NTTデータが推進するグループフルポテンシャル
変革のスピードが一段と増す自動車業界では、ADAS(先進運転支援システム)の急激な進化やSDV(Software Defined Vehicle)時代の本格的な到来、さらにはサプライチェーン競争力の強化など、幅広い領域で構造変化が進んでいます。こうした環境の中、次世代モビリティ分野を牽引するNTTデータ自動車事業部への期待は、ますます高まっています。今回は、自動車事業を率いる事業部長であり、NTTデータエンジニアリングシステムズの取締役も務められる布井真実子様に、NTTデータグループとしての取り組みについてお話を伺いました。
CASEを軸に4つの戦略領域を展開
インダストリ統括本部 第一インダストリ事業本部
自動車事業部長
布井 真実子 様
Mamiko Nunoi
【本社所在地】 東京都江東区豊洲3-3-3 豊洲センタービル
【設立年月日】 2022年(令和4年)11月1日
【資本金】 1,000百万円(2023年11月1日現在)
東 本日はよろしくお願いいたします。私たちNTTデータエンジニアリングシステムズが2006年にグループの一員となって以来、今年で20年を迎えます。一方、1977年の創業から今日に至るまで製造業向けITソリューションのご提供に取り組み、自動車業界のお客さまにもご支援の機会をいただいてきました。この度の対談では、自動車業界の変革を踏まえ、NTTデータ自動車事業部がどのような視点で取り組みを進めているのか、あらためてお聞かせください。
布井 私たちが自動車業界のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に本格的に注力し、取り組んできたのは2017年からでまだ10年ほどです。自動車事業部としては、従来のクラシカルなサプライチェーンやエンジニアリングチェーンの保守・運用だけにとどまらず、CASEを実現するために何をするべきか、という視点を非常に大切にしています。そのため、自動車業界が成長する鍵となる領域として4つの戦略領域に取り組んでいます。具体的には、クルマづくりの変革である「sDx:Software Defined X-formation」、次にサプライチェーンの変革である「sSx:Strategic Supply X-formation」、そしてビジネスモデルの変革である「sVx:Service Value X-formation」、最後にカーボンニュートラルの実現に向けた変革である「sGx:Sustainable Green X-formation」の4つの領域です。これらを軸として、自動車業界が直面している大きな構造変化に対して、デジタル技術で新しい価値を生み出していこうと考えています。
東 ありがとうございます。では4つの戦略領域で、お客さまへどのような価値を提供しようとしているのか、具体的な取り組みについてもご説明いただけますか。
布井 そうですね。もう少し分かりやすくお話しすると、まず、車そのものの価値の捉え方が大きく変わってきていると思います。以前は車を買えることそのものが一つの価値でしたが、今はクルマを活用すると自分の人生や社会にどのように役立つのか、という視点で見られるようになってきています。
個人の人生という意味ではCX(Customer Experience)の向上が重要になります。車を購入した後にどのような体験や価値を提供してもらえるのか、あるいは車を所有していなくても何らかの新しいサービスを受けられるのではないか、といった発想です。街を走る車両のデータを活用して新しい価値を生み出すような取り組みも、その一例だと思います。
次に社会に役立つという観点で考えると、サーキュラーエコノミーやエネルギーマネジメントといった、グリーン領域への取り組みが重要になります。自動車は多くの部品で成り立っており、その素材そのもの、製造する時のCO2排出やエネルギー利用とさまざまな面で環境と密接に関わっています。それがゆえに欧州電池規則やリサイクル法など、規制対応も多いですが、それだけ自動車業界は環境問題に大きく貢献できるということだと考えています。
こうした価値を実現するには、車がクラウドとつながり、ソフトウェアによって機能が継続的に進化していくSDVが重要になります。お客さまの要望は時間の経過とともに変わっていきますので、ソフトウェアのアップデートによって車の機能を頻繁に更新する仕組みが必要です。アップデートができるということはフィードバックもできるということですので、クルマ作りそのものの改善にもつながります。今後のSDVは、ますます重要になっていくでしょう。
個人と社会の満足、それを実現するためのSDV、そしてそれを支える開発、製造ラインのDXということに対して、先ほどの4つの戦略領域「sDx」「sSx」「sVx」「sGx」に取り組んでいます。私たちの使命は、自動車業界の変革にソフトウェアの力で貢献することです。
東 確かに、車づくりそのものが大きく変わってきています。特に「sDx」は、車がソフトウェアによって進化し続ける時代を象徴している取り組みです。搭載されるソフトウェアの量も以前とは比べられないほど増えてきています。例えば、「次の信号があと30秒で切り替わる」といった情報が提供されるほか、運転操作そのものを必要としない、あるいは渋滞の影響を受けずに移動できるといった技術も実現しつつあります。今後、このような車両が主流となれば、乗車中の時間をどのように活用するかが課題となり、エンターテインメントや情報検索など、新たなサービスの需要も一層高まるでしょう。これらを実現するにはソフトウェアの力が不可欠で、その価値を提供できるのがNTTデータグループであると考えています。
布井 今後の取り組みのステップで考えると、技術領域だけでなく経営領域の変革も不可欠です。私が特に重要だと考えているのは、ハードウェア中心の経営から、ソフトウェアを重視する経営基盤への転換です。自動車業界では依然としてハードウェアの影響力が圧倒的に強い状況ですが、今後はソフトウェアの力をハードウェアと同等の位置付けに引き上げていく経営改革が不可欠だと考えています。30年以上にわたりソフトウェア経営を実践してきたNTTデータならばこうした改革を強力にご支援できると考えています。
多彩なキャリアで積み上げてきた経験と実績
代表取締役社長
東 和久
Kazuhisa Higashi
東 ここで少し布井事業部長ご自身のお話を伺いたいと思います。これまでのキャリアや、そこからどのような学びを得て今の業務に生かされているのか、お聞かせいただけませんか。
布井 はい。私は2001年にNTTデータに入社しています。転職の経験はなく、ずっとこの会社でキャリアを積んできました。入社当時のNTTデータは、事業の大半が公共分野か金融分野で占められており、私も最初は公共・金融領域の大型プロジェクトに携わりました。10年が経過した頃、小回りの利くサービス型の業務にも挑戦したいという思いが強くなり、公募制度にてEVの充電器ネットワーキングサービスのプロジェクトに異動しました。その後は、通信業界、電力業界を担当し、人事本部にてスタッフを経験した後、2019年から自動車事業部に参りました。現在は営業コンサルティングの業務を担当していますが、アプリケーションエンジニアやプロジェクトマネージャーの経歴が長いです。
東 今の業務の役に立っている、または基盤となっているのはどのような部分だと感じておられますか。
布井 社内ではありますが多様な業界や職種の経験ができたことが、今の業務の基盤となっていると思います。各業界には独自の文化や慣習があり、その背景を理解することで初めて本質的な課題が見えてきます。自動車業界に関わって6年ほどですが、電力分野の知識がEV普及やエネルギーマネジメントの提案にそのまま役立ち、経験の掛け合わせが価値になることを強く実感しています。
東 少し話が変わりますが、人財という観点から特に今後強化していきたい分野というのはありますか。
布井 一つは、お客さまのコア業務をもっと理解する努力をするべきだ、ということを自動車事業部だけではなくて全社的に進めています。ソフトウェアとハードウェアといった異なるものとのシナジーを求める傾向が強くなってきているので、ソフトウェアの世界だけではなく、幅広い領域で応用可能な個人スキルが求められています。もう一つ、多能工的ないくつかの経験を積むことも重要だと考えます。そこから見える世界があり、業界や職種を越えた議論ができるようになると感じます。
東 NTTデータだからこそ、多様な現場を経験する環境が整っていると思います。特に自動車業界は専門性が深いので、異なる分野の知見を広げることが重要です。幅広い視野を持つことが提案の質を大きく左右すると感じています。
布井 そうですね。ほとんどの業界の経験ができるというのは、NTTデータのいいところかもしれませんね。
NTTデータが目指すグループフルポテンシャル
東 NTTデータでは、グループ連携を最大化することで、グローバル規模での成長と競争力を極限まで高める戦略的方針として、グループフルポテンシャルを推進していますが、この取り組みについてお聞かせいただけますか。
布井 グループフルポテンシャルの目的は、グループ各社が持つ多様な専門性をどのように連携させ、組み合わせることで新たな価値を生み出すか、という点にあります。
グループとして単に協力し合うだけではなく、各社の強みを掛け合わせた結果として、新たなサービスや価値を提供していきたいという思いを込めて、「グループフルポテンシャル」という言葉をあえて強調しています。
東 各社それぞれの強みを生かして、未来の領域を目指そうというスローガンですね。
布井 そうです。NTTデータグループ会社の自動車領域の皆さまは、強い専門性をお持ちです。これは、自動車業界が多様な専門性の集合体で成り立っていることの表れでもあります。
例えば、御社NTTデータエンジニアリングシステムズはエンジニアリングチェーンに強みがありますし、他にもインカー領域に強みを持つ会社や、自動運転向けAI活用を得意とする会社など、グループ各社がそれぞれの領域で高度な専門性を極めています。皆さまは自社の専門領域だけでも十分に勝負できますが、こうした特長を生かしながら相互に手を取り合うと、より業界改革を進められると考えています。特に自動車業界は巨大市場であり、法改正や業界改革といった大きな取り組みが必要です。
それをそれぞれが単独で実現しようとすると、事業規模の問題に加えて、国との調整を含むさまざまなステークホルダーとの連携も必要となるため、現実には難しい面があります。各社の専門性や国や業界団体などへの影響力を組み合わせることでより大きなお客さまの価値を生み出せるのではないか、これが「グループフルポテンシャル」であり、他分野以上に自動車領域が「グループフルポテンシャル」に向いていると感じている点です。
東 自動車業界の変革や外部環境の影響など、日本の製造業がグローバルの中で置かれている状況を踏まえると、もはや現状を変えなければ対応できない状況にきていると感じています。日本企業がそれぞれ単独で取り組むには限界があり、今まさにその課題が顕在化している段階です。そのような中で、グループフルポテンシャルをどのように運用し、価値につなげていくかが極めて重要だということです。さきほど布井事業部長がおっしゃった通り、各社単独では実現できないことを、グループとして成立させる仕組みを構築し、その結果として自動車業界の変革に貢献することが求められていると考えています。
布井 私は、グループ会社に何かを期待しているというよりも、むしろグループ各社の皆さまから、NTTデータが期待していただける存在であるべきだと考えています。各社が高度な専門性をお持ちで、自社の領域だけでも一定の事業を完結できる状況にあるからこそ、「NTTデータと組むことで、より良い仕事ができる」と感じていただくことが大切だと思っています。
東 私たちはもともと別会社のグループからNTTデータに参画した経緯があります。そのため、当時から在籍している社員であれば「これまでとはまったく異なる世界との一体化」という感覚だったと思います。しかし、今では「製造業とソフトウェア両方のDNA」と「NTTデータが培ってきたソフトウェアビジネスのDNA」がうまく融合できたのではないかと実感しています。
最近特に感じるのは、NTTデータがソフトウェアソリューションを構築する中で積み上げてきた膨大な知見のレベルの高さです。過去の失敗事例まで含めてグループ会社に開示し、それらを体系化してまとめている資料を見ると、本当にプロフェッショナルだなと痛感しました。多くの経験と失敗の上に、再発防止のための深い研さんが積み重ねられていることが伝わってきます。これはまさに、今の私たちが直面している課題にも直結する知見であり、大いに助けられています。
布井 これらは私たちにとっては日常的に活用している当たり前の道具でしたが、これこそがお客さまに貢献できる価値そのものだと最近改めて気づきました。こうした知見や仕組みは、お客さまの経営改革やソフトウェア文化の醸成に生かすことができ、NTTデータの大きな強みだと感じています。特に、長年積み上げてきたプロセスやナレッジの体系化は非常によくできており、これは他社にはなかなか真似できない価値だと思います。
東 これから布井事業部長が中心となって自動車領域のグループ会社と協力できる体制が整うことで、私たちが知らない多くの経験や知見も取り入れながら、一緒に提案し変革する機会がさらに広がると期待しています。また、それ以上に私たち自身にとっても変革に踏み出すチャンスにつながり、今後は自動車分野に限らずグループフルポテンシャルで提案することもあるかと思います。
布井 先ほど東社長がおっしゃっていた製造業とソフトウェア両方のDNAを持っているという表現は、業界のコアとなる業務そのものを深く理解し、その上でソフトウェアを開発できるという意味だと改めて感じ入りました。この二つを兼ね備えていることこそ、御社の最大の強みだと思います。
私たちは、自動車業界全体の変革、そしてサプライチェーン全体の統合という全体最適の視点を常に大切にしており、その観点からご提案を行うことをポリシーとしています。今まさに自動車モビリティの未来に向けて、グループフルポテンシャルの総合力を発揮するタイミングだと感じていますので、東社長これからもよろしくお願いいたします。
東 こちらこそよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。
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