人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.102 | システム紹介
Space-E Version 5.10リリースのお知らせ
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
製造ソリューション事業部 技術開発部 第二サービス課
中島 彩夏

はじめに

私たちはものづくり分野のお客さまの未来をITで支援するため、Space-Eの「自動化」を目標とし、お客さまの声に耳を傾けながら開発に取り組んでいます。新バージョンのSpace-E Version 5.10(以下、Ver.5.10)では、最高品質の5軸加工とモデリングの実現を目指して新機能の追加や機能強化を行いました。ここでは、自動化へ進むSpace-E Ver.5.10の概要をご紹介します。

Space-E/Modeler

・面トリム機能の強化

サーフェイスモデリングを効率化するため、面トリム機能を大幅に強化しました。まず、トリム要素や被トリム要素を複数まとめて選択できるようにし、操作性を改善しました。これにより、従来は複数回コマンドを実行していた形状でも、Ver.5.10では1回のコマンド実行でトリム操作が完結できます(図1)。

図1 面トリム機能の強化(まとめてトリム)
図1 面トリム機能の強化(まとめてトリム)

さらに、Ver.5.10のトリム要素の自動トレース機能では、トリム要素が複数ある場合でも、そのうちの1カ所を選択するだけで全てのトリム要素を自動認識できます(図2)。

図2 面トリム機能の強化(自動トレース)
図2 面トリム機能の強化(自動トレース)

これらの機能を活用いただくことで、サーフェイスモデリング中の面トリム操作にかかる手数が大幅に減り、作業効率が格段に向上します。

・クラス単位でのモデル保存

モデル保存時にクラスを指定することで、1クラスを1ファイルとして保存する機能を追加し、部品ごとのファイル作成にかかる時間を大幅に短縮しました。従来、部品のファイル作成を行う際には、対象のクラスのみを表示状態にして、「部分保存」機能で対象モデルを選択する作業を部品ごとに繰り返し行う必要がありました。Ver.5.10では「クラス保存」機能を使用して、対象のクラスを指定するだけで必要なファイルを一括作成できます(図3)。 また、クラス番号と説明(名前)をもとに分かりやすいファイル名称が自動設定されるため、シミュレーションソフトへの部品データ受け渡しや、組図を部品ごとに分割しての作業へスムーズに移行できます。

図3 クラス単位でモデル保存
図3 クラス単位でモデル保存

Space-E/5Axis

・ピック動作の強化

5軸機能のピック部設定に「円弧を使用」機能を追加しました。ピック部設定の幅を広げることで、さまざまなケースに対応した最適な経路を作成できます。「円弧を使用」機能を用いてピック時に円弧でリトラクト・アプローチする経路を作成することで、ピックによる加工痕の残らない高品質な加工を行えます(図4)。品質よりも加工時間を優先したい場合には、モデル上を切削(G01)でピックする経路も作成でき(図5)、お客さまの利用シーンに合わせた理想的な加工が行えます。

図4 「円弧を使用」機能
図4 「円弧を使用」機能
図5 モデル上を切削
図5 モデル上を切削

・工具接触位置を利用した傾き角度の自動設定

5軸加工の難点の一つに、最適な工具姿勢(傾き角度)の設定が挙げられます。この難点の解決策として、加工物との「接触位置」によって工具の傾き角度を自動設定する機能を追加しました。この機能を利用すると、5軸加工の経験が浅い作業者でも短時間で最適な傾き角度を設定できます。

従来は、傾き角度を大まかな数値で設定し、作成した経路を確認して修正するといったトライ&エラーの手法がとられてきました。この手法では、傾き角度の設定に時間を要するだけでなく、算出した傾き角度が最適な値であるか判断することもできませんでした。Ver.5.10では加工に使用したい工具の場所(接触位置)を設定するだけで、最適な傾き角度が自動的に算出・設定されます(図6)。 この機能は、テーパーバレル工具やレンズ工具などの異形状工具にも対応しているため、工具の利点を最大限に有効活用する傾き角度が全自動で設定できます。

図6 傾き角度の自動設定
図6 傾き角度の自動設定

<高品質な加工を短時間で行う異形状工具>

異形状工具はボール工具よりも大きなRで加工できるため、ピッチを大きく設定しても同一のカスプハイトを保つことができ、加工時間を短縮できます。例えば、図7の底面部はボール工具の加工に対して約6.3倍のピッチでテーパーバレル工具の加工を行っていますが、カスプハイトは同等であり、大きなピッチでも高品質な仕上げ加工ができます。実際の加工と比較すると、テーパーバレル工具を活用した場合、ボール工具のみで仕上げ加工を行うよりも76%加工時間を短縮できました(図8)。

図7 異形状工具とボール工具の比較(ピッチ)
図7 異形状工具とボール工具の比較(ピッチ)
図8 異形状工具とボール工具の比較(加工時間)
図8 異形状工具とボール工具の比較(加工時間)

おわりに

ものづくり業界では、人材不足やDXなど多様な課題に直面しており、その対応のために皆さまも苦労されていることかと存じます。「最高の加工品質」と「自動化」を目指すSpace-Eが課題解決の手段の一つとなれば幸いです。

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