株式会社日刊工業新聞社 雑誌部 鎌池 愛 |
はじめに
「第16回オートモーティブワールド」が東京ビッグサイトにて2024年1月24日~26日の3日間、RX Japan株式会社の主催で開催されました。次世代自動車を支える技術を7つの展示会で構成した「第16回オートモーティブワールド」と、同時開催された8つの展示会の総称の「第38回ネプコン ジャパン」を合わせた来場者は3日間で7万7,744 名でした。
NTTデータブースの展示エリアに出展したNTTデータエンジニアリングシステムズ(以下、NDES)のブースにも多くの来場者が訪れました。
CASE・脱炭素を指向するクルマの先端技術が集結
自動車産業は「100年に1度の変革期」と言われ、CASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric)という大きな潮流の中にあります。世界中でカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)への取り組みが加速する中、電気自動車(EV)は着実に市場で浸透しています。また、欧州のグリーンディール政策や、米国・中国の産業政策をみると、サーキュラーエコノミー(循環経済)への意識の高まりがうかがえます。同展では、こうした状況への具体的な対応と意欲的な提案が各ブースで行われていました。次より「第16回オートモーティブワールド」の7つの展示をご紹介します。
- 第10回 自動車部品&加工EXPO
自動車部品の切削・研削加工、プレス加工、鍛造・鋳造、レーザー加工、穴開け加工、表面処理・熱処理、接合・溶接、微細・精密加工、ダイカスト、樹脂成形などに関連する製品・技術が集まった内容でした。
- 第16回 国際カーエレクトロニクス技術展
半導体、電子部品、ソフトウエア、テスティング技術などカーエレクトロニクスの進化を支える技術が披露され、車載機器の電磁環境適合性(EMC)試験や機能安全評価などについても紹介されていました。
- 第14回 クルマの軽量化技術展
樹脂、金属、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの材料や加工技術・装置、異種材料接着・接合技術などが紹介されていました。中でも注目されていたのは、車体の強度を確保しつつ軽量化し、自動車の航続距離延長を実現する素材や構造設計技術です。
- 第15回 EV・HV・FCV技術展
カーボンニュートラルを実現するEV・HV(Hybrid Vehicle:ハイブリッド自動車)・FCV(Fuel Cell Vehicle:燃料電池自動車)技術を比較・検討できる場として、電動車両の中枢技術となるモーター、インバーター、二次電池、FCVなどに関する製品・技術が集まっていました。急速充電器や性能試験装置などの展示もありました。
- 第12回 コネクティッド・カーEXPO
車のソフトを無線通信経由で更新するOTA(Over The Air)技術や、サイバーセキュリティー、ITソリューションなど、インターネットに接続する機能を備えたコネクテッドカー関連の技術が紹介されていました。
- 第5回 MaaS EXPO
自動運転向け車載セキュリティーサービスのほか、視線検知や標識などの認識技術を用いた高度運転診断技術、スマートフォンを活用した動態情報収集、運用ソリューションなどが紹介されていました。
- 第1回 SDV EXPO
今回、初開催となった「第1回 SDV EXPO」では、OTAによるソフトウエアアップデートを前提とした開発の浸透を背景に、SDV(Software Defend Vehicle)に関するソリューションが集結していました。
SDVの時代へ
近年の「オートモーティブワールド」で注目されてきたのは、EVの普及を後押しする軽量化部品の加工技術などです。最近は、これらに加えて複雑化する開発現場を支えるソリューションにも関心が集まっています。
今回NDESのブースで紹介したのは、そうしたニーズに応える「SDVのソフトウエア開発をドライブするALMソリューション」です。これまでのハードウエア先行での開発からソフトウエア先行型のプロセスに移行されつつあり、車の新常識として近年注目を浴びている「SDV」は「ソフトウエアを中心に作られた車」を意味しています。そして2030年までには、自動車の開発費用の約半分をソフトウエア関連が占めると言われています。つまり、ソフトウエアの開発コストをいかに抑えるかがビジネスとして大きな課題となります。
複雑化する開発現場を支援
ソフトウエア開発を進める上で理想とするのは、ソフトウエアの要求や要求定義を決める「要求」、その後システムを設計、メカ・エレキ・ソフトの各部門が基本設計・詳細設計、実装、機能テスト・総合テストを行う「開発」、そしてシステムテストと自社テストを行う「検証」の大きな3つのプロセスがV字を描くように進んでいくことです。
しかし、なかなか思った通りに進まないのが現状です。最初の要求や要求定義が確立しないうちからコードを書くなどの開発が先行し、後から多くの変更を余儀なくされると、大きくプロセスが後退して手戻りが多く出る場面が発生します。また、システムが大規模化、複雑化して開発状況の把握が困難になるほか、トラブルや不具合が発生した際の原因究明もスムーズに進まないことが頻繁に起こります。これは開発に関わる人数が大幅に増えていることに加え、扱うデータが膨大になっており、管理が追いついていないことが主な要因とみられます。
ITを活用したALMソリューションの提案
そのような中、NDESが提案するのはALM(アプリケーションライフサイクル管理)ツールを活用した課題解決のアプローチです。単にツールを導入するだけではなく、まず顧客の現状の調査やあるべき姿の定義、ロードマップ策定などのサービスを展開します。その後、導入、インテグレーション、実務支援、運用サービス、利用度向上のためのアプリケーション開発に至るまで、すべてのプロセスをしっかりバックアップします。膨大なデータと人員を活用し動いていくソフトウエア開発の現場で、今後ITソリューションの活用は大きな期待を集めると同時に、課題も少なくありません。その意味でも自動車開発の将来を見据えた提案は、会場で注目を集めていたようです。
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