人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.5 | お客様事例
PictureTelの利用について

株式会社イノアックコーポレーション様は、ウレタン、プラスチック、ゴム、複合材・新素材による製品をさまざまな分野にわたり開発、生産、販売されているメーカです。つねに新しい時代に向け、新素材、複合材、新開発が求められる中、独自の生産、保証、評価体制を確立され、海外拠点や海外企業との技術提携にも積極的に取り組まれています。

今回は、PictureTel導入の背景、利用方法、今後の課題などを中心に、金型管理部 部長 伊藤様にお話しをお伺いしました。

事業内容について

人物写真
金型管理部 部長 伊藤 様

当社は、8つの工場、14の営業部・支店・営業所があり、系列、関連、合弁が国内に約60社、海外に40社あります。

主な売り上げを分野別でみると、自動車関係が一番多く38%を占めています。

自動車の内装では、一番大きなインスツルメントパネルの本体、メーターケース、シートクッション、天井など、樹脂やウレタンを使った内装品を作っています。外装では、バンパー、サイドモール、スポイラーなどや、一部エンジン内の部品としてダクト類やゴム部品も作っています。

その他にフォームなどの発泡品、住宅関連では、壁材、床暖房やエアコンなどの導管が入ったパイプ、樹脂カバー、OA関係では、OAフロア、ノートパソコンやFAXに入っているロール関係、それから、携帯電話のケースカバーなどいろいろな分野の製品を扱っています。

この桜井事業所は、8割が自動車関係です。

我々が所属する金型管理部は、当社と国内外の関連会社に金型を調達する部門で、金型の購買業務と購買技術、購買管理(予算管理)などを行なっています。

年間に3000強の型を調達します。型にもいろいろあり、インジェクション型、ブロー型、ウレタンなどの柔らかいものを作る型、ゴム型などです。その他には、成形した製品への印刷やラベル貼りなどの専用機、製品の検査測定をする治具なども含まれます。

PictureTel導入の背景について

現在、系列、関連、合弁の中に、型を作る会社が数社含まれていますが、実際、3000型の80%以上は、外部の金型メーカに依存しています。ちょうど昨年ごろから、金型の需要が増えてきまして、当社では、量的にバブルの年を越えました。今年は、さらに昨年の3割ぐらいは増えると予想しています。ところが、金型業界はリストラがあったため、生産性が低下しているというのが現況です。

金型業界は、仕事が増えたり減ったり、絶えず繰り返されている大変厳しい業界です。そのため、当社は金型メーカに対して、90年から以下のような活動を行なってきました。

まず90年頃に、社内はもちろん金型メーカに対してCAD/CAM導入活動を展開してきました。当時、インジェクション型を中心に考えていましたので、ベンチマークの結果、当社としてはGRADEを推奨システムとして、取り引きしている金型メーカに紹介しました。はじめは、ある金型メーカが2セット導入し、現在は9社の金型メーカがGRADEを導入されています。

92年には、技術部門を中心として、生準(生産準備)システムを社内で作りました。このシステムには、金型メーカに対しての日程管理、予算管理、負荷管理など、型の調達に関することも入っています。現在、オフコンを使って約40台の端末で処理しています。

94年には、ISDN回線を利用したCADデータの送受信ができる環境を作りました。ちょうど、型業界が不況な時期でしたが、現在24社が参加しています。

95年には、さらに多くの金型メーカと取り引きをするために、国内外を含め約70社を回りました。その結果、遠方の九州、仙台、海外の韓国、台湾など取り引き先が広域化してしまいました。

そこで、96年にPictureTelを導入しました。取り引き先が広域化し、出張の負担が大きくなったためです。遠くても良い金型メーカを使えば、それだけのメリットはあるので、遠くても苦労しないで済む仕掛けを95年頃から考えていたところ、去年のはじめに名古屋でPictureTelを見て、これは使えると思いました。特に遠方の金型メーカと技術部門との効率を上げる道具として、PictureTelを導入することにしました。

PictureTelの導入ルートはたくさんあったのですが、HZSを選んだ理由は、まず、金型メーカに導入してもらうので、「HZSが身近にいる金型システムメーカである」ということ、つぎに「全国的に営業所がある」、それから、「HZS自身が社内でPictureTelを使用している」という3つです。コンピュータメーカの代理店で購入するより、HZSで購入したほうが、全国的に営業所があり、対応も早いので感謝しています。

PictureTelを導入した1つめの目的として、打ち合わせをしたいが、相手がいないという、不在ロスによる日程の遅れの防止で、いいかえれば、納期の短縮と納期遅れなどの防止です。

2つめに、確認がとれないことによる勘違いやトラブルの防止です。通常、電話とFAXを使っていたのですが、電話だと後に残らないし、FAXだと送りっぱなしになり、紛失などの恐れがあります。

3つめに、九州や仙台への出張の工数の削減です。打ち合わせは1時間ですが、移動を入れると1日つぶれるわけです。また結果として、旅費などの削減につながります。このようなことを目的に、愛知6社、三重1社、岐阜1社、静岡1社、大阪1社、九州1社、長野2社の13社と当社を入れて14セットを昨年の11月下旬までに導入しました。

PictureTelの導入を決めるときに60社ほど集まってもらい、説明をしてアンケートをとったら、半数以上がやりたいという意思を持っていました。本当は、30社ほど同時に導入したかったのですが、少し様子をみることにしました。

利用方法について

PictureTelを導入した13社は、インジェクションの金型メーカです。

次のような利用方法をしています。

(1) 新型の打ち合わせ後の補足

新型を作るときには出張して打ち合わせをしていますが、そのあとの補足説明に使っています。

(2) 設計変更

設計変更の修正内容について、型や仕様書を画面に映して打ち合わせします。

(3) 型の進捗状況の確認

電話だと納期通りに順調かどうかわかりませんが、ビデオで型の現物を撮ってもらい、PictureTelでそれをみて確認できるので、非常に安心できます。このことは、金型メーカにとっては監視されているようですが、逆に設計変更が入ったとき、簡単に済むと思っている指示が、実は難しい作業だということを提示するなどの手段として使えます。双方のメリットがでるように運用したいと考えています。

(4) 発注先の決定

型の見積りとして、図面を映し、指定する納期で作れるかの問い合わせを行ない、発注先を決めるときに使用しはじめています。

(5) 型作成中の問題点

型を作っていくうえでの図面の不明点、曖昧な点を確認し合うことに使っています。

(6) CADデータの転送

ISDN回線を使って転送できる会社はいいのですが、それ以外でPictureTelを導入した会社は、PictureTelのファイル転送機能を使いCADデータを送っています。時間は、ISDN回線を使って直接送る場合の約1.4倍はかかるため、1M~2Mの大きさのものをPictureTelで会議を行なっている間に送っています。

(7) アプリケーションの共有

PictureTelのアプリケーションを共有するという機能を利用すると、CALSVIEW*1というビュワーソフトでIGESデータを表示し、それを相手の画面にも映すことができます。データを見ながら打ち合わせができ、図面を映して送るより鮮明ではるかにきれいです。当社で、CALSVIEWを購入すれば、金型メーカには必要ありません。

会社風景

*1 「CALSVIEW」は米国IDA(IGES DATA ANALYSIS)社の製品です。

今後の課題について

PictureTelは週に1、2回しか使っていません。まだ、照れなどがあり積極的にPictureTelを使おうというメンバーが少ないのです。日常手軽に使えるように、専任の女性を決めてオペレーションの補助をしてもらい、やわらかい雰囲気をだして最低1日に1、2回ぐらいは使うように指導していきたいと考えています。PictureTelでの打ち合わせは不慣れなため、普通の電話感覚で使えるようになるには、もう少し時間がかかります。

当社では、すでにドイツの提携会社との1回のテレビ会議で、PictureTelの機材費用の採算がとれたという実績ができています。同じように金型メーカとの効果も期待できるので、実際値を把握し整理した後に、2次計画をスタートさせたいと考えています。

人物写真
PictureTelを操作される
金型管理部 杉浦 様

今後の課題として、動画の必要がない場合を考えて、デジタルカメラによる、きれいな静止画を送る方法を調査中です。PictureTelは静止画を動画として送ってしまうため、画面にちらつきがあります。

その他に、パソコンのアプリケーションを共有する機能を使ってCALSVIEWのように、普通のテレビ会議システムでは得られないメリットを研究していきます。新しい活用方法があれば教えてください。また当社で良い方法を見つけたら情報を提供します。

今後、型の見積りにも積極的に使っていきたいと考えています。

HZSに期待することについて

最近、CAD/CAM一貫システムではなく、パスだけを作るCAMの専用機が普及してきています。

現状は、設計室でCAD/CAMシステムによりNCデータを作って現場に送っていますが、現場のオペレータからはエアカットが多いなど、NCデータへの不満がでているケースをよく聞きます。

工具に合った使い方、加工方法は、マシニングセンタのオペレータが一番よく知っているので、現場でCAM専用機を使いNCデータを作ればいいのです。そうすると、CAD/CAM一貫処理している人の負担が、10割から7割になり、3割は現場の方に分散できます。このような発想に切り替えていく必要があるのではないでしょうか。

HZSも金型を商売にするつもりで、もっと型の現場に入っていくと、本当に金型業界で必要としている姿がわかるはずです。そのような金型メーカの目線で開発できれば理想だと感じています。

それから今後、パソコン版のソフト販売を考えて、PictureTelやISDN、インターネットを使った効率の良いサポートを実施する体制にしてはどうですか。

規模の小さな金型メーカにとって、保守料は負担になります。これからは、パソコン版の安価なシステムで数多く導入する方向にあるので、そのことも含めて保守料やサポート体制を検討してください。

取引先の募集

当社と金型、特にインジェクション型の取り引きを希望される会社がありましたら、ぜひご一報ください。

〒444-11
愛知県安城市藤井町東長先8-1

TEL 0566-99-5732
FAX 0566-99-5021
金型管理部 部長 伊藤 光則

株式会社 高城精機 様

今回は、株式会社 イノアックコーポレーション 様がPictureTelを一括導入された中で、一番遠方になる九州の株式会社高城精機 様にもお話しをお伺いしました。株式会社高城精機 様は射出成形用プラスチック金型を製作されています金型メーカです。平成5年に完成されたという新工場、社屋は、金型のイメージを一新した洗練されたデザインです。

会社写真
所 在 地 :北九州市小倉南区石田南
資 本 金 :5,000万円
創 業 :昭和36年5月
従 業 員 :40名
人物写真
代表取締役 尾上 様
人物写真
次長 清水 様

常日頃、一番早い伝達方法で最新の情報を交換する手段や、ライバルメーカとの差別化について考えていましたので、PictureTelの話しを聞いたときには、導入すべきだと即断しました。

使用目的としては、PictureTelと合わせて図面データの送受信を行ないたい、電話、FAXでは意志の疎通ができない部分を図面を見ながら打ち合わせをしたい、九州と愛知で離れているので、出張によるロスを削減したいなどです。

電話やFAXで確認していたことを、PictureTelで確認すると最終的なミスが少なくなりました。また、出張にでかけたときは、限られた時間内での打ち合わせでしたが、PictureTelだと不明な点がでてくれば、夜でもすぐに図面を見ながら打ち合わせができるので非常に便利です。できるだけ打ち合わせを多く行なうことにより、あとの工数の削減をすることができます。特に遠方であるため、使えば使うほど効果はでると期待しています。

また、実際にPictureTelで相手の顔を見ることで、仕事の信憑性や厳しさを心で感じることができ、信頼感もより強くなります。

今年はPictureTelを使って、株式会社 イノアックコーポレーション 様との年始の挨拶を行ないました。

会社風景

おわりに

株式会社 イノアックコーポレーション 様は、モーターサイクル・バイシクルタイヤのメーカでもあり、数多くのモトクロスやハイスピード用の製品群の中で、「IRCタイヤ」は国内外のトップブランドです。お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話しを聞かせていただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

会社プロフィール

株式会社 イノアックコーポレーション桜井事業所

創業1926年(井上護謨製造所)
創立昭和29年8月
資本金7億2000万円
従業員2,750名
売上げ高1,600億円
<主な売上の分野別の比率>
自動車関係(38%)、フォーム(24%)、住宅建材(10%)、OA関係(8%)
桜井事業所愛知県安城市藤井町
会社写真
会社写真
製品
インスツルメントパネル
製品
光磁気ディスク
カートリッジ
製品
ファクシミリ、複写機、
プリンタ用/各種ロール