株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ ビジネスインテグレーション事業本部 ビジネスソリューション企画室 PLMソリューション部 担当部長 伊藤 直彦 |
はじめに
本稿では、個別受注型製造業のお客さまが抱えている課題や、その解決策および実現する手段である「受注設計製造プロセス 統合ソリューション」についてご紹介します。
個別受注型製造業における課題
個別受注型製造業のお客さまが抱える課題として、主に以下の3つが考えられます。
1.受注時の見積もり精度の低さ
受注ごとに製造する製品が異なる個別受注では、原価の算出は担当者のノウハウに依存するため、見積もり精度にばらつきが発生します。また、設計変更の発生や品質不備による手戻りや、トラブルなどのリスク(納期遅れ・コスト増)を十分に考慮できていないことも見積もり精度の低さの要因です(図1)。
2.短納期の要求に対応
全体の納期を短縮するには、従来の直列型をコンカレント(並列)型に変更する必要があります。業務のコンカレント化に伴い、今まで以上に業務管理の重要性が増すことになります。
3.設計変更による管理の複雑化
設計変更が発生すると、コンカレント化した業務プロセスでは調達・製造などが先行した状態で対応することになります。このことから、設計変更におけるタスク管理の複雑化が課題として挙げられます(図2)。
課題への解決策
前述の個別受注型製造業における課題に対し、顧客ニーズに対応するための解決策として以下の4つをご紹介します(図3)。

1.標準化(設計モジュール化)
設計モジュール化とは、既存図面をモジュール化して編集設計することで、最も少ない部組品や部品種数の組み合わせによって製品を表現しようとする技法です。この設計技法を導入することで、顧客の多様な製品ニーズに対して、受注設計の6割~7割が「設計不通過」となる状態が生まれます。この設計不通過率の向上に伴い、設計の障害や出図の遅れを解消し、さらに新製品開発への稼働シフトが可能です。
2.仕様選択コンフィグレーターの導入
仕様選択コンフィグレーターとは、営業担当者が、顧客のカスタマイズ仕様を入力するだけで、瞬時に誤りなく図面が抽出され、同時に製番別部品表が作成される情報システムの事です。この仕組みにより、設計モジュール化の効果を誰でも最大限に引き出し、永続的なものとすることが可能となります。
3.生産への円滑な業務連携
部品表は、設計から生産への情報伝達を担い、また生産では、ものづくりのマスタとして、作業指示のベースとなる重要な情報です。しかしながら、Excel等で各種業務データを作成していたり、OSのフォルダ管理で運用していたりすることから、情報の流れが分断しており、設計プロセスから生産プロセスへ情報が一貫していないことが多くあります。
そこで、仕様選択コンフィグレーターで作成した製番別部品表をもとに、PLMで管理してカスタム設計を行います。カスタム設計が完了した製番別部品表は、承認プロセス後、下流の生産管理システム(ERP)と連携し、営業~設計~生産へ一気通貫するという業務を実現できます。
また、調達に時間を要する長納期の部品や、カスタム設計については、五月雨式に生産管理システムへ部品表を連携して先行手配することで、最終組立までの全体のリードタイムが短縮できます。
4.設計変更への対応力を強化
設計変更への対応力を強化するには、設計から連動した全体計画の立案とその全体計画に対する進捗・コストが、製番別に把握できる仕組みが重要です。この仕組みを活用し、予実対比によるアクションの早期化を図ります。
受注設計製造プロセス 統合ソリューション
前述の解決策を実現する手段として、「受注設計製造プロセス 統合ソリューション」をご紹介します。統合ソリューションは、PLMを機能拡張し、個別受注型製造業に即した目的別部品表管理のためのテンプレートであり、CADおよびERPとのシステム間連携を含みます(図4)。
統合ソリューションを導入することにより、標準化された仕様・部品表をもとに、営業から生産まで一気通貫での情報共有・活用が可能となり、情報連携のスピードアップと各部門の業務効率と品質向上を実現します。

おわりに
設計者の手を介さず、受注直後に部品表が自動的に作成される仕組みを構築し、ERPと連携する統合ソリューションは、大きな効果が期待できます(図5)。
私たちは、この仕組みをPLMとERPを用いた「統合ソリューション」としてお客さまにご提供します。
ぜひ担当営業までお問い合わせください。
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