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No.48 | システム紹介
PLM技術レポート(第6回)
「Space-E V5、CATIA V5を使用した、
カスタマイズ事例(3次元加工テンプレート)」
システムソリューション統括部
開発技術部 PLM開発グループ
橋口 淳一 / 伊藤 順

はじめに

「加工データを作成する工数を削減したい」というのは、NCデータ作成者の課題です。NCデータを作成するときに、「形状を判別し、加工工程を作成する」、「経路を確認して、データを再作成する」ことに工数がかかります。この工数を削減するためには、「加工のノウハウを標準化し、加工に必要な条件をパラメータ化する」、「加工工程を自動的に作成する」ことがひとつの方法です。

今回は、3次元形状加工の加工工程を流用させるための手法として、3次元加工テンプレートをご説明します。

テンプレートにおける効果

説明図
図1 加工工程のフロー
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

図1は、加工工程作成のフローです。工数が多い箇所は、加工工程の追加や工程パラメータを試行錯誤している部分です。特に、工程パラメータを決定する場合、各オペレータのスキルによっては、何度もパラメータの試行錯誤を行うことになり、工数増加の原因となります。そこで、このような箇所をテンプレート化することで効果が期待できます。

説明図
図2 工数の削減
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

加工熟練者のノウハウをナレッジ機能でテンプレートに盛り込み、加工工程の標準化や加工パラメータの自動決定、加工工程の置換を行うことにより、加工工程作成の自動化が実現され、工数が削減できます。(図2)

テンプレート化への課題

説明図
図3 製品置換による加工パラメータ
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説明図
図4 形状による工程流用の難易度
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

自動的に加工工程を作成するには、加工に必要な条件を標準化することが不可欠です。パブリケーション機能、ナレッジ機能を活用して、標準化された条件をテンプレートに盛り込むことで、加工に必要な条件を自動的に取得できます。また、3D形状加工のテンプレートを構築するには、対象となる製品形状(金型)の加工工程を整理する必要があります。(図3)

テンプレート化のポイントは、いかに汎用性を持たせるかにあります。テンプレートを活用するには、類似形状が一番適しています。製品は異なりますが、加工工程が類似するものも多くあります。また、同一製品でサイズの異なるものに、加工のテンプレートを流用できます。

PLM技術レポート第3回(本誌No.45)でご紹介したように、2次元形状では、加工要素を自動認識できる機能を実現しています(穴、ポケット、スロットなど)。また、単純形状であれば、加工工程は標準化しやすく、流用性が広がります。(図4)

3次元加工のパラメータを決定する場合、その判別条件を作成する必要があり、それは各工程において異なります。例えば、荒取りであれば、加工を追い込むためのワークサイズ、キャビ形状における島残しであれば、工具サイズを決めるための壁と島の距離(島の最小隙間)などの条件を定義する必要があります。加工工程の決定や、仕上がりを良くするための残り代の追い込み方や工程数などは、人の経験に依存している場合が多く、なかなか標準化できていないのが実状です。3次元モデルから必要な情報を取得するためのテンプレートを作成し、利用することもひとつの方法です。

テンプレートにおける効果

加工テンプレートで製品形状を置換する場合、加工要素(加工素材、加工座標軸、安全平面、加工領域など)も置換する必要があります。この置換する要素と判別条件により、工程を決定します。

CATIA V5には、パブリケーションという便利な機能があり、同じフィーチャーでなくても置換できます。この機能により、形状をスムーズに入れ替えることができ、加工工程を製品形状に合わせて自動的に変更します(図5)。

画面例
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
画面例
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
図5 製品形状の置換

3D形状を自動認識させることは簡単ではありません。そこで、3D形状を計測して必要な情報をパラメータ化し、そのパラメータを参照することで、加工工程の条件を決定させます。パラメータの例として、ワークサイズ、平坦部判別角度などがあります。(表1)

表1 形状、加工情報による加工パラメータ
工程 形状、加工情 加工パラメータ
荒取り ワークサイズ 工程数、工具サイズ、ピッチ
島の最小隙間 工具サイズ、ピッチ
仕上げ 形状の角度 平坦部判別角度
最小R 工具サイズ、ピッチ
隅取り 最小R 工具サイズ、ピッチ
全般 形状 経路スタイル
材質 送り速度、回転数
説明図
図6 ナレッジルールによる工具テーブルの選択
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加工パラメータを決定して自動変更させる部分には、ナレッジ機能を用います。ナレッジ機能では工程条件表や条件式を定義できます。図6は、モデルに付加したパラメータを参照して工具テーブルを選択している例です。

加工工程テンプレートは、パブリケーション機能とナレッジ機能を活用することで汎用性が高くなります。

おわりに

加工工程パラメータで自動的に数値を決定しても、経路の確認を怠ることはできません。また、完全に自動で加工工程を作成するための加工テンプレートを構築することは簡単ではありません。結果を検証しながらノウハウを蓄積していくことで、より完成度の高い加工テンプレートとなり、効率化は実現できます。

次回も、CATIA V5、Space-E V5による、金型製作における、運用構築、カスタマイズ事例をご紹介します。

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