感謝につながる新しい価値を築く
創業45周年を迎える佐藤木型製作所様は、創業以来からの鋳造用木型事業をはじめとし、試作に関わるモデル事業、リバースエンジニアリングやCGデータを基にしたデジタル造形事業を軸にして、お客さまに新たな価値を提案されています。その中で、製品作りの原点である木型の職人技とデジタル技術を融合したものづくりを進めながら、若い職人の育成にも注力され全社員が職人として業務に携わっておられます。
このたびは、新社屋が竣工する2015年10月5日に社長に就任される専務取締役 佐藤 裕仁 様に、事業戦略や今後の展開、Manufacturing-Spaceの3次元CAD/CAMシステム「Space-E」の活用法について伺いました。
佐藤木型の強み
幅広い業種のお客様とお付き合い
当社は、工作機械向けの鋳造用木型の製作からスタートし、その後、自動車内外装部品のモデル製作を行うようになり、特にインパネ、バンパーなどの大物を得意としています。
事業としては、鋳造用木型事業、モデル事業、デジタル造形事業の3つを主軸として、自動車、航空、家電、重機、産業設備、アパレル、パチンコ、遊戯機器、医療関連など、幅広い業種のお客さまとお付き合いをさせていただいています。どのような業種にも、ものづくりの需要があり、そのご相談を一手に引き受けています。
職人技とデジタル技術を融合
その時代に合ったCAD/CAMシステムや工作機械などの設備を積極的に導入しながら、その一方で職人技の伝承を大事にした人材育成を実施してきました。今では全社員が職人として、設計、加工、手仕上げなどの全工程を作業できることが当社の強みです。
当社には、20~70歳代の幅広い年代の社員がいます。まず、入社すると必ず鋳造用木型の現場に入り、手作りの技を学びます。ここで学ぶことで、完成品をイメージしやすくなり、設計作業が早くなったり、製品までのトータル時間が短縮できたりするので、手で作る感覚というのは、ものづくりのさまざまな工程で重要だといえます。今後も若い人材を採用しながら熟練した職人のノウハウをうまく伝授していくことで、職人が培ってきたものづくりの技と、若手が得意とするデジタル技術を結びつけて、付加価値の高い製品をお客さまにご提案していきます。
鋳造用木型の需要が拡大
なぜ当社は、木型職人にこだわるか。それは、日本の木型職人が減少しているその一方で、日本が得意とする鋳造用木型の期待も少なくないからです。
近年、世の中の機械化が進み、ロボットなどの設備は大型化の傾向にあります。そのロボットを作るための木型というと、工作機械に載らないサイズになり、木型職人の技が必要になるのです。一時期この木型が、安価な海外に流れたことはありましたが、やはり、大型製品になると木型のノウハウがなければ製品不良のリスクが高くなり、この技術を得意とする日本に戻りつつあります。
現在、当社が製作しているロボットの木型は、自動車を移動させる工程のロボットアームの部品です。自動車を直接つかむため、各々の部品も非常に大きくなるので、大物を得意とする当社の職人技が生かされています。
感謝につながる新しい価値を築く
現社長は、根っからの職人で他社が1カ月かかる仕事であれば当社は2週間で終わらせるという強い信念を持ち、これまで仕事を続けてきたので現在の木型にこだわった会社があると思っています。また、「すべてに感謝」ということを会社理念とし、お客さま、協力会社、さらに社員に対して、常にありがとうという感謝の気持ちを大切にしています。
そして、現社長からバトンタッチされる私の代の企業理念は、「感謝につながる新しい価値を築く」を掲げます。この価値とは、まず、これまで培ってきたものづくりの技術を生かし、社会に喜ばれる自社製品を開発するということです。それから、創業事業である鋳造用木型にこだわり、ナンバーワンを目指します。
この新しい価値を築くため、さまざまな挑戦を始めています。
時代に合った設備
まだ世の中にCADが普及していなかった1995年に、いち早く3次元CADのGRADEを導入し、多いときには10台が稼働していました。職人も大切ですが、時代の流れを見逃さずに、デジタル技術の導入にも積極的に取り組んできました。その後、Space-EからManufacturing-Space(Space-Eクラウド版)へ移行し、設計業務以外にもお客さまとの打ち合わせに利用しています。以前はビューワで打ち合わせをしてから設計に反映させていましたが、その場で設計できるSpace-Eクラウド版のおかげで、仕事がスピーディーに進むようになりました。
また、データを安全に保管・更新できるPDMサービスも利用しています。特に試作に関しては、お客さまから高いセキュリティーが求められますが、NDESの親会社であるNTTデータのデータセンターのセキュリティーの高さに対するお客さまの信頼は厚いため、当社も安心してPDMサービスを利用できます。
2015年10月完成の新社屋は、そのセキュリティーを配慮したオフィス、工場になっています。
Space-Eの活用について
大型5軸マシニングセンターの導入(鋳造用木型事業)
風力・火力発電で使われる鋳物部品や大型冷凍機などの鋳造用木型も製作しているため、大型5軸マシニングセンターを導入しています。複雑な曲面で構成される形状では、手加工と機械加工を組み合わせています。
お客さまから支給いただいた図面またはデータを基に、当社で型設計して木型を作ると、鋳造メーカーで木型から砂型をとって、鋳物成形をするという流れになります。
当社は、幅広い分野のお客さまとお付き合いがあるので、さまざまなCADを使っています。その中で、Space-Eは形状を自由に編集できるため、方案や型設計などで使いやすく、圧倒的な速さで作業ができます。ですから、Space-Eで操作する比率は非常に高くなっています。
開発から量産までをサポート(モデル事業)
自動車の試作関係が多いので、自動車内外装のデザインモデル加工、検査ゲージ、部品試作、少量品の金型設計、3次元設計、モデリングなどを行っています。特に自動車関連の電鋳型が主力になり、インパネなどの電鋳型の木型を機械加工で製作しています。
さまざまな業種のお客さまからのご要望にお応えするため、CATIAも導入しています。そのCATIAの作業でもSpace-Eと連動する場合があります。
CGデータを3D CADで活用(デジタル造形事業)
製品を測定して3Dデータを作成し、製品や型の検査およびリバースエンジニアリングを行っています。この測定したデータをSpace-EやCATIAに取り込むためにはコツが必要になります。各々のCADの特徴を熟知している私たちは、どのような処理をすれば問題なくSpace-Eに取り込めるデータにできるのか、そのノウハウを持っています。
また、これまで3D CADでは表現が難しかった有機的な形状をCGデータで作成し、3D CADに取り込んで作業することもできるので、デザイナーが感覚的に表現したデザインを自動車に使うこともできます。
このように、いろいろな技術を組み合わせて、どの技術が使えるのかを判断するため、常に、ものづくりの先を目指して最新技術を調査、学習しています。
デジタル造形事業では、3次元デジタイザ「ATOS」、3Dモデラー「Geomagic Freeform」などの技術、そしてSpace-E、CATIAとの連動も含めてノウハウを構築してきました。これは、木型とは異なりますが、これも職人の世界だと思います。
夢を"カタチ"に
お客さまの夢を"カタチ"に
日本では、大手メーカーを離れて独立したベンチャーが、なかなか育たない現状があります。またその一方で、1人であってもメーカーになれるチャンスもあります。
そこで、ある面白いコンセプトを考えたベンチャーに対して、そのコンセプトを形にするところで、当社のものづくりの技術を役立ててもらいたいと考えました。
例えば、コンセプトカー1台を実物大で作りたいが、デザインだけで図面はないという場合でも、当社でコンセプトカーを製作することができます。
これまで、当社でお手伝いさせていただいた中には、東京モーターショー2013に展示されたコンセプトカーとして「超小型モビリティD-FACE」があります。このコンセプトカーを出展されたことで、投資の話が進んで量産化が決定したそうです。このように、お客さまの夢を"カタチ"にするお手伝いができたことは、当社にとっても喜ばしいかぎりです。
東京モーターショー2013展示 コンセプトカー「超小型モビリティD-FACE」
将来的には自社ブランドで
新しい価値を築くということで自社開発に取り組み、初めて提案して商品化されたのが、ジュニアサッカー用のすねあて(シンガード)です。従来のすねあては、ジュニアの足に合っていないのではという発想から、まず、サッカーをしている小中学生各50人を対象とし、足のすねを3次元デジタイザでスキャンしました。そして、その平均数値のデータを作成して、すねが当たる部分として最適な曲面ラインを作り出したのです。さらに、製品のデザインまで当社で行うという新しい提案の第一歩でした。そのコンセプトが面白いということで、大手スポーツ用品メーカー様に付加価値のある製品として採用していただけたのです。
また、プラスチック製ゴルフボール ホルダーには、当社が特許を取得したOEM製品もあります。
これは、大手ゴルフ用品メーカー様に販売いただいています。
このように商品化が実現できたのは、当社と金型メーカー、成形メーカーで協力して共同開発した成果です。さまざまな技術、ノウハウを持つ当社のような中小企業が力を合わせることで、大手メーカーでなくても、高い開発力を発揮できます。今後も、共同開発に取り組み、大手メーカーとは異なる着眼点で製品や新しい価値を生み出していきたいと考えています。
そして、将来的には、自社ブランドとして製品開発から販売までを手がけていきたい、という当社の夢を"カタチ"にできればと思っています。
NDESへの期待
NDESは、ユーザーの業務内容や得意分野を熟知しているので、ユーザー会などでユーザー同士をつなげてもらえれば、当社も新たなビジネスパートナーと出合うことができます。そして、中小企業が協力し合うことで、日本のものづくりが、より発展していくのではないかと思います。
今後とも、きめ細かなサポートを期待しています。
おわりに
ものづくりというと大量生産の工業系を思い浮かべてしまいますが、私たちの身の回りの日用品には、形あるものがたくさんあります。それらすべての分野で、佐藤木型製作所様が創造する新しい価値へとつながっているように思いました。
大変お忙しいところ、貴重な時間を割いてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
会社プロフィール
有限会社 佐藤木型製作所
URL http://www.sato-kigata.com(外部サイトへ移動します)
所在地 | 〒485-0081 愛知県小牧市横内立野 680-1 |
---|---|
創業 | 1970年 |
資本金 | 500万円 |
従業員 | 28名 |
事業内容 |
|
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