人とシステム

季刊誌
NTTデータエンジニアリングシステムズが発行する
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No.79 | システム紹介
複合成形CAEソリューションと
3D TIMON最新機能のご紹介
東レエンジニアリング株式会社
エンジニアリング事業本部 CAEソフト事業部
菊池 泰志

はじめに

図1 複合成形CAEソリューション
図1 複合成形CAEソリューション
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当社、東レエンジニアリング株式会社が開発・販売を行っております射出成形CAE「3D TIMON」は、これまでさまざまな機能追加を行い、樹脂製品の成形時に発生するさまざまなトラブルの予測、トラブル対策の検討を可能にしてきました。

近年は、製品の軽量化・複雑化が進み、インサート成形、2色成形といった異なる材料を複合する成形法や、CFRPに代表される複合材料を成形する複合材料成形法などのニーズが高まりつつあります。これらの成形法は、通常の成形法に比べ高度な技術が必要となるため、CAEに対する期待も高くなっています。

そのような中、当社では図1に示したような保有の要素技術を活用してお客さまの抱えている問題に対して問題解決の提案を行ってきました。

本稿では、前述の取り組みでこれまでに開発・商品化しました以下の「3D TIMON」関連商品についてご紹介します。

  1. 複合材料樹脂プレス成形CAE「3D TIMON-CompositePRESS」
  2. 粘弾性解析オプション「3D TIMON-StructVE」
  3. 構造解析連携オプション「3D TIMON-nStruct」

複合材料樹脂プレス成形CAE「3D TIMON-CompositePRESS」

図 2 BMC(Bulk Molding Compound)成形
図2 BMC(Bulk Molding Compound)成形
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3D TIMON-CompositePRESSは、複合材料の樹脂プレス成形のシミュレーションソフトウェアです。熱可塑性のシート状の基材をプレスするスタンピング成形や熱硬化性のシート/バルク状の基材をプレスするSMC/BMC 成形(図2)における、充填挙動、繊維配向、そり変形を予測することができます。

機能紹介

図3 DFS(Direct Fiber Simulation)の繊維モデル
図3 DFS(Direct Fiber Simulation)の繊維モデル
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図4 リブ厚さ違いによる繊維配向結果比較
図4 リブ厚さ違いによる繊維配向結果比較
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  • シート状やバルク状の基材の配置検討を柔軟に行うことができます。
  • オイラーメッシュの採用により、メッシュ変形なしでの解析が可能なため、複雑な形状でもロバストに解析できます。
  • 熱可塑、熱硬化、ゴムなどの複数の素材に対応しています。
  • 繊維挙動を直接計算する新技術DFS(Direct Fiber Simulation)の採用により、従来できなかった長繊維特有の挙動(繊維の曲がり、繊維密度のばらつき)を考慮した物性・そり変形予測が可能です(図3、4)。

粘弾性解析オプション「3D TIMON-StructVE」

図5 リフロー前後のそり量比較結果(コネクター部品)
図5 リフロー前後のそり量比較結果(コネクター部品)
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図6 ヒートサイクル試験解析による割れ箇所評価
図6 ヒートサイクル試験解析による割れ箇所評価
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3D TIMON-StructVEは、樹脂が持つ粘弾性特性を考慮した金型内・金型取り出し後における熱変形解析を行うオプションモジュールです。

粘弾性特性を考慮することで成形中における金型内樹脂の応力緩和のばらつきを表現することができます。このことにより、型拘束によるそり量への影響の評価や、製品取り出し後の残留応力評価を行うことができます。

また、製品の金型取り出し後の経時変化を考慮した熱変形解析を行うことができ、金型取り出し後の熱処理工程における温度・そり評価が可能になります。アニール、リフローなどの熱処理後のそりを評価したり(図5)、ヒートサイクル試験を解析で再現することで割れ発生箇所の評価(図6)を行うことができます。これら工程の前後における残留応力、クリープを比較評価することも可能となります。

構造解析連携オプション「3D TIMON-nStruct」

図7 3D TIMON-nStructと構造解析との連携
図7 3D TIMON-nStructと構造解析との連携
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図8 3D TIMON-nStruct解析事例(シフトレバー部品)
図8 3D TIMON-nStruct解析事例(シフトレバー部品)
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3D TIMON-nStructは、繊維強化樹脂の射出成形解析と構造解析を連携するオプションモジュールです。

nStructは、3D TIMONの繊維配向解析結果を用いて繊維配向(配向方向、配向度)に応じた非線形物性(線形限界、塑性挙動、破断点)を予測することができます。

また、nStructと外部の構造解析ソルバーを活用することで、繊維強化樹脂が持つ異方性、材料非線形性といった樹脂固有の特性を考慮した樹脂部品の構造解析を行うことが可能になります(図7)。

さらに、上記の構造解析結果から繊維配向を考慮した安全率(材料強度/発生応力)を表示させることができます(図8)。これにより、樹脂部品の破断箇所の予測や、破断可能性の予測など製品の強度評価を行うことが可能です。

おわりに

当社では、お客さまが抱えている樹脂製品成形に関するさまざまな問題に対し、今回ご紹介させていただいた商品や、当社がこれまでのソフトウェア開発で培った要素技術を活用することで、お客さまの問題に適したソリューションをご提案させていただきます。ぜひ、一度ご相談ください。

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