人とシステム

季刊誌
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No.47 | お客様事例
3次元データを有効活用するSPACE-DocとDarwin

株式会社タカギセイコー様は、2輪、4輪、通信機器、OA機器など幅広い生産分野のプラスチック工業用部品を製造、販売しているプラスチックの総合メーカです。金型設計・製造における高精度化、高品質な製品を量産するための成形技術など、常に技術改革として独自の研究、開発に取り組まれています。そして、お客様、社会、環境に対して新しい価値を提案できるプラスチックステクノロジーを追求されています。

今回は3次元データの有効活用を目的に新湊金型工場に導入されたSPACE-Doc、Darwinなどのお話を、新湊金型工場 工場長 西田徳雄様にお伺いしました。

新湊金型工場の概要

新湊金型工場 工場長 西田 徳雄 様
新湊金型工場
工場長 西田 徳雄 様

新湊金型工場は、発注いただいたお客様の金型を設計、製造しています。お客様から発注いただいたプラスチック部品を内製することが一番の目的のため、当社には、内製の成形工場がいくつかあり、そこへ金型を供給することがメインになっています。最近は、当社の成形工場とは関係なく、直接お客様から金型だけを造ってほしいという依頼が増えています。お客様から依頼された仕様で金型を造り、検査に合格したものをお客様へ納品します。この金型の依頼は、国内だけではなく海外からもあります。このように、新湊金型工場での金型造りには、内製用の金型と売型の2種類の形態があります。

サンドイッチ成形
サンドイッチ成形
DSI 成形
DSI 成形

日本でも型屋さんはたくさんあり、仕様やデータを受け取って、加工、組み立てを行い金型を納品するという流れは同じですが、当社は、型を造る前段階の製品設計のお手伝いをさせていただき、お客様とのやり取りを繰り返しながら製品に関するご提案をし、生産準備の前段階と金型ができてから検査に合格するまでの成形条件や必要な成形機の設定も調整しています。

単に金型を成形機に取り付ければ、良品ができるというわけではなく、成形工場が持っているテクニックとノウハウが必要です。そういう技術を金型工場の社員も持っているため、例えば、製品の要求仕様をお客様と打ち合わせしながら金型を立ち上げる仕事をさせていただいています。

このように、型造りにおける前後の段階をプラスした付加価値の高い金型造りが当社の特長になります。

3次元データを有効活用する取り組みの背景

2年前、当社の社長とNDES社長が、3次元データを徹底的に使い切るというテーマで話をされたとき、その取り組みに合意したことが始まりです。

金型の設計製作では、3次元データを使い切っていましたが、それ以外の分野でも有効活用できないかといういろいろな話が出てきました。金型工場では、製品設計、生産準備、金型の立ち上げの工程で、成形工場では、生産準備の前段階、塗装、製品取り出しロボットなど、いろいろな工程で3次元データを有効活用するためのテーマが上がりました。

金型工場は、まず生産準備段階で過去に発生した不具合の再発を防ぐためのノウハウの蓄積と、紙をデータベースに変えて3次元データを活かすというテーマで取り組むことにしました。他の工場とは役割分担しながら進めています。最終的には、全社的なデータも含めて総合的な3次元データの有効活用に発展していく予定です。

このようなインフラへの投資は、導入後の効果を直接的な収益で表すことは難しいですが、事業を有効に機能させるために必要となるもので、整備することで企業としての基礎固めができます。そのためにも、次世代の3次元データの使い方に着目して、早く踏み出したいと思っていました。

新湊金型工場のテーマ

新湊金型工場で取り組んでいるテーマは、大きく分けて3つあります。

■製品設計の標準化

工場風景

まず1つ目は、製品設計の標準化です。これまでは金型の設計、製作の標準化を目指し、さまざまな規格をたくさん作ってきました。7~8年前には、金型設計の3次元化に取り組み、パラメトリック機能を利用してカタログ化することでパターン設計できるシステムを構築しています。この金型設計の標準化のように、製品設計でもある程度カタログ化することで、少しでも効率を上げるための取り組みとして、CATIA V5のテンプレートにノウハウを盛り込むことを進めています。

■生産準備のノウハウの蓄積

次に2つ目ですが、生産準備のノウハウの蓄積です。最近は4輪部品用の型が多くなり、たくさんの金型も立ち上げています。その生産準備で発生するさまざまな帳票類、データ類など過去に蓄積したものも含めて整理して活用することが必要です。これを元にして、あらかじめ予想される問題点を検討し、お客様と話し合いながら進めることができます。ところが、このような生産準備のノウハウは、紙か個人の頭の中です。経験のある人に聞いたり、書類を探して見たりしていますが、経験の浅い人は書類を見ても分かりにくい状態でした。また、生産準備の技術は常に進化しているので、5年もすれば陳腐化するため残す必要性があまりないと、これまで取り組めなかった領域でした。

まずツールの選定で、バーチャル的に3Dビュワーのようなものを活用して、回転、縮小、断面を見ながら、それに文字を書き込んで、生産準備の前段階で過去のトラブルなど、いろいろな技術をデータベースに蓄積していきたいと考えました。そのことをNDESに相談しながら検討を進め、SPACE-DocとDarwinを採用することにしました。今は一生懸命データを作っている最中で、QCDのQ(品質)を中心にして、生産準備の技術的なノウハウを作り込んでいるところです。そしてこのデータは、金型工場だけでなくて、全社的に他の成形工場でも活用できることを視野に入れています。

■RPの導入

DR会のときに、Darwinの画面だけではなく、実際の形状を見て検討するためにRPを導入しました。もちろん、大きさに制限があるので、縮小したり部分的に造ります。例えば、1/2の製品そのものや金型の入れ子を造り、検討するときに使っています。これで、現場の人にも見える化することができ、検討段階でいろいろな意見を出してもらえます。RPを導入したのは、3次元データを活用するためにIT技術を導入したとき、抵抗なく技術的なノウハウを蓄積していきたいというのが一番の目的です。

期待できる効果

■デザインレビュー会のデータ蓄積

お客様の製品設計のお手伝いをして金型製作に入る前に、本当に金型の成立性と成形性の要件を満たしているのかを検討するデザインレビュー(DR)会を必ず社内で行っています。

DR会では、外観、機能、型成立の問題がないかチェックシートの項目を確認していきます。このときに、以前は長い巻紙のような図面を出して話をしていましたが、それをDarwinで3次元形状を表示させながら行っています。その場で、リブの厚さが何ミリになっているのか断面を切って見たり、ある部分の端末処理のPL などを確認できます。このとき、いろいろな注意事項が出るので、その文章をDarwinで入力するとバルーンのように付加されていきます。このようにDR会で検討した内容をDarwinでデータとして入力し、最終的には製品設計のデータに盛り込んで型を造ります。そのデータには、金型のPLなどの条件が全て盛り込まれています。

このDarwinで記述した内容は、SPACE-Doc内に蓄積されるため、すぐに検索機能で取り出すことができます。過去の類似した金型、製品の問題点、DR会でどのようなことを行っていたのか、何が問題になっていたのかなどが簡単に検索できます。オートバイのフェンダーであれば、「フェンダー」というキーワードだけで探せます。このようにDR会を中心として、DarwinとSPACE-Docでデータベースを蓄積しているのが具体的な取り組みです。

今、生産準備の二十数名の社員にDarwinとSPACEDocを利用して、前向きに取り組むことを教育、宣伝活動をしているところです。もともと当社の場合、製品設計のグループと金型を生産準備で立ち上げるグループは分かれています。金型のノウハウを持っているベテラン社員とDarwinのオペレーションができる若い社員が、一緒になって、とにかくノウハウを出すことをお願いしています。DR会でDarwinを見ながら両方のグループが意見を交わして、情報を蓄積しているところです。

■お客様への資料提出

社内で全部の問題点をクリアにして、データを出すというのが大前提です。お客様から検討内容や判断基準を出して欲しいという要望があれば、Darwinで検討した内容をお見せできます。今までは、手書きの資料だったので、PC にて表や資料を別に作っていました。これからDarwinであれば、問題の部分だけを切り取って貼り付けることも簡単にできるので、お客様へデータを出すときもかなり楽になると思います。

■マスターファイルの削減

金型をひとつ造るごとに紙のマスターファイルをひとつ作っています。最初は数枚しかないのですが、そのうち修正、改造の履歴の紙が増えていきます。かなりの分量なので保管場所にも困っています。このマスターファイルを活用すれば、ノウハウの蓄積もできるのですが、人も変わるため10年前のファイルを探すのも大変です。これまで1万6千ほどの金型を造っているので、その同じ数だけあります。このマスターファイルは、専用保管箱で保管しているため、まず型番を探すことから始まり、そして、型番が書いてある保管箱を探すことになります。このDarwinでの取り込みは、マターファイルの一部をデータ化したことになるので、マスターファイルが無くなることはないかもしれませんが、将来的に削減できればいいと思っています。

今後の取り組みについて

■最高効率のアップ

社長が、QCDD(品質、コスト、開発、納期)の積で最高効率を上げないさいと、よく言われます。それに情報も加わえて、全社で最高効率を上げるための基盤作りを進めていますが、一番重要な部分が金型工場のDarwinとSPACE-Docの取り組みになります。金型工場で培ったノウハウを他の工場でも活用したいので、技術的なノウハウを蓄積できれば、現場にもPRしていこうと考えています。

■頭脳集団を増やす

金型を立ち上げるベテラン社員のノウハウをどうやって残すのかということが、当社にとっては一番大切な生命線かもしれません。もちろん、実際の造り込みのメンバーに若い人を入れて経験させていますが、いかに頭脳集団を増やすかというのが課題です。

■基幹システムの入れ替え

現在、社内では生産リードタイムの飛躍的な短縮を目指し、仕事の流れを整流化すべく、基幹システムを刷新する動きがあります。金型工場においても、単納期、高品質とお客様要求が高度化する中、現有の基幹システムを刷新したいと考えています。そして、近い将来には統合部品表の構築を目指します。これが完成すれば、我々のような設計部隊と工場の量産部隊とがより密に関わり合いを持つことができるようになります。そのメリットは大きく、例えば、環境にやさしい部品を購買のデータとリンクさせ、調達できるような事も可能になります。

NDESへ

倣い加工で金型を造っていた時代から、NC加工に変わって3次元が必須になり、CAD/CAMによる金型設計とNC データ作成で、一気に3次元に切り替わってきました。そのときも、NC化、自動化工場というキーワードでNDESと一緒に取り組み、当社としては、金型設計で他社との差別化がある程度成功したと思っています。今後、さらに他社との差別化を継続して図るために、PLMの専門化であるNDESにお願いしたいのは、PLM を当社が実現するには、どのような取り組みが必要か、フロントからパッケージまで全てカバーした総合的な提案をしてほしいと思います。

おわりに

次世代の3次元データの有効活用として、新しい取り組みをスタートし、常に改善を追究されているお話をお伺いして、IT技術でご支援させていただくメーカとして、お客様の状況を十分把握した上でご提案することの大切さを感じました。

大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話をかせていただき、ありがとうございました。

会社プロフィール

新湊金型工場
新湊金型工場

株式会社 タカギセイコー

URL http://www.takagi-seiko.co.jp/(外部サイトへ移動します)

本社 〒933-8628 富山県高岡市二塚322-3
創立 1946(昭和21)年3月
法人改組 1959(昭和34)年8月
資本金 2,024,430,500円 (平成19年7月10日現在)
工場 全国14工場
支店・営業所全国10ヶ所
従業員 1,269名 (平成19年3月31日現在)
事業内容 プラスチック製品の製造・販売、プラスチック成形用金型の製造・販売、金属プレス製品の製造・販売。
新湊金型工場〒934-8580 富山県射水市川口800
車両関係
車両関係
OA関係
OA関係
通信機器関係
通信機器関係

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