目を集めたS'NEXT社のイヤホン「LABⅠ」「LABⅡ」の開発をNDES.Additiveの事例とし、私たちが設計から生産に至るまでどのようなサービスを提供したか、またその中で課題をいかに解決してきたかについてご紹介しました。
1例としては、「LABⅡ」の開発では、リアルで広大な音場を実現するために、設計プロセス(図 Process.1)において、①意匠面はインパクトがありAMでしか実現できないハニカムデザインを採用(肉厚:φ0.6mm)、②FrontとRear接合部はソリッド形状とし、チューニングによる高精度なはめ合い寸法を実現、③内部はドライバーユニットの音源を最大限に生かすための一体型メカニカルイコライザー設計(最小肉厚:0.2mm)を実現したことなどをご紹介しました。

おわりに

EOS M 300-4
NDES.Additiveは、登山で言うところのシェルパ※のようなモノだとわれわれは考えています。お客さまはAMによる製品製造という大きな山に登るため、従来とは全く異なる設計手法の習得、金属素材として物性を検討・評価するための冶金学的知識の習得、複雑なQMSの構築といった重い荷物を背負い、頂上までの長く険しい道のりをわれわれがガイドをしながら一緒に登っていきます。結果としてお客さまは、製品そのものだけでなく、その過程で得られた知見やノウハウが得られます。
AMで製造したい部品があるが、何をどう始めたらよいの分からない方、試しに造形をしたことがあるが、今の設計が本当に適切なのか分からない方、AMで製造したら、どこまで性能を得られるか知りたいという方は、ぜひ私たちへ問い合わせください。
次回は2018年11月13日から16日までフランクフルトにて開催されたformnext 2018についてご報告いたします。ぜひご期待ください。
※:シェルパ(Sherpa): ネパールの少数民族で主にエベレスト南麓に面したネパール東部に住んでいる。1953年のエベレスト初登頂を始めとした外国人のヒマラヤ登山に際し、荷物運び(ポーター)として、また案内人(ガイド)として雇われるようになり、登頂の成功において重要な存在となった。そのため、登山全般における荷物運び・案内人のことをもシェルパと呼ぶようにもなっている(出典 朝日新聞出版知恵蔵mini)。