金森産業株式会社様は、人と技術を結ぶパートナーとして明治時代から今日まで、日本の製造業とともに歩んできました。戦前の繊維産業から戦後の石油化学産業、そして環境問題やエコに重点が置かれつつある現在へと移り変わっていく時代の中で、常にお客様のニーズに対応すべく、事業エリアを拡大されています。今回は商社という立場ながらEOSINTによる造形サービスを行われている背景や活用のお話などを、取締役社長 金森米男様、アイメック部 取締役部長 大野重勝様、東京営業所 主任 泉規靖様にお伺いしました。
事業概要

金森 米男 様
「活力ある産業づくりのお手伝い」をコンセプトに、製造業を中心としたお客様向けにさまざまな事業を行っています。
一つ目は染料、化学工業薬品、塗料、合成樹脂、セラミックス、光ファイバ、鋳物資材、金属材料などの工業材料のご提供です。商事会社とは、ものづくりを行う製造業の黒子に徹する総合お手伝い産業だと考えています。単に商品を売買するだけでなく、お客様のニーズに合わせてカスタマイズすることが重要です。
例えば当社の場合、染色試験室や塗料調色センターを持っていますので、ただ単に完成品の塗料を納品するのではなく、コンピューターを使った他社では出せない微妙な色のカラーマッチングで調整した塗料を納品することが可能です。
二つ目は水処理設備・機器や省力化機械設備・産業機械設備、チェスタートン・ポンプ設備の開発・販売や、環境分析センターによる水質・大気・土壌の環境分析です。工業材料の販売が主なのですが、「産業は人を害してはいけない」という信念のもと、公害について専門に取り組む目的で、販売した材料が廃材になるときの排水や排気ガスなどを検査し環境測定する業務など、周辺サポート事業の拡充にも努めています。
そして、三つ目が3次元CADを利用したモデリングと試作です。試作では切削や光造形、EOSINTを利用した粉末積層造形などを行っています。当社のように、商社が直接お客様向けに造形サービスを行っているというのは非常にユニークではないでしょうか。
当社の戦略的意図は、最終的に工業材料の販売に結びつけることにありますから、製造業のお客様に対するサポートサービスの一環として行っています。
【138年の歴史】

当社は創立が明治3年です。最初は植物染料・藍を販売する染料問屋としてスタートしました。
明治時代の製造業は繊維産業が中心で、その素材である絹や羊毛、綿は天然材料です。ですからそこに付加価値をつける染料は、非常に大きなウェィトを占めていました。
戦後、石油化学が大発展をとげてプラスチックが生まれ、造形が行われるようになりました。
この138年の間、当社は日本の化学工業の発展とともに歩み、製造業をお客様とする工業用のサービス産業を営んできたといえます。
EOSINT導入の背景
【光造形への取り組み】
富山県で昔から造形が盛んな理由は江戸時代にさかのぼります。江戸時代の代表的な造形物は鋳物で、鍋釜などの他、仏具も鋳物で製作するのが当時の最先端でした。
富山県高岡市の地場産業である高岡銅器は約400年の歴史があります。当社もずっと地場産業に携わっていましたので、造形というものに対して昔から関心がありました。
以前はそのほとんどが手作りだったのでしょうが、平成2年頃に、当社と化学品の取引のある化学会社が、光造形を中心とするモデリング事業を国内でスタートさせました。その情報を聞き、これは鋳物やプラスチック成形に利用でき、試作にも向いているのではないかと考えました。そこで直営事業として取り組むことにしたのが、当社のラピッド・プロトタイピングのスタートです。ただ、時期尚早だったのか、最初は赤字続きでした。しかし、この光造形での経験が現在のEOSINTでの粉末積層造形に活かされていると思います。
【EOSINT Pの導入】

取締役部長
大野 重勝 様
EOSINTを知ったきっかけは、お客様からEOSINTという良い装置があり、それを使うと良いものができたよ、と教えていただいたことです。光造形を導入した平成7、8年頃、ロストワックスのマスターモデルに活用できないかとさまざまな試みを行いましたが、光造形の材料であるエポキシは、熱を加えると膨らんだり鋳型を壊してしまい、活用できませんでした。
しかし、EOSINTで利用するポリスチレンはワックスの代用として、マスターモデルに利用できました。それがちょうど今から3年前です。
事業の展開というのは、人材の余裕、お金の余裕、それから技術的なつながりの余裕がないとできないと考えていますが、それらが全てクリアされましたので、まず1台目のEOSINT Pを導入し、さらに1年内に2台増設しました。
EOSINTの活用について
現在は、電気・電子分野への微細モデルと鋳物への展開を2つの柱としてEOSINTを活用しています。
【EOSINTの利点】
コネクタ関係の小さいものから自動車部品まで、さまざまな試作を受注していますが、短納期でコストも安価ですし、形状に制限がないことが利点です。

主任 泉 規靖 様
光造形では形状を視覚的に確認するだけで、試用することはできませんでした。しかし、EOSINTは試用に耐えられる強度と精度の高い造形が可能です。
特にコネクタ部品については、端子を付ければ実際に使える精度です。東京のお客様にはコネクタを製作している会社が多く、試作は少数から何十個という要望までお客様によってさまざまで、どんな要望にもEOSINTで対応しています。
今後も精密なコネクタの造形にいろいろな材料を利用してチャレンジしていきたいと考え、FORMIGAの導入も検討しています。
試作品から量産に結びつけば、今度は当社の主力事業である原料の販売へとつながっていきます。

左よりチタン、ステンレス、PrimeCast101

【EOSINTを鋳物製品の造形に】
鋳物の場合、アルミやチタン、ステンレス、それから鋳鉄などさまざまです。EOSINTにアルミを利用する会社は多いのですが、ステンレスやSCSというステンレス鋼、チタン、鋳鋼品などを利用しているところは当社ぐらいかもしれません。
マスターモデルの製作には、3次元データをEOSINTに渡し、直接造形を行えるので、マスターモデル用の型製作の工程を省くことができます。
【ガラス入りナイロン材料の活用】

ガラス入りナイロン材料を利用して、鋳物部品の造形を行っていることも、当社の特長のひとつです。
例えば、耐熱強度が必要な自動車エンジン周りのパーツなどに、ガラス入りのナイロンを利用しています。まだガラス入りナイロンを材料として利用している会社が少ないこともあり、少しずつ受注は増えています。
【お客様のニーズに合わせた提案を】
当社は粉末造形以外にも、試作として切削も行っており、マシニングセンターが3台稼働しています。幅広い客層に対して、図面やいただいたデータを見ながらこれは切削を行いましょう、これは粉末造形の方がいいでしょう、というようにお客様の業種とニーズに合わせた提案を行うのが、我々のサービスのひとつだと思います。
商社という強みを活かして
【お客様からテーマをいただくこと】
当社のお客様は、自動車だけでなく電機メーカ、電機部品、化学メーカなど、多業界に渡っています。窓口が幅広いことが商社の特長でもあり、当社の強みでもあります。営業は北陸3県と東京、大阪に拠点があり、日本の中心はカバーできています。商社というのはものを売り込むことが営業活動だと思っている方もありますが、お客様からいただいたテーマ(宿題)を解決することが商社の仕事であり、商談の成約を高めるのだと思います。「何かにぶつかって前に進まない」、「新しいことにチャレンジしたい」など、お客様からいろいろな相談を受けます。相談をしていただくことはありがたいことです。解決のための新提案を行うことができますし、相談の中に最新情報があることもあります。当社がEOSINTを知り、導入したのがその良い事例です。



【コミュニケーションを考慮したオフィス】
お客様からいただいたテーマをきちんと持ち帰り、上司に相談することと上司もその相談にのること、つまり社内のコミュニケーションも大事です。当社は、社内で横同志のコミュニケーションを取りやすい環境です。理想的なオフィスは体育館のようにワンフロアで横へ広がる空間です。高層ビルのように縦型でエレベータ移動ではコミュニケーションは取れません。当社の社屋にエレベータはなく、事務所は1、2Fでガラス張りにして見通しをよくし、1日に数回しか利用しない食堂とロッカーは3Fという構造です。
今後の展開について
■富山県という土地柄を活かして
富山県は東京から見ると田舎です。そして石川県金沢市の方が知名度はあり、富山県高岡市といってもどこにあるの、と言われます。観光地としてのアピールはあまりできないかもしれませんが、昔から製造業が非常に盛んで地場の大手資本が強い地域なので、当社のような商売には非常に向いている地域です。
昔は自動車産業といえば圧倒的に米国でしたが、その仕事の一部を富山で行うことができるとは、夢にも思っていませんでした。例えば、自動車の生産ラインのトランスファマシンの多くは富山県で生産され、米国に輸出されています。ものづくりに強い会社がこの富山にあることで、当社のお客様が世界中から仕事を受注され、その流れの中に当社も存在していることは大変ありがたいことです。
また、東京と大阪の中間地点ですし、名古屋も近いです。2008年に東海北陸自動車道が全線開通し、名古屋が非常に近くなりました。渋滞なしで当社から豊田市まで約3時間という距離です。
ものづくりがある限り、今後もいろいろな課題が出てくると思いますし、多少、景気に変動があったとしてもそれに惑わされず、しっかりと足下を見て当社と当社のお客様の連合軍で乗り越えていきたいと考えています。
NDESへのメッセージ
EOSINTの材料がもっと安価になってほしいです。特にガラス入りナイロンのコストが下がればいいと思います。また、積層のピッチによっては造形品の表面がざらつくことがあり、もっと滑らかな造形ができればと思います。今はまだチャレンジ段階にありますが、パートナーとして、今後もハンドリングの良い材料の情報やヨーロッパの最新情報などの提供をお願いします。
おわりに
138年という長い歴史と経験の中で、常に時代の先を読み新しい分野にチャレンジを続けていらっしゃるお話を伺いながらも、その基本は人と人とのコミュニケーションが大切であることを強く感じました。大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
会社プロフィール

金森産業株式会社
本社 | 〒933-8558 富山県高岡市昭和町1-4-1 |
---|---|
創立 | 明治3年2月 |
設立 | 昭和25年2月 |
資本金 | 47,385,000円 |
従業員 | 150名 |
事業内容 |
■工業材料(化学工業薬品、塗料、鋳物資材、染料、各種合成樹脂)などの販売 ■試作開発(試作、OAソフト開発) ■エンジニアリング(環境測量証明事業、公害処理設備・水処理設備、産業・省力化機械設備、チェスタートン製品) ■環境分析(ダイオキシン類の分析、大気、水質、土壌、底質中の有害物の分析、騒音・振動測定など) |



関連するソリューション
関連するソリューションの記事
- 2020年01月01日
- JAPAN EOS DAY 2019のご報告
- 2019年04月01日
-
ドイツ・フランクフルト開催の国際見本市
formnext 2018のご報告
- 2019年01月01日
- 「EOS DAY」のご報告
- 2018年10月01日
-
3Dプリンティング技術による歯科デジタルものづくり
最適な人工歯を短時間で製造可能に
- 2018年07月01日
-
革新的次世代乾式電解研磨装置
DLyte 100Iのご紹介
- 2018年04月01日
-
ドイツ・フランクフルト開催の国際見本市
formnext 2017のご報告
- 2018年01月01日
- EOS Asia User Meeting in Singaporeのご報告
- 2017年10月01日
-
世界シェアNo.1 ハイエンド3DプリンターEOSを支える
AMデザインラボの技術力とは
- 2017年07月01日
-
HANNOVER MESSE 2017
EOS社出展リポート
- 2017年01月01日
-
EOS社製3Dプリンター
造形プロセスと周辺機器について
- 2016年07月01日
-
第1回 名古屋 設計・製造ソリューション展
出展報告
- 2016年04月01日
-
インダストリアル3Dプリンティングにフォーカスした展示会
formnextとEOSの最新情報
- 2016年01月25日
-
歯科医療用金属3Dプリンターの小型機
「EOS M 100 Dental」を販売開始
- 2016年01月25日
- 金属3Dプリンターの小型機「EOS M 100」を販売開始
- 2016年01月01日
-
つなぐ・ためる・わかる技術が進化した
身の回りにあるIoTとは
- 2015年10月07日
-
歯科医療用ハイエンド3Dプリンター
「EOSINT M 270 Dental」を販売開始
- 2015年10月01日
- 「第3回 AMソリューションセミナー」のご報告
- 2015年06月23日
-
IoTを用いた製造業向けメンテナンス業務高度化の
実証実験を開始
- 2015年01月21日
-
ハイエンド3Dプリンターの早期導入を実現する
造形トレーニングプログラムを提供開始
- 2015年01月01日
- EuroMoldでのEOS最新情報
- 2015年01月01日
-
トータルソリューションのご提案(2)
フロントローディングソリューション
- 2014年10月01日
- EOS社の最新情報
- 2014年10月01日
-
トータルソリューションのご提案(1)
STLの活用例
- 2014年07月01日
- 3Dプリンター振興協議会が発足しました。
- 2014年04月01日
- EUROMOLDで発表されたEOS社の新製品
- 2014年02月18日
- 世界初 3Dプリンターを用いたイヤホン量産化に対し技術協力
- 2012年10月01日
- AMの使いどころ ― EOSINTを用いた事例 ―
- 2012年04月01日
- 金型用3次元冷却水管インサートの設計
- 2011年10月01日
- EOSINTニュース
- 2011年04月01日
- EOSINT/FORMIGAは、モノづくりの新しい道具
- 2011年01月01日
- 金型用3次元冷却水管インサートの設計
- 2010年10月01日
-
金型用3次元冷却水管インサート製作
―RPテクニカルセンターでの製作プロセス―
- 2010年07月01日
- EOSINTリポート
- 2010年04月01日
- EOSINTリポート
- 2010年01月01日
- EOSINTリポート
- 2009年10月01日
- EOSINTリポート
- 2009年07月01日
- EOSINTリポート
- 2009年04月01日
- EOSINTリポート
- 2009年01月01日
- EOSINTリポート
- 2008年10月01日
- EOSINTリポート
- 2008年07月01日
- EOSINTリポート
- 2008年04月01日
- EOSINTリポート
- 2007年10月01日
- EOS社でのe-Manufacturing
- 2007年07月01日
- EOSINTとe-Manufacturing「EOS社の新製品」
- 2007年04月01日
-
EOSINTとe-Manufacturing
「EOSINT Pの構成とオペレーション」
- 2007年01月01日
- EOSINTとe-Manufacturing「EOSINTの活用事例 2」
- 2006年10月01日
-
EOSINTとe-Manufacturing
「EOSINT の活用事例」
- 2006年07月01日
- EOSINTとe-Manufacturing 「EOSINTの最新情報」
- 2006年04月01日
-
EOSINTとe-Manufacturing
「EOSINTを使用した鋳造品製作」
- 2006年01月01日
-
EOSINTとe-Manufacturing
~EOSINT Mによる金属部品・金型製作~
- 2005年10月01日
-
EOSINTとe-Manufacturing
~ EOSINT Pによるプラスチック部品製作 ~
- 2005年07月01日
- EOS社インターナショナルユーザーミーティング参加報告
- 2004年10月01日
- EOSINT新製品のご紹介
- 2002年10月01日
- EOSINT新製品のご紹介
- 2000年07月01日
- EOSINT-M250 XtendedとDirectSteelのご紹介
- 1999年07月01日
- EOSINT-Mによる成形金型製造の適用事例
- 1999年01月01日
- ラピッド・プロトタイピングにおける鋳型の直接構造と鋳造
- 1996年07月01日
- ラピッド・プロトタイピング新商品「EOSINT」について