人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.93 | お客様事例
解析コンサルティングを活用し
部品メーカーの競争力アップを図る

国産部品工業株式会社様は、二輪車、四輪車向けのシーリングパーツであるエンジン用ガスケットや排気系のヒートインシュレーター、ステンレスメッシュなどの製造で業界をリードする部品メーカーです。生産工場は国内の京都工場に加え、中国、マレーシア、タイの海外3拠点で展開しています。同社は、製品の機能保証として実施していた実験を削減するため、解析処理に比重を置くことにしました。今後、解析について大きな期待が集まる中、その取り組みや効果についてお話を伺いました。

薄板のプレス加工技術に強み

国産部品工業株式会社 技術部 部長 参与 西村 和浩 様
国産部品工業株式会社
技術部 部長
参与 西村 和浩 様

国産部品工業様が得意とするのは薄板のプレス加工技術です。主力製品であるヒートインシュレーターは遮音・遮熱のためのカバー部品で、その板厚は0.3~0.8mmという薄い鋼板で成形します。もう一つの主力であるガスケットは、パイプなどの接合の際にその間に取り付けて液密性や気密性を高める部品です。金属ガスケットの材質はステンレスで、板厚は0.1~0.3mmという非常に薄い板を打ち抜き、細かな段差を成形します。同社の強みは、板厚が1~2mmの絞り加工が多い中、板厚1mm以下の絞り加工技術を追求し、お客さまからご要望のある形状の部品を提供できる技術力です。

さらに他社との違いについて、技術部長の西村和浩様は次のように話します。「他社では複数工程で提案するような複雑な形状に対して、当社では他社より少ない工程で提案し、実現できる技術を持っております。これは、創業当初から当社がプレス加工技術にこだわり続け蓄積したノウハウの成果だと思います」

また、お客さまへの要望にもレスポンスよく対応できる企業風土だと西村様は言います。「当社には、社長が掲げた"上下一心"というスローガンがあり、全社員が同じ方向を向いて頑張っていこうという前向きな雰囲気が強い会社です。組織的にも伸び伸びと仕事ができる環境ですから、小回りが利くところも当社の強みです」

シリンダーヘッドガスケット
シリンダーヘッドガスケット
ヒートインシュレーター
ヒートインシュレーター

機能保証の解析処理で
技術レベルの向上を目指す

国産部品工業株式会社 技術部 設計課長 参事 鈴木 孝志 様
国産部品工業株式会社
技術部 設計課長
参事 鈴木 孝志 様

職人気質と技術を強みとしてきた国産部品工業様が、もう一歩上の技術レベルを目指したいと考えて取り組んだのが機能保証の解析処理です。

その背景について、技術部設計課長の鈴木孝志様は、次のように振り返ります。「エンジン部品は、製品単体では機能が成立するかわかりません。エンジンに組み込んだ状態で機能保証をする必要があります。開発の初期段階では、エンジンを入手することが難しいため、治具を使った実験がメインとなり、後からエンジンに合わせて製品を調整します。最終的には、実際にエンジンを回して機能確認を行うのですが、それまでの開発期間を短縮するためには解析で補うことが重要です。当社も解析によって部品の機能保証を早い段階で確立し、お客さまのお役に立ちたいということが第一の目的です」

その当時、機能保証を解析処理で行える技術者は社内にいませんでした。そこで、解析の技術力向上を目指して以前から付き合いのあったNDESに相談し、解析のコンサルティングという形で協力を依頼しました。

2007年、最初に依頼したコンサルティングについて鈴木様は、「お客さまがエンジン部品関係の機能検証などに大規模解析ツールであるAdventure Clusterを使われていたのでお客さまとの互換性も考慮し、当社も同じツールを導入して部品の機能検証に取り組むことにしました。まずは2次元解析を始め、次に3次元解析と熱解析までできるようにとテーマを定めて、コンサルティングをNDESにお願いしたのがスタートです」と振り返ります。

当時は、ヘッドガスケットの構造解析としてボルトを締め付けたとき、シールラインにかかる負荷について解析を行い、その解析結果からお客さまの信頼を得ることができました。

防振ワッシャーの振動解析で
さらにノウハウを蓄積

ヒートインシュレーターの実験と解析における両社の役割分担
ヒートインシュレーターの実験と解析における
両社の役割分担

その後もお客さまのニーズに合わせて、新しい解析への取り組みは続きます。次に行ったのは、ヒートインシュレーターの改善に向けて、その解析のベースとなる特性を算出するための実験・解析方案を確立する取り組みです。同社の製品に、ヒートインシュレーターのボルト穴に使う防振ワッシャーがあります。ステンレス素材の細い線材を編んだもので、エンジンの振動でボルトが緩んだり、ヒートインシュレーターが割れたりすることを防止するクッションの役割があります。鈴木様は、「防振ワッシャーは機能的に重要な部品です。ヒートインシュレーターの遮熱・遮音性や耐久性を向上させ、コストダウンを進めるために、防振ワッシャーの解析技術を自社で蓄積したいと考えました。早速、NDESに相談して防振ワッシャーに関する振動解析のプロジェクトを2016年8月からスタートさせました」と取り組みを説明します。

防振ワッシャーの振動解析を行う前準備として、ベースとなる物性値を求める実験から始めました。その物性値は、振動で重要なばねの定数と振動が制御される減衰特性で、それを基に振動解析を行います。国産部品工業様とNDESは、おのおのの役割を明確にしてプロジェクトを進めています。

まず、NDESから実験方案を示して、その方法で実験を行い結果を出します。次に、実験結果の妥当性を両社で協議・判断し、その実験結果を応用して解析に進みます。解析方案もNDESから提案して、それを同社で解析して、実験と解析の比較を行います。

国産部品工業株式会社 技術部 設計課 主務 前田 祐 様
国産部品工業株式会社
技術部 設計課
主務 前田 祐 様

解析の担当者である技術部設計課の前田祐様は、「今回は、社内の大型加振機を使って実験を行いました。ある範囲の周波数で振動を与えて測定した加速度を基に、ばねの定数や減衰特性を求めていきました。単独で測定できる実験方法で個々のデータを集めて、それを解析に使います。実験結果が想定と違う場合は、改めて実験を行ったり、解析方案をNDESで再検討したりするなどのやりとりを繰り返しました」と実施した内容を説明します。

さらに、実験値と解析結果を比較しながら一致させていく考え方で苦労したことを前田様は振り返ります。「ひずみゲージを貼った部分の測定値と解析結果をどのように合わせていくのかの検証を行いました。単独の実験で求めた防振ワッシャーの物性値を使って解析したカバーの各部分の動きと、実験の測定値とを比較するのですが、最初はどうしても合わないのです。その現象をどのように考えたらよいのか苦労しました。それについて、NDESから理論立てた考え方を提示してもらえたので、非常に勉強になりました」

このプロジェクトについて鈴木様は、「防振ワッシャーのような、メッシュ状で不定形の部品は物性が安定しないため、定量化した解析が難しく、評価方法や実験結果への解析の合わせ込みは、いろいろな知見を持たれているNDESの協力があったから実現できました」と評価します。

防振ワッシャーの動的特性の算出実験
・防振ワッシャーの動的特性の算出実験
 板を防振ワッシャーで固定した実験状態
振動実験(測定位置)
・振動実験(測定位置)
 防振ワッシャーを取り付けたヒートインシュレーター
振動解析の実験値と解析結果の比較(グラフ)
・振動解析の実験値と解析結果の比較(グラフ)
2個所のピークが出ており、また発生周波数も近い値となっており、実験値と解析結果はよく一致していることが分かる。
振動解析の実験値と解析結果の比較(画像:振動箇所の変形を色で示す)
・振動解析の実験値と解析結果の比較(画像:振動箇所の変形を色で示す)
両方とも同じ箇所で振動しており、実験値と解析結果はよく一致していることが分かる。

これからの解析への期待

設計室
設計室

今回実施した振動解析を踏まえて前田様は、「実験を解析で再現していくことがメインだったので、今後は、このプロジェクトで得られた結果を基にして、お客さまへの提案にまで結びつけたいと考えています。すでに、提案につながるデータを得ることができたので、それを使って解析しているところです。また、今は防振ワッシャーの解析だけなので、他部品に関しても、いろいろな部品の物性値を求めながら性能評価に取り組みたいと考えています」とこれからを語ります。

今後の解析について鈴木様は、「解析で理想の製品像を求めて、それをベースとするものづくりができたらと思います。どういう金型や加工方法であれば安定した製品を作れるのかが課題となりますので、ものづくりの解析まで発展させるのが目標です」と期待を膨らませます。

西村様も解析の可能性に期待します。「ヒートインシュレーターも軽量化をはじめ、付加価値を追求する上で難加工材での絞り加工技術が必要不可欠となります。そのためには素材の特性を理解することと、ものづくりによるノウハウの蓄積は欠かせません。今後、解析とノウハウを融合させることで、高品質、高付加価値のある提案ができるようになればと考えます」

部品メーカーからすると解析を試作段階のコスト削減、納期短縮のために用いるのは当たり前だという時代です。すでに見積段階から解析のエビデンスを希望されることが多くあります。そのことを踏まえて同社は、解析における人材育成や誰もが解析を使える環境づくりに力を入れます。まずは、新人社員を対象としたCADや解析の教育を始めました。

NDESについて

最後に、NDESへ向けて鈴木様は「当社の知見だけではなかなか解決できないことも、他企業との付き合いが多く、幅広い情報が集まるNDESの協力でスムーズに進めることができています。新たな商品群の計画もありますし、データの保管方法などのシステム面も含めて、いろいろと相談させてください」と話します。

西村様もNDESに期待を寄せます。「NDESには、レスポンスよく対応していただき、ささいな解析の悩みから難題まで聞いていただいて感謝しています。今後は、新製品などの検討に他業界の情報収集も進めたいと考えているので、いろいろな業界に通じているNDESからの情報にも期待しています」

私たちNDESは、今後も解析のコンサルティングはもとより、それ以外のご相談にもお応えできますよう、さまざまなソリューションの提案に尽力致します。

会社プロフィール

本社・京都工場
本社・京都工場

国産部品工業株式会社

URL http://www.kbk-k.co.jp/(外部サイトへ移動します)

本社 京都府綾部市城山町7-2
創業 1941年10月1日
資本金 6,500万円
社員数 210名(2019年3月現在)
事業内容 自動車などエンジンのシーリングパーツの製造(主要生産品目:ガスケット・ヒートインシュレーター・ステンレスメッシュなど)