人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.103 | システム紹介
デジタルツインを実現する
産業用ロボットシミュレーションとバーチャルコミッショニング
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
エンジニアリングインテグレーション事業部 第二営業部 営業課 課長
木下 俊二

はじめに

近年、製造業を取り巻く環境にはPLM、デジタルマニュファクチャリング(DM)、デジタルツイン、DXなど、大きな技術革新と働き方改革がもたらされ、各企業、各組織において新しいツールの導入、仕組みの変化、そして意識改革が進んでいると実感されていることと存じます。現在に至るまでツール、データ管理などデジタル改革の流れがあり(図1)、私たちもものづくりに携わるお客さまのニーズや変化を捉え、時代に即したソリューションのご提案により、お手伝いをしてまいりました。

本稿では、自動車製造業で多く導入されている産業用ボットを使ったものづくりを中心に、デジタルツインを実現する最新の仕組みをご紹介いたします。

図1 製品のラインナップ
図1 製品のラインナップ

注目されるデジタルツイン

まず初めに、なぜものづくりにおいてデジタルツインが注目されるのか整理しておきます。それは、データの一元管理によるデータ収集時間の削減、ノウハウの蓄積と流用、部門間のシームレスな情報・データの連携などといった効果が期待され、生産準備リードタイムの短縮による垂直立ち上げの実現につながるからです(図2)。

ここでいうデジタルツインは、大きく「製品のデジタルツイン」、「製造のデジタルツイン」、「パフォーマンスのデジタルツイン」の3つを実現して初めて成立すると言っても過言ではありません(図3)。その中の一つ、「製造のデジタルツイン」の実現に欠かせない技術が“バーチャルコミッショニング“です。

図2 デジタルツインに期待される効果
図2 デジタルツインに期待される効果
図3 デジタルツインとは
図3 デジタルツインとは

Process Simulateとバーチャルコミッショニング

ロボットシミュレーションにおけるバーチャルコミッショニングとは、生産ラインを制御する実際のPLCと、 シミュレーターであるProcess Simulateとを”接続”し、PLCのロジック検証、デバッグを行うことができるProcess Simulateの最新の仕組みの一つです。

これまでProcess Simulateの主な適用範囲は、ロボットのシミュレーション、オフラインティーチングでしたが、この仕組みにより、生産ライン全体の「製造のデジタルツイン」の実現を可能にしました。バーチャルコミッショニングの基本的な接続の概念が図4です。

まず、図4の【事前検証時】のフェーズでは、設計の段階で、まだ実際の設備が投入できていない初期、設備検討~設備設計の段階では、実機PLCとProcess Simulateを接続し、信号の確認や制御プログラムの検証、装置の振る舞いなどのデバッグを行います。

図4 バーチャルコミッショニング 接続の概念図
図4 バーチャルコミッショニング 接続の概念図

次に、図4の【実機立上時】のフェーズでは、具体的な振る舞いとして、“実際の設備“の代わりに、”バーチャル空間の設備”がPLCの信号を受けて動作します。これにより、信号の数が一致しているか、信号と設備のマッピングが正しいか、PLCプログラムのロジックが想定通り振る舞うかなど検証できます。

実際の設備の製作が進み、工場に投入された段階では、PLCと実際の設備を接続して最終的な確認を行うことができるようになります。バーチャルコミッショニングを導入することで、どのような検証ができるかまとめました(図5)。

また、この仕組みにより、バーチャルなシミュレーションの中で生産準備の“やりかた“を根元から変えることができます。

従来の方法では、設計の段階にデジタルツールを活用することでコンカレントに作業を進めることができる一方、現場では段階的に設備設置、検証・デバッグ、調整を進める必要がありました。この段階で不具合が見つかるとその修正や改造に時間を取られ、設備立ち上げ期間の短縮が困難でした。それに対して、Process Simulateとバーチャルコミッショニングを導入すると、バーチャル工場の中でロボットやPLCを含めた設備の振る舞いを確認できるようになります。その中で、PLCコードの検証やデバッグ、意地悪テストなど、工場設備が揃う前でも可能になるので、事前に十分な検証をして不具合を減らしたうえで、工場での最終調整に臨むことができます。これにより、設備立ち上げ期間を大幅に短縮することが可能となります。

図5 バーチャルコミッショニングが可能とする検証
図5 バーチャルコミッショニングが可能とする検証

おわりに

Process Simulateおよびバーチャルコミッショニングを導入することで、これまでの仕事のやり方を大きく変えることができ、これまで課題であった、工期短縮やコスト削減につなげることが可能となります。実際にご導入いただいたお客さまの中では、約30%の期間短縮につながったというご報告もいただいております。

私たちは、製造業のお客さまに最新の情報とソリューションをご提供することを第一に活動してまいります。ご興味がございましたら、お問い合わせください。

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