人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.107 | システム紹介
クラウド型造船向けソリューション
「GRADE/HULL Cloud」および「Beagle Cloud」のご紹介
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
新事業企画室 営業部 部長
原辺 文景

はじめに

私たちの自社製品である造船業界向けの3次元船殻CAD/CAMシステムGRADE/HULLは、長年に渡り多くの造船所のお客さまにご活用いただいています。また、3Dデータ活用ソリューション Beagleも、設計部門におけるモデルの確認、計画部門における作業要領の検討・作業指示書の作成、さらに製造現場における寸法・重量・重心計測などさまざまな用途にご活用いただいています。これら従来のソリューションはオンプレミス型であり、お客さまはライセンス・設備を導入して独自で管理・運用を行う必要がありました。しかしこの度、新たな形態として、クラウド環境でソフトウエアの利用が可能なクラウドサービスとしてGRADE/HULL Cloud(図1)およびBeagle Cloud(図2)のご提供を開始します。本稿では、クラウドサービスの概要の他、私たちがクラウドサービスを通じて実現したい造船業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)についてご説明します。

※本稿の内容は予告なく変更することがあります。

図1 GRADE/HULL Cloud
図1 GRADE/HULL Cloud
図2 Beagle Cloud
図2 Beagle Cloud

造船業におけるDXとは

国土交通省が造船業のデジタルトランスフォーメーション(DX)につながる技術開発・実証事業の支援事業を令和4年度から継続して実施しています。この背景には、造船業の激化する国際競争に対応すると同時に、環境負荷低減や安全性向上への社会的要請が高まっています。このような中、さらに多様なニーズにも応えていくためには、造船業のDXによる抜本的な生産性の向上やビジネスモデルの変革が緊急課題だという実情があります。

このような状況の中、造船業務で大半を占める設計および製造領域において、私たちがご提案するDXは、次のような内容が挙げられます。

(1)設計情報は、いつでも、どこでも、誰とでも共有できるようにする。

  • 情報交換は紙の図面から3D設計モデルに変更

(2)ハード・ソフトのコストの肥大化を防ぎ、必要なものを、必要な時に、必要な分だけ利用できるようにする。

  • 設計の繁閑に応じたライセンス数の増減に対応
  • サーバーやDBの更新作業の委託化

(3)その他

  • 設計データを活用したAIによる生産支援
  • 建造手順のプロジェクションマッピングの作成
  • スマートファクトリーによる工程の見える化など

この他DXの取り組みは数多くありますが、3D設計モデルの活用がカギとなると考えています。そこで私たちは「さまざまな理由で3D設計を断念している場面に対し、3D設計の環境を整えること」、「作成した3Dモデルの活用場面を広げること」が急務と考えました。

本サービスはその一環として、さまざまなお客さまが安価かつ容易に始められる3D設計を可能にします。

「GRADE/HULL Cloud」・「Beagle Cloud」のご紹介

従来のオンプレミス型のGRADE/HULLやBeagleは、一度購入すると基本的には常時利用できるというメリットがある一方で、初期導入コストやサーバーの維持管理コストの負担や、繁忙期に不足するライセンス数の増減が柔軟にできないなど課題もあります。しかし、クラウドサービスのGRADE/HULL CloudおよびBeagle Cloudは、この課題を解消するだけでなく、多くのメリットがあります。

GRADE/HULL Cloudの特長および活用シーン

①操業に応じたライセンス数の増減

  • 繁閑の時期に合わせてライセンス数と利用期間を柔軟に変更できます。
  • 費用は月額基本料と利用した料金のみです。初期費用やサーバーの維持費用は不要です。
  • ソフトウエアのインストールは必要ありません。 Webブラウザからアクセスするだけで利用できます。

②造船所と設計外注との連携

  • 造船所の設計者と社外の設計者で同一データによる同時設計が可能です。これにより取り合い部分のチェック漏れや図面の版の違いによる設計ミスを削減できます。

③その他

  • GRADE/HULLと同様の機能と操作性を備えています。すでにGRADE/HULLを利用している設計者は講習の必要はありません。
図3 GRADE/HULL Cloudと利用者
図3 GRADE/HULL Cloudと利用者

Beagle Cloudの特長および活用シーン

①操業に応じたライセンス数の増減

  • 上記のGRADE/HULL Cloudと同様です。

②製造現場と設計との連携

  • 製造現場にBeagleの3Dモデルを共有し、デジタルデータを活用した製造が可能となります。紙図面は不要です。

③造船所と建造外注との連携

  • 製造外注先にBeagleの3Dモデルを共有することで意思疎通がスムーズになり、誤作などの軽減につながります。
図4 Beagle Cloudと利用者(その1)
図4 Beagle Cloudと利用者(その1)

3Dモデル活用シーン

本サービスは、将来的に造船業を取り巻くあらゆる環境で3Dモデルが活用されていくことも想定しています。

①造船所と機器メーカーとの連携

  • 機器メーカーの機器のCADデータをSPEEDS*1に変換し、Beagleで本船の3Dモデルと一緒に表示することで、購入予定の機器の配置位置やノズルの位置などをその場で確認できます。

②造船所と船主・海運会社との連携

  • GRADE/HULLデータをSPEEDS*1に変換し、3Dモデルを共有することで、船主・海運会社で3Dモデルを手軽に利用できます。
図5 Beagle Cloudと利用者(その2)
図5 Beagle Cloudと利用者(その2)

*1 情報共有基盤SPEEDS(Smart Platform of Enhanced Engineering Data for Shipping and Shipbuilding)。公益社団法人日本船舶海洋工学会研修員会でこの仕様書が作成され以下の特徴があります。

  • SPEEDSから、機密情報である図面の再現はできません。
  • 基本要素以外は、機密のレベルに応じて、任意(写真や動画など)に追加、共有できます。

おわりに

今後の計画はBeagleの拡張プラグインの追加(塗装計画検討への対応など)や、GRADE/HULL、Beagle本体のバージョンアップも行っていく予定です。これからもお客さまの声に沿ったサービスをご提供していきます。

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