人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.12 | システム紹介
3次元ソリッドモデラー活用のすすめ 第4回(最終回)
[3次元検討、視野検討]
東洋運搬機株式会社
滋賀工場 設計部 実験課
CAD担当 主事 横山 正文様

はじめに

「3次元ソリッドモデラー活用のすすめ」も第4回となり、今回が最終回となりました。今回は3次元検討と視野検討についてお話しいたします。2次元CADを導入した時(84年)からの課題として、干渉チェックとフォークリフトの運転席からの視野の問題があります。これは元々の製品が3次元の形状をしているにもかかわらず、2次元の製図というものに置き換えて考えていたために起こる問題で、製品を3次元CADで考えればごく簡単に解決できる問題であることがわかります。
(①デザイン検討」はNO.9に掲載、「②マスプロパティの計算」、「③型への展開」はNO.10に掲載、「④FEMの活用」はNO.11に掲載しています。)

⑤3次元検討

元々3次元形状の製品を今まで2次元の製図作業で検討していました。設計者は頭の中で2次元の図面で見て3次元の製品を想像し、考えた結果を再び2次元の図面の中に表現していました。
また、この部品をこの方向から見た形状はどのようになるか、この部品と干渉している部品はないかなども考えています。

3次元ソリッドモデラーの機能を活用し、3次元検討をすれば、これらにかかる時間を設計本来の仕事(いかに低コストで作るか、品質向上の方法は、組立て性は、など)に割り当てることができます。3次元では形状定義すれば、どのような方向からでも自由に見ることができます。干渉チェック機能を使い、見逃していた干渉個所を設計段階で発見できることは大きなメリットです。3次元検討は設計のやり方を根本から変えることになるでしょう。

3次元検討の例として、フォークリフトの天井を支える後足の取り付け方法を検討した例(図1参照)です。取り付けボルトの干渉やインテークホースの形状が2次元検討では困難なので、3次元検討を行いました。現状の形が明確にわかるので、変更案もより具体的に考えることができました。
次の例は、フォークリフトの後部重り(カウンターウエイト)周りの検討(図2参照)です。ラジエター、マフラー、エキパイ、テールパイプ、後部車軸、タイヤなど多くの部品と干渉を避けるための形状を検討すると共に、重量・重心位置など機能的な要素も同時に設計することができます。弊社ではI-DEAS導入以降開発された車両のカウンターウエイトはすべて3次元検討を行ってきました。
3次元検討を行う上で重要なことは、発想の転換(2次元→3次元)と3次元操作のレベル(2次元CADと同等の操作速度)を向上させることだと思います

操作画面
図1 俊足の取り付け方法の検討例
操作画面
図2 カウンターウエイト周りの検討例

⑥視野検討

フォークリフトは運転席の前に、荷物を昇降させる荷役装置がついています。安全性や運転のしやすさを確保するためには、車体前方の視野を向上させる必要があります。今までは試作車を作るまでは正確な視野を求めることはできませんでした。3次元ソリッドモデラーを使用すれば、設計段階で求めることができ、不具合がある場合には、すぐに修正できるようになりました。ソリッドモデラーを使用する場合、ビューの設定を変更するだけでOKです。

例として、フォークリフトの全体モデル(図3参照)のビューを変更した運転席からの前方視野(図4参照)を示します。ビューの設定画面(図5参照)では、視点・視野方向・視野角などを指定します。
視野検討では、モデルの必要な部分だけを作成すればいいので、比較的短時間で作成できます。製品を周りから見れば視野が良さそうでも、運転席から見ればさほど良くないことも明確にわかります。(図6参照)

操作画面
図3 フォークリフトの全体モデル
操作画面
図4 運転席からの前方視野
操作画面
図5 ビューの設定画面
操作画面
操作画面
操作画面
操作画面
操作画面
操作画面
図6 製品周りの視野の比較

おわりに

長いように思えた4回連載の「3次元ソリッドモデラー活用のすすめ」も今回が最終回になりました。今から考えれば、あっという間の1年間でした。3次元CADの管理者・設計者として考えるところを書かせていただきました。日立造船情報システム(株)様の1ユーザとして、少しでも皆様のお役に立てたことを感謝しております。これを機会に皆様からの意見交換も行い、3次元ソリッドモデラーを有効に使うため、ご感想、ご意見、アドバイスなどありましたら下記メールアドレスまでお願いいたします。

最後にこの1年間お世話になりました関係者の皆様にお礼を申し上げます。