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季刊誌
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No.52 | システム紹介
CAE"3D TIMON"のご紹介
東レエンジニアリング株式会社
CAEソフト事業部
大谷 正人

はじめに

3次元CADの普及に伴い射出成形CAEも3次元化へと移行してきました。そして現在射出成形CAEは、ものづくり現場における競争の激化に伴い開発期間の短縮や金型修正回数、試作回数の低減を通じコストダウンを目的に活用が活発化しています。射出成形CAEは普及から定着へ着実に次の段階へ進んでいます。

本稿では、射出成形CAE"3D TIMON"と今後リリース予定の新モジュールについてご紹介します。

射出成形CAE"3D TIMON"「スリーディータイモン」

説明図
図1 そり変形
説明図
図2 偏向表示

3D TIMONは、東レエンジニアリング㈱が開発・販売する国産射出成形CAEシステムです。30年近い歴史を誇り、開発当初から短繊維強化樹脂の充填解析から離型後の収縮そり変形解析機能を特徴としていました。また、いち早く射出成形CAEの3次元化に着手し、特殊な樹脂や成形方法など様々な用途に対応しています。表1に現在リリースしているモジュール構成を示します。3次元の特徴を活かした、インサート成形品のそり変形(図1)やレンズ成形の不良である複屈折(図2)への対応でお客様の要望を具現化してきました。

表1 3D TIMON製品構成
基本モジュール 3D TIMON-FLOW TIMON Pre/Post:
TIMON専用プリポスト・自動ボクセルメッシャー
樹脂データベース・成形機データベース
充填解析:流動パターン・ウェルド・圧力等
標準モジュール 3D TIMON-PACK
3D TIMON-FIBER
3D TIMON-WARP
3D TIMON-MCOOL
保圧冷却解析:温度・圧力・収縮ひずみ等
繊維配向解析:繊維配向ベクトル
そり変形解析:収縮率・変位量・ヒケ・真円度等
金型冷却解析:金型温度分布・冷却管温度分布等
拡張モジュール 3D TIMON-OPTICS
3D TIMON-INSERT
3D TIMON-AWARP
3D TIMON-SuperThin
3D TIMON-TetMESH
光学素子解析:複屈折・偏向表示等
インサート成形解析:インサート製品変形等
結晶性非強化樹脂用そり解析
LCP 材料対応の超薄肉成形品用解析
3D TIMON専用テトラメッシャー
構造解析トランスレータ NASTRANTRANSLATOR
ANSYSTRANSLATOR
ABAQUSTRANSLATOR
Nastran用モデル・異方性物性値出力
ANSYS用モデル・異方性物性値出力
ABAQUS用モデル・異方性物性値出力
コミュニケーションツール 3D TIMON-Result Viewer 3D TIMON解析結果表示用ビューワー(無償提供)

2008年リリースしたバージョンでは、新機能として等長ランナーアンバランス解析を追加しました。等長ランナーでキャビティへの充填に差が生じる問題を再現できるようになりました(図3,4)。従来ランナー部を3次元要素で解析する手法を用いていましたがメッシュ数が増大し解析時間が長く実用性に欠けていました。そこで、3D TIMONではビーム要素を用いて充填差の現象を再現し、計算時間を大幅に短縮しました。

等長ランナーアンバランス解析

説明図
図3 多点ゲート
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図4 多数個取り

射出圧縮成形"3D TIMON-IPRESS"「スリーディータイモン・アイプレス」

射出圧縮成形は、薄肉成形やガラス代替による自動車の軽量化を実現する成形法として、環境問題への貢献が期待されています。「3D TIMON-IPRESS」では、射出圧縮成形による成形機の小型化や低歪み・低そり対策の実現を支援します。例えば図5のバンパーの事例では、通常の射出成形との圧力を比較し、型締力低減へのアプローチが可能となります。また、射出圧縮成形における収縮歪みやそり変形の低減や、光学部品の複屈折予測などが解析により実現できます。

説明図
図5 バンパーの事例

複合成形"3D TIMON-MULTIMOLD"「スリーディータイモン・マルチモールド」

説明図
図6 1次・2次成形品断面の時刻暦温度分布
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

主な機能としては、2色成形において、一次成形品との温度連成による溶融強度の検討、金型を2色目に移動する時の空気放冷を考慮した温度予測によるサイクルタイム検討、一次成形品の収縮歪を考慮したそり変形解析などがあげられます。このモジュールを用いることによって、多色成形品の解析が可能となります。図6に二次成形品の温度が一次成形品へ伝わっている時系列結果を示します。

熱硬化樹脂成形"3D TIMON-RMOLD"「スリーディータイモン・アールモールド」

熱硬化性樹脂固有の硬化反応の進行に伴う粘度上昇を考慮し、複雑な樹脂封止工程での流動挙動から欠陥予測、最適構造や条件の明確化、試作期間短縮と欠陥発生防止によるコスト削減が検討できます。

IC封止用途や、絶縁部材・自動車用パワーユニットなど、昨今ご要望が高まっている熱硬化性樹脂成形品の解析ニーズにお応えします。図7にIC封止の充填パターンを示します。

説明図 説明図
図7 IC封止の充填パターン

最適化 システム"AMDESS for 3D TIMON"
「アムデスフォー・スリーディタイモン」

説明図 説明図
図8 ゲート位置の変更による型締め力最小化
(ご提供:株式会社くいんと様)

開発パートナーである株式会社くいんと様と共同開発しました最適化モジュールです。

3D TIMONをベースに「AMDESS」を活用して、図8のゲート位置による型締め力最小化や、図9の肉厚の変更によるそり変形最小化などの最適化を実現しました。従来の最適化システムのように、形状変更をCADに戻って実施せずに、解析の中で最適形状の予測が可能になります。

説明図
図9 ソリッド要素の寸法変更によるソリ最小化
(ご提供:株式会社くいんと様)
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

おわりに

プラスチック射出成形は、プラスチック製品や部品を大量生産するために適した技術として普及しました。そして、射出成形CAEはその製品や部品を短期間で高品質の成形品を量産する支援ツールとして普及してきました。繰り返しになりますが、すでに射出成形CAEは、ものづくりに不可欠な技術として定着しています。CAEの使いこなしの差が、そのまま企業の競争力の差になっています。

3D TIMONは、これからもお客様のニーズに応え現場で使えるCAEを目指していきます。

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