SI統括部 第1技術部 部長 広崎 貴 |
はじめに
NDESは、造船業界向けに三次元船殻CAD/CAMシステムGRADE/HULLを長年に渡り開発・提供し、システムの信頼性、堅牢性においてお客様から高い評価をいただいております。また、ダッソー・システムズのCATIAシステム上の配管設計システムをカスタマイズした艤装設計システムを提供しており、さらにはそこから管一品製作図等を自動生成する出図システムGENESYS-Pも開発・提供しています。
これらの造船業界向けシステム群に今回新たなソリューションを追加しました。GRADE/HULL船殻設計情報から3Dモデルを取り込み、造船所の設計製造現場での各種効率化を図る3Dプラットフォームです。その中核となるのが3D船殻ビューワBeagle View(ビーグル・ビュー)です。
Beagle View開発の背景
GRADE/HULLシステムは、以前よりビューワソフト(HOOPS版 VIEW)を提供しておりましたが、システムのベースとなるモジュールが経年変化により最新のPC実行環境に適応できない場合が出てきていました。一方NDESでは、かねてよりDarwin Vueシステムを開発しており、HOOPS版 VIEWのベースモジュールの移行先としてこれを適用することにしました。
Beagle Viewという名称は、1831年に当時22歳のチャールズ・ダーウィンが南アメリカ大陸沿岸や南太平洋諸島をめぐる航海に出た帆船の名前に因んでいます。
ここ数年、HOOPS版 VIEWの普及が進み、生産技術部門や製造現場での利用が拡大している時期で、3Dのわかりやすさを活かした塗装面積や溶接長の見積もり機能などを追加している段階でした。Beagle Viewは、これらの実績を受け継ぎ、さらに幅広い適用業務を開拓する基盤となるように設計しています。
Beagle Viewの機能
Beagle Viewの基本機能をご紹介します。
1)船殻設計情報の取り込み・表示

GRADE/HULLからBeagle Viewへ船殻設計情報を受け渡す基本機能です。GRADE/HULLでモデリングした3D形状がそのままBeagle Viewに受け渡され(図1)、Beagle Viewの各種計測機能や資料作成機能を利用できます。形状だけでなく部材名称や板厚、部材舷、重量といった船殻部材の属性値をGRADE/HULLから正確に継承しています。また、船殻ブロックは任意に組み合わせて呼び出すことができます。
2)基本計測機能
部材の端点をスナップ認識して、端点間距離を三次元的に計測できます(図2)。利用価値が高いとされているのが任意のブロックや部材を組み合わせて重量・重心を計算する機能です。対象となる船殻部材を確認しながら、今見えているブロック・部材の組み合わせ状態での重量・重心を計算し、注記として残すことができます(図3)。


3)船殻ブロック、カテゴリ別による表示設定

船殻ブロックを複数読み込んだ場合、ユニットブロック別に色を割り当てたり透明化(ワイヤーフレーム表示)を設定したりすることができます(図4)。同様に部材種別ごとに色分けや表示モードを切り替えることができます。
4)
前記の1)~3)がBeagle Viewで実装されたGRADE/HULLからの船殻設計データの読み込み・参照機能です。Beagle Viewでは、3Dビューワとして一般的な機能も備えており、船殻データ向け機能と組み合わせて使用できます。

・注記作成機能
3D形状の特定位置に付箋を貼ることができます。また、船殻部材表面にフリーハンドで図を書き込むこともできます(図5)。
・コメント作成機能
3Dモデルの参照状態や計測結果、注記作成状態をそのままの状態で記録し、課題管理化する機能です。
・アニメーション作成機能
部材やブロックの位置を移動させたり、3Dビューの方向やズーム率を変更したりして連続するシーンを作成し、動画ファイル形式のアニメーションを作成することができます。
Beagle Viewの特徴
Beagle Viewは、以下の点に留意して開発しています。
船殻設計情報の継承
HOOPS版 VIEWの全機能を包含し、設計者や作業者が確認したい情報をすべて受け取るようにしています。また、今後3D活用プラットフォームとして幅広い業務改革の適用を行う際に、基幹システムであるGRADE/HULL側の情報を追加で必要とする場合にも対応できるようになっています。
データ管理システムとの連携
NDESのデータ管理システムSPACE-Docと連携運用できます。GRADE/HULLから船殻設計情報を自動的にBeagle Viewデータに変換し、SPACE-Docで船番別に管理します。Beagle Viewでの閲覧、編集、保存作業はSPACE-Docと連動して動作するようになっています。最新の設計情報を間違いなく利用でき、またデータ漏洩など機密保持の観点から安全性の高いデータ運用ができます。
大規模データ対応
20ブロック程度の読み込み・表示においてもPCのスペックによってはストレスを感じることがあります。現場での3D活用を推進する場合に、実際に利用できるPCは数世代前のPCの使い回しである場合が多いため、中程度の複合ブロックを参照する場合にも性能が必要とされます。Beagle Viewは、実行時のマシンスペックが制限される場合でも、問題なく利用できるように工夫しています。
システム拡張性
GRADE/HULL、Beagle ViewともにNDESで開発・保守を行っているため、システムの拡張が容易に行えます。お客様での業務改革、業務効率化を行う場合の一助として、システムでできる支援機能の開発をCAD/CAM側でもビューワ側でも行うことができます。その中で3Dデータを利用したグラフィカルな支援機能が必要とされる場合にBeagleプラットフォーム上での開発が適しています。
他システムとの接続性

将来的には他社CADのデータも取り込めるようにし、また船殻以外にも艤装設計情報などを取り込んで表示する機能開発を予定しています。他のシステムと接続する場合の基本インターフェースを定めているところです。
また、携帯端末での3D情報参照ができるように、現在iPad版ビューワを開発しています(図6)。
おわりに
Beagle ViewおよびBeagleプラットフォームは、造船会社向けに開発され、追加アプリケーションを増やしている最中です。今後もこの分野でのソリューション拡大を計画しています。また、この成果を造船分野以外の他業種にも展開していく予定です。
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