人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
お客さまにお役に立つ情報をお届けする情報誌です。

No.101 | システム紹介
MBSE・MBDソリューション領域における
NDESの取り組み
株式会社NTTデータエンジニアリングシステムズ
オートモーティブソリューション事業部 技術開発部 第一技術開発課
高橋 修司

はじめに

私たちは、2019年にMBSE・MBDソリューションに特化した組織を発足し、モデルを活用してシステムズエンジニアリングを高次元・高効率に行うことを目的に、外資系ツールベンダ、大手ソリューションベンダやアカデミックに従事した者、制御開発のエキスパート、OEMにて自動車開発に携わった者、OEM向けITシステム開発のエンジニアなど社内外の精鋭エキスパートを集結して運営しています。私たちのMBSEについての理解とMBSE・MBDソリューション領域の取り組みについては人とシステムNo.99[1] をご覧ください。

欧州の活動との連携

MBSE・MBDソリューションをより良くするために私たちは、NTT DATA Deutschland GmbHのAutomotive Team(NTT DATA Germany)と連携することにより、欧州の先進的な取り組みの導入が可能となり、日本の自動車業界を活性化させるビジネスモデルが検討・実施できると考えています。それにより、私たちがご提供するMBSE・MBDのサービス内容の拡充を可能にします。今後、最先端のIT技術とSENSEIアーキテクチャ[2] の知見をベースとしたMBSE・MBDソリューションをご提供していく予定です。

TSFのコアとなるSENSEIアーキテクチャ

SENSEI [2] とは、「Systems Engineering aNd Scalable Enterprise Integration」の略で、日本語の「先生」をなぞらえて命名されています。

SENSEIは、具体的なITソリューションではなく、システムズエンジニアリングのための総合プラットフォームのリファレンスアーキテクチャと呼ばれます。その文字通り、「参照」となるアーキテクチャであり、具体的なものというよりはコンセプトに相当するものだと言えます。一般的に開発の仕組みに新しい事柄を取り入れる時、レガシーを守りながら新しいものを載せていくことが多々あります。それにより、完成したものがスパゲティプログラムのように複雑で更新しにくいものになってしまいます。一方、整理されたリファレンスアーキテクチャを利用してアーキテクチャを実装すると、複雑に絡み合ったスパゲティ化を回避できます。SENSEIはITソリューション群を統合し、MBSE・MBDを高い次元で実行できる環境にすることを目的としています。

SENSEIはアーキテクチャを設計するに当たり、実装時の意思決定の指針となるアーキテクチャの原則として、①データを資産にすること、②複数分野における共通データを理解すること、③クラウドファーストにすること、④APIファーストにすること、⑤変化に対応するための反復的アプローチをすること、⑥自動化すること、⑦コストを最適化すること、の7項目を定めています。この原則は、お客さまのプロジェクトで得た経験と教訓、一般的なベストプラクティスの出版物や研究から得たものです。

SENSEIの概要を図1に示します。濃い青色で示された範囲はSENSEIがカバーする領域であり、薄い青色で示された範囲はよく見られるエンジニアリングITツールがカバーする領域を示しています。

図1 SENSEIシステムズ・エンジニアリング・インテグレーション・アーキテクチャ・ブループリント( [2]より抜粋)
図1 SENSEIシステムズ・エンジニアリング・インテグレーション・アーキテクチャ・ブループリント([2]より抜粋)

SENSEIのアーキテクチャを構成するものは以下の通りです。

  • 統合基盤(Integration Foundation):システムズエンジニアリングのためのデータ統合、開発プロセス統合、API管理など、システムズエンジニアリングの実現を目的に、より専門的な項目のための基本的な統合処理を提供します。具体的にはデータの流れや保管をする機能、データのやり取りの機能が挙げられます。
  • システムズエンジニアリングデータ統合(SE DataIntegration):データを統合するための項目についてまとめられています。トレーサビリティを担保する技術であるリンクトデータや、単語集(Ontology)を整備することでクロスドメインの統合など、システムズエンジニアリングのためのデータ統合の機能を提供します。
  • プロセスインテグレーション(Process Integration):開発プロセスは、企業にとってデータと同じくらい重要な資産です。開発プロセスマネジメントは、開発プロセスの効率的な実行と同時にコンプライアンス遵守をサポートし、さらに継続的な改善の基盤となります。
  • API管理(API Management):複数のエンジニアリングITツールを接続し、有効なシステムズエンジニアリングのための環境の構築をサポートします。

このアーキテクチャをもとに私たちはTSFアーキテクチャを構築しています。

SENSEIアーキテクチャをもとにした
TSFソリューション

SENSEIアーキテクチャの「システムズエンジニアリングデータ統合」をもとにした構築中のソリューションをご紹介いたします。このソリューションは、セマンティックな検索を可能にすることを目的としています。

セマンティックな検索とは、検索ワードから推論して対象を導き出す検索のことを指します。分かりやすく例えると、SNSで自分と友達になっているユーザーの友達になっている別のユーザーも友達である可能性が高いことを示す機能です。これは、基礎となるグラフ(図2)を定義することで可能となります。グラフは一つ一つのオブジェクト(図2中、丸で表現されたもの。専門的にはノードと呼ぶ)とオブジェクトをつなぐ線(図2中、丸と丸をつなぐ線のこと。専門的にはエッジと呼ぶ)によって表現されます。エッジはノードとノードの関係性を表現しています。先ほどのSNSの例で言えば、ノードがユーザーであり、エッジが友人関係を示しています。グラフで表現することにより、関連するオブジェクトを推論して見つけることができます。このような仕組みをベースに組み込むことで、個々のユーザーのニーズに合わせた検索を実現し、大量に存在するデータから要求するものを取り出すことを支援します。

図2 セマンティック検索ソリューションの検索結果([2]より抜粋)
図2 セマンティック検索ソリューションの検索結果 ([2]より抜粋)

おわりに

本稿では、MBSE・MBDソリューションのためのリファレンスアーキテクチャとそれが提供できるサービスの一例としてセマンティック検索ソリューションについてご紹介いたしました。複雑化する製品開発において、私たちのソリューションがお客さまにとって非常に有効であると考えております。SENSEIアーキテクチャを含めた私たちのソリューションにご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください。

参考文献

[1]「人とシステム」No.99 モデルベース開発における制御系モデル情報交換システムの構築-日本自動車工業会(JAMA)様における取り組みについて-:https://www.nttd-es.co.jp/magazine/backnumber/no99/no99-JAMA.html

[2]SENSEI - Systems Engineering aNd Scalable Enterprise Integration:https://de.nttdata.com/insights/whitepapers/sensei-systems-engineering-and-scalable-enterprise-integration(外部サイトへ移動します)

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