タイメック株式会社様は、自動車を中心としたさまざまな分野において、試作部品の開発、三次元レーザ加工、治具の設計製作を手掛ける板金・プレス加工の技術集団です。同社が強みとするハイスピードな対応を支えているのが、設計、加工、組み立て、検査までの一貫した生産体制や最先端設備、ノウハウを集積した技術力です。今回は、金型設計でご活用いただいているSpace-E、Manufacturing-Spaceのデータコンシェルジュサービス、CADデータチェッカーについて、その役割や効果についてお話を伺いました。
板金・プレス加工に特化した
対応力とスピードが強み
創業から50年を迎えるタイメック株式会社様は、社名の由来である"タイム+チャレンジ"を事業展開の根幹とし、その時々に必要とされる価値ある製品をタイムリーに提供し続けています。同社の主力事業は、自動車関連の板金・プレス部品の試作開発です。試作開発は、自動車以外にも建設機械、農業機械、産業機械などさまざまな業種に広げています。その他に、三次元レーザ加工、治具設計・製造、モニュメント製作など、幅広く板金・プレス加工を手掛けています。
同社の拠点は、岡山県総社市に本社工場と吉備工場、福岡県に久留米工場、神奈川県に湘南工場と平塚工場、埼玉県にさいたま営業所があり、おのおのの特長を生かした役割を担っています。
同社の強みの一つとして、最先端設備の導入があります。代表取締役社長の田中健裕様は、三次元レーザ加工機を1985年に導入した経緯を話します。「当時の社長である創業者は、国内の技能オリンピックで2位入賞するほどの叩き出し板金技術の実力を持ちながら、新技術への関心が高く、三次元レーザ加工機の特長にいち早く着目していました。当時は、社運を懸けるほどの高価な投資で、他社に先駆け岡山県での初導入でもありました。現在、三次元レーザ加工機は台数を大幅に増やし、複雑な形状を加工するノウハウが当社の技術力となっています」。同じように、CAD/CAM/CAE、マシニングセンターなども最先端設備を導入し、熟練した技術者が揃っています。
取締役副社長の田中英裕様は、同社の対応力とスピードについて、「営業活動からスピードが重要だと考えています。当社は、営業力を強化するために岡山、福岡、神奈川、埼玉の営業を統合して営業本部と位置づけ、どの拠点からでも全国のお客さまに対応できる体制にしています。急なご相談があった場合でも、その日中に訪問することを心掛けています」。このような姿勢がお客さまからの高い評価につながっています。
さらに、提案力とそれを実現する技術力について、田中英裕副社長は、「試作品を設計して加工するだけではなく、支給いただいたデータや図面から形状や工法が量産に適しているのかを判断しています。試作品はできても量産には厳しいときは、別案をご提案しているので、お客さまに喜ばれています」と話します。
会社全体で使用するCADを
Space-Eに集約
2008年のリーマンショックを機に、関連会社の統合を図り、田中健裕様が三代目社長、田中英裕様が副社長という現体制で事業を再スタートしました。その際、吉備工場へ金型関連を集約すると同時に、金型設計のCADが統一され、そこで選ばれたのがSpace-Eでした。
吉備工場の製造部金型製造課の課長を務める西村賢持様に、当時の状況を伺うと「それまで私は、別のCADを使っていたのですが、Space-Eは金型に特化し、ソリッドモデルとサーフェイスモデルの両方に対応している点が非常に使いやすいと聞いていました。その上、操作性も優れているので、治具設計にも使っていこうと、全社のメインとなるCADにSpace-Eが決まりました」と振り返ります。
Space-Eは、現在クラウドネットワークライセンスサービスを11本導入しています。
その他に、見込み変形モデリングやブランク展開のSpace-E/Global DeformationやSpace-E/Press(プレス工程設計向け)を利用しています。
全社でSpace-Eを使っている状況について西村課長は、「Space-Eは、吉備工場で金型設計に使用することが多いのですが、本社工場、久留米工場などの他工場でも積極的に設計に使っていこうとしています。Space-Eのソフトウエアをインストールすれば、どこでも使えるクラウドネットワークライセンスの利点を生かして全社でライセンスを有効活用しています」と説明します。
吉備工場製造部金型製造課設計グループで設計業務を担っている桑田忠様は、「お客さまから提供されるデータを変換し、Space-Eに取り込んで作業しています。直感的に操作しやすく、3次元形状を作り上げていく工程が分かりやすいと感じています。金型設計をする場合、まず、製品データを元にして板の表と裏にサーフェイスを分けます。そして、金型同士の当たり面や板の入り込む形状に色を付けて肉付けしていくという操作になります。使い勝手が良いSpace-Eは、視覚的に形状を作成できます。」とSpace-Eの利点を話します。
データコンシェルジュサービスと
CADデータチェッカーで作業の効率化を実現
支給データを変換して利用する場合、サーフェイスの不具合が発生することが多々あります。同社は、この不具合を回避するため、データコンシェルジュとCADデータチェッカーを活用しています。導入の経緯を西村課長に伺いました。「以前、お客さまから支給されたデータをIGESやSTEPに変換してSpace-Eに取り込むとサーフェイスの不具合が発生することがありました。本来なら1枚のサーフェイスのはずが壊れた複数のサーフェイスで構成されたり、歪んだサーフェイスになったりしていました。それを手作業で修正するので、数分で終わることもあれば半日から1日かかることもありました。そのようなとき、NDESからCADデータチェッカーを紹介され、実際に問題のあるデータで試したところ、不具合のあるサーフェイスが自動修復されたのです。すぐに当社の役員会に提案して導入しました」。
実際、作業を行っていた桑田様によると、「特にディンプル形状で構成されているモデルは、壊れたサーフェイスをひとつずつ作成し直す作業を繰り返していたので、時間と労力が必要でした。それが、CADデータチェッカーなら一瞬で全部の面修正ができるので、作業の効率化が図れています。また、金型設計のデータをCAM工程に渡すときも、必ずCADデータチェッカーを通しています。これにより、CAM側からのサーフェイスの修正依頼が半減しました。さらに、モデルデータとしてファイルサイズが小さくなり、扱いやすくなるメリットもCADデータチェッカーにはあります」と導入の利点を説明します。今後は、変換時の不具合が発生したときだけでなく、データを受け渡すときは、必ずCADデータチェッカーに通すことを作業工程に組み込むとのことです。
同社のデータコンシェルジュの利用状況として、お客さまから提供いただいたデータをクラウドで自動保存するテストを始めています。有効な利活用は他にもあり桑田様は、「お客さまに金型のデータをフィードバックするとき、データコンシェルジュのファイル転送機能を使います。転送前にCADデータチェッカーに通して、それをクラウドに上げて転送するという統一した流れを全員が行っています。信頼のあるNTTデータグループのクラウドサーバーを使っているということで、お客さまにも安心していただいています」と話します。
人が育たなければ企業は育たない
社員満足度を最優先に
田中健裕様が社長に就任した当初、従業員に対して多くの悩みがあったと言います。「その頃の従業員は、リーマンショックで仕事がなく残業ゼロでは収入が低いから辞める、業績が良くなり仕事が増えると忙しいのは嫌だと辞めていました。どうしたら従業員がまとまるのか手探り状態で悩んでいた2010年、岡山県出身で京セラ3代目社長の伊藤謙介氏による県内の若手経営者向けの勉強会に参加し、企業理念の大切さを学ぶことができました」。そして、"情熱と信念を持って行動し、社会の発展に貢献することにより全社員を幸福にする!"という同社の経営理念が掲げられました。
田中健裕社長は、従業員に幸せになってもらう会社を作ることが目的であり、"ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし"という信条を、すべての従業員に浸透させています。具体的な取り組みの一部に、経営計画書の配布と環境整備があります。手帳サイズの経営計画書は経営理念や方針、ルールブック、スケジュールなどを明記したもので、全社員に配るだけでなく月に1回の勉強会も行われています。毎年更新されている経営計画書には、社員の誕生日の記載もあります。
もう一つが整理整頓による環境整備です。田中健裕社長によると「朝礼後の15分間、業務時間内に掃除を行います。毎朝コツコツと8年間も続けているうちに従業員の意識も変わり、他には負けない環境整備を実現していると自負しています。経営計画書の勉強会もそうですが、朝の掃除などを続けることで、お客さまからの信頼にもつながっています」と話します。
ESの向上に取り組むということは、従業員の声に耳を傾けることでもあります。田中健裕社長は「現場の改善には担当者の考え方を最優先に反映すべきだと考えて、要望があれば稟議書を役員会へ上げるように指示しています。提案には必ず目を通し、必要と感じればすぐに着手します。金型部門からの最近の稟議書の中には、西村課長のCADデータチェッカー導入の提案がありました」と現場の声を大切にされています。
NDESへの期待
"誰も作ったことのないものを作る仕事"が試作だという田中健裕社長は、従業員に失敗を早くするよう促しています。「試作開発は失敗する確率も高いので、とにかく早く行動に移せば、失敗してもリカバリの時間もできます。失敗から学ぶことが独自性であり試作メーカーの生命線とも言えます。今後も新しいことにチャレンジするためにも、NDESにはご協力をお願いします」。
田中英裕副社長も「現場が試行錯誤を続ける中で、Space-Eやデータコンシェルジュを使って、効率良く作業できるようにコミュニケーションをNDESと密に行い、当社に合った提案を期待しています」と話します。
さらに、西村課長と桑田様は、Space-Eのサーフェイスからソリッドへの連携について、より使いやすくなることに期待を寄せます。
タイメック様は、試作開発のさらなるレベルアップに取り組まれます。私たちがその一助となれれば幸いです。
会社プロフィール
タイメック株式会
URL http://timec.co.jp/(外部サイトへ移動します)
本社 | 岡山県総社市西郡197-1 |
---|---|
設立 | 1975年6月(開業 1970年8月) |
資本金 | 30,000,000円 |
社員数 | 133名(非正規社員含) |
事業内容 | 試作開発部品製造・レーザ加工・治具設計製作 |
拠点 | 本社工場、吉備工場、久留米工場、湘南工場、さいたま営業所、平塚工場 |
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