はじめに
2026年1月21日~23日、東京ビッグサイトにて「第18回 オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展-」が開催されました。私たちNTTデータエンジニアリングシステムズは、NTTデータブース内で展示を行い、SDV(Software Defined Vehicle)時代に求められる製品開発の課題と、それを支えるAI活用型エンジニアリングプラットフォームについて、講演とデモンストレーションを交えてご紹介しました。
今回のオートモーティブワールド全体の来場者数は累計約78,670名に達し、最新の自動車技術に関心を寄せる多くの来場者で大変な賑わいを見せていました。
NTTデータブースにも初日から約1,250名のお客さまのご来場があり、さまざまなご意見、ご質問を頂戴するなど、高い関心をお寄せいただきました。特に、ソフトウェア定義やAIによる自動車業界の変革については関心が高く、実用的なSDVユースケースや開発現場での活用イメージをご紹介した展示には、多くのお客さまにお越しいただきました。
来場者の業種は、製造業、コンサルティング企業、ソフトウェア開発企業など多岐にわたり、ブースでは終始熱心な質疑応答が続きました。とりわけ、「複雑化するソフトウェア開発プロセスへの対応」、「法規対応の効率化」、「セキュリティ要求の負荷軽減」は多くの企業が共通して抱える課題であり、私たちのソリューションへの高い期待が感じられました。

SDV時代に顕在化する課題
SDVの進展に伴い、車両価値の中心はハードウェアからソフトウェアへ大きくシフトしています。その影響で開発現場では、従来とは質の異なる次のような複雑さに直面しています。
・ソフトウェア規模の爆発的な増加
・国際法規への対応負荷
・サイバーセキュリティ要求の高度化
部門単位やツール単位での個別の最適化だけでは、スピード、品質を同時に満たすことが難しくなりつつあります。
私たちのご提案:統合・標準化・AI
SDVの開発では、前述のような新たな課題が次々と生まれています。これらを確実かつ効率的に対処するには、工程の改善だけではなく、開発プロセス全体を一貫して管理できる仕組みが必要です。
私たちがご提案する三つの柱をご紹介します。次に挙げる Codebeamer、CERTassist、EVSec は、それぞれの領域の課題を解決しながら連携することで、要求管理から法規対応、セキュリティ対策、テストに至るまでを一つのプロセスとして結びつけます。こうしたデジタルスレッドにより、手戻りや抜け漏れを防ぎ、より確実で説明可能な開発を実現します。
・一気通貫の統合基盤:Codebeamer
企画、要件定義、設計、実装、テスト、リリース、運用・保守までを一気通貫する統合基盤で、法規およびリスク対応までも横断的に管理・可視化し、プロセス全体の手戻りを抑制します。これにより、エビデンスに基づく意思決定を可能にします。
・法令順守と認証プロセスの効率化:CERTassist
自然言語で書かれた法規文書をAIで分析し、分類・要求化・文書生成・審査ワークフローを自動化します。これにより、属人化の解消および業務のリードタイムを短縮し、承認プロセスの効率化を図ります。
・サイバーセキュリティ対応の高度化:EVSec
脅威・リスク・脆弱性分析、アタックツリー生成など、工数を要する領域に対し、AIで標準化および効率化を図ることで、サイバーセキュリティ対応の高度化を推進します。さらに、最新の規格・運用に追随できる体制を整えます。
Codebeamer:
ALMによるプロセス統合とトレーサビリティ
Codebeamerは、ソフトウェア開発におけるライフサイクルを一元管理する ALM(Application Lifecycle Management) プラットフォームです。要件、ドキュメント、ソースコード、テストケース、不具合、変更履歴をシームレスに関連付け、ライフサイクル全体を通して追跡可能なトレーサビリティを提供します。また、アジャイルやモデルベース開発(MBD)にも対応し、自動車の業界基準のAutomotive SPICEなどに準拠したテンプレートを備えています。その上、外部ツールとの連携性も高く、JIRA(課題管理)、Git(構成管理)との接続で、既存資産を生かしながら “一元的に連携した” デジタルスレッドを構築できます。
エンジニアにとっての具体例は、進捗を一目で把握できるカンバンによる可視化、テストがどの程度網羅できているかテストカバレッジの把握、変更要求に対する影響範囲の即時特定など、直感的に使えるUIが挙げられます。マネジメント層にとっては、品質、進捗、リスクのダッシュボードで全体状況を一目で把握できることや、監査や顧客レビューでエビデンスがスムーズに提示できます。結果として、手戻りの抑制、監査対応の短縮、説明可能性(Explainability)の向上が期待できます。加えて、機能安全(ISO 26262)や品質マネジメントに関わるレビュー記録、承認履歴、変更根拠を一元化することで、監査準備における標準工数の平準化と、ナレッジの継承を支援します。
CERTassist:
AIで法規解釈と要求生成を自動化
CERTassistは、自然言語処理(NLP)とディープラーニングを用いて法規文書を解析し、法規内容の分類、しきい値・タグの抽出、派生要求の生成、要求品質のチェックを自動化します。UNECE(国際連合欧州経済委員会)など国際法規への適合に伴い発生する膨大な読解作業や要求定義をAIが支援することで、属人化を防ぎ、抜け漏れのない要求定義を実現します。作成した要求はCodebeamerなどの管理リポジトリに取り込み、後工程の設計、テストと連携させることで、法規を起点としたトレーサビリティを強化できます。
さらにバックエンドでは、LLM(大規模言語モデル)を活用したエージェントとAPIによるワークフローが自動で動作しており、既存システムとの共存および拡張が容易です。例えば、法規更新の検知、影響範囲の自動特定、関係者へのタスク配賦、レビュー完了までの状態遷移を自動化し、リードタイム短縮と変更管理の透明性を高めます。
EVSec:
AIによるサイバーセキュリティ対応の高度化
ISO/SAE 21434やUNECE UN-R155に基づくTARA(脅威分析・リスク評価)の実施は義務化され、開発初期からセキュリティを織り込むことが不可欠になりました。EVSecは、アセット・脅威・脆弱性の分析/推奨サイバーモデルの提示/アタックツリーの自動生成/規格準拠の文書・ワークプロダクト作成をAIで支援します。SysMLで作成したシステム構成図のインポートに対応し、図面→システムモデル→TARAモデルへ自動展開できるため、初期立ち上げの工数を大幅に削減します。 また、Codebeamerの連携により、法規要求、セキュリティ要件、設計、実装、テストまでのデータを一つのデジタルスレッドで管理可能です。監査や顧客への説明においても、明確な根拠によりプロセスを遡及できる“説明可能で監査に強い”体制を構築します。
また、Codebeamerの連携により、法規要求、セキュリティ要件、設計、実装、テストまでのデータを一つのデジタルスレッドで管理可能です。監査や顧客への説明においても、明確な根拠によりプロセスを遡及できる“説明可能で監査に強い”体制を構築します。
おわりに
私たちは今後も、現場での課題に寄り添いながら、AI技術とエンジニアリングの知見を組み合わせ、お客さまの開発プロセス改革をご支援いたします。SDV時代のものづくりをお客さまと共に支え、より良い製品づくりに貢献できるパートナーとして、今後も取り組みを進めていきます。
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