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No.51 | お客様事例
ゴム用金型の設計でCATIA V5を使いこなす

株式会社中島製作所様は、時代を先取りした最新CAD/CAMシステム、MC高速加工機を導入され、お客様のニーズにお応えできる体制を整えられている金型メーカです。20年前には既にCATIAを導入して金型設計に活用されるなど、創業以来のモットー「新技術の追求と開発」を常に実践されています。また、お客様の信頼も厚く、社員一人ひとりの技術力・総合力を磨き合いながら、全社的な総合力で、「新世紀のリーディングカンパニー」として業界の最先端を邁進されています。

今回は、CATIA V5とSpace-Eの導入の背景、今後の展開や5軸加工について代表取締役 社長 中島正様、専務取締役 工場長 中島宏様にお伺いしました。

事業概要

人物の写真
代表取締役
社長 中島 正 様

当社は、昭和31年に葛飾区柴又で創業した会社です。柴又は、皆さんご存知の寅さんで有名な地域でもあり、行政によって緑地帯、風致地区、避難地区などに区分され、製造業を続けることが難しくなりました。そこで、設備の近代化も兼ねて、昭和45年に工場の一部を本社と分離させて埼玉県八潮市へ移し、工場の建屋が完成した昭和47年に全面的に移転しました。

設立当初は、主に旋盤ものを製作しており、特に洗濯機の脱水用ゴムロールは、当社が得意とする製品でした。今でこそ脱水機がありますが、昔は2本のロールで絞っていたのです。そのゴムロールは、外周面に縦のスジが入っていて、この縦のスジが洗濯物に食いついて、水気を絞り出します。その成形が他社ではできないため、ほぼ当社の特許技術のような状態でした。

その後は時代の流れでスーパーボールなど子供が遊ぶ遊具の金型を製作したこともありましたが、しだいに当社の金型は旋盤からフライスへと移っていきました。

現在、主に金型製作している部品は、車体のシール関係や防振ゴム関係になります。

CATIA V5導入の背景

35~40年前は、実際のモデルを作りトレースすることで金型を彫るという倣いフライスをしていました。

このとき、実際のモデルを作らずに設計で立体的なモデルを作れるのでは、という夢のような構想が持ち上がっていました。

それから、NCによる機械加工の技術へ移り、人が動かしていた機械がNCテープで自動で動くようになりました。そのNCテープを作るため、昔はトタン板に50倍の図を書いて1mの定規で測り、XY座標値でポイントを出していました。当然うまくできないことも多く、ルーチンで回したときにXYが0に戻らないという計算ミスもあり、NCテープを作るのに苦労しました。

その後、2.5次元のNCデータが作成できるシステムが世の中に出てきたのです。当社の先代は技術者であり、新しい技術は早く取り込む方針でしたので、すぐにCATIAを導入しました。今から20年前のことで、同じ業界でCATIAを導入したのは当社が早いほうです。このときのバージョンはCATIA V3です。

CATIAを導入してから10年ほどは、いろいろなシステムが出てきてCADの戦国時代でした。それが今はCATIAに絞られてきているので、最初に導入したCADがCATIAで運が良かったと思います。

2代目の私は、創業者の苦労を見ているので設備投資には慎重になります。私が創業者であれば、数千万もする高価なCATIAの導入はなかったと思います。先代の技術者ならではの選定です。

Space-E導入の背景

CATIA V3、V4でもサーフェスを使っていたので、ノンパラメトリックでさらにサーフェスが使いやすいCADで、NCデータが作成しやすいCAMを探していました。

以前よりGRADEの名前は知っており、そのPC版のSpace-Eが出たということで興味は持っていました。そこで、2000年頃に設計製造ソリューション展などに行き検討してからSpace-Eを導入しました。そのときのSpace-EのバージョンはVer2.0です。その後は、バージョンアップ、増設などを繰り返しています。PCは2~3年ごとに新機種に変更が必要なほど性能が上がるので投資も大変です。

設計はCATIAでCAMはSpace-Eを使っています。Space-Eは、講習も受けずにすんなり操作できました。CATIA V5やSpace-Eを導入する前とは、工場の機械の構成が違っています。今は高速マシニングセンタがメインですが、以前は通常のマシニングとNCフライスがメインでした。やはり、現場の機械に応じてソフトの機能も良くなっています。当社は、先行して設備を導入し、世の中の流れがきたときには既に使いこなして次のステップへ進めるように努力しています。

他社が、CAD/CAMを必要としない仕事をしていたときも、当社は3次元的な形状の掘り込みが必要な変形ものに取り組んでいました。

やはり、金型メーカの特長として倣い加工でモデルから金型を起した経験があるので、3次元的な掘り込みがある金型を製作するのにあまり時間はかかりませんでした。これで当社のCAD/CAM戦略が決まったようなもので、常にその時代の最高のシステムを揃えてきました。

CATIA V5による金型設計

■CATIA V5とSpace-E

CATIAの画面
CATIA V5による金型設計

CATIAはV3から使っているので、CATIA V5はV4と比較しても意外と使いやすいと感じました。CATIA V5では、ノートパソコンにライセンスを分けられるので、お客様との打合せで持って行けるのが便利です。CATIAの生データを見ながら設計の打合せができるようになり、問題点も見つけやすくなりました。お客様からのデータは、オンラインで送っていただきます。送られるデータはCATIA V5やV4ですが、最近CATIA V5が多くなってきました。

CATIAの画面
3次元CADデータ変換

CATIA V5からSpace-Eへの変換は、3次元CADデータ変換ソフトを使っています。

いただいたデータは、はじめに解析して仕様を確認します。それから型設計してNCデータ作成に入ります。シールものは最後の最後に形状が決まる部分でもあり、極端なことをいうと他の金具でうまく形状が合わなければ、ゴムで調整することもあります。

基本的には、CATIAで設計しますが、今日依頼がきて、今日納期という場合は、別のシステムで対応します。CATIAを使っている同業他社に比べると、ゴム金型の製作には時間がなく納期がかなり短いと思います。また、1人で3工程ほど常に抱えているので時間的にも厳しく、お客様と同じCATIAの生データで設計できることが一番の利点です。

Space-Eは、履歴の管理がないのでノンパラメトリックで何も考えないで作れますが、CATIAは修正することも考えて履歴を作成する必要があります。回り道して作成していように感じますが、後で簡単に編集できるので便利です。

特に、CATIAでお客様のデータを編集する場合、考えながら履歴を操作します。複雑な履歴もありますが履歴があることで助かることもあります。

当社では、Space-EとCATIAの担当を分けています。

CATIAの画面CATIAの画面Space-Eの画面
Space-Eによる操作

■DDD Viewerの活用

Space-Eのモデルを確認するのに無料配布されているDDD Viewerを使っています。DDD Viewerは、工場で手軽に使えるので便利です。

■NDESのサポートと提案

サポートを含め、NDESからいろいろな提案をしてもらっています。

以前は、他社からCATIAを購入していましたが、NDESに変えました。正直言うとNDESはCATIA V4関係では技術的に弱い部分もありますが、いろいろなことをNDESには相談しやすいのです。そういうことは大きいと思います。

やはり、年に1回届く請求書を見て取引していることを思い出すより、年に何回も訪問してもらい相談できる関係で取引を実感できるのとは大きな差があります。当社は、書類で契約していてもFace to Faceの付き合いが大きなファクタを占めるのです。

年に何回も訪問してもらえれば、そのときに要望が溜まっていれは、ぶつけられます。

これまで、当社はSpace-E以外にもNDESからいろいろなシステムを導入しています。これは、NDES側が受け取る姿勢を持っているということです。当社としてもありがたいと思って、お付き合いさせていただいています。

今後の展開

■5軸加工の取り組み

いろいろな可能性にチャレンジして、設備投資もしています。

工作機械があれば、何でも加工できた時代がありまし工作機械があれば、何でも加工できた時代がありましたが、今は工作機械があってもそれを動かすシステムが充実していなければ、加工はできなくなっています。

当社は5軸加工機も導入しているので、事前にシミュレーションして、衝突や削り残しなどを検討できるシステムが必要です。5軸はCADの画面上ではすぐに作成できますが、現場で一緒に加工状態を見て確認していかないと立ち上がりません。

現在は、他社の5軸システムを導入して自動で5軸加工させていますが、いずれは人が介在する時期がきます。人の技量をプラスしなければ、先が見えてくるので、その時期がきたときがNDESの出番です。当社が同時5軸の使い方を確立できて、自動の5軸加工に限界を感じたときNDESに協力してもらえればと思います。

今、5軸加工機は1台ですから、台数を増やすときにNDESの5軸が期待できるシステムになっていてほしいと思っています。それまでに5軸システムを成熟させておいてください。

■システム化へ

当社自体も自動化の時代だと思います。システムに技量を踏まえた時代がくるという話が5軸でありましたが、今、当社がそういう状態なのかもしれません。機械と人との分担があり、システム化の次のステップに進みにくい状況にきていると思います。

ここまで良くやってきたと思いますが、今後どのように進むかが課題です。

■ネットワークライセンス

CATIA のようにSpace-Eもネットワークライセンスにしたいと考えています。

システムのインストールなどはサーバに1回行えばいいので、バージョンアップやパッチが発行されたときに作業が少なくてすみます。パッチは、e-supportのサイトからダウンロードして使用しています。

NDESへ

現場向けに2.5次元の加工に対応したCADシステムを探しています。低価格のパッケージの提案をお願いします。

何でもチャレンジするNDESの姿勢は良いことですが、NDESが最も得意とし、今後主力としていく分野をユーザにもっと示してもいいのではないかと思います。

今後も当社の要望を受け取ってもらい、当社に合った提案をしてもらうことを期待しています。

おわりに

50年ほど前、最新の一槽式洗濯機であった脱水のローラ部分の製作を独占できたというお話で、当初から高い技術力を持たれていたことがよく分かりました。また、人と人とのお付き合いの大切さを実感しました。

大変お忙しいところ、貴重な時間をさいてお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

会社プロフィール

会社の写真
八潮工場

株式会社 中島製作所

本社 〒125-0052 東京都葛飾区柴又7-17-5
設立 昭和32年4月 (創業昭和31年)
資本金 25,000,000円
八潮第一工場 〒340-0813 埼玉県八潮市木曽根字上682-1
八潮第二工場 〒340-0811 埼玉県八潮市ニ丁目宮下1047-4
八潮第三工場 〒340-0813 埼玉県八潮市木曽根680-1
事業内容 ラバーインジェクションモールド
トランスファーモールド
コンプレッションモールド
自動車専用ゴム金型
弱、強電用ゴム金型
医療用ゴム金型
精密部品加工

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