人とシステム

季刊誌
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No.109 | 社長インタビュー
グローバル連携で支える次世代の技術
世界各国の3DSソリューションのサポートサービスを担う
グローバル連携で支える次世代の技術

日本では2023年5月、新型コロナウイルス感染症の位置付けがインフルエンザなどと同じ5類感染症に移行されて、コロナ対策は大きな節目を迎えました。徐々に海外出張の出入国も増える中、私たちはインドに向かいパートナーであるダッソー・システムズグローバルサービス(Dassault Systemes Global Services Pvt. Ltd.:以下、DSGS)様のプネキャンパスを数年ぶりに訪問しました。今回はCEOのマニッシュ・タンベ様に、IT大国として目覚ましい発展を続けるインドのIT産業の状況やDSGS様の事業戦略、今後の展望についてお伺いしました。

ダッソー・システムズのグループ内での
DSGSの役割とは

Dassault Systemes Global Services Pvt. Ltd.CEO マニッシュ・タンベ  様
Dassault Systemes Global Services Pvt. Ltd.
CEO
マニッシュ・タンベ 様
Manish TAMBE

Dassault Systemes Global Services Pvt. Ltd.
【所在地】 Water Tower, Phase 1, Hinjawadi Rajiv Gandhi Infotech Park, Hinjawadi, Pune, Pimpri-Chinchwad, Maharashtra 411057
【従業員数】 1,100名

 DSGS様と私たちは、PLM(Product Lifecycle Management)領域において2016年から協業を開始させていただいています。私たちは日本のお客さまに対し、ダッソー・システムズ(Dassault Systemes)のアプリケーションを効率よくご利用いただくためのプロジェクトに一緒に取り組んでいます。まずは、御社がどのように設立されたのかご紹介いただけますか。

タンベ ダッソー・システムズがインドで事業展開した歴史とDSGSの成り立ちはリンクしています。2002年にダッソー・システムズとインドのジオメトリック(Geometric Ltd.)の合弁会社として3DPLM (3DPLM Software Ltd.)を設立したのが始まりです。当時の3DPLMは、3DEXPERIENCEプラットフォームおよびアプリケーションの研究開発 (R&D)を手がけていました。その当該事業が企業の成長、発展を促す結果となり、3DPLMの子会社として3DPLMグローバルサービス(3DPLM Global Services Ltd.)を2015年に設立しました。その後、ダッソー・システムズと3DPLMの合併に伴い、2017年に3DPLMグローバルサービスは、現在のダッソー・システムズグローバルサービスへと社名を変更しました。その間も、社員数は増え続けて今では約1,100名が勤務し、その中でも女性社員は30%を占めています。また、平均年齢は30歳という若い社員が活躍している企業です。

 お伺いしているプネキャンパスではビルを増築され、現在も隣接する土地に建設されているビルがありますが、どのような計画で進められているのですか。

タンベ 今インタビューを受けているこのビルは、2022年に完成した「Water」というビル名で収容人数は1,500名です。同じ2022年に完成した隣は、ビル名「Sky」で収容人数は2,000名です。さらに同じ敷地内にビル名「Earth」を建設中で、これが完成すれば、2030年までに社員総数を9,000名に増やす予定です。この全てのビルは、環境に配慮した省エネ設計と最新型省エネ設備を採用しています。音響に配慮した壁やパーティションも備えています。また、最新式のトレーニングルームやコラボレーションスペースを数多く設置している他、社内のコミュニケーションを図るためのコーヒー専用ルームも完備しています。

NTTデータエンジニアリングシステムズ 代表取締役社長 東 和久 Kazuhisa Higashi
NTTデータエンジニアリングシステムズ
代表取締役社長
東 和久
Kazuhisa Higashi

 ビル建設のお話をお伺いしただけでも、インドの著しい経済成長がよく分かります。このことからも、ダッソー・システムズグループの一員として御社の事業環境は設立から変化を続けてこられたのではないかと思います。現在は、どのような目的、役割を持って事業を行っているのですか。

タンベ 私たちの目的は、3DEXPERIENCEプラットフォームの導入を加速させるために高品質なサービスを提供することです。ダッソー・システムズとそのシステムインテグレーションパートナー向けに、さまざまな分野で開発された製品に対してサービスを提供するグローバル・ケイパビリティー・センター(以下、GCC)として機能し、世界中のすべてのダッソー・システムズの拠点を支援しています。また、システムインテグレーションパートナーに対して、トレーニング研修や専門技術者の派遣を行うなど、専門性の高い知識を提供する役割も担っています。その他、ダッソー・システムズの製品に対して、ツールの開発や試験の自動化を実現するなど、高品質なサービスにつながるイノベーションを起こす活動を展開しています。さらに、世界各国で習得したプロジェクトでの経験値を、他のプロジェクトに横展開する取り組みも行っています。例えば、アメリカのお客さまのプロジェクトで経験した知識を日本のお客さまのプロジェクトへ反映しています。

 ところで、御社の主要な活動拠点となるインドについて少々お伺いします。IT産業の発展が著しいインドは、世界的に注目されて久しいですが、現在の状況はいかがでしょうか。

タンベ インドのIT産業は現在も最先端の業種であり、インド全体で2,500億ドルもの市場規模があります。グローバル・ソーシングにおいて59%のシェアを持ち、世界の中でもリーダーシップのポジションを獲得するまでに至りました。今ではインドのGDPの8%をIT産業が占めており、現在も着実に成長しています。

このようなインドのIT産業は、①研究開発(R&D)、②ソフトウェア開発、③ITサービス、④世界のGCCとしての拠点、⑤ハードウエアサービス、という五つの分野に分けることができます。

 ご説明ありがとうございます。このようにインドのIT産業が発展する中で、御社はどのような戦略で成長と拡大を続けてきたのか、実績をお聞かせください。

タンベ そうですね。まずは、専門知識のレベルアップがあげられます。最初は、ダッソー・システムズの製品の中でもENOVIAなどの製品に重点を置いてサービスを提供していました。現在は、CATIA、DELMIA、ENOVIA、SIMULIA、MEDIDATA、 3DEXCITEなどダッソー・システムズの12製品に対してサービスを提供できるまでに成長しました。これにより、私たちの事業は、お客さまの対象産業分野が拡大し、グローバル展開することが可能となりました。また、パッケージ化したサービスの開発と提供を行うことで製品の利便性を高め、お客さまの満足度の向上にもつながっています。このように世界各国の幅広い産業分野において、ダッソー・システムズのほとんどの製品を対象にサービスを提供できる私たちは、ダッソー・システムズの中で唯一の存在です。

他にも、グローバルパートナーのプロジェクトを有効に進めるため、専門知識のある技術者を支援してきた実績があります。また私たちは、ダッソー・システムズの70社以上あるCPEパートナーやCSIパートナーにもサポートを提供しています。そのサポートの中には、営業、技術チームを対象とした製品のトレーニング、スタッフチームを対象とした製品導入のトレーニングなども含まれています。

図
左上 : ダッソー・システムズのプネキャンパスにあるスカイタワー
右上 : ダッソー・システムズのプネキャンパス全体の航空写真
下:DSGSの幹部の皆様との集合写真

ユニークな教育プログラムと
社員の高いスキル意識

 御社は9年の間に社員数を約1,100名に増やすと共に、製品やサービスの幅を大きく広げられています。そのような中、社員に対して研修や教育だけでなく、実務経験を積ませながら成長させていくことは大変だと思います。以前、24時間連続プログラミングコンテストを開催したというお話を伺ったことがありました。その時にすごいと思ったのは、受講者のモチベーションアップの方法です。御社で取り組んでいる人材育成について、ぜひもう一度お聞かせください。

タンベ まずインドのIT人材の状況について説明しますね。毎年、210万人のSTEM(理科、工学、数学)の大学の卒業生が就職しています。さらに他のIT企業へ転職する才能のある方々もたくさんいます。このような人材を採用して私たちは、社内でトレーニングプログラムを持続的に行うという教育を実施しています。そのおかげで社員は、トレーニングに自ら取り組む姿勢とスキルを習得したいという高い意識を持ち、さらに継続的に学習に取り組むという文化を身に付けることができます。また、ハッカソンやコンペティションを年に一度開催しており、参加する従業員たちが24時間ノンストップでコーディングをし、既存のビジネスの問題に対するプロトタイプやソリューションをまとめ上げるという研修を行いました。先ほど東さんがおっしゃった研修はこれになります。

 若い優秀なエンジニアが自らモチベーションを維持して学ぶ、という人材育成は理想的だと思います。その他にも、アイデアマンのマニッシュさんが考えている新しい取り組みがあればお聞かせください。

タンベ 2023年には、優秀な83名の従業員を選抜して20名のチームに分け、卓越した成果を上げたチームに対して、私が直接その功績を称賛しました。また、私自身のこれまでの経験や知識を共有してより輝かしい未来に向けて指導する、という独自のプログラムを実施しました。さらに、各チームのマネージャーには、チーム内の活動費として自由に使用できる特別な予算を与えています。この予算は、例えば1日遠足に出かけるとか、朝食や昼食に集まって食事をするとか、親睦を深めるイベントに使われています。このような活動を通して社員がお互いに興味を持つようになり連帯感が生まれています。他にも、前期、後期と年間の単位で3回の表彰を行っています。

今後の事業分野の拡大と
パートナーシップ

 今後はどのような分野に事業を広げていこうと考えられていますか。

タンベ 私たちのビジネスの対象分野は、主に三つに分類されます。一つ目は、製造業の分野、二つ目はライフサイエンスとヘルスケアの分野、三つ目はインフラストラクチャーの分野です。インフラストラクチャーの分野には都市、エネルギー、材料、住宅等のパブリックサイエンスも含まれます。今後は、単一の産業や分野にソリューションを提供するだけではなく、複数の産業や分野にわたるソリューションを提供していく必要があると考えています。例えば、燃料自動車が電気自動車に置き換われば、エネルギー産業やインフラ産業にも影響します。電気自動車の電気を蓄えるバッテリーのソリューションや充電のための充電ステーションのソリューションというように広がります。そして、開発するバッテリーの材料はどれを使うかという材料科学や、その材料を知るためにはバイオ科学が必要となってきます。その上、バッテリーの製造工程における簡素化の検討も必要です。他にも、急速充電をする設備が必要であったり、充電時の熱に対する対策が必要であったりとなると、ハイテク技術が必要となります。このように、一つの製品のサービスに対しても、複数の産業や分野にわたることになるため、それらをつなぐソリューションが必要になってくると思います。

 このような複数の産業や分野にわたるソリューション提供に関しては、NTTデータグループとして取り組みを検討しているところです。また私たちも、ライフサイエンス分野やヘルスケア分野など新分野への事業拡大を推進しています。

話は変わりますが、今後ダッソー・システムズグループの一員として具体的にどのような取り組みを推進されようとしていますか。

タンベ 今後は、製品のサービスビジネスを拡大させることを考えています。ダッソー・システムズの製品を導入されているお客さまの中には、まだ3DEXPERIENCEプラットフォームを利用されておらず、古いバージョンの製品を使用しているお客さまがたくさんいらっしゃいます。そのようなお客さまが3DEXPERIENCEプラットフォームの最新版にアップグレードし、その潜在的機能を十分に活用することが重要だと考えます。他には、仮想(物体の抽象モデル)と現実(企業、モノのインターネット、クラウドからのデータ・ソース)を組み合わせることができるVirtual Twin as a Service(VTAAS)と呼ばれるサービスを提供することや、AIなどの最先端の革新的技術を製品のサービスに取り込むなど、お客さまがもっと便利に使える環境づくりをしていきたいと思っています。

図

 では最後に、これからの私たちとの協業における取り組みについてお伺いします。

タンベ 御社NDESとのパートナーシップは、自然な協業になっているというのが私の感想です。これは、お互いの信頼に基づいたものだと感じています。それが可能なのは、マネジメント層と現場の技術チームがとても良い関係を築くことができているからです。NDES は、私たちが持っている3DEXPERIENCEプラットフォームの知識や経験を使い、私たちと一緒に日本のお客さまへ便利で使い勝手の良い製品のサービスを提供しています。このパートナーシップは、NDES とDSGSの両社に対して有益なものになっています。今後は、NDESとのパートナーシップの強化に取り組んでいきます。

一番大切なのは、お客さまが付加価値の高いサービスを得られることだと思います。これはお客さまが、3DEXPERIENCEプラットフォームの導入を加速することであり、バーチャルツインなどの先端技術をビジネスで使えるようになることだと考えています。

最後に個人的ではありますが、NDESと東さんに感謝の気持ちでいっぱいです。これからも信頼できる良いパートナーでいられることは、とても有難いと思っています。

 ありがたいお言葉、とても嬉しく思います。先ほども申し上げましたが、今後の私たちの取り組みとして、新分野となるライフサイエンス分野やヘルスケア分野への事業拡大の推進を考えています。その時には、必ず御社のお力が必要になってきますので、是非ともご協力をいただければと思います。これからも今まで以上の良い関係を構築したいと考えていますので、よろしくお願いいたします。本日は、お忙しいところ、ありがとうございました。

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