人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.28 | システム紹介
Space-E V5のご紹介
システム開発部 部長 小嶋一郎
モデラー グループマネージャー 杉原 隆夫
CAM グループマネージャー 小日向 章
MOLD グループマネージャー 東 和久

背景

HZSは、約20年間にわたり、その時代の最新のテクノロジーを搭載した3次元CAD/CAMシステムを開発し、お客様にご提供しています。その結果、日本国内の金型CAD/CAM市場において長年にわたってトップシェアを確保しています。残念ながら、意匠設計、機能設計の上流CADは、国産の市販CADもしくは自社で開発したCADから欧米のCADに移行しています。HZSは、CUBE、Space-Eのソリッドのカーネルにスペイシャルテクノロジー社のACISを採用してきました。スペイシャルテクノロジー社がダッソーシステムズ社の関連会社になったのを機に、ダッソーシステムズ社の開発、マーケットの方とお互いのシステムについての情報交換を実施しました。そこで、彼らの推奨するPLM戦略に共鳴し、PLM展開していくために、1年半前から数十回にわたって新商品化計画の打ち合わせを行いました。

新商品開発にあたって、ダッソーシステムズ社は、CATIA V5の卓越したエンジン(コンポーネント)を提供し、HZSはそのコンポーネントを使って日本の金型市場のニーズにそったSpace-E CAA V5 Based(本レポートでは、Space-E V5と略させていただきます。)の開発、販売を行うことで基本合意に達し、2002年の夏に契約を締結しました。2002年の10月に最初の商品をリリースし、今後のバージョンアップも、お客様の声を本商品およびその商品内のコンポーネントにも反映するため、両社の開発が密接な関係を保っていきます。

Space-E V5は、キャビティ/コアモデリングを実現するCCD(Core&Cavity Design)と2軸加工から3軸加工までの加工を実現するCAMと3次元金型設計を実現するMOLD Designの3つソリュ-ションをご提供します。また、Space-E V5は、5つの商品で構成されています。5つの商品は、CATIA V5の上に追加する"アドオン"タイプの3商品とCATIA V5を中に含んだ"スタンドアローン"タイプの2つのカテゴリーに分類されます。(図1)

アドオンタイプ
Space-E V5 CCD Add-on
Space-E V5 MOLD Design Add-on
Space-E V5 CAM Add-on
商品構成
スタンドアローンタイプ
Space-E V5 CCD Standalone
Space-E V5 CAM Standalone
商品構成
図1 Space-E V5の商品構成

Space-E V5 CCDについて

Space-E V5 CCD は、CATIA V5の優れたフレームワークを、金型のキャビ・コア設計に適応させるために、ダッソーシステムズ社とHZSが共同で企画・開発した商品です。

本節では、Space-E V5 CCD Standaloneを構成するコンポーネント(ワークベンチ)の概要をご説明します。

■インフラストラクチャー

Space-E V5 CCDがご提供するすべてのサーフェイスモデリングは単なる形状定義ではなく、その手続きがフィーチャーとして時系列に記録され再実行が可能です。

また、ダイナミックナビゲーションと直感的な拘束定義による2次元スケッチャーは、サーフェイスモデルと2次元断面の間に完全な連想性を保ちます。

この2つの仕組みは、金型設計サイクルのすべての段階において局所的な形状変更を容易にしており、金型設計者の試行錯誤を効果的に支援することができます。

Space-E V5 CCD画面
図2 エッジフィレットフィーチャーの操作
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

図2には、Space-E V5 CCDで定義したエッジフィレットフィーチャーの修正例を示しています。フィレット半径を変更したり、エッジの寸法を修正したりするだけで、3次元モデルが自動的に更新されています。

■ワイヤーフレーム&サーフェイス機能

キャビ・コア設計の分野では、金型設計者が、加工性や成形性に配慮しながら、細部の形状を柔軟かつ厳密に定義できるモデリング性能が何よりも大切です。

HZSは、長年のGRADEとSpace-Eの開発・サポート経験から、この分野におけるサーフェイスモデリング機能の重要性を認識し、つねに融通性の高い機能をご提供することで、お客様からご好評を頂いております。

ここで培われた金型モデリングのノウハウの多くは、Space-E V5 CCDにも引継がれており、例えば、"フィル機能"(境界への内挿)に対して、境界の隙間補正機能を追加したことなどは、モデリングの融通性を高めるために、とても大切な機能改良と言えます。

Space-E V5 CCD画面
図2 エッジフィレットフィーチャーの操作
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
Space-E V5 CCD画面
図3 パワーフィルフィーチャーの隙間補正
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

この他にも、CATIA V5の標準的なフィレット機能に対して、"エッジフィレット機能"(図2)や"幅一定徐変フィレット機能"を追加するなど、金型モデリングに欠かすことのできないフィレット作業に対する適応範囲を広げています。

■ヒーリングアシスタント機能

IGESなど、外部ファイルを経由して取込まれたデータをクリーンアップ(ソリッド化)するためのツール群で、CADシステム間の許容精度の違いや、設計者のミスによって生じた境界の微小な隙間や面の重なりを、設計者とシステムが対話しながら半自動的に修正することができます。

Space-E V5 CCD画面
図4 粗い境界精度のエッジモデルへのフィレット
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

図4は、粗い境界精度の複合面エッジモデルに対してフィレットテストを行った際の出力例です。

テストでは、オリジナルモデルの品質の悪さにも関わらず、ヒーリングによって境界の隙間と接線連続性が修復され、フィレットの稜線への乗移りや、フィレットどうしの重なりが安定に処理されることが確認できました。

■コア・キャビデザイン機能

勾配やアンダーカットチェックによって最適な抜き方向を決定し、成形品からキャビ・コア部およびスライドコア部への分割作業を支援するためのツール群をご提供しています。

また、金型設計者の意思決定を支援するため、面の勾配角度やフィレット半径の測定といった形状評価機能をご提供しています。

"コア・キャビデザイン機能"とHZSが独自に拡張したサーフェイス機能群は、CATIA V5 HD2(またはMD2)コンフィギュレーションをお使いのお客様に対して、"Space-E V5 CCD Add-on"としてご提供することもできます。

Space-E V5 CAMについて

Space-E V5 CAM Add-onは、Space-E V5 CCD Standaloneと同様に、CATIA V5の優れたフレームワークを、用いて企画・開発された商品です。本節では、Space-E V5 CAMの概要をご説明します。

■Space-E V5 CAM構成について

Space-E V5は、CATIA V5の特長であるモジュール構成を採用しており、お客様が必要とされる機能に応じて、柔軟にCAD/CAMシステムを構成することができます。

Space-E V5 CAM Add-onは、CATIA V5 HD2(またはMD2)コンフィギュレーションやSpace-E V5 CCD上で利用できます。また後述のSpace-E V5 CAM Standaloneにも含まれます。

また、Space-E V5 CAM Standaloneは、前節でご紹介したSpace-E V5 CCD Standaloneを構成するコンポーネントである、"インフラストラクチャー"、"ワイヤーフレーム&サーフェイス機能"、"コア・キャビデザイン機能"をベースにCAM機能を追加した、いわゆるCAM端末構成です。加工用モデル作成後の加工データ作成作業のためのシステムとしてご利用できます。

■Space-E V5 CAM機能について

Space-E V5 CAM Add-onモジュールはCATIA V5の3軸NC加工プログラム作成機能をベースに独自の機能拡張および機能追加を行ったものです。

  • 3軸NC加工プログラム作成機能
    3次元形状に対する荒取り加工から仕上げ加工、2次元形状によるポケット加工、輪郭加工を含む経路生成機能です。CATIA V5製品モデルとの関連性を持たせたことにより、設計変更管理を行うことができるようになっています。パラメータの設定はグラフィックダイアログインターフェースにより非常に容易な操作を実現しています。
Space-E V5 CAM画面
図5 パラメータ設定画面例
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
  • 経路エディタの拡張
    加工条件を保持したミラーコピーなど、HZSのこれまでのCAM開発のノウハウを活かし、CATIA V5 CAMに搭載されている経路エディタ機能を拡張します。
Space-E V5 CAM画面
図6 経路エディタ機能設定画面例
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

今後、経路の移動・複写、ミラー反転、逆転などの拡張や経路端部延長機能の追加などを予定しています。

  • ポストプロセッサーの標準装備
    CATIA V5 CAM用のポストプロセッサーを標準装備しています。このポストプロセッサーは、Space-E/CAM同様の柔軟なカスタマイズ機能を備えています。

    また、CATIA V5 CAMのポスト処理操作も独自に拡張し、NCデータの作成操作をスムーズにできるように拡張する予定です。

  • Space-E/CAM機能
    現在HZSがご提供しているSpace-E/CAMのCAM機能をCATIA CADフレームに統合して利用できる機能です。
Space-E V5 CAM画面
図7 Space-E/CAM起動画面
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

この機能により、CATIA V5やSpace-E V5でモデリングされた形状に対してSpace-E/CAMと同様の操作で、経路作成やシミュレーション、NCデータ作成などの作業をSpace-E V5ベースで行うことができます。また、Space-E/CAMで蓄積された加工工程のノウハウやカスタマイズされたポストプロセッサーなどの資産を利用することもできます。

Space-E V5 MOLD Designについて

Space-E V5 MOLD DesignはCATIA V5 MTDの優れたフレームワークに、HZSの3次元金型設計支援の機能を適合させた商品です。CATIA V5 MTDが一般的な3次元金型設計支援商品であるのに対し、Space-E V5 MOLD Designでは、各社が持っている金型設計ノウハウ(ナレッジ)をシステムに取り入れることで各社独自の標準設計に柔軟に対応した3次元金型設計支援商品です。本節ではSpace-E V5 MOLD Designの機能についてご紹介します。

■Space-E V5 MOLD Designの機能

3次元金型設計を効率よく行うには、キャビ・コア設計とは反対に、形状定義のためのモデリング作業は極力抑え、アンダーカット部の機構設計やエジェクターピン穴や温調配置など、"設計"そのものについて考える時間が十分にあることが必要です。Space-E V5 MOLD Designによる設計支援の第一歩として、Space-E V5 MOLD Design R10では金型設計者が発注パラメーターを指定するだけで簡単に金型部品形状が生成し、金型にあるすべての部品形状を3次元で表現できるように金型部品ライブラリを強化しました。

今後、これらの部品ライブラリ情報を基に各社の標準設計ルールを取り込んだシステムへ拡張する予定です。

  • モールドベース
    CATIA V5 MTDに不足していた3プレート用のモールドベースを始め、CATIA V5 MTDのライブラリにほぼすべての双葉電子工業株式会社モールドベースを追加しました。また、モールドベースに標準で付属する部品に対しても自動で配置を行うことができるようになっています。
Space-E V5 MOLD Design画面
図8 モールドベースのダイアログ
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
Space-E V5 MOLD Design画面
図9 部品つきモールドベース
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
  • Catalog Window
    金型部品のライブラリとしてCATIA V5 MTDの部品ライブラリとは別にHZSが開発しましたWebベースのカタログ(Catalog Window Ver2.0)を使用できます。Catalog Windowを利用すれば、CATIA V5 MOLD Designに使用する金型部品をWebで検索し、簡単に3次元部品形状を作成することができます。
Catalog Window画面
図10 Catalog Window Ver2.0のダイアログ
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
Space-E V5 MOLD Design画面
図11 Space-E V5 Mold Design上で作成された部品
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)
Space-E V5 MOLD Design画面
図12 Space-E V5 Mold Designモデル
(上図をクリックすると拡大図が表示されます)

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