人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.101 | システム紹介
個別受注型製造業向け仕様選択コンフィグレータ
Delight-Space®のご紹介
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
ビジネスインテグレーション事業部 第一営業部 第二営業課
田村 全顕

はじめに

昨今、労働人口減少に伴う人手不足、働き方改革による労働の効率化が問題になって久しく、個別受注製造業に従事される皆さまにおいては、いかに効率良く時間をかけずに製品を設計するか、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。今回は、2021年7月にリリース発表したDelight-Spaceについてご紹介します。

個別受注型製造業が抱える課題

ここでいう個別受注型製造業とは、顧客から注文を受けてから製品設計および生産手配をする業態の製造業を指します。例えば、仕様が異なる同種の製品を扱う工作機械業界やバルブ・ポンプ業界などです。

個別受注型製造業が抱える問題は、顧客ごとに要件が異なり、設計部門の業務負荷が高くなるという点にあります。商談の際に、顧客の要件を既存の製品仕様で満たすことができるのか、要件に合わせて特殊設計が必要なのか、その場で決めてくるのは容易ではありません。そのため、製品を熟知した設計者が同行し、商談を進める企業が多いのではないでしょうか。しかし、商談のたびに設計者が駆り出されると本来の設計業務に専念できず、また顧客の要件が変わるたびに、見積部品表の作成も負担となります。設計者の負荷が増えることで出図が遅れてしまう、部品表の精度が悪く後工程へ影響が出てしまう、コストがかさみ採算がとれないといった案件につながります(図1) 。

図1 設計者の業務負荷増大による弊害
図1 設計者の業務負荷増大による弊害

では、どうすれば設計負荷低減と精度の高い設計を両立し、 顧客の要望に応えることができるのか。解決策の一つを次 にご紹介します。

設計の効率化をもたらす設計モジュール化技法

設計モジュール化技法とは、株式会社 経営システム研究所が提唱している業務変革技法です。多様化・多品種化する製品バリエーションに対して、既存図面のモジュール化を行い、そのモジュールを組み合わせることで製品を定義して受注仕様を決定し、設計・出図、生産計画・調達計画にわたるビジネスプロセスを効率良く回すことを目的としています。

設計モジュール化技法では、モジュールごとに機能が異なるバリエーション(図面)をあらかじめ用意することで、多様な顧客の要求仕様に対応できます。例えば、製品構成を精査した結果、AからDの4つのブロックに分けられました。次に、Aブロックを機能単位に分割すると4つのモジュール構成であるとします(図2)。各モジュールに機能の異なる10のバリエーションを用意することで、「10×10×10×10=10,000通り」の対応が可能になります。

図2 標準化(設計モジュール化技法)の考え方
図2 標準化(設計モジュール化技法)の考え方
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Delight-Spaceとは

個別受注型製造業向け仕様選択コンフィグレータのDelight-Spaceでは、どのようなことを実現できるのかご紹介します。Delight-Spaceは先述の設計モジュール化技法の考え方に基づいており、主に、「標準設計管理」「見積受注管理」「受注設計管理」の機能から構成されています。

・「標準設計管理」で実現すること

「標準設計管理」では、標準化した図面構成や製品機能、部品、仕様などの設計情報を管理できます。まず、製品モジュール構成機能で、製品情報をモジュールとして階層管理します。ここでは、モジュールごとに複数のバリエーションを用意しておきます(図3.①)。次にマトリクス部品表機能で、各バリエーションに必要な部品を定義します(図3. ②)。これで製品構成の標準化が完了しました。さらに、営業が顧客と決めてくる仕様項目を標準化し、仕様項目条件表に定義します。仕様モジュール結合表と仕様機能結合表に、バリエーションが持つ機能と仕様のひも付けを定義することで、顧客の要求仕様にはどのバリエーションが対応できるのか整理することができます(図3.③)。

図3 Delight-Space 機能イメージ
Delightとは、設計業務(Design)の負荷を軽減し(Lighten)、お客さまに幸せ・喜び(Delight)を享受いただくという意味を込めて名づけられました。

図3 Delight-Space 機能イメージ
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このように、設計者の頭の中にあったノウハウをシステム上のデータで管理することで、特定の個人に依存することなく、共有の資産として活用できます。

・「見積受注管理」で実現すること

「見積受注管理」では、見積案件管理のほか、選択式仕様書を用意でき、選んだ仕様をもとにコンフィグレータ機能により適合モジュールを選出できます(図3. ④⑤)。前述の「標準設計管理」で設計情報を整理すると、設計者でなくても仕様書をもとに早く正確に部品表の作成ができるようになります。また、バリエーションごとに必要な部品情報があらかじめ定義されているため、モジュールごとの部品原価を積み上げることで、製品全体の原価見積を瞬時に計算できます(図3.⑥⑦)。例えば、商談の場ですぐに2つの見積もりを比較し、仕様や製品価格について提案営業することも可能となります。

・「受注設計管理」で実現すること

「受注設計管理」では、製番登録を行った製番部品表のモジュール設計ができます(図3.⑧⑨)。選出されたモジュールについては、既に部品表が完成しているため、製品全体を設計するよりも設計工数を削減できます。

Delight-Space 導入効果

Delight-Space導入により、引き合いや見積時点で見積部品表を決定する「設計不通過7割」を実現できます。また、これまで時間を要していた受注設計工数を削減でき、これにより、出図のタイミングが早まり、製品出荷までのリードタイムを短縮できます(図4)。

また、営業のみで迅速な見積もりができ、提案型営業へのシフトといった顧客対応力の強化が図れます。さらに、設計負荷の軽減はもちろんのこと、設計者を新製品開発へシフトすることで、企業競争力の強化にもつながります。

図4 Delight-Space 導入による効果
図4 Delight-Space導入による効果
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おわりに

今回は、個別受注型製造業が抱える課題を解決するためのソリューションとして、Delight-Spaceをご紹介しました。興味がございましたら、下記までご連絡ください。

■取り組み・製品に関するお問い合わせ先
ビジネスインテグレーション事業部 第一営業部

問い合わせフォーム

電話:03-5711-5365

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