~自動化に向けて進化する~
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ 製造ソリューション事業本部 クラウド技術開発統括部 技術部 第三サービス課 三村 謙一郎 |
はじめに
2019年8月、Space-Eの最新版Version 5.8(以下、Ver.5.8)のリリースを予定しています。Ver.5.8では、プレス向け機能の強化、等高線仕上げ機能の品質向上、5軸加工機能の強化、そしてデータコンシェルジュとSpace-Eの連携強化をテーマとしています。今回はその概要をご紹介します。
Space-E/Modeler、Global Deformation
プレス向け機能の強化(Global Deformation)
見込み変形を行う場合、以前は要素の指示回数が多く、最適な結果を得るまで、試行の回数を重ねる必要があり、作業時間を要していました。Ver.5.8では見込み変形の改修として、次の(1)~(4)を実施し、作業時間の短縮を実現しました(図1)。
(1)プレビュー機能による再計算
(2)事前準備の削減
(3)アシスト機能でオペレーションを単純化
(4)基準軸の設定を自動化
(1)プレビュー機能による再計算
見込み変形の結果をプレビューできる機能を追加しました。以前は、変形の結果に問題があると、最初の変形面の指示からやり直していました。Ver.5.8では変形の結果をプレビューで確認でき、その結果に問題がある場合は、変形基準だけの調整で再計算ができるようになりました(図2)。
これにより、Ver.5.8ではオペレーションの負担を軽減できるようになります。プレビュー機能は、変形結果を事前に把握することができます。変形基準の変更機能は、モデル方向の調整がコマンド内で可能となりました。2つの新しい機能を追加することにより、オペレーションは簡略化され、作業時間が大幅に短縮されます。
(2)事前準備の削減
見込み変形のコマンドで指定する固定要素について、従来の面単位で指定する他に、Ver.5.8では範囲を指定して面上の全ての点を一括して指定できる面上点固定機能を追加しました。
以前は、見込み変形の固定要素を指定するために、事前準備として面分割やガイドラインを作成していました。Ver.5.8の面上点固定機能では、見込み変形のコマンド実行中に平面を指示することで、一時的に面上点を自動で作成し、その範囲を選択できるので、事前準備の手間を省くことができます(図3)。
(3)アシスト機能でオペレーションを単純化
オペレーションのアシスト機能として、以下項目を追加しました。これは、お客さまからいただいたご要望にお応えした機能です。
- 見込み変形に必要な要素だけを自動振り分けできるようになりました。
- 変位量の分布について、自動設定ができるようになりました(図4)。
- 変位量の色分け設定は、基面に対して表側と裏側の変位量が表示できるようになりました(図5)。
- 変形結果について、基面クラスを維持か新クラスで作成するかを選択できるようになりました。
(4)基準軸の設定を自動化
見込み変形のオペレーション中に、基準軸の設定を自動で行う機能を追加しました。以前は、事前に基準方向を準備していましたが、Ver.5.8では、表面積が一番大きくなる方向を自動算出して基準軸とします(図6)。
面延長機能の拡張(Modeler)
延長した面を別の面として作成できるようにするため、面延長機能を拡張しました(図7)。
以前は、製品面の曲率を維持した延長面を作成するには、5種類のコマンドを利用する必要がありました。Ver.5.8では、延長面を1ステップで作成できるようになり作業時間が短縮できます。
Space-E/CAM、5Axis
等高線仕上げ機能の品質向上(CAM)
等高線仕上げ機能について、経路の品質向上に取り組みました。
以前は、等高線仕上げの未仕上がり部の経路は2D一定ピッチで作成するため、未仕上がり部の形状に起伏があると経路のピッチが粗くなる現象がありました。Ver.5.8では、面上一定ピッチに対応したことで形状の起伏に関係なく、指定ピッチで経路を作成することが可能になりました。経路のピッチが面上で均等になり奇麗に仕上がるため、ミガキ作業の時間短縮につながります(図8)。
その他には、未仕上がり部の加工順序を見直し、未仕上がり部で回避が少ない経路を作成するように改修しました。さらに、未仕上がり部についてインコーナーRの有無のスイッチを追加しました(図9)。
5軸加工機能の強化(5Axis)
以前は、5軸仕上げ加工の経路を部分的に作成するとき、CADで加工範囲を作成した後に、その加工範囲で面をトリムする操作が必要でした。特に、経路を作成する部分が複雑になる場合、トリムの操作に高いスキルが求められていました。
Ver.5.8では、新たに加工範囲機能を追加し、従来の面をトリムする操作を不要にしました。これにより、3軸加工の経路作成と同様に、加工範囲を設定するだけで、5軸仕上げ加工の経路が作成できます(図10)。
加工範囲については、2Dまたは3Dスプライン形状を指示し、投影軸を指定するだけで設定ができるようになりました。
また、角度範囲を指定して経路を作成することもできます。この場合、面をトリムする操作が不要になっただけでなく、加工範囲の形状の作成も不要になり、指定した軸を基準として入力した傾斜角度の範囲で経路を作成できます(図11、図12)。
工具のコレット対応(CAM)
工具設定の新機能としてコレットに対応しました。
以前は、10段まで登録できるホルダにコレットも設定していました。そうすると、10段だけの登録では焼きばめホルダの定義をする際、段数の不足により詳細なホルダの形状定義ができない場合があり、正しい突き出し量の算出や干渉チェックができませんでした。
Ver.5.8では、コレット用のパレットや工具設定を追加したことで、ホルダおよびコレットで登録段数は各10段(合計20段)となり、詳細なホルダ定義による正しい突き出し量の算出や干渉チェックができるようになりました(図13)。
データコンシェルジュとSpace-Eの連携強化(CAM)
加工工程設計のパレット(工具、機能、工程)の登録情報をクラウドで管理できるようになりました。
以前は、個人でパレットの登録情報を管理していたのでクライアントにDC-Sync for Desktopのインストール及び設定が必要でした。また、加工工程設計のパレット情報を共有しようとすると手間がかかっていました。
Ver.5.8からは、CAMのインストール時にDC-Sync for Desktopの設定を自動で行えます。また、登録したパレット情報の管理は、個々のクライアントではなくデータコンシェルジュで行います。そうすると、複数の作業者が個々に管理や設定を行う必要がなくなり、管理者が一括して管理や設定を同時に行えます(図14)。
おわりに
今回ご紹介した機能以外にもVer.5.8では、IGES変換機能の強化やポスト機能の強化など、お客さまからのさまざまなご要望にお応えするために機能追加、改良を行っています。
さらに、研究開発を続ける沖縄マニファクチャリングラボでは、Space-E/CAMの等高線仕上げ機能、5軸加工機能の実用化にとどまらず、新しい機能の研究、開発に取り組み、Space-E/CAM、Manufacturing-Spaceに反映していきます。
今後は、Webからの情報提供やサポートの充実化を図り、お客さまが知りたい情報をいつでもご確認いただける環境をご提供いたします。
Space-Eが目指すのは、人とシステム、人と未来をつなぐためのソリューションです。「自動化に向けて進化する」をテーマとして取り組み、これからも、お客さまから寄せられた声を元に、より良いシステムやサービスをご提供します。
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